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インプラントを成功させたいお酒好きの方へ:なぜ「飲酒」は最大の敵なのか?

2026.02.03

インプラント治療は、失った歯を取り戻し、食事や会話の喜びを再び手に入れるための「未来への投資」です。この投資を成功させるためには、担当医の高い技術はもちろんのこと、患者様ご自身の治療前後の体調管理が欠かせません。

特に、日常的に飲酒習慣のある方にとって、治療期間中の「アルコール摂取」は最大の落とし穴となり得ます。

東京・港区で多くのインプラント治療を手掛ける当院でも、「手術が終わったからお祝いに一杯」「少しのビールなら大丈夫だろう」という油断が、インプラントの定着を妨げ、トラブルを招いてしまったケースを耳にすることがあります。そこには、単なる「用心」だけではない、医学的・科学的な理由が存在するのです。

この記事では、インプラント治療において飲酒がもたらす深刻なリスクを、手術前・手術直後・長期的な視点から徹底解説します。

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I. 手術前の飲酒が潜ませる3つのリスク

インプラント手術は精密な外科処置です。手術前の飲酒は、手術そのものの安全性を揺るがせ、成功率を引き下げる要因となります。不安を解消し、万全の状態で当日を迎えるための準備は非常に重要です。

🔗 手術前の不安を解消するために

1. 出血リスクの増大:血液凝固への影響

アルコールは体内で代謝される過程で、血行を促進し、一時的に血液が固まりにくい状態を作ります。

  • 血流の増加: アルコールの血管拡張作用により血流が良くなるため、手術中の出血量が増え、術野の確保や止血が困難になる可能性があります。

  • 肝機能への影響: 慢性的にお酒を飲む方は、肝臓の機能が低下している場合があります。肝臓は血液を固める「凝固因子」を作る工場でもあるため、機能が低下していると術後の止血に時間がかかるリスクがあります。

2. 免疫力低下と感染症リスク

手術部位が細菌に感染する「術後感染」は、インプラント失敗の主要因の一つです。

過度な飲酒は、体を守る免疫細胞(白血球など)の働きを抑制し、病原菌への抵抗力を低下させます。免疫力が落ちた状態で手術を受けると、傷口の治りが遅くなるだけでなく、感染症を引き起こすリスクが飛躍的に高まります。

3. 麻酔と鎮静の効果への影響

当院のような東京・港区の歯科医院では、痛みに配慮し、局所麻酔や静脈内鎮静法を用いることが一般的です。しかし、アルコールはこれら薬剤の代謝に影響を与えます。

日常的にアルコールを摂取していると、肝臓の代謝酵素が活性化しすぎて麻酔が効きにくくなったり、逆に代謝が遅れて作用が強く出すぎたりすることがあります。安全で快適な無痛治療を受けるためにも、手術前数日間の禁酒は必須条件です。

🔗 痛みや麻酔について詳しく知る


II. 手術直後(急性期)の飲酒の「致命的な」悪影響

手術直後の数日間は、傷の治癒(治り)を左右する「ゴールデンタイム」です。この時期の飲酒は、治癒プロセスを妨害する致命的な行為となりかねません。

🔗 術後の過ごし方の完全ガイド

1. 痛みと腫れを劇的に悪化させる

術後の腫れや痛みは、患部を安静にすることで徐々に引いていきます。しかし、アルコールを摂取すると血行が良くなりすぎ、傷口に血液が集まってしまいます。その結果、「ジンジンする痛み」や「強い腫れ」が引き起こされ、治癒期間が長引く悪循環に陥ります。

🔗 腫れや痛みのピークを知る

2. 薬の効果の無効化と危険な相互作用

術後は感染予防の抗生物質や、痛み止めの鎮痛剤が処方されますが、アルコールとの飲み合わせには重大なリスクがあります。

  • 抗生物質との相互作用: 薬の種類によっては、アルコールと共に摂取することで効果が減弱したり、副作用(吐き気や動悸など)が強く出たりすることがあります。

  • 鎮痛剤(痛み止め)との相互作用: ロキソニンなどの鎮痛剤とアルコールを併用すると、胃粘膜への負担が倍増し、胃痛や胃潰瘍のリスクを高めます。


III. 長期的な成功を左右する骨結合(オッセオインテグレーション)への影響

急性期を乗り越えても、安心はできません。インプラントの長期的な成功は、チタン製のインプラント体が顎の骨と細胞レベルで結合する「オッセオインテグレーション」にかかっています。

🔗 「骨結合」の仕組みを詳しく

骨結合を妨げるアルコールの作用

アルコールは、骨を作る「骨芽細胞」の働きを阻害し、逆に骨を壊す「破骨細胞」を活性化させる可能性があると言われています。過度な飲酒習慣は、インプラントと骨が結合するスピードを遅らせ、最悪の場合、結合不全による初期失敗(インプラントが定着せず抜けてしまう)を招く恐れがあります。

🔗 治療期間への影響

インプラント周囲炎の遠因となる

長期維持の最大の敵は、インプラント版の歯周病である「インプラント周囲炎」です。

アルコールの利尿作用による脱水は、口の中の乾燥(ドライマウス)を引き起こします。唾液が減ると自浄作用が低下し、歯周病菌が繁殖しやすい環境となるため、インプラント周囲炎のリスクが高まります。

🔗 インプラント周囲炎を防ぐために


IV. 【重要】お酒はいつから飲める?禁酒期間のロードマップ

では、成功率を最大限に高めるために、具体的にいつまでお酒を我慢すればよいのでしょうか。

治療成功のための「最低限の禁酒期間」

目安として、以下の期間は禁酒を強く推奨します。(※患者様の状態により異なりますので、必ず担当医の指示に従ってください)

時期 推奨される禁酒期間 理由
手術前 手術の2〜3日前から 血液凝固機能や肝機能を正常化し、麻酔の効きを良くするため。
手術後 抜糸までの約1〜2週間 腫れ・痛みのピークを抑え、薬の効果を正しく発揮させ、初期の傷口を治すため。
結合期間 安定するまで深酒は控える 骨との結合を阻害しないよう、嗜む程度に留めることが理想です。

特に手術後の1週間は、インプラントの命運を分ける期間です。この期間の我慢が、一生モノの歯を手に入れるための鍵となります。

禁酒期間を快適に過ごすための工夫

お酒を控えている間は、食事の内容にこだわってみましょう。インプラント手術後の食事として、骨の形成を助けるカルシウムやビタミンDが豊富なメニューを取り入れることで、回復を能動的にサポートできます。

🔗 術後のおすすめ食事メニュー

また、血行が良くなりすぎないよう、長時間の入浴や激しい運動も控える必要があります。

🔗 入浴・運動の制限について


V. インプラントと飲酒に関するよくある質問(FAQ)

患者様から頻繁にいただくご質問をまとめました。迷った際の判断基準としてお役立てください。

Q1. ノンアルコールビールなら手術当日に飲んでも大丈夫ですか?

A. アルコール分が含まれていなければ基本的には問題ありません。

ただし、「炭酸」が含まれている場合、その刺激が手術直後の傷口には負担になることがあります。出血が止まりにくい場合や、傷口が染みる場合は、炭酸を含まないお茶や水を選ぶことをお勧めします。

Q2. 料理酒を使った食事はしても平気ですか?

A. 十分に加熱され、アルコールが飛んでいれば問題ありません。

煮込み料理などでアルコール分が蒸発している場合は、血流や薬への影響は心配ありません。ただし、風味付け程度でアルコールが残っているものや、アルコール漬けの菓子などは避けてください。栄養バランスの良い食事は術後の回復を助けます。

Q3. ついうっかりお酒を飲んでしまい、痛みが強くなりました。どうすればいいですか?

A. すぐに飲酒を中断し、患部を冷やして安静にしてください。

アルコールによる血行促進で炎症が強まっている可能性があります。濡れタオルなどで頬の上から軽く冷やし(冷やしすぎは禁物です)、激しい運動や入浴を避けて安静に努めてください。痛みが治まらない場合は、処方された痛み止めを服用し、翌日必ず担当医へ連絡してください。

Q4. タバコとお酒、どちらがインプラントに悪いですか?

A. どちらも「定着」を妨げる大きなリスクですが、作用が異なります。

お酒は出血や薬の阻害、骨形成の遅延を招きますが、タバコは毛細血管を収縮させ、酸素や栄養が傷口に届くのを阻害します。インプラントと骨の結合(オッセオインテグレーション)を妨げる点では共通しており、併用すると失敗リスクはさらに高まります。

🔗 タバコのリスクについて詳しく


学術的な参考文献・医学的見解の根拠

本記事の解説は、以下の学術的な研究報告やガイドラインに基づいています。

  1. 重度の飲酒とインプラント失敗リスクの劇的な関連

    2021年に発表されたフィラデルフィア退役軍人医療センターのコホート研究では、アルコール摂取量とインプラント失敗率の関連が調査されました。その結果、「重度の飲酒(Heavy consumption)」を行うグループは、「軽度の飲酒」を行うグループと比較して、後期インプラント失敗のリスクが約8.5倍(847%増)になることが報告されています。

    Ref: Chrcanovic BR, Kenealy JN, Albrektsson T. Does Alcohol Consumption Protect Against Late Dental Implant Failures? J Oral Maxillofac Surg. 2021.

  2. アルコール摂取による骨吸収(骨が溶ける現象)の促進

    Clinical Oral Implants Research に掲載された前向き研究によると、1日10g以上のアルコール摂取は、インプラント周囲の辺縁骨吸収(Marginal Bone Loss)と有意に関連していることが示されました。これは、アルコールが骨代謝に悪影響を与え、インプラントを支える骨を弱らせることを示唆しています。

    Ref: Galindo-Moreno P, et al. Influence of alcohol and tobacco habits on peri-implant marginal bone loss: a prospective study. Clin Oral Implants Res. 2005.

  3. 「禁酒」が骨結合を回復させる科学的証拠

    2025年の最新の研究(動物モデル)では、エタノールの継続的な摂取がインプラントの骨結合(オッセオインテグレーション)を阻害する一方で、術後に禁酒期間(Abstinence)を設けることで、その阻害された骨形成や結合強度が回復することが実証されています。これは、「術後の禁酒」が臨床的に極めて有効であることを裏付けています。

    Ref: Postoperative Abstinence Restores Osseointegration Impaired by Ethanol Consumption. J Bone Joint Surg Am. 2025.

  4. 創傷治癒と免疫応答への悪影響

    アルコールは、傷の治癒に不可欠な「血管新生(新しい血管ができること)」や「コラーゲン合成」を遅らせることが知られています。また、免疫細胞(マクロファージなど)の機能を低下させるため、術後の感染リスクを高める要因となります。

    Ref: Alcohol Consumption and Peri-implantitis: Exploring the Relationship and Implications for Dental Implant Health. IJSDCS.


東京・港区でインプラントをご検討の方へ

インプラント治療は「手術して終わり」ではありません。その後の生活習慣の管理やメンテナンスが、インプラントの寿命、ひいてはあなたの健康寿命を決定づけます。

🔗 メンテナンスの重要性

泉岳寺駅前歯科クリニックでは、インプラント治療における高い技術提供はもちろん、患者様一人ひとりのライフスタイル(飲酒や喫煙習慣、お仕事の忙しさなど)に寄り添った、無理のない包括的な治療計画をご提案いたします。

「お酒が好きで禁酒ができるか不安」「仕事の付き合いが多い」といったお悩みも、まずはカウンセリングで正直にお話しください。都心からのアクセスも良好な当院で、一生モノの歯を守るパートナーとしてサポートさせていただきます。

当院のアクセス情報

泉岳寺駅前歯科クリニック

〒108-0073 東京都港区三田3-10-1 アーバンネット三田ビル1階

  • 都営浅草線・京急本線「泉岳寺駅」A3出口より徒歩1分

    出口を出てすぐ、第一京浜沿いの通いやすい立地です。

  • JR山手線・京浜東北線「高輪ゲートウェイ駅」より徒歩4分

    再開発が進むエリアからも至近距離にあります。

  • JR各線・新幹線「品川駅」より徒歩13分

    ビジネスの拠点である品川エリアからも徒歩圏内です。

診療時間や詳しいアクセス方法は、当院の公式サイトをご覧ください。

ご予約・お問い合わせ

インプラントに関するご相談は、Web予約またはお電話にて承っております。

「ボロボロの歯」や「他院で断られた」という方も、諦めずに一度ご相談ください。

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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