「虫歯の治療、保険で安く済ませるか、自費で白い歯にするか迷う……」 「歯医者でセラミックを勧められたけど、本当に高い費用を払う価値はあるの?」
虫歯治療の際、多くの方が直面するのが**「保険診療」か「自費診療(自由診療)」かという選択です。 金額の差が大きいことは分かっていても、「具体的に何が違うのか」「自分の歯にとってどちらが良いのか」**を正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
実は、この選択は単なる「見た目(銀歯か白か)」の違いだけではありません。**「歯の寿命(どれだけ長持ちするか)」や「将来の再治療リスク」**に決定的な差を生む重要な分岐点なのです。
この記事では、泉岳寺駅前歯科クリニックが、歯科医師の視点で**「保険と自費の決定的な違い」と「後悔しない選び方」**を、費用の目安や耐久性のデータとともに分かりやすく解説します。
1. 保険診療と自費診療の決定的な違いは「治療の目的」
多くの患者様は、「保険診療=安い・標準的」「自費診療=高い・贅沢」というイメージをお持ちかもしれません。しかし、医療の現場から見ると、この2つは**「治療のゴール(目的)」**が根本的に異なります。
費用に差が出るのは、単に材料費が高いからだけではありません。国の制度によって定められた**「かけられる時間」や「使える技術」**に大きな違いがあるからです。
保険診療:国が定めたルールで行う「最低限の機能回復」
日本の健康保険制度における歯科治療の目的は、**「病気を治し、最低限の噛む機能を回復させること」**です。
国民全員が等しく安価に医療を受けられる素晴らしい制度ですが、その反面、**「治療の方法」や「使える材料」には非常に細かいルール(制限)**があります。
- 使用できる材料: 国が指定した「銀歯(金銀パラジウム合金)」や「レジン(歯科用プラスチック)」などに限定されます。
- 治療の限界: 「見た目を良くしたい」「最新の技術で予防したい」といった希望は、病気の治療という枠組みを超えるため、保険診療では対応できません。
つまり、保険診療は**「とりあえず噛めるようにする」**ことが最優先であり、長期間の耐久性や審美性は二の次にならざるを得ないのが現状です。
自費診療:美しさと耐久性を追求できる「オーダーメイド治療」
一方、自費診療(自由診療)には、材料や治療法に制限がありません。 その最大の目的は、**「美しく、機能的で、かつ長持ちする(再発させない)治療」**を追求することです。
- 最適な材料の選択: 生体親和性が高く(体に優しく)、汚れがつきにくい「セラミック」や「ジルコニア」など、世界中の高品質な材料を使用できます。
- 精密な技術と時間: 制限時間に縛られず、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密な処置や、強力な接着操作に時間をかけることができます。
自費診療は、単に「白い歯を入れる」だけではありません。**「ご自身の歯を元の健康な状態に限りなく近づけ、その状態を長く守るためのオーダーメイド治療」**と言えるでしょう。
2. 深い虫歯でも神経を残す選択肢「VPT(歯髄温存療法)」とは
詰め物や被せ物の素材を選ぶ前に、非常に重要な**「歯の神経(歯髄)」**の話をしなければなりません。
従来、虫歯が深く進行して神経の近くまで達している場合、治療後に痛みが出るのを防ぐために「神経を取る治療(抜髄)」が行われるのが一般的でした。しかし、近年の歯科医療の進歩により、**条件が合えば神経を残せる「VPT(Vital Pulp Therapy:歯髄温存療法)」**という選択肢が確立されています。
神経を取るとどうなる?歯の寿命が縮まるリスク
なぜ、歯科医師はこれほどまでに「神経を残すこと」にこだわるのでしょうか? それは、神経を取った歯は、寿命が圧倒的に短くなるという明確なエビデンスがあるからです。
歯の内部にある「歯髄(神経)」は、痛みを感じるだけでなく、歯に栄養や水分を運ぶ重要なパイプラインの役割を果たしています。
神経を取ってしまうと、栄養の供給が絶たれた歯は、まるで**「枯れ木」**のように脆くなってしまいます。
歯の神経を失うデメリット
- 破折リスクの増大: 弾力性が失われるため、硬いものを噛んだ拍子に歯の根元から割れやすくなります。歯の根が割れてしまうと、多くのケースで**「抜歯」**となります。
- 異常に気づけない: 痛みを感じるセンサーがないため、再び虫歯になっても気づかず、発見された時には手遅れ(抜歯寸前)になっていることが多々あります。
- 変色: 新陳代謝がなくなるため、歯が徐々に黒ずんで変色します。
つまり、「とりあえず神経を取って痛みをなくす」ことは、将来的な抜歯へのカウントダウンを早めることと同義なのです。
MTAセメントとマイクロスコープで「神経を守る」精密治療
そこで注目されているのが、自費診療で行う**VPT(歯髄温存療法)**です。 これは、虫歯菌に感染した部分だけを慎重に取り除き、特殊な薬剤(MTAセメントなど)で神経を保護・封鎖することで、神経の生活反応(生きている状態)を維持する治療法です。
保険診療でも「覆髄処置」という神経を残す治療は存在しますが、使用できる薬剤や環境に制限があるため、成功率には限界がありました。自費診療のVPTでは、以下の3つの「成功のカギ」となる技術を駆使することで、高い成功率を実現しています。
VPTを成功させる3つの重要要素
- MTAセメント(高生体親和性材料)
- 従来のセメントと異なり、強い殺菌作用と**高い封鎖性(隙間を埋める力)**を持ちます。また、硬化時に少し膨張する性質があるため、菌の侵入経路を完全にシャットアウトします。
- マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)
- 肉眼の最大約20倍の拡大視野で患部を見ることができます。「どこまで感染しているか」「どこまで神経を残せるか」をミクロン単位で識別し、健全な歯や神経を傷つけずに処置します。
- ラバーダム防湿(無菌的処置)
- 治療中の歯に唾液(細菌の塊)が入らないよう、ゴムの膜で患部を隔離します。成功率を上げるためには必須の処置ですが、手間とコストがかかるため、徹底しているクリニックを選ぶことが重要です。
「神経を残せるかどうか」は、10年後、20年後にその歯が残っているかを決める最大の分かれ道です。もし「神経を取る必要があります」と言われても、諦めずにVPTの可能性を相談してみる価値は十分にあります。
3. 【費用比較】保険と自費、詰め物・被せ物・VPTの相場は?
「自費診療が良いのは分かったけれど、実際いくらかかるの?」 これが患者様の最も気になるところでしょう。
まず大前提として、日本の保険診療は原則**「3割負担」(年齢・所得により1〜2割)で受けられますが、自費診療は「10割負担(全額自己負担)」**となります。また、自費診療はクリニックによって価格設定が異なります。
ここでは、一般的な歯科治療の費用相場(目安)をご紹介します。
重要:医療費控除について 自費診療で支払った治療費は、「医療費控除」の対象になります。 年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が10万円(総所得が200万円未満の方は総所得の5%)を超えた場合、確定申告を行うことで**支払った税金の一部が戻ってくる(還付される)**制度です。 ※セラミック治療やVPT、インプラントなども対象です(美容目的のみの治療は除く)。
VPT(歯髄温存療法)の費用目安
第2章で解説した「神経を残すための精密治療」です。 保険診療でも「覆髄(ふくずい)」という処置はありますが、成功率を高めるためのMTAセメントやマイクロスコープを使用する場合は、ほとんどが自費診療となります。
費用の相場(1歯あたり)
- 自費診療:約30,000円 〜 100,000円
- ※使用する薬剤や、難易度によって変動します。
「高い」と感じる方へ:将来のコストとの比較
一見高く感じるかもしれませんが、もしここで神経を失い、将来的に歯を抜くことになれば、失った歯を補うためにインプラント(1本30〜50万円)やブリッジが必要になります。 「数万円で歯の寿命を買う」と考えれば、VPTは非常にコストパフォーマンスの高い投資と言えます。
詰め物(インレー)の費用相場
小さな虫歯を削った後に詰める治療です。
| 項目 | 保険診療(3割負担) | 自費診療(10割負担) |
|---|---|---|
| 主な素材 | 銀歯(金パラ)、レジン | セラミック、ジルコニア、ゴールド |
| 費用目安 | 約1,500円 〜 3,000円 | 約70,000円 〜 150,000円 |
| 特徴 | 安価だが、変形・劣化しやすい。
銀色が目立つ。 |
審美性が高く、汚れがつきにくい。
適合精度が高く、再発リスクが低い。 |
保険の詰め物は初期費用が圧倒的に安いですが、平均して数年〜十数年で接着剤が劣化し、隙間から「二次カリエス(虫歯の再発)」を起こすリスクが高まります。 **「何度もやり直して、そのたびに歯を削る」**というランニングコストと歯へのダメージを考慮する必要があります。
被せ物(クラウン)の費用相場
虫歯が大きく、歯全体を覆う必要がある場合の治療です。
| 項目 | 保険診療(3割負担) | 自費診療(10割負担) |
|---|---|---|
| 主な素材 | 銀歯、CAD/CAM冠(プラスチック) | ジルコニア、セラミック、メタルボンド |
| 費用目安 | 約3,000円 〜 10,000円 | 約80,000円 〜 180,000円 |
| 特徴 | 強度が低い(プラ)か、
硬すぎて対合歯を傷める(銀歯)。 |
天然歯に近い美しさと強度。
精密な型取りで細菌の侵入を防ぐ。 |
CAD/CAM冠(白い保険の歯)の注意点
近年、保険診療でも場所によって白い被せ物(CAD/CAM冠)が選べるようになりました。しかし、これはハイブリッドレジンという**「プラスチックとセラミックを混ぜた素材」**であり、純粋なセラミックではありません。 経年劣化で変色したり、強度が不足して割れてしまうことがあるため、噛む力が強い奥歯などには注意が必要です。
4. 「歯の寿命」が変わる理由|なぜ自費診療は虫歯が再発しにくいのか
「高いお金を出して治療しても、どうせまた虫歯になるんじゃないの?」 そう思われている方もいるかもしれません。
しかし、歯科医療の現実は少し違います。治療した歯が長持ちするかどうか、その運命を握っているのは、詰め物の素材そのものよりも、詰め物と自分の歯の境目に「隙間(ギャップ)」があるかないかという一点に尽きるのです。
歯を失う最大の原因「二次カリエス(虫歯の再発)」とは
一度治療した歯が、詰め物の下や隙間から再び虫歯になってしまうことを、専門用語で**「二次カリエス(二次う蝕)」**と呼びます。
実は、成人の歯科治療の約7〜8割は、この「やり直し治療」だと言われています。 恐ろしいのは、一度詰め物をしているため、外側からは変化が見えにくく、内部で深刻な状態まで進行してしまうことです。
「負の連鎖」を断ち切る
- 治療の精度が低いと、数年でセメントが溶け、微細な**「隙間」**ができる。
- 隙間から虫歯菌が侵入し、内部で広がる(二次カリエス)。
- 痛みが出た頃には神経まで達しており、神経を取る(抜髄)。
- 歯が脆くなり、最終的に割れて抜歯になる。
この「負の連鎖」を最初の段階で食い止める唯一の方法が、**「隙間を作らない治療」**なのです。
【適合精度】隙間を作らない精密な型取りと製作
自費診療と保険診療では、詰め物を作る工程の「精度」が桁違いです。
保険診療の限界
- 型取り材: 一般的に「アルジネート」というピンク色の粘土のような材料を使います。これは水分を含んでいるため、時間が経つと乾燥して収縮し、変形しやすい性質があります。
- 金属の収縮: 銀歯は高温で溶かした金属を型に流し込んで作りますが、冷えて固まる際に必ず金属が収縮します。これにより、ミクロン単位での誤差(隙間)がどうしても生じてしまいます。
自費診療の優位性
- 型取り材: 変形が極めて少ない「シリコン印象材」や、最新の「口腔内スキャナー」を使用し、歯の形を忠実にコピーします。
- 製作技術: 熟練した歯科技工士が顕微鏡下で作成したり、精密なミリングマシンで削り出すため、**髪の毛1本も通さないほどの「適合精度」**を実現できます。
段差や隙間がなければ、汚れ(プラーク)が溜まりにくく、菌の侵入口を物理的に塞ぐことができるのです。
【あわせて読みたい】 なぜセラミックは虫歯が再発しにくいのか?その「ミクロン単位」の秘密については、こちらの記事で詳しく解説しています。 ▶ なぜセラミックインレーは再発しにくいのか?精密治療がもたらす長期的な口腔健康
【接着技術】細菌の侵入を防ぐ強固な結合
もう一つ、非常に重要なのが、詰め物を歯にくっつける「セメント(接着剤)」と、その扱い方です。
「合着」と「接着」の違い
- 保険(合着): 従来のセメントは、摩擦力でハマっているだけ(合着)の場合が多く、パズルのピースがハマっているような状態です。長年使っていると、唾液によってセメントが徐々に溶け出し、その空洞に菌が侵入します。
- 自費(接着): 最新の「レジンセメント」などを使用し、歯と修復物を**化学的に一体化(接着)**させます。分子レベルで結合するため、細菌が入り込む余地を与えません。
手間をかけた表面処理
自費診療では、ただセメントを塗るだけではありません。 歯の表面をきれいに清掃し、特殊な薬剤(プライマー)で処理を行い、唾液や呼気の湿気が入らないように完全に防湿してから接着します。 この**「目に見えない手間」**こそが、10年後、20年後の歯の守り神となるのです。
5. 銀歯・レジンとセラミックを徹底比較|素材ごとのメリット・デメリット
「白い歯にする=美容目的」だと思っていませんか? もちろん、口を開けた時に銀歯が見えないことは大きなメリットです。しかし、歯科医師がセラミックなどの自費素材をおすすめする本当の理由は、見た目以上に**「汚れのつきにくさ」や「体への優しさ」**にあります。
毎日食事をし、過酷な環境にあるお口の中で、それぞれの素材がどのように振る舞うのかを解説します。
保険素材(銀歯・プラスチック):安価だが劣化・変形しやすい
保険診療で使用される素材は、戦後の物資が少ない時代に「まずは噛めるようにすること」を目的に導入されたものがベースとなっており、現代の予防医学の観点からはいくつかの弱点があります。
1. 銀歯(金銀パラジウム合金)のリスク
日本では一般的な銀歯ですが、実は先進国でパラジウム合金をこれほど多用している国は稀です。
- 金属アレルギーの原因になる: 長年お口の中に金属があると、湿った環境でイオン化した金属が溶け出し、体内に蓄積されます。これが原因で、数年後に突然、手足の肌荒れやかぶれなどの金属アレルギー症状を引き起こすリスクがあります。
- メタルタトゥー(歯茎の変色): 溶け出した金属イオンが歯茎に沈着し、刺青のように黒ずんでしまうことがあります。一度沈着すると、元のピンク色に戻すのは困難です。
- プラーク(汚れ)がつきやすい: 金属は静電気を帯びやすい性質があります。そのため、細菌の塊であるプラークを磁石のように引き寄せてしまいます。 いくら歯磨きをしても汚れが残りやすく、それが二次カリエスの温床となります。
2. レジン(歯科用プラスチック)の弱点
白い素材ですが、陶器(セラミック)とは全く異なる「プラスチック」です。
- 吸水性と変色: プラスチックには目に見えない微細な穴が無数に開いています。お弁当箱に色の濃いおかずを入れると色が移るのと同じように、水分や色素、ニオイをスポンジのように吸収します。数年で黄ばみや変色が起こり、口臭の原因にもなり得ます。
- 摩耗と変形: 天然歯よりも柔らかいため、毎日の食事や歯ぎしりですり減りやすく、正しい噛み合わせの高さを維持するのが難しい場合があります。
自費素材(セラミック・ジルコニア):汚れが付きにくく体に優しい
自費診療で使われる素材は、生体親和性(体への馴染みやすさ)に優れており、**「予防」**の観点で非常に優秀です。
1. セラミックの特性は「お皿」と同じ
セラミックは、高級な食器と同じ陶器でできています。表面がツルツルとしていて非常に滑らかなのが特徴です。
- 汚れがつきにくく、落ちやすい: 油汚れがお皿についても洗えばすぐに落ちるように、プラークがつきにくく、ついても歯磨きで簡単に落とせます。つまり、**「素材そのものが虫歯予防の効果を持っている」**と言えます。
- 変色しない: 吸水性がないため、長年使っても変色せず、透明感のある白さを維持できます。
2. 完全メタルフリー(金属不使用)
金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配がゼロです。体に優しく、歯茎の黒ずみも起きません。
3. 素材の使い分け(セラミックとジルコニア)
現在は、場所や用途に合わせて最適な素材を選べるようになっています。
- セラミック(e.maxなど): 透明感が高く、天然歯と見分けがつかない美しさがあります。主に前歯などに最適です。
- ジルコニア: 「人工ダイヤモンド」とも呼ばれるほどの強度を持ちます。金属と同等以上に硬く割れにくいため、強い力がかかる奥歯にも安心して使用できます。
【もっと詳しく】 白い詰め物(セラミック)と銀歯のメリット・デメリット、費用対効果については、以下の記事でさらに徹底比較しています。 ▶ 白い詰め物と銀歯、どっちを選ぶ?メリット・デメリット比較
6. 後悔しない虫歯治療の選び方|判断するための3つのステップ
治療法や素材にはたくさんの種類があり、いきなり「どれにしますか?」と聞かれても困ってしまうのが本音だと思います。 料金表の金額だけで決めてしまい、後から「やっぱりあっちにしておけばよかった」と後悔しないために、歯科医師が推奨する**「正しい判断のステップ」**をご紹介します。
ステップ1:まずは「神経を残せるか」を確認する
「何を被せるか(銀歯かセラミックか)」を考える前に、最も優先すべきは**「神経を残せるかどうか(土台の話)」**です。
もし診断の結果、虫歯が深く「神経を取る必要があります」と言われたとしても、すぐに諦めないでください。第2章で解説した**VPT(歯髄温存療法)**であれば、神経を残せる可能性があります。
- アクション: 「自費診療になっても構わないので、神経を残せる可能性はありませんか?」と担当医に相談してみてください。
- 理由: いくら上に高価なセラミックを被せても、土台の神経がなくなって歯が割れてしまえば、その歯は抜歯となり、被せ物も無駄になってしまうからです。
ステップ2:治療部位(前歯・奥歯)に適した素材を選ぶ
神経の処置が決まったら、次は場所に合わせて素材を選びます。
前歯(見た目が重要なゾーン)
笑った時に一番に見える場所です。
- 推奨素材:セラミック(e.maxなど)
- 保険のレジン(プラスチック)は数年で黄ばみ、変色が目立ってきます。天然歯のような透明感と白さを維持できるセラミックが第一選択となります。
奥歯(強度・機能が重要なゾーン)
自分の体重と同じくらいの強い力がかかる場所です。ここでは「割れないこと」が最優先です。
- 推奨素材:ジルコニア、ゴールド
- 近年は、ダイヤモンドに近い強度を持つ**「ジルコニア」**が人気です。白くて割れにくいため、奥歯にも安心して使えます。
- 注意点: 保険の銀歯は硬すぎることがあり、噛み合う向かいの天然歯を傷つけたり、すり減らしてしまうリスクがあります。
ステップ3:初期費用だけでなく「長期的なコスパ」を考える
最後に費用の判断です。ここでのポイントは、**「1回の支払い額」ではなく「1年あたりのコスト」**で考えることです。
【シミュレーション】
- 保険診療(3,000円): 3年でダメになり、再治療。削ってまた詰め直し…を繰り返す。
- 自費診療(60,000円): 15年以上、快適にトラブルなく過ごせる。
もし6万円の治療が15年持てば、1年あたり4,000円、1日あたり約11円の計算になります。 毎日使う体の一部であり、食事のたびに機能することを考えれば、決して高い買い物ではないはずです。
さらに重要なのは**「生物学的コスト」です。 再治療のたびに歯は一回り大きく削られます。「お金」は後から稼ぐことができますが、「削ってしまった歯」は二度と元には戻りません。** 自費診療の費用は、将来の「再治療の苦痛」「通院の手間」「歯を失う恐怖」を回避するための**「保険料(安心料)」**であると考えてみてください。
7. 「目先の費用」より「将来の健康」を|歯を守るための投資
ここまで、保険診療と自費診療の違いについて、費用・素材・技術・そして神経の保存(VPT)という様々な角度から解説してきました。
最後に、歯科医師として皆様にどうしてもお伝えしたいことがあります。 それは、**「歯は、一度削ったり失ったりすると、二度と再生しない臓器である」**という事実です。
歯の治療は「修理」ではなく「延命」であるべき
皮膚は傷ついても自然に治りますし、骨も折れても繋がります。しかし、歯は違います。 一度削ったエナメル質は戻りませんし、一度取った神経は二度と蘇りません。治療のたびに歯は確実にダメージを受け、寿命を縮めています。
だからこそ、**「最初の治療」や「やり直しの治療」**のタイミングで、どのような選択をするかが極めて重要なのです。
- 保険診療: 壊れた機能をとりあえず回復させる「修理」に近い治療。
- 自費診療: 精密な技術と良質な素材で、歯を細菌から守り抜く「医療(予防)」としての治療。
費用の差は、単なる「お買い物の値段」の違いではありません。 **「今後10年、20年のあなたの歯の運命」と「健康な食生活」**を守るための、未来への投資と考えていただければ幸いです。
泉岳寺駅前歯科クリニックの約束
私たち泉岳寺駅前歯科クリニックは、患者様に「高額な治療を無理に勧める」ことは決してありません。 しかし、プロフェッショナルとして**「歯を長持ちさせるための最善の選択肢」**を提示しないことは、不誠実であると考えています。
当院では、以下のステップを大切にしています。
- 精密な検査と診断: いきなり削ることはしません。まずは現状を正確に把握し、「VPTで神経を残せるか」を徹底的に探ります。
- 対話(カウンセリング): 皆様のライフスタイル、ご予算、歯に対する価値観をじっくり伺います。
- 納得のいくプランニング: 保険・自費のメリット・デメリットを隠さずにお伝えし、患者様ご自身が「これなら納得できる」と思えるプランを一緒に作り上げます。
「銀歯にするか、セラミックにするか迷っている」 「他の医院で神経を取ると言われたが、諦めきれない」
そのような悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、当院のカウンセリングにいらしてください。 あなたの歯を一生使い続けるためのベストパートナーとして、私たちが全力を尽くします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 現在、保険の銀歯が入っていますが、セラミックにやり直すことはできますか?
A. はい、可能です。 現在入っている銀歯を外し、内部の虫歯をきれいに除去した上で、セラミックなどの精密な素材にやり変えることができます。銀歯の下で虫歯が進行しているケースも多いため、やり直すことで歯の寿命を延ばすことにつながります。 詳しくは当院の**詰め物・被せ物(審美歯科)のページ**もご覧ください。
Q2. 自費診療の支払いにクレジットカードは使えますか?
A. はい、ご利用いただけます。 当院では、自費診療のお支払いに各種クレジットカードをご利用いただけます。また、デンタルローン(分割払い)のご相談も承っておりますので、無理のないプランをご提案させていただきます。
Q3. 「医療費控除」はどのような手続きが必要ですか?
A. 確定申告の際に申請が必要です。 1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の領収書(通院にかかった交通費も含む)を保管しておき、翌年の2月〜3月の確定申告期間に税務署へ提出します。
Q4. とりあえず相談だけや、見積もりだけもらうことはできますか?
A. もちろん可能です。 当院では、十分なカウンセリングの時間を設けております。「まずは話を聞いてみたい」というだけでも大歓迎ですので、セカンドオピニオンとしてご活用ください。
泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内
「残せる歯は、極力残す」 私たちは、皆様の大切な歯を一生守り抜くためのパートナーでありたいと考えています。 虫歯治療、詰め物・被せ物のご相談はもちろん、他院で「神経を取る」と言われてお悩みの方も、ぜひ一度当院へご相談ください。
アクセス・診療情報
- 医院名: 泉岳寺駅前歯科クリニック
- 住所: 〒108-0073 東京都港区三田3-10-1 アーバンネット三田ビル1階
- アクセス:
- 都営浅草線・京急本線**「泉岳寺駅」A3出口より徒歩1分**
- JR山手線・京浜東北線**「高輪ゲートウェイ駅」より徒歩圏内**
- 各線**「品川駅」**からもアクセス良好です
- 公式HP: https://sengakuji-ekimae-dental.com/
- Web予約: 24時間WEB予約はこちら
【診療時間】 (※正確な診療時間は公式サイトのフッター等をご確認ください)
皆様のご来院を心よりお待ちしております。
参考文献
この記事は、以下の学術論文および信頼できる歯科医療情報を基に作成されています。
- 歯髄保存療法の有用性と成功率について
- Reference: Duncan HF, et al. “European Society of Endodontology position statement: Management of deep caries and the exposed pulp.” International Endodontic Journal, 52(7): 923-934, 2019. (欧州歯内療法学会による深在性う蝕と露髄の管理に関するポジションステートメント)
- 修復物の適合精度と二次カリエスの関係
- Reference: Prumb T, et al. “Longevity of posterior composite restorations: A systematic review and meta-analysis.” Journal of Dentistry, 41(12): 1059-1077, 2013. (臼歯部コンポジットレジン修復の寿命に関するシステマティックレビュー)
- 金属アレルギーと歯科用金属の関連性
- Reference: Muris J, et al. “Palladium allergy in relation to dental alloys.” Contact Dermatitis, 72(5): 286-293, 2015. (歯科用合金に関連するパラジウムアレルギーについての研究)
- CAD/CAM冠とセラミックの比較
- Reference: Spitznagel FA, et al. “Clinical performance of CAD/CAM-fabricated resin composite and ceramic crowns.” Journal of Prosthetic Dentistry, 120(6): 844-852, 2018. (CAD/CAM製作のレジンおよびセラミッククラウンの臨床成績に関する比較研究)
