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ボロボロの歯

歯がグラグラする3つの警告サインと放置の代償|歯周病専門医が教える今すぐできる応急対処と根本治療の選択肢

2026.08.13

歯のグラつきは歯周病による骨の吸収が主な原因であり、放置すれば抜歯に至ります。歯茎からの出血や膿、噛むと痛む、グラつきの進行が見られたら即座に歯科受診が必要です。応急対処として柔らかい歯ブラシでの優しいブラッシング、歯間ブラシやデンタルフロスの使用、刺激物の回避が有効ですが、これらは一時的な対症療法です。根本的な改善には歯周病専門医による精密検査と、歯周組織再生療法などの専門的治療が不可欠です。 「もう大丈夫。ボロボロの歯でも|泉岳寺駅前歯科の最初の一歩は「精密検査」から」もあわせてご覧ください。

会食の席で、いつものようにステーキナイフを入れた瞬間、奥歯に走る違和感。鏡を見ると歯茎が少し赤く腫れている気がするけれど、痛みはそれほどない。「少し疲れているだけだろう」と自分に言い聞かせ、そのまま予定をこなしていく――。多忙なビジネスパーソンの日常では、こうした「小さな異変」は見過ごされがちです。

しかし、歯のグラつきは身体が発する明確な警告です。自然に治ることはなく、放置すればするほど取り返しのつかない事態へと進行していきます。「まだ大丈夫」という判断が、数ヶ月後に「抜歯しかない」という宣告に変わる現実を、私たちは数多く目にしてきました。

グラつく歯が物語る「骨の崩壊」という現実

歯がグラグラするという症状は、多くの場合、歯を支える骨が溶けてしまっている状態を意味します。歯は歯槽骨という顎の骨に支えられており、その周囲を歯根膜という繊維が取り囲んでいます。健康な状態では、この骨と繊維によって歯はしっかりと固定され、硬いものを噛んでも微動だにしません。

ところが歯周病が進行すると、歯と歯茎の境目に細菌の塊であるプラークが蓄積し、炎症を引き起こします。この炎症が深部に達すると、骨を溶かす破骨細胞が活性化され、文字通り歯槽骨が「溶けて」いくのです。骨の支えを失った歯は、次第に揺れ始めます。グラつきとは、目に見えない骨の崩壊が表面化した状態なのです。

2026年の最新研究では、歯周病菌が産生する毒素が骨代謝を直接阻害することが明らかになっており、炎症の持続が骨の再生能力を著しく低下させることが分かっています。つまり、放置すればするほど回復が困難になるということです。

歯周病以外にグラつきを引き起こす要因

歯周病が最も一般的な原因ですが、他にも複数の要因が考えられます。噛み合わせの異常によって特定の歯に過剰な力が集中すると、歯根膜が損傷してグラつきが生じることがあります。特に、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、就寝中に無意識のうちに強大な力を歯にかけており、これが慢性的なダメージとなります。

また、外傷や事故による衝撃も原因となり得ます。一見問題なさそうに見えても、内部で歯根にヒビが入っていたり、骨に微細な骨折が生じていたりする場合があります。さらに、根の先に膿が溜まる根尖性歯周炎や、歯根の吸収が起こる病態も、グラつきの原因となります。

歯周病専門医として多くの症例を診てきた経験から言えることは、グラつきの原因は単一ではなく、複数の要因が複雑に絡み合っているケースが大半だということです。だからこそ、精密な検査によって真の原因を特定することが、適切な治療への第一歩となります。

「まだ痛くないから大丈夫」という誤解が招く悲劇

歯周病の最も厄介な点は、初期から中等度の段階では痛みをほとんど感じないことです。虫歯のような鋭い痛みがないため、「緊急性はない」と判断してしまう方が非常に多いのです。しかし、痛みがないからといって進行していないわけではありません。むしろ、静かに、確実に骨は溶け続けています。

50代の経営者の方が来院されたときのことです。数ヶ月前から奥歯のグラつきを感じていたものの、痛みがなく多忙を理由に放置していました。受診時には既に骨の吸収が歯根の半分以上に及んでおり、保存が極めて困難な状態でした。「もっと早く来ていれば」という言葉を、私たちは何度も耳にしてきました。

痛みは身体の防御反応であり、組織の損傷を知らせるアラームです。しかし歯周病は、そのアラームが鳴らないまま静かに進行する「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」なのです。グラつきという症状が現れた時点で、既にかなりの進行段階にあると考えるべきです。

今すぐ歯科を受診すべき3つの緊急サイン

歯のグラつきに気づいたとき、「様子を見る」という選択肢はありません。特に以下の3つのサインが見られた場合は、48時間以内の受診を強く推奨します。これらは骨の崩壊が急速に進んでいる、あるいは急性の炎症が起こっている可能性を示す重要なサインです。 「「顔が変わった?」歯の喪失が引き起こす顔貌の変化と老化のサイン」もあわせてご覧ください。

サイン1|歯茎からの出血と膿の排出

歯磨きの際に歯茎から血が出る、あるいは歯と歯茎の境目を指で押すと膿のような白い液体が出てくる場合、歯周ポケット内で活発な炎症が起きています。膿は細菌と白血球の死骸であり、体内で激しい戦いが繰り広げられている証拠です。この状態を放置すると、炎症は骨にまで達し、骨吸収のスピードが加速します。

特に注意が必要なのは、膿に悪臭を伴う場合です。これは嫌気性菌という酸素を嫌う細菌が深いポケット内で増殖している兆候であり、骨破壊が進行している可能性が高い状態です。口臭が気になり始めた、朝起きたときに口の中が粘つくといった症状も、同時に現れることが多くあります。

サイン2|噛むときの痛みと違和感

食事中に特定の歯で噛むと痛い、あるいは鈍い違和感がある場合、歯根膜に炎症が及んでいるか、既に骨の支持が失われている可能性があります。健康な歯根膜はクッションのような役割を果たしますが、炎症によってこの機能が損なわれると、噛む力が直接骨に伝わり、痛みとして感じられるようになります。

また、グラつきのある歯で硬いものを噛み続けると、周囲の骨への負担がさらに増し、骨吸収が加速する悪循環に陥ります。「この歯では噛まないようにしている」という状況は、既に機能を失いつつあることを意味しており、早急な介入が必要です。 「「ボロボロの歯」が笑顔を奪う?自信喪失の悪循環を断ち切る一歩」もあわせてご覧ください。

サイン3|グラつきの進行と歯の位置の変化

グラつきの程度が日に日に増している、あるいは歯の位置が以前と変わってきたと感じる場合は、骨の吸収が急速に進んでいる可能性が高い状態です。前歯が少し前に出てきた、歯と歯の間に隙間ができてきたといった変化は、歯周病の進行によって歯を支える力が失われ、歯が移動し始めたサインです。

この段階になると、残された時間は限られています。適切な治療を行えば歯を残せる可能性がある一方で、さらに数週間放置すれば保存不可能になることも珍しくありません。グラつきの程度は歯科医師が専用の器具で測定し、動揺度として記録します。動揺度が増している場合、治療の緊急性は極めて高いと判断されます。詳しくは「歯がボロボロでも諦めないで! 歯科医が教える「ボロボロの歯」の誤解と真実」で解説しています。

放置したときに訪れる取り返しのつかない未来

グラつく歯を放置した場合、どのような経過をたどるのでしょうか。臨床の現場で私たちが目にしてきた現実をお伝えします。歯周病による骨吸収は、一度始まると自然に止まることはありません。むしろ、時間の経過とともに加速度的に進行していきます。

骨の喪失は連鎖する

一本の歯がグラグラし始めると、その歯で噛めなくなった分の負担が隣の歯に移ります。過剰な負担を受けた隣の歯も次第に骨の支持を失い始め、グラつきが隣接歯へと波及していきます。これは「局所的な問題」が「全体の崩壊」へと発展する典型的なパターンです。

特に奥歯を失うと、前歯に過剰な負担がかかり、前歯が前方に傾斜したり、隙間が開いたりする「フレアアウト」という現象が起こります。噛み合わせ全体のバランスが崩れ、顎関節症や頭痛、肩こりといった全身症状にも繋がっていきます。詳しくは「「ボロボロの歯」が原因かも? 顎の痛み・頭痛・肩こりを本気で治したいあなたへ」で解説しています。

全身疾患へのリスク

歯周病菌は口腔内にとどまりません。血流に乗って全身に運ばれ、心臓病、脳梗塞、糖尿病の悪化、誤嚥性肺炎など、多くの全身疾患のリスク因子となることが科学的に証明されています。2026年の疫学研究では、重度歯周病患者における心血管疾患の発症リスクが健常者の約2.1倍であることが報告されました。 「歯の痛みは氷山の一角? ボロボロの歯が招く全身病のリスクと対策」もあわせてご覧ください。

特に糖尿病との関係は双方向的です。歯周病が糖尿病を悪化させ、糖尿病が歯周病を悪化させるという負のスパイラルが形成されます。50代以降のエグゼクティブ層にとって、これらの全身疾患はキャリアやQOLに直接影響する重大な問題です。口腔内の小さな炎症が、人生の質を大きく左右する事態へと発展しうるのです。

審美的・社会的影響

歯を失うことは、単なる機能の喪失にとどまりません。人前で話すことに自信がなくなる、笑顔を見せることを避けるようになる、会食の場で食べ物を選ばざるを得なくなる――こうした変化は、ビジネスパーソンとしてのパフォーマンスや人間関係に深刻な影響を及ぼします。

60代の役員の方が「大事なプレゼンの前に前歯が抜けてしまい、人前に出られなくなった」と駆け込んで来られたことがあります。その方は数年前からグラつきに気づいていたものの、「いつか治療しよう」と先延ばしにしてきた結果でした。失った信頼や機会は、どれだけお金をかけても取り戻せません。

自宅でできる応急対処と絶対にやってはいけないこと

歯科受診までの間、あるいは予約が数日先になってしまう場合に、自宅でできる応急対処法をお伝えします。ただし、これらはあくまで一時的な対症療法であり、根本的な解決にはなりません。必ず専門医の診察を受けることを前提として、実践してください。

適切な口腔ケアで炎症を最小限に抑える

グラつきのある歯の周囲は、炎症が起きている可能性が高い状態です。まずは柔らかい毛の歯ブラシを使い、優しく丁寧にブラッシングしてください。力を入れすぎると歯茎を傷つけ、かえって炎症を悪化させる原因になります。歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、小刻みに動かす「バス法」が効果的です。

歯間ブラシやデンタルフロスも重要です。歯と歯の間には歯ブラシが届かず、プラークが残りやすい部位です。グラつきのある歯の周囲は特に慎重に、しかし確実に清掃してください。ただし、歯間ブラシのサイズが合わない場合や、無理に通そうとすると歯茎を傷つけるため、不安があれば歯科衛生士の指導を受けることをお勧めします。

抗菌性のマウスウォッシュも補助的に有効です。クロルヘキシジンやCPC(塩化セチルピリジニウム)を含む製品は、細菌の増殖を抑える効果があります。ただし、これらはあくまで補助であり、物理的なプラーク除去の代わりにはなりません。

炎症を悪化させない生活習慣

刺激物の摂取は控えてください。辛いもの、熱すぎるもの、冷たすぎるものは、炎症部位に刺激を与え、痛みや腫れを増悪させます。アルコールも血管を拡張させ、炎症を助長する可能性があるため、受診までは控えることが賢明です。

喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つです。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、歯茎への血流を阻害します。その結果、免疫機能が低下し、細菌に対する抵抗力が弱まります。また、喫煙者の歯周病は進行が速く、治療に対する反応も悪いことが知られています。グラつきを感じた時点で、禁煙を真剣に検討すべきタイミングです。

十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事も重要です。免疫力が低下していると、細菌感染が拡大しやすくなります。特にビタミンCやビタミンD、カルシウムは歯周組織の健康維持に欠かせない栄養素です。ストレスも免疫力を低下させる要因となるため、可能な範囲でリラックスできる時間を確保してください。

絶対にやってはいけない危険な対処

グラグラする歯を指や舌で触り続けることは、絶対に避けてください。揺らすことで骨への負担が増し、骨吸収がさらに進行します。また、細菌が深部に押し込まれ、感染が広がるリスクもあります。気になる気持ちは理解できますが、触れば触るほど状態は悪化します。

市販の鎮痛剤を長期間服用し続けることも危険です。痛みは身体からの警告信号であり、鎮痛剤で一時的に抑えても根本原因は解決しません。痛み止めを飲んで安心し、受診を先延ばしにした結果、抜歯を余儀なくされたケースを何度も見てきました。痛みがある場合は、鎮痛剤に頼るのではなく、速やかに歯科を受診してください。

インターネット上には様々な民間療法や「自然治癒」を謳う情報が溢れていますが、歯周病による骨の吸収は自然には治りません。科学的根拠のない方法に時間を費やすことは、貴重な治療のタイミングを逃すことに繋がります。信頼できる専門医の診断を受けることが、最も確実な道です。詳しくは「歯医者が怖くて行けないあなたへ。「怒られない歯科」を見つけるための5つの具体的なチェックポイント」で解説しています。

歯周病専門医が行う精密検査と診断

グラつきのある歯を本当に救えるかどうかは、精密な検査と正確な診断にかかっています。当院では、デンタルドックと呼ぶ包括的な検査システムを通じて、「なぜグラついているのか」「どこまで進行しているのか」「残せる可能性はどの程度あるのか」を科学的に評価します。

歯周ポケット検査と骨の状態の可視化

歯周ポケットの深さを専用の器具(プローブ)で測定します。健康な歯茎のポケットは1〜3mm程度ですが、歯周病が進行すると4mm以上、重度では10mmを超えることもあります。ポケットが深いほど、骨の吸収が進んでいることを意味します。

レントゲン撮影、特にCT撮影によって、骨の吸収状態を三次元的に把握します。通常のレントゲンでは平面的な情報しか得られませんが、CTでは骨の厚みや形態、吸収の範囲を立体的に確認できます。これにより、治療の可否や適切な治療法の選択が可能になります。

40代の女性の方が「奥歯がグラグラする」と来院されました。他院では「抜歯しかない」と言われたとのことでしたが、CT検査の結果、骨の吸収は一部に限局しており、歯周組織再生療法によって保存できる可能性があることが分かりました。精密な診断が、歯を残すチャンスを生み出すのです。詳しくは「「抜歯しかない」と診断された歯を残せた人が実践した3つのセカンドオピニオン選択肢」で解説しています。

細菌検査と全身状態の評価

歯周病は細菌感染症です。どの種類の細菌が、どの程度存在しているのかを調べる細菌検査(PCR法や位相差顕微鏡検査)を行うことで、より的確な治療戦略を立てることができます。特定の歯周病菌に対しては、抗菌薬の併用が有効な場合もあります。

また、糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患が歯周病に影響を与えることがあるため、必要に応じて内科との連携や血液検査の実施も検討します。全身の健康状態を踏まえた包括的なアプローチが、治療の成功率を高めます。

噛み合わせと力のコントロール

グラつきの原因が歯周病だけでなく、噛み合わせの異常による過剰な力にある場合、力のコントロールが不可欠です。咬合検査(噛み合わせの検査)を行い、どの歯に過剰な負担がかかっているのかを特定します。

必要に応じて、噛み合わせの調整やナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)の製作を行います。歯ぎしりや食いしばりによる力は、想像以上に強大であり、これをコントロールしなければ、どれだけ歯周病治療を行っても歯は守れません。細菌のコントロールと力のコントロール、この両輪が揃って初めて、歯を長期的に保存できるのです。 「ボロボロの歯でも大丈夫。泉岳寺駅前歯科クリニックが初めての方へご案内する、カウンセリングから検査までの流れ」もあわせてご覧ください。

グラつく歯を残すための根本治療の選択肢

精密検査の結果を基に、グラつく歯を残すための治療戦略を立てます。歯周病専門医として、私たちが実際に行っている治療法をご紹介します。重要なのは、「対症療法」ではなく「根本治療」であるという点です。

THP(トータルヘルスプログラム)による細菌のリセット

THPとは、口腔内の細菌を徹底的に除去し、健康な状態にリセットするプログラムです。歯周病は細菌感染症であるため、原因菌を取り除かなければ根本的な解決にはなりません。通常の歯石除去だけでは不十分であり、歯周ポケット深部に潜む細菌まで確実に除去する必要があります。

THPでは、専用の超音波機器や手用器具を用いて、歯根面に付着した歯石やバイオフィルム(細菌の膜)を丁寧に取り除きます。場合によっては、歯茎を一部切開して直視下で徹底的に清掃する「フラップ手術」を行います。これにより、深いポケット内部まで確実にアプローチできます。

50代の経営者の方が、複数の歯のグラつきで来院されました。THPによる徹底的な細菌除去と、後述する歯周組織再生療法を組み合わせた結果、6ヶ月後にはグラつきが大幅に改善し、硬いものも噛めるようになりました。「もっと早く専門医に相談すればよかった」と言われたことが、今でも印象に残っています。

歯周組織再生療法で失った骨を取り戻す

歯周病によって失われた骨や歯茎は、適切な処置によって再生させることが可能です。エムドゲイン®やリグロス®といった歯周組織再生材料を用いることで、骨の再生を促進します。これらは成長因子を含み、体が本来持っている治癒能力を最大限に引き出す治療法です。

具体的には、歯茎を切開して歯根面を露出させ、徹底的に清掃した後に再生材料を塗布し、骨の再生を待ちます。数ヶ月から半年程度で骨が再生し、歯の支持が回復します。ただし、すべての症例で再生できるわけではなく、骨の吸収の形態や範囲、患者様の全身状態によって適応が決まります。

また、骨の量が大幅に不足している場合には、骨造成(GBR)という方法も選択肢となります。これは、人工骨や自家骨を移植し、特殊な膜で覆うことで骨の再生を誘導する高度な技術です。インプラント治療と組み合わせることで、失った歯の機能を完全に回復させることも可能です。詳しくは「「ボロボロの歯」を根本から治すために!総合歯科で安心を取り戻す「賢い選び方」」で解説しています。

メインテナンスという「一生の習慣」

どれだけ優れた治療を行っても、その後のメインテナンスがなければ再発は避けられません。歯周病は慢性疾患であり、「治った」のではなく「コントロールされた状態」を維持し続けることが重要です。治療後は、3〜4ヶ月ごとの定期的なメインテナンスによって、細菌の再増殖を防ぎます。

メインテナンスでは、歯科衛生士が専用の器具を用いてプラークや歯石を除去し、歯周ポケットの状態をチェックします。また、ご自宅でのセルフケアが適切に行えているかを確認し、必要に応じてブラッシング指導を行います。このプロフェッショナルケアとセルフケアの両輪が、長期的な健康維持の鍵となります。

「メインテナンスに時間を取られたくない」と思われるかもしれません。しかし、定期的なメインテナンスによって大きなトラブルを未然に防ぐことができれば、結果的に生涯で歯科医院に費やす時間とコストは最小限に抑えられます。これは、時間対効果(タイパ)を重視するエグゼクティブにとって、最も賢明な投資と言えるでしょう。詳しくは「「ボロボロの歯」の治療期間の現実:3ヶ月?半年?重度の虫歯・歯周病を治すための【時間と根気】」で解説しています。

「残す」と「抜く」の境界線をどう見極めるか

歯周病専門医として最も難しい判断の一つが、「この歯を残すべきか、抜くべきか」という決断です。私たちは常に、「残せる可能性がある限り最善を尽くす」という姿勢で臨みますが、同時に「無理に残すことが他の歯や全身の健康を損なう」場合もあることを理解しています。

保存の可能性を科学的に評価する

歯を残せるかどうかの判断には、複数の基準があります。骨の吸収が歯根の長さの3分の2を超えている場合、長期的な保存は困難であることが多いとされています。また、歯根が縦に割れている(歯根破折)場合や、根の先に大きな病巣がある場合も、保存が難しいケースです。

しかし、これらはあくまで一般的な基準であり、個々の患者様の状態によって判断は変わります。全身状態が良好で免疫力が高い方、メインテナンスを確実に継続できる方であれば、一般的には難しいとされるケースでも保存できる可能性があります。逆に、全身疾患がコントロールできていない場合や、通院が困難な場合は、早期の抜歯と機能回復を選択することが最善となることもあります。

「抜歯」も一つの根本治療という考え方

抜歯は決して「失敗」や「諦め」ではありません。感染源となっている歯を除去し、周囲の健康な歯や骨を守るための積極的な選択です。無理に残した結果、隣接歯まで失うことになれば、それこそ取り返しのつかない事態です。

60代の女性の方が、他院で「何とか残しましょう」と治療を続けていたグラグラの奥歯について相談に来られました。精密検査の結果、その歯は既に保存不可能な状態であり、周囲の骨にも感染が広がっていました。抜歯後にインプラントと歯周組織再生療法を組み合わせた治療を行い、半年後には健康な口腔環境を取り戻すことができました。「もっと早く決断していれば、周囲の骨も守れたかもしれない」というのが正直な思いでした。

大切なのは、「歯を残すこと」ではなく「機能と健康を取り戻すこと」です。そのための最善の方法が保存であれば保存を、抜歯とインプラントであればそれを選ぶ。科学的根拠に基づいた冷静な判断が、長期的な成功に繋がります。

グラつきを予防するために今日からできること

最後に、グラつきを予防し、一生自分の歯で噛み続けるために、今日からできることをお伝えします。歯周病は生活習慣病であり、日々の積み重ねが未来を決めます。

正しいセルフケアの習慣化

歯ブラシだけでは、歯と歯の間のプラークは60%程度しか除去できません。デンタルフロスや歯間ブラシを毎日使うことで、除去率を90%以上に高めることができます。忙しい毎日の中でも、就寝前の5分間だけは丁寧なケアの時間として確保してください。

また、電動歯ブラシの活用も効果的です。適切に使用すれば、手磨きよりも効率的にプラークを除去できます。ただし、使い方を誤ると歯茎を傷つける原因になるため、歯科衛生士の指導を受けることをお勧めします。

定期検診という最強の予防策

どれだけ丁寧にセルフケアを行っても、100%のプラーク除去は不可能です。また、自覚症状のない初期の歯周病や虫歯は、専門家でなければ発見できません。3〜6ヶ月ごとの定期検診とプロフェッショナルクリーニングによって、問題を早期に発見し、最小限の介入で健康を維持できます。

「症状がないのに歯医者に行くのは時間の無駄」と考える方もいるかもしれません。しかし、症状が出てから治療する「対症療法」よりも、症状が出る前に予防する「予防医療」の方が、はるかに時間的・経済的・身体的な負担が少ないのです。年に2〜3回の定期検診が、将来の大規模な治療を回避する最も確実な方法です。

生活習慣の見直しと全身の健康

禁煙、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理――これらは歯周病予防にとっても極めて重要です。口腔内の健康は全身の健康と密接に関連しており、切り離して考えることはできません。

特に糖尿病の管理は重要です。血糖値が高い状態では、歯周病が悪化しやすく、治療に対する反応も悪くなります。逆に、歯周病治療によって血糖コントロールが改善することも報告されています。内科と歯科が連携し、全身と口腔の両面から健康を支えることが、これからの医療のあるべき姿です。

歯のグラつきは、単なる「老化現象」ではありません。細菌と力という明確な原因があり、適切な介入によって改善できる症状です。大切なのは、「まだ大丈夫」という楽観ではなく、「今のうちに」という行動です。専門医による精密な診断と、科学的根拠に基づいた治療が、あなたの歯を守ります。

よくある質問

歯がグラグラするのですが、痛みがなければ放置しても大丈夫ですか?

痛みがなくても放置は危険です。歯周病は初期から中等度の段階では痛みをほとんど感じませんが、その間も骨の吸収は進行しています。グラつきという症状が現れた時点で、既にかなりの進行段階にあると考えるべきです。早期に歯科を受診し、精密検査を受けることを強く推奨します。

グラつく歯を指や舌で触ってしまうのですが、問題ありますか?

絶対に避けてください。揺らすことで骨への負担が増し、骨吸収がさらに進行します。また、細菌が深部に押し込まれ、感染が広がるリスクもあります。気になる気持ちは理解できますが、触れば触るほど状態は悪化するため、意識的に触らないようにしてください。

他院で「抜歯しかない」と言われましたが、本当に残せないのでしょうか?

セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。歯周病専門医による精密検査とCT撮影によって、骨の状態を三次元的に評価することで、保存の可能性が見つかることがあります。歯周組織再生療法などの高度な治療技術を持つ専門医であれば、一般的には難しいとされるケースでも保存できる場合があります。

歯周病治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

症状の進行度によって大きく異なります。軽度から中等度の歯周病であれば、THPによる徹底的な細菌除去で3〜6ヶ月程度で改善が見られることが多いです。重度の場合や歯周組織再生療法を行う場合は、半年から1年程度かかることもあります。ただし、治療後もメインテナンスを継続することが不可欠です。

歯周病は遺伝するのでしょうか?

歯周病そのものが遺伝するわけではありませんが、歯周病にかかりやすい体質(免疫応答のパターンなど)には遺伝的要素があることが分かっています。家族に重度の歯周病の方がいる場合は、より注意深いケアと定期検診が重要です。ただし、適切な予防とメインテナンスによって、遺伝的リスクがあっても歯周病を防ぐことは十分可能です。

歯周病治療後、再発を防ぐために最も重要なことは何ですか?

定期的なメインテナンスとセルフケアの継続です。歯周病は慢性疾患であり、「治った」のではなく「コントロールされた状態」を維持し続けることが重要です。3〜4ヶ月ごとのプロフェッショナルクリーニングと、毎日の丁寧なブラッシング・歯間清掃を習慣化することで、再発を防ぎ、一生自分の歯で噛み続けることができます。

グラグラする歯でも硬いものを噛んで大丈夫ですか?

避けてください。グラつきのある歯で硬いものを噛むと、周囲の骨への負担がさらに増し、骨吸収が加速する悪循環に陥ります。受診までの間は、柔らかい食事を選び、グラつきのある歯に過剰な負担をかけないようにすることが重要です。噛む力のコントロールも治療の一環として、歯科医師の指導を受けてください。

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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