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スポーツドリンク・エナジードリンクは要注意!虫歯リスクの高い飲料

2025.09.19

その「一口」が歯を溶かす? 意外な落とし穴とは

「健康」のイメージに隠された虫歯のワナ

スポーツや仕事の合間に、手軽に水分やエネルギーを補給できるスポーツドリンクやエナジードリンク。メディアや広告でも「健康維持に不可欠」「疲労回復をサポート」といった、前向きなイメージで伝えられることが多いため、「毎日飲んでいる」という方も少なくないでしょう。しかし、その一口が実は、気づかないうちに大切な歯を蝕む原因になっているかもしれません。

私たちの体にとって有用な成分が含まれている一方で、これらの飲料は、虫歯菌が繁殖しやすい環境を作り出す「糖分」や、歯を直接溶かしてしまう「酸」を多量に含んでいることがあります。特に、部活動に励む学生さんや、長時間のデスクワーク中にエナジーチャージをしたいビジネスパーソンなど、定期的にこれらの飲料を摂取する方は注意が必要です。健康を意識している方ほど陥りやすい、意外な落とし穴と言えるでしょう。

角砂糖〇個分?!スポーツドリンクの隠れた糖分量

虫歯の最大の原因は、口腔内の細菌が糖分をエサにして酸を作り出し、歯を溶かすことです。スポーツドリンクやエナジードリンクには、私たちが想像する以上に多くの糖分が含まれています。

例えば、一般的なスポーツドリンク500mlには、約20〜34g、エナジードリンクには約50〜65gもの糖分が含まれているとされています。これを誰にでも分かりやすい**「角砂糖」**に換算すると、スポーツドリンク1本で約5~8個分、エナジードリンクに至っては約12〜16個分にも相当します。

これは、WHO(世界保健機関)が推奨する1日の砂糖の摂取量(25g、角砂糖約6個分)を、わずか1本で軽く超えてしまう量です。

論文でも、糖分を頻繁に摂取することが虫歯リスクを劇的に高めることが示唆されています。糖分が口腔内に入ると、虫歯菌はこれを分解して酸を作り出します。この酸によってお口の中が酸性に傾き、歯のエナメル質が溶け始めます。通常、唾液の働きによって酸は中和され、お口の中は中性に戻りますが、時間をかけてだらだらと飲む**「ちびだら飲み」**の習慣は、この中和のプロセスを妨げます。これにより、口腔内は常に酸性の状態に保たれ、虫歯菌が繁殖しやすい環境を作り出し、歯が溶け続けるリスクを高めてしまうのです。

虫歯だけじゃない!歯を脆くする「酸蝕症」の恐怖

虫歯とは違う?「酸蝕症」が歯を溶かすメカニズム

歯を溶かすのは、虫歯菌が作り出す酸だけではありません。スポーツドリンクやエナジードリンクそのものが持つ「酸」も、歯に深刻なダメージを与えます。この現象を**「酸蝕症(さんしょくしょう)」**と呼びます。

虫歯が特定の箇所に発生するのに対し、酸蝕症は歯全体のエナメル質が徐々に溶けていくのが特徴です。清涼飲料水に含まれるクエン酸やリン酸などの酸性成分は、エナメル質を柔らかくし、やがて溶け出させてしまいます。歯のエナメル質はpH5.5を下回ると溶け始めると言われていますが、スポーツドリンクのpH値は3.0~3.5と、エナメル質が溶け始める臨界値を大きく下回ります。

歯の表面がボロボロに…酸蝕症が引き起こすトラブル

酸蝕症が進行すると、歯には以下のようなトラブルが現れます。

  • 歯のツヤがなくなり、黄色っぽくなる:エナメル質が溶けて薄くなることで、その下の黄色い象牙質が透けて見えます。
  • 知覚過敏になる:エナメル質が失われ、象牙質が露出することで、冷たいものがしみやすくなります。
  • 歯の先端が欠けたり、すり減ったりする:エナメル質が脆くなることで、衝撃に弱くなり、歯が欠けやすくなります。

これらの症状は、初期段階では痛みがないことが多く、気づかないうちに進行してしまう点が非常に危険です。

歯の健康を守る!今日からできる3つの対策

飲み方を変えるだけでリスクを軽減

まずは、日々の習慣を見直すことが重要です。

  • だらだら飲みを避ける:水分補給はこまめに行うのが大切ですが、スポーツドリンクやエナジードリンクは休憩時間などに一気に飲むようにしましょう。
  • ストローを活用する:ストローを使うことで、歯に飲料が触れる時間を減らすことができます。

飲んだ後が肝心!「うがい」と「歯磨き」のベストタイミング

酸性の飲料を飲んだ後、すぐに歯を磨くのは逆効果です。柔らかくなったエナメル質を傷つけてしまう恐れがあります。

  • まず水で口をゆすぐ:飲んだ直後は、水やお茶で口をゆすぐことで、口腔内のpH値を中性に戻す助けになります。
  • 歯磨きは30分〜1時間後に:唾液の働きでエナメル質が再石灰化するのを待ってから歯磨きをしましょう。

見えないリスクはプロに任せる!歯科医院での定期的なケア

日々のセルフケアに加え、プロによるケアを定期的に受けることが、歯の健康維持には不可欠です。

  • 専門的なクリーニング:歯科医院でのクリーニングでは、普段の歯磨きでは落ちにくいプラークや歯石を徹底的に除去できます。
  • 早期発見・早期治療:定期検診によって、自分では気づきにくい虫歯や酸蝕症の初期兆候を早期に発見し、適切な処置を受けることができます。

泉岳寺駅前歯科クリニックが提案する「歯の守り方」

スポーツドリンクやエナジードリンクは、私たちの生活に便利さをもたらしてくれますが、大切な歯を守るためには注意が必要です。

心配しすぎる必要はありません。今日からできる小さな対策を続けることで、そのリスクは大幅に減らせます。大切なのは、「意識して飲むこと」と「飲んだ後のケア」です。

そして、それらのセルフケアと合わせて行っていただきたいのが、歯科医院でのプロフェッショナルなケアです。泉岳寺駅前歯科クリニックでは、患者様一人ひとりのライフスタイルやお口の状態に合わせた予防プランをご提案しています。定期的な検診とクリーニングを通じて、普段の歯磨きでは落としきれない汚れを除去し、虫歯や酸蝕症の初期兆候を早期に発見します。

「歯医者は虫歯になったら行くところ」という考えから、「歯の健康を守るために行くところ」へと意識を変えること。それが、ご自身の歯を生涯にわたって守るための第一歩です。当院の「包括的な歯科治療」の考え方については、こちらのコラムでも詳しくご説明しています。

スポーツや仕事でこれらの飲料をよく飲む方、最近歯がしみるようになったと感じる方は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問 (FAQ)

Q1. 虫歯になりやすい飲み物を教えてください。

A. スポーツドリンクやエナジードリンクの他に、炭酸飲料、ジュース、乳酸菌飲料、缶コーヒーなど、砂糖が多く含まれる飲み物は注意が必要です。また、果汁100%ジュースや飲むお酢なども、酸性度が高いため酸蝕症のリスクがあります。酸蝕症についてさらに詳しく知りたい方は、「歯が溶ける」のは虫歯だけじゃない?のコラムをご覧ください。

Q2. 砂糖不使用の飲料なら安心ですか?

A. 砂糖が含まれていなくても、酸性度が高い飲み物(例:人工甘味料入りのゼロカロリー飲料、炭酸水など)は、歯のエナメル質を溶かす「酸蝕症」のリスクがあるため、注意が必要です。

Q3. スポーツドリンクを飲むときに気をつけるべきことは?

A. 飲む回数を減らし、だらだらと飲むのを避けましょう。また、飲んだ後はすぐに水で口をゆすぎ、30分〜1時間後に歯磨きをすることをおすすめします。ストローを使うことも有効です。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

泉岳寺駅前歯科クリニックは、東京都港区に位置する歯科医院です。

<span style=”font-weight: bold;”>泉岳寺駅A3出口より徒歩1分</span>と、非常にアクセスしやすい場所にあります。また、高輪ゲートウェイ駅品川駅からもアクセスが良く、お仕事帰りや買い物ついでにもお立ち寄りいただけます。

皆様の歯の健康を守るため、質の高い治療と予防ケアを提供しております。どうぞお気軽にご来院ください。

参考文献

  • 日本歯科医師会 「酸蝕症とは」
  • WHO(世界保健機関)「Guideline: Sugars intake for adults and children」
  • 日本臨床歯周病学会 「歯周病と全身の健康」
  • Journal of the American Dental Association 「Dietary factors and dental erosion: a literature review」
  • Journal of Dental Research 「Effect of sport drinks on dental enamel: A systematic review and meta-analysis」

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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