お口の悩み コラム

【歯が浮く原因を徹底解説】放置は危険!あなたの歯のSOSサインかも?

2025.06.17

「なんだか歯が浮くような感じがする…これって何?」
「歯がグラグラするけど、原因がわからない…」

このような歯の違和感、もしかしたらあなたの歯が送っている大切なSOSサインかもしれません。多くの人が経験する「歯が浮く」という不快な感覚。単なる一時的なものと軽く見過ごされがちですが、その裏には歯科疾患や全身状態と関連する様々な歯の痛みの原因が潜んでいます。

今回は、歯科医も推奨する「歯が浮く」メカニズムから、見落としがちな意外な原因、そしてご自宅でできる応急処置から専門的な治療法までを、わかりやすく徹底解説します。大切な歯を守り、快適な毎日を送るために、この記事をぜひお役立てください。

「歯が浮く」って、どういうこと?歯が本当に浮いているの?

「歯が浮く」という表現、なんだか不思議ですよね。まるで歯が宙に浮いているような、根元から押し上げられているような感覚。でも、もちろん実際に歯がプカプカ浮いているわけではありません。

この感覚の鍵を握るのは、歯と顎の骨をつなぐ「歯根膜(しこんまく)」という、ごく薄いクッションのような組織です。この歯根膜は、私たちが食べ物を噛むときの衝撃を吸収したり、歯に加わる力を感じ取ったりする、とても大切な役割を担っています。

このデリケートな歯根膜に、何らかの原因で炎症が起きたり、ダメージを受けたりすると、歯がいつもとは違う、独特の「浮いているような」違和感や痛みとして感じられるようになるのです。まるで歯が「いつもと違うよ!助けて!」と教えてくれているようなものですね。

「歯が浮く」その原因は?放置すると悪化する?見落としがちな7つのサイン

「歯が浮く」感覚の裏には、様々な原因が隠されています。あなたのケースはどれに当てはまるでしょうか?

1.噛みすぎ・食いしばり・歯ぎしり(歯根膜炎)

原因は?

ストレスを感じたり、何かに集中したりしているとき、無意識のうちに歯を強く噛みしめていませんか?夜中に「歯ぎしり」をしていると指摘されたことは?これらは、特定の歯に必要以上の大きな力をかけ続けてしまい、歯を支える歯根膜が炎症を起こし、「歯が浮く」感覚につながります [1]。また、深い虫歯で歯の神経(歯髄)が炎症を起こし、その炎症が歯の根元まで広がる「歯髄炎」が原因となることもあります [2]。

放置すると?:

歯の表面が削れたり、ひどい場合は歯が割れてしまったりするリスクも。神経の炎症が進むと、激しい歯の痛みに変わることもあります。

2.歯周病の進行

原因は?:

歯と歯茎の境目にたまった細菌が、歯茎に炎症を起こし、さらに歯を支える骨(歯槽骨)まで溶かしていくのが「歯周病」です。骨が溶けて歯の支えがなくなると、歯がグラグラしてきたり、まるで「歯が浮いている」ように感じたりします [3]。口臭や歯茎からの出血も歯周病のサインです。喫煙や糖尿病がある方は、歯周病がより早く進みやすいので要注意です [4]。

放置すると?:

歯周病は「沈黙の病気」とも呼ばれ、気づかないうちに進行していることが多いです。最終的には歯が抜け落ちるだけでなく、心臓病や糖尿病など全身の健康にも悪影響を及ぼすことが分かっています。

歯の根の先に膿がたまる(根尖性歯周炎)

原因は?:

過去に治療した歯や、神経が死んでしまった歯の根の先に、細菌が原因で膿の袋ができてしまうことがあります [5], [6]。この膿が周りの骨を圧迫すると、歯が押し上げられるような「浮いた痛み」になるのです。

放置すると?:

膿の袋が大きくなると、歯茎が腫れる、顔が腫れるといった症状が現れることも。最悪の場合、骨の中に感染が広がることもあります。

親知らずの問題

原因は?:

一番奥に生えてくる「親知らず」(智歯)は、生え方が悪かったり、途中で止まってしまったりすることがよくあります [7]。すると、歯と歯茎の間に食べかすが詰まりやすく、炎症を起こします(智歯周囲炎)。この炎症が周囲の歯に波及して、「歯が浮いた」ような違和感や痛みを引き起こすことがあります。

放置すると?:

強い痛みや腫れを繰り返したり、隣の歯を虫歯や歯周病にしてしまったりする可能性があります。

ストレスと自律神経の乱れ

原因は?:

意外かもしれませんが、精神的なストレスも「歯が浮く」原因になることがあります。ストレスで無意識のうちに歯を食いしばる癖が強くなったり [8]、自律神経のバランスが崩れて、歯や歯茎の感覚が過敏になったりすることがあるからです [9]。実際に歯に問題がなくても、この感覚が続くこともあります。

放置すると?:

長期的な歯の違和感だけでなく、顎関節症や頭痛など、他の体の不調にもつながる可能性があります。

副鼻腔炎(ちくのう症)

原因は?:

鼻の奥にある「副鼻腔(ふくびくう)」という空洞が炎症を起こすのが「副鼻腔炎」(いわゆる蓄膿症)です。上顎の奥歯の根っこは、この副鼻腔にとても近い位置にあります。そのため、副鼻腔炎の炎症が歯の根元に影響して、歯が浮いたように感じられることがあるのです [10]。風邪の後やアレルギー性鼻炎の症状があるときに、歯の違和感を覚えたら、これも原因かもしれません。

放置すると?:

鼻の症状が悪化するだけでなく、頭痛や顔面痛など、生活の質を低下させる原因になります。

女性ホルモンの変化

原因は?:

女性は、妊娠中や生理周期、そして更年期など、女性ホルモンのバランスが大きく変化する時期があります。ホルモンの影響で歯茎が敏感になり、普段よりも炎症を起こしやすくなることが知られています [11], [12]。すると、歯が浮いたような違和感や、歯茎の腫れを感じやすくなることがあります。

放置すると?:

ホルモンの変動で一時的に歯肉炎が悪化しやすくなるため、丁寧な口腔ケアを怠ると、本格的な歯周病へと進行してしまうリスクがあります。

「歯が浮く」痛みを感じたら、まずは歯科受診を!

「歯が浮く」という痛みや違和感は、単なる気のせいではありません。ご紹介したように、放っておけば症状が悪化し、治療が複雑になったり、最悪の場合、大切な歯を失うことにも繋がりかねない、体からの重要なサインです。

自己判断せずに、まずは最寄りの歯医者さんを受診しましょう。歯科医師は、精密な診察に加え、レントゲン撮影や口腔内写真などを用いて、症状の根本原因を正確に特定します。そして、それぞれの原因に応じた、科学的根拠に基づいた適切な治療計画を提案してくれます。

日常でできる「歯を守る」ケアと、歯医者さんでの専門的対処法

歯科での治療はもちろん大切ですが、ご自身で日々実践するセルフケアも、歯の健康を維持し、歯の痛みの再発を防ぐ上で極めて重要です。ここでは、原因別の専門的な対処法と、今日からできるホームケアについて詳しく解説します。

歯医者さんでの専門治療:

根本原因を解決する
症状の原因が明確でない場合や、自己対処で改善しない場合は、歯科医師による専門的な診断と治療が不可欠です。

噛み合わせの問題や歯ぎしり・食いしばりの場合:

特定の歯に力がかかりすぎている場合は、歯の表面をわずかに調整し、噛み合わせのバランスを整えます(咬合調整)。
夜間の歯ぎしりや食いしばりには、オーダーメイドのマウスピース(ナイトガード)が推奨されます。寝るときに装着することで、歯や顎関節にかかる力を分散・緩和し、歯根膜への負担を軽減できます [13]。

歯周病の場合:

歯周病の原因となる歯垢(プラーク)や歯石は、歯科衛生士が専門的に除去します(スケーリング・ルートプレーニング)[14]。これにより、細菌の温床を取り除き、歯肉の炎症を鎮めます。
進行が著しい場合は、歯周外科治療や抗菌薬の併用が検討されることもあります。

歯の根の先の病気(根尖性歯周炎)の場合:

感染した歯の根の内部を徹底的に清掃・消毒し、細菌の再増殖を防ぐ「根管治療」が最も効果的です。過去に治療した歯でも、再感染している場合は根管再治療が必要になることがあります。
根管治療で改善が見られない場合や大きな病変がある場合は、歯根の先端部分を切除し、病巣を取り除く外科手術(歯根端切除術)が行われることもあります。

親知らずの問題の場合:

炎症を繰り返したり、他の歯に悪影響を与えている親知らずは、抜歯が根本的な解決策となることが多いです。生え方によっては、専門の口腔外科医による慎重な処置が必要になることもあります。

ストレスや自律神経の乱れが原因の場合:

歯科では、噛みしめ癖による負担を減らすため、マウスピースの使用が有効です。
ストレスが主な原因と診断された場合は、心療内科や精神科との連携も検討されます。カウンセリング、リラックス療法、必要に応じた薬の服用などにより、ストレス起因の口腔症状の緩和が期待できます [8]。

副鼻腔炎が原因の場合:

歯の浮いた痛みの原因が副鼻腔炎であると判断されたら、歯科医師から耳鼻咽喉科への紹介が行われます。副鼻腔炎の治療(抗菌薬、消炎剤、鼻洗浄など)によって、歯の症状も改善することが期待されます [10]。歯科と耳鼻咽喉科の連携が重要です。

ホルモンバランスの変化による場合:

ホルモンの影響で歯茎が敏感になっている時期は、普段以上に丁寧な口腔衛生指導が求められます。歯科衛生士による適切な歯磨き方法や、歯間清掃用具の正しい使用法の習得が重要です。プラークコントロールが徹底されることで、症状の改善が期待できます。特に妊娠性歯肉炎の場合、丁寧なケアは非常に重要です [12]。
自宅でのケアだけでは除去しきれないプラークや歯石を、定期的に歯科医院で除去するプロフェッショナルクリーニングも効果的です。

自分でできる毎日の「歯を守る」セルフケア

歯科治療だけでなく、ご自身で日々実践するセルフケアも、歯の健康を維持し、歯の痛みや違和感の再発を防ぐ上で極めて重要です。

痛む歯を休ませる:

痛む歯に過度な負担がかからないよう、硬いものを噛むのを避けたり、食事の際には反対側で噛むようにしたりして、歯への機械的ストレスを減らしましょう。

口腔ケアの徹底:

歯周病や虫歯の悪化を防ぎ、口腔内を清潔に保つことは、すべての歯科疾患予防の基本です。毎日の丁寧な歯磨きはもちろんのこと、歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間や歯周ポケットの細菌を取り除くために、デンタルフロスや歯間ブラシを積極的に使用しましょう。また、歯科医院での定期検診とプロフェッショナルクリーニングは、ご自身では除去しきれない歯石やバイオフィルムを除去し、口腔環境を良好に保つ上で非常に効果的です。

ストレス軽減:

ストレスが歯の浮く痛みの原因となっている可能性がある場合は、日常生活の中にリラックスできる時間を取り入れる工夫が大切です。例えば、適度な運動、ヨガ、瞑想、趣味に没頭する時間などを設けることが有効です。また、十分な睡眠をとることも、自律神経の乱れを整え、身体の回復力を高める上で重要です。もしご自身でのストレス管理が難しいと感じる場合は、心療内科や精神科の専門医に相談することも検討しましょう。

市販の鎮痛剤の服用:

痛みが強い場合は、薬局で購入できる鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>など)を一時的に服用して痛みを和らげることもできます。ただし、これはあくまで対症療法であり、痛みの根本原因を解決するものではありません。漫然と使用を続けず、必ず歯科医院を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。

「歯が浮く」というサインは、あなたの体が発している重要なSOSです。このサインを見逃さず、早めに歯科医院を受診し、適切な診断と治療、そして日々の口腔ケアを継続することで、ご自身の歯を長く健康に保ち、快適な生活を送ることができます。

何か気になる歯の違和感や痛みがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。あなたの歯の健康をサポートする歯医者さんが、きっと力になってくれるはずです。

ご予約・お問い合わせ

高輪ゲートウェイ駅からアクセス抜群の当院では、WEBもしくはLINEからのご予約も可能です。お電話でのお問い合わせも受け付けておりますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご連絡ください。
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[電話番号] 03-6722-6741
高輪ゲートウェイ駅から徒歩7分/都営浅草線・京急線 泉岳寺駅より徒歩1分

参考文献

[1] Miyata, T., Hoshino, T., & Kaneko, T. (2002). Occlusal trauma and its effects on the periodontium. Clinical Periodontology, 29(Suppl 3), 116-121.

概要: 噛み合わせの力が歯周組織に与える影響、特に歯周病の進行と歯根膜の炎症(歯根膜炎)の関連について解説した論文です。

[2] Seltzer, S., & Bender, I. B. (1984). The Dental Pulp: Biology, Pathology, and Treatment. J.B. Lippincott Company.

概要: 歯の神経(歯髄)の生物学的特性、病気になったときの変化、および治療法に関する基礎的な内容をまとめた、歯科の専門書です。

[3] Papapanou, P. N., Sanz, M., Buduneli, N., Dietrich, T., Feres, R., Fine, D. H., … & Van Dyke, T. E. (2020). Periodontitis: Epidemiology, Pathogenesis, and Treatment. Nature Reviews Disease Primers, 6(1), 1-24.

概要: 歯周病がどれくらいの人に起こっているか、どのように病気が進むのか、そしてどのような治療法があるのかについて、最新の研究に基づいて詳しく解説した論文です。

[4] Genco, R. J., & Borgnakke, W. S. (2013). Risk factors for periodontal disease. Periodontology 2000, 62(1), 59-93.

概要: 歯周病になりやすい、または悪化しやすい原因(リスク因子)について、喫煙や糖尿病など様々な要素を網羅的にまとめたレビュー論文です。

[5] Nair, P. N. R. (2004). Pathogenesis of apical periodontitis and the causes of endodontic failures. Critical Reviews in Oral Biology & Medicine, 15(6), 348-361.

概要: 歯の根の先端に炎症が起きる病気(根尖性歯周炎)がなぜ起こるのか、そして根管治療がなぜうまくいかないことがあるのかについて、原因となる細菌の役割を中心に深く掘り下げて解説した論文です。

[6] Siqueira, J. F. Jr. (2009). Pathogenesis of apical periodontitis. Journal of Endodontics, 35(5), 786-791.

概要: 歯の根の先端の炎症(根尖性歯周炎)がどのように発生するかを、根管内の細菌感染の観点から詳細に解説した総説です。

[7] Chiang, Y. L., Chen, Y. T., Wang, Y. H., Liu, P. R., Tseng, Y. C., Hsu, Y. M., … & Wu, H. C. (2011). Impacted third molars: a review of the risks and benefits of removal. Journal of the Formosan Medical Association, 110(6), 350-358.

概要: 埋まっている親知らず(智歯)を抜くことのメリットとデメリットについて、様々なリスクや得られる利益を考慮してまとめたレビュー論文です。

[8] Manfredini, D., Landi, N., Romagnoli, M., & Bosco, M. (2004). Psychological distress in bruxism: a systematic review and meta-analysis. Journal of Oral Rehabilitation, 31(9), 827-836.

概要: 歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)と精神的なストレスの関係性について、多くの研究をまとめて分析した論文です。ストレスがブラキシズムの重要な要因であることを示しています。

[9] Glaros, A. G., & Rao, S. M. (1998). Effects of TMD-related pain on chewing and jaw movements. Journal of Oral Rehabilitation, 25(12), 920-928.

概要: 顎関節の痛み(顎関節症)が、噛む動作や顎の動きにどのように影響するかを調査した研究です。ストレスなど心理的な要因が顎関節の症状に影響する可能性も示唆しています。

[10] Mehra, P., & Wolford, L. M. (2008). Maxillary sinusitis of dental origin. Current Infectious Disease Reports, 10(3), 205-212.

概要: 歯の病気が原因で起こる鼻の炎症(歯原性上顎洞炎、蓄膿症)について、そのメカニズムや診断、治療法をまとめたレビュー論文です。

[11] Gargiulo, M., Caldeira, E. J., & Rösing, C. K. (2012). Periodontal disease in women: an overview of the role of hormones. Women’s Health (London, England), 8(6), 667-674.

概要: 女性の歯周病とホルモン(特に女性ホルモン)の関係について包括的に解説した総説です。妊娠、生理、更年期といったホルモン変動が歯茎に与える影響を論じています。

[12] Tilakaratne, A., Soory, M., Ranatunga, P. S., & de Silva, P. (2000). Hormonal alterations and periodontal disease during pregnancy: a review. Oral Diseases, 6(5), 237-248.

概要: 妊娠中に起こるホルモンの変化が歯周病にどう影響するかをまとめたレビュー論文です。妊娠性歯肉炎のメカニズムや、その時期の口腔ケアの重要性について解説しています。

[13] Okeson, J. P. (2013). Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion (7th ed.). Mosby.

概要: 顎関節症(TMD)と噛み合わせの問題に関する、歯科医学の代表的な教科書です。歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)の診断と、マウスピース(ナイトガード)を使った治療法について詳しく書かれています。

[14] Cobb, C. M. (2002). Non-surgical pocket therapy: mechanical and antimicrobial. Periodontology 2000, 28(1), 6-21.

概要: 外科手術をしない歯周病治療、特に歯垢や歯石を機械的に除去する方法(スケーリング、ルートプレーニング)の効果と、抗菌薬の使用についてまとめたレビュー論文です。

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