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インプラントと海外旅行:飛行機の保安検査で金属探知機は反応する?【歯科医師が教えるトラブル回避術】

2026.01.03
インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を回復させ、再び豊かな食生活と自信を取り戻す素晴らしい治療法です。しかし、治療を終えて海外旅行に出かけようとした際、多くの患者様が抱える一つの不安があります。

「飛行機に乗るときの金属探知機に反応してしまうのではないか?」
「もし反応したら、英語でどう説明すればいいのだろうか?」

特に海外の空港では検査が厳しいため、旅行前の大きなストレスになりかねません。この記事では、インプラントの専門家である歯科医師が、保安検査の仕組みから具体的なトラブル回避術までを徹底解説します。不安を解消し、準備万端で快適な海外旅行を楽しみましょう。

この記事でわかること

1. インプラントの素材と保安検査の科学

インプラントが金属探知機に反応するかどうかを理解するためには、まずインプラントの素材と探知機の仕組みを知る必要があります。

1-1. インプラントの主要素材は「チタン」:その生体親和性と非磁性。

現在の歯科インプラントの主流は、純度の高いチタン、またはチタン合金でできています。チタンが選ばれる理由は、その優れた生体親和性にあります。骨と直接結合し、アレルギー反応を起こしにくい特性を持っています。

  • なぜ強力な反応を起こしにくいのか:

    非磁性体(ノンマグネティック)であること :空港のゲート型金属探知機は、主に鉄やニッケルといった磁石にくっつく金属(強磁性体)や、電気をよく通す金属を探知するように設計されています。チタンは磁力に反応しない「非磁性体」であるため、探知機が反応しにくいのです。

    反応しにくいもう一つの理由は、金属の量と埋入されている場所にあります。

    • サイズが小さい:人工関節(股関節や膝関節)のような大きな医療用金属に比べ、インプラント体(フィクスチャー)は非常に小さいものです。
    • 骨の中に埋まっている:顎の骨の中に埋入されているため、金属探知機の磁場による渦電流が発生しにくく、検知レベルに達しないことがほとんどです。

より詳細な情報については、「インプラント体の素材:チタンの安全性と生体親和性の秘密」をご覧ください。

1-2. 金属探知機(ゲート型、ハンディ型)の仕組みとインプラントの関係。

空港で使用される金属探知機は、電磁誘導の原理を用いて金属が作り出す渦電流を探知しています。

  • ゲート型探知機の感度:
    インプラントは極小であるため、標準的な感度設定ではほとんど反応しません。反応するのは、カギ、ベルトのバックル、スマートフォン、靴の金具など、比較的大きな金属です。
  • 歯科用金属の中で反応する可能性が最も低い:
    口腔内には他にも金歯や銀歯(保険診療の金属)が入っている方もいますが、これらも通常は小さすぎて反応しないレベルです。チタンは特に非磁性であるため、保安検査において最も問題を起こしにくい歯科用金属と言えます。

1-3. 知っておきたい例外:インプラントが反応しやすい「ごく稀な」ケース。

99%は杞憂で終わりますが、万が一に備えて「例外」も知っておきましょう。

  1. 多量のインプラントが埋入されている場合:
    フルマウス(全顎)でインプラント治療を行っており、特に金属の土台(アバットメント)や被せ物(上部構造)に多量の金属を使用している場合、微弱ながら反応する可能性があります。
  2. 古いインプラントや特殊な素材の場合:
    非常に古いタイプのインプラントや、チタン以外の特殊な合金を使用している場合は、反応する可能性がわずかに高まります。
  3. 保安検査場の感度が極端に高い場合:
    テロ対策などで空港側が感度を一時的に最高レベルに設定している場合、通常反応しないはずの小さな金属にも反応することがあります。

2. 万が一のために!旅行前に準備すべき2つの最重要事項

インプラントが原因で検査がストップしても、これさえあれば安心です。旅行前に必ず以下の2点を準備してください。

2-1. 【必須】インプラント手帳(IDカード/証明書)の用意。

インプラント手帳、またはIDカードは、あなたが体内に医療機器を埋入していることを証明する最重要アイテムです。

  • IDカードの役割:
    手帳には、インプラントのメーカー名、使用されている素材(チタンであることが重要)、埋入日などが記載されています。これは国際的な「医療機器のパスポート」として機能します。
  • 海外での有効性:
    保安検査官は、インプラント手帳を見ることで、体内の金属がテロや危険物ではなく、**医療用の非危険物**であることを瞬時に判断できます。通常は英語での記載も含まれているため、説明がスムーズに進みます。

2-2. 英語での説明フレーズを準備する。

言葉が通じない国での検査は特に緊張します。パニックを回避するために、シンプルで明確なフレーズを覚えておきましょう。

  • 基本フレーズ1:
    **“I have a dental implant made of titanium.”**
    (チタン製の歯科インプラントが入っています。)
  • 基本フレーズ2:
    **“It is a medical device.”**
    (これは医療機器です。)

このフレーズを落ち着いて伝え、すぐにIDカードを提示すれば、検査はすぐに終わるでしょう。

3. 保安検査場でのスマートな対応手順

実際に保安検査場でインプラントについてどう対応すれば良いか、ステップごとに解説します。

3-1. ゲート型金属探知機が反応しなかった場合:そのまま通過でOK。

ほとんどの場合、インプラントは反応しません。この場合は、何も申告する必要なく、そのまま次のステップに進んで問題ありません。

3-2. ゲートが反応した場合:慌てずに係官に申告する。

万が一、ゲートが鳴ってしまった場合でも、絶対に慌てないことが重要です。

  1. (ステップ1)冷静に立ち止まり、係官に話しかける。
    係官に呼び止められたら、すぐに準備した英語のフレーズ(2-2)を使用し、インプラントが反応源である可能性を伝えます。
  2. (ステップ2)インプラント手帳を提示する。
    「This is the proof (of my implant).」などと言いながら、すぐにIDカードを提示します。
  3. ハンディ型探知機での再検査:
    係官は通常、ハンディ型の探知機で再検査を行います。インプラントが原因の場合、探知機は顔や口元で微弱に反応しますが、係官はそれを見て、体内に埋め込まれた医療機器が原因であることを理解します。
  4. ボディスキャナー(ミリ波)の場合:
    最近導入が進んでいる最新型のボディスキャナー(全身をスキャンする機械)は、金属ではなく、服の下に隠された異物の密度や形状を探知するものです。体内に固定されたインプラントのような医療機器は、多くの場合、身体の一部として認識され、警報を鳴らすことはありません。

3-3. 係官が理解できない場合のリスクと、歯科医院が提供できるサポート。

稀に、経験の浅い検査官や、英語が通じにくい地域で、説明がスムーズに伝わらないことがあります。

  • 最終手段としての多言語対応:
    インプラント手帳の裏や、付属の資料に、インプラントが医療機器であることを多言語(英語、現地の言語など)で記載しておくと非常に安心です。
  • 当院のサポート:
    当院では、患者様が安心して海外旅行を楽しめるよう、インプラント治療の証明書発行はもちろん、治療に関するご不安や疑問について事前に丁寧にお答えしております。

4. インプラントの長期安定のために:旅行中の特別なケア

保安検査の不安をクリアしても、旅行中にインプラントのメンテナンスを怠ると、長期的な安定性に影響が出ることがあります。旅先でも油断せず、ケアを続けましょう。

4-1. 旅先でも怠れないインプラント周囲炎予防。

旅行中は食生活や睡眠時間が乱れやすく、口腔衛生管理がおろそかになりがちです。これにより、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」のリスクが高まります。

4-2. 時差や環境の変化による口腔衛生への影響と対策。

  • 免疫力の低下対策:
    長時間のフライトや時差ボケによる睡眠不足は、免疫力を低下させます。免疫力が落ちると、細菌の活動が活発になり、炎症を起こしやすくなります。いつも以上にブラッシングに時間をかけましょう。
  • 硬い食品や氷への注意:
    旅先では現地の硬い食べ物や、飲み物に入った氷を無意識に噛んでしまうことがあります。インプラントに過度な衝撃や力が加わると、破損の原因になるため注意が必要です。

まとめ:準備万端で快適なインプラントライフを

インプラントと飛行機の金属探知機に関する最大の不安は、「反応するかもしれない」という不確実性から生じます。しかし、インプラントの素材(チタン)の特性上、金属探知機に反応することは極めて稀です。

  • インプラントは海外旅行を制限するものではない。
  • 大切なのは、事前の準備と確実なメンテナンス。
    インプラント治療後も、安心感を持って日常生活を送るためには、日々のメンテナンスが欠かせません。「治療後のアフターケア:メンテナンスが最後の治療である理由」を理解し、年に数回の定期検診は怠らないようにしてください。

旅行前にインプラント手帳(IDカード)を確認し、英語のフレーズを準備しておけば、保安検査場でのトラブルを回避し、心置きなく旅を楽しむことができます。

インプラント治療や、治療後の国際的な証明書発行に関するご質問は、「港区三田の歯医者は、泉岳寺駅前歯科クリニック|高輪ゲートウェイ駅・三田駅」にご相談ください。当院では、海外への渡航が多い患者様に対し、素材選定からアフターケアまで、完全なサポート体制を整えております。

泉岳寺駅前歯科クリニックについて

「泉岳寺駅」A3出口より徒歩1分。高輪ゲートウェイ駅・品川駅からもアクセス良好

当院は、港区三田のアーバンネット三田ビル1階に位置し、通いやすい環境で質の高い歯科医療を提供しています。インプラント治療の技術提供はもちろん、治療後の患者様のライフスタイルに合わせたサポート(海外渡航時の証明書発行など)も大切にしています。海外出張やご旅行の予定がある方、インプラントカードに関するご相談などは、お気軽にスタッフまでお声がけください。

  • 医院名: 泉岳寺駅前歯科クリニック
  • 住所: 〒108-0073 東京都港区三田3-10-1 アーバンネット三田ビル1階
  • アクセス:
    • 都営浅草線・京急本線「泉岳寺駅」A3出口より徒歩1分
    • JR「高輪ゲートウェイ駅」より徒歩圏内
    • JR「品川駅」からもアクセス便利
  • 公式サイト: https://sengakuji-ekimae-dental.com/

参考文献・学術資料

本記事は以下の学術的知見およびガイドラインに基づき作成されています。

  1. Pearson R.G., et al. “Airport metal detectors and orthopedic implants.” Acta Orthopaedica Scandinavica, 1994.
    • 概要: インプラントの素材(チタン対ステンレス鋼)や埋入の深さが金属探知機の反応に与える影響を調査した研究。チタン製インプラントは強磁性体ではないため、探知機に反応する可能性が著しく低いことが示唆されています。
  2. Al-Hajjar, M., et al. “Detection of Orthopaedic Implants by Airport Metal Detectors.” Journal of the Royal Society of Medicine, 2004.
    • 概要: 空港のセキュリティゲートにおける医療用インプラントの検知率に関する調査。大型の人工関節に比べ、小型のインプラントやチタン素材は検知されにくい傾向にあることが報告されています。
  3. Kulkarni, P., et al. “Titanium: A Boon for Medical and Dental Applications.” International Journal of Research in Engineering and Technology, 2014.
    • 概要: チタンの生体親和性および物理的特性(非磁性・低伝導性)に関する詳細なレビュー。
  4. 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
    • “インプラント治療とは” – 治療の基礎知識および安全性に関するガイドライン。
  5. 国土交通省 航空局
    • “航空機搭乗前の保安検査” – 医療機器装着者への対応規定。

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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