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残っている歯を守るインプラント:健康な歯を削らない治療の優位性

2025.08.17

なぜ、今ある健康な歯を守ることが重要なのか

私たちの歯は、単に食べ物を噛むだけの道具ではありません。健康な歯が20本以上あれば、生活の質(QOL)が高く維持できることが、厚生労働省の「8020運動」でも示されています。しかし、一度失った歯は二度と元には戻りません。失った歯を放置したり、安易な治療法を選んだりすると、残っている大切な歯まで危険にさらしてしまうのです。

歯を失うことが「お口全体の老化」を加速させる理由

歯を1本失うと、その周りの歯が、今まで1本で担っていた役割を補おうとして過剰な負担を強いられます。例えば、抜けた歯の隣の歯は、噛み合わせのバランスが崩れて傾き始めたり、抜け落ちた歯の方向へ動いてしまったりすることがあります。さらに、噛み合う相手の歯も、支えを失って伸びてきてしまう(挺出)といった問題が起こります。

このような連鎖的な変化は、やがてお口全体の噛み合わせのバランスを崩し、「お口全体の老化」を加速させてしまいます。歯の喪失と全身疾患の関連性については、国内外の多くの研究で言及されています。例えば、歯の数が少ないほど咀嚼機能が低下し、認知機能や糖尿病リスクに影響を及ぼす可能性も指摘されています¹。

健康な歯を大切にすることが、将来の治療費や苦痛を減らすことにつながる

「歯がなくなったら、その時また治療すればいい」と考えていませんか?しかし、歯を失うごとに治療は複雑になり、時間や金銭的な負担は増大していきます。将来、入れ歯や複数本のインプラントが必要になれば、その費用は初期の治療とは比較にならないほど高額になることもあります。

健康な歯を一本でも多く残すことは、こうした将来的な治療の負担や精神的な苦痛を予防するための、最も賢い投資と言えます。この記事では、あなたの残された歯を守るための最良の選択肢として、インプラント治療がなぜ優れているのかを、具体的な理由とともに詳しく解説していきます。


健康な歯を削るブリッジ治療のデメリット

失った歯を補う治療法として、古くから行われてきたのがブリッジです。ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を「橋桁」のように利用して、人工の歯を繋げる方法です。多くの歯科医院で選択肢として提示されるブリッジですが、実は「健康な歯を犠牲にする」という大きな課題を抱えています。

ブリッジ治療が健康な歯を「犠牲」にする仕組み

ブリッジ治療では、失った歯を補うために、その両隣にある健康な歯を土台として利用します。具体的には、虫歯でもない健康な歯を大きく削り、その上に被せ物(クラウン)を装着して、中央の人工歯を支えます。

この「健康な歯を削る」という行為は、一度行ったら二度と元には戻せません。歯の表面を覆うエナメル質は、私たちの体の中で最も硬い組織ですが、削ってしまえばその保護機能を失います。また、歯を削ることで、内部の象牙質や神経に近くなるため、しみやすくなったり、将来的に神経を抜く必要が出てきたりするリスクも伴います。

削ることで健康な歯が弱り、新たなトラブルを招くリスク

ブリッジの土台となった歯は、失った歯の噛む力まで負担しなければなりません。これは、本来の役割以上の過剰な負荷がかかることを意味します。過度な負担に耐えきれず、土台の歯が破折したり、歯の根に負担がかかったりすることもあります。

さらに、ブリッジは複数の歯が連結しているため、土台の歯と被せ物の間にプラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。毎日の丁寧な歯磨きが難しくなり、気づかないうちに虫歯が進行したり、歯周病のリスクが高まったりするのです。最悪の場合、土台となっていた歯がダメになり、ブリッジ全体を作り直すか、最終的には抜歯に至るケースも少なくありません。

ブリッジは手軽な治療法に見えますが、このように健全な歯の寿命を縮めてしまう可能性があることを知っておくことが非常に重要です。


歯を失っても大丈夫!インプラントが健康な歯を守る仕組み

従来のブリッジ治療が持つ「健康な歯を削る」という課題に対し、インプラント治療は全く異なるアプローチでその問題を解決します。インプラントは、失った歯の機能と見た目を回復させるだけでなく、残っているご自身の歯を徹底的に守ることに優れているのです。

人工歯根が「健康な歯の代わり」になるメカニズム

インプラント治療の最大の特長は、人工の歯根(インプラント体)を顎の骨に直接埋め込む点にあります。この人工歯根はチタン製で、生体親和性が高く、時間と共に顎の骨としっかりと結合します。この現象を「オッセオインテグレーション(骨結合)」と呼び、インプラントが骨と一体化することで、天然の歯根のように強固に固定されます。

人工歯根が土台となることで、その上に人工歯を被せても、噛む力は直接顎の骨に伝わります。これは、まるでご自身の歯が再び生えたかのような状態です。この仕組みにより、失った歯の機能回復を、隣接する健康な歯に頼ることなく実現します。

歯を削らないから、残っている歯に負担をかけない

インプラント治療は、失った歯の部分のみで完結する独立した治療です。そのため、ブリッジのように隣の歯を削って土台にする必要がありません。

健康な歯をそのままの形で残せることは、見た目の美しさだけでなく、歯の寿命を延ばすことにもつながります。天然の歯は、削られると細菌が侵入しやすくなったり、構造的な強度が弱まったりするリスクを抱えますが、インプラントはこれらのリスクを回避できるのです。

健康な歯に一切の負担をかけないインプラントは、今ある大切な歯を守りながら、失われた機能を回復させるための、最も理想的な選択肢と言えるでしょう。


インプラントがもたらす、生涯にわたるお口の健康というメリット

インプラントは、単に失った歯を補うだけの治療ではありません。健康な歯を削らないという特性が、結果としてお口全体の健康を長期にわたって守ることにつながる、数多くのメリットを生み出します。

まず、最も重要なのは、健全な歯への負担がゼロである点です。ブリッジのように他の歯に余計な負荷をかけないため、残っている歯の寿命を縮めることがありません。これにより、将来的により多くの歯を失うリスクを大幅に軽減できます。

次に、顎の骨の健康を保つ効果です。歯を失って噛む力が伝わらなくなると、その部分の顎の骨は徐々に痩せていきます(骨吸収)。これは、顔の輪郭が変わってしまう原因にもなります。インプラントは人工歯根が直接骨に結合し、噛む力が骨に伝わるため、適度な刺激が加わり、骨の吸収を防ぐ効果が期待できます。これは、インプラント治療が長期的な口腔健康に貢献する重要な要素です。

そして、天然歯と変わらない快適な生活も大きなメリットです。インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、自分の歯とほとんど変わらない感覚で、硬いものも難なく噛むことができます。これにより、食事の制限がなくなり、好きなものを美味しく食べられるようになります。また、見た目も天然の歯と遜色ないため、人前でも自信を持って笑顔を見せることができるでしょう。

このように、インプラントは失った歯の機能を回復させるだけでなく、残された歯、そして顎の骨の健康までトータルで守ることで、あなたの生涯にわたるQOL(生活の質)向上に貢献するのです。


賢い選択が未来の歯を守る:インプラントという選択肢

ここまで、ブリッジ治療が持つ「健康な歯を削る」というデメリットと、それに対しインプラントが**「健康な歯を守る」**という優れた利点を持つことをお伝えしてきました。

歯を失った際の治療法を検討する際、私たちはつい「失った歯をどう補うか」という点にばかり意識が向きがちです。しかし、本当に大切なのは「今、残っている健康な歯をいかに守るか」という視点を持つことです。

インプラントは、単に失われた歯の機能と見た目を回復させるだけでなく、残された歯の健康を守り、ひいては口腔全体の健康寿命を延ばすための予防的な治療法です。初期費用は他の治療法に比べて高くなる傾向がありますが、長期的な視点で見れば、再治療のリスクや、それに伴う時間的・金銭的・精神的な負担を軽減できる**「将来への賢い投資」**と言えるでしょう。

もし、歯を失って治療法に悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度歯科医師に相談してみてください。あなたの口腔状態に最適な治療法を見つけることが、ご自身の歯を守るための第一歩となるはずです。あなたの未来の歯を守るために、インプラントという選択肢を真剣に検討してみてはいかがでしょうか。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. インプラント治療は誰でも受けられますか?

A. インプラント治療は、顎の骨の量や全身の健康状態によって適応が異なります。糖尿病などの持病がある方や、骨粗しょう症の薬を服用されている方は、治療が難しい場合があります。まずは一度、当院で詳しい検査とご相談いただくことをお勧めします。

Q2. 治療期間はどのくらいかかりますか?

A. インプラントが顎の骨に結合するまで、一般的に3〜6ヶ月程度の期間が必要です。ただし、骨の状態や治療計画によって期間は変動します。詳しいスケジュールは、初診時のカウンセリングでご説明いたします。

Q3. 治療中の痛みはありますか?

A. 治療中は麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。手術後の痛みや腫れも、鎮痛剤で抑えられる程度です。当院では患者さまの負担をできる限り軽減できるよう、細心の注意を払って治療を行いますのでご安心ください。

Q4. 治療後のメンテナンスは必要ですか?

A. はい、必要です。インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病のような「インプラント周囲炎」になる可能性があります。インプラントを長持ちさせるためにも、毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアが不可欠です。


泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

健康な歯を守るインプラント治療にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ「泉岳寺駅前歯科クリニック」にご相談ください。

当院は東京都港区にあり、JR高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良い場所にございます。

都営浅草線・京急線 泉岳寺駅A3出口から徒歩1分と、駅からのアクセスも非常に便利です。

患者さま一人ひとりの口腔状態に合わせた最適な治療計画をご提案し、残っているご自身の歯の健康を第一に考えた治療を提供しています。

ご予約・お問い合わせは、当院ウェブサイト(https://sengakuji-ekimae-dental.com/)より承っております。

お口の健康に関するお悩みやご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。


参考文献

  1. Fukuda, Y., et al. (2019). The relationship between tooth loss and metabolic syndrome: a longitudinal study. Journal of Clinical Periodontology, 46(6), 629-637.

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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