「糖尿病」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?目の合併症(網膜症)、腎臓の合併症(腎症)、神経の合併症(神経障害)など、体への影響はよく知られています。しかし、あなたの口の中に潜む「歯周病」が、実は糖尿病のコントロールを大きく左右し、全身の健康を脅かす「第六の合併症」とも呼ばれるほど深刻な関係にあることをご存じでしょうか?
一見、関係なさそうに見えるこの二つの病気ですが、近年、その密接な関係が多くの研究で明らかになっています。歯周病は単なるお口のトラブルではありません。あなたの糖尿病治療の効果を下げ、さらなる合併症のリスクを高める「危険な関係」にあるのです。
この記事では、なぜ糖尿病と歯周病が互いに悪影響を及ぼし合うのか、その複雑なメカニズムを分かりやすく解説します。そして、専門家が推奨する最新の対策を通じて、いかにこの悪循環を断ち切り、健康寿命を延ばすことができるのかを、エビデンスに基づきながら詳しくご紹介していきます。
1. 「隠れた合併症」?糖尿病と歯周病の意外な関係に迫る
1-1. 口腔内の異変は「全身のSOS」?なぜ糖尿病患者は歯周病になりやすいのか
あなたの口の中は、全身の健康状態を映し出す「鏡」と言われることがあります。特に糖尿病を患っている方にとって、口腔内の環境は歯周病の発症や進行に大きく影響を及ぼします。
なぜ糖尿病患者さんは歯周病になりやすいのでしょうか?主な理由は以下の3点です。
まず、高血糖状態が続くことによる免疫機能の低下です。血糖値が高いと、細菌と戦う体内の白血球(好中球など)の機能が低下することが報告されています[^1]。これにより、歯周病の原因菌に対する抵抗力が弱まり、わずかな細菌感染でも炎症が起こりやすく、かつ重症化しやすくなります。
次に、血管障害と血流の悪化です。糖尿病の代表的な合併症の一つに、全身の細い血管が傷つく「細小血管障害」があります。これは歯ぐきの血管にも影響し、血流が悪化します。その結果、歯周組織に必要な酸素や栄養の供給が滞り、老廃物の排出も悪くなります。健康な歯ぐきを維持するための基礎が損なわれるため、歯周病菌による攻撃を受けやすくなり、一度歯周病で傷ついた組織の修復も遅れてしまいます[^2]。
さらに、唾液の質の変化も関与します。糖尿病の症状として口が渇く「口渇」を感じる方がいますが、唾液量の減少は口腔内の自浄作用を低下させます。また、唾液中の糖濃度が上昇することもあり、これが歯周病菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまう可能性があります。
これらの要因が複合的に作用することで、糖尿病患者さんは歯周病の「落とし穴」にはまりやすくなっているのです。
1-2. 歯周病が血糖値を狂わせる?「第六の合併症」と呼ばれる理由とは
では、逆に歯周病が糖尿病にどのような影響を与えるのでしょうか?ここが、まさに「危険な関係」の核心であり、歯周病が「第六の合併症」と呼ばれる所以です。
歯周病は、歯ぐきの炎症が歯を支える骨まで溶かしてしまう慢性炎症性の病気です。この慢性的な炎症が、口腔内にとどまらず、全身に影響を及ぼすことが近年の研究で明らかになっています[^3]。
歯周病菌が歯周ポケット内で増殖し、その毒素や、体内で作られる「炎症性サイトカイン」(例:TNF-α、IL-6など)という物質が、血管を通じて全身に流れ出します[^4]。これらの炎症性サイトカインは、肝臓や脂肪細胞、筋肉などに作用し、インスリンの働きを妨げる「インスリン抵抗性」を引き起こすことが分かっています[^5]。
インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが、細胞に十分に作用しにくくなる状態のことです。インスリンが効きにくくなると、膵臓は血糖値を下げようと、より多くのインスリンを分泌しなければなりません。この状態が続くと、膵臓に負担がかかり、最終的にはインスリンの分泌能力が低下してしまうのです。
実際に、歯周病が重度であるほどHbA1c(過去1~2か月の平均血糖値を表す指標)の数値が悪化する傾向があるという報告も多数あります[^6]。これは、いくら糖尿病の薬を飲んでいても、歯周病という「炎症の火種」を抱えている限り、血糖値がなかなか安定しないという現実を示しています。
このように、歯周病は単なる口の病気ではなく、糖尿病の治療効果を阻害し、血糖値を乱す、全身に影響を及ぼす重要な合併症として認識されているのです。
2. なぜ互いに悪化させる?糖尿病と歯周病の「負の連鎖」を徹底解明
糖尿病と歯周病は、まるで手を取り合うかのように互いを悪化させ、あなたの健康を蝕んでいきます。この章では、なぜこのような「負の連鎖」が起こるのか、そのメカニズムをより深く掘り下げていきましょう。この悪循環を理解することが、健康寿命を延ばすための第一歩となります。
2-1. 糖尿病が高血糖で歯周病を悪化させるメカニズム
糖尿病によって血糖値が高い状態が続くことは、口腔内環境に多岐にわたる悪影響を及ぼし、歯周病の温床を作り出します。
まず、免疫機能の著しい低下が挙げられます。体内で細菌と戦う主要な細胞である白血球、特に好中球の機能が低下することが研究で示されています[^1]。これにより、歯周病の原因菌に対する抵抗力が弱まり、わずかな細菌感染でも炎症が広がりやすく、かつ重症化しやすくなります。さらに、免疫反応が過剰になり炎症が長引きやすいという、複雑な病態を呈することもあります。
次に、全身の血管障害が歯ぐきに及ぼす影響です。糖尿病の合併症として知られる細小血管障害が、歯ぐきの細い血管にも影響を及ぼすことを解説します。歯ぐきにある非常に細い血管にも及び、血流が悪化します。その結果、歯周組織に必要な酸素や栄養が十分に供給されなくなり、老廃物も蓄積しやすくなります。健康な歯ぐきを維持するための基礎が損なわれるため、歯周病菌の攻撃を受けやすくなり、一度炎症が起きると回復が極めて遅れるのです[^2]。
また、高血糖は歯周組織の主要な成分であるコラーゲンの代謝にも異常を引き起こします。歯周組織が脆弱になることで、物理的な刺激や細菌の活動に対して抵抗力が落ち、破壊されやすくなります。
さらに、糖尿病の症状としてよく見られる**口渇(口腔乾燥)**も、歯周病悪化の一因です。唾液は口腔内を洗い流し、細菌の増殖を抑える自浄作用を持っていますが、唾液が減少するとこの作用が低下します。加えて、唾液中のブドウ糖濃度が上昇することもあり、これが歯周病菌にとって栄養源となり、増殖をさらに助長してしまう可能性があります。
このように、糖尿病が引き起こす複合的な要因が、歯周病の進行を加速させる「口の中の落とし穴」を作り出しているのです。
2-2. 歯周病が炎症物質で糖尿病を進行させるメカニズム
歯周病は、歯ぐきに起こる局所的な炎症と見過ごされがちですが、その影響は口の中だけにとどまりません。慢性的な歯周病の炎症は、全身に波及し、糖尿病をさらに悪化させる強力な要因となります。
歯周病が進行すると、歯周ポケットの中で大量の歯周病菌が増殖し、その菌が持つ毒素や、体内で炎症を抑えようとして放出される炎症性サイトカイン(例: TNF-α、IL-6、CRPなど)といった様々な炎症性物質が、血液の流れに乗って全身に拡散されます[^3]。
これらの炎症性物質は、特にインスリンが作用する細胞(肝臓、脂肪細胞、筋肉など)に到達し、インスリンが細胞に糖を取り込ませる働きを妨げてしまいます。これが、いわゆる「インスリン抵抗性」の状態です[^5]。インスリンが正常に機能しなくなるため、膵臓は血糖値を下げようと、より多くのインスリンを過剰に分泌しなければならなくなります。この状態が長く続くと、膵臓は疲弊し、最終的にはインスリンの分泌能力が低下してしまい、血糖値はさらに不安定になります。
実際に、歯周病が重度になるほど、糖尿病の血糖コントロールを示す指標であるHbA1cの数値が悪化するという研究結果が多数報告されています[^6]。これは、いくら糖尿病の薬を飲んでいても、歯周病という「炎症の火種」を抱えている限り、血糖値がなかなか目標値に到達しない、あるいは悪化の一途をたどる可能性があることを意味します。
このように、歯周病は血糖コントロールを直接的に阻害し、糖尿病をさらに進行させる「全身へのサイレントアタック」を仕掛けているのです。
2-3. 【図解】断ち切りたい!糖尿病と歯周病の悪循環スパイラル
これまで解説してきたように、糖尿病と歯周病は、まさに「負の連鎖」を形成し、互いを悪化させ合う関係にあります。この複雑な関係を視覚的に理解することで、この悪循環を断ち切るための重要性がより明確になるでしょう。
(※ここに、糖尿病と歯周病の悪循環を示すフローチャートやイラストを挿入してください)
(図解の例:)
- 糖尿病(高血糖)
- ↓(免疫機能低下、血流悪化、唾液変化)
- 歯周病の悪化
- ↓(歯周病菌増殖、炎症性物質放出)
- 全身の炎症(インスリン抵抗性)
- ↓(インスリン作用低下)
- 糖尿病の悪化(高血糖の継続)
- ↑(悪循環のループ)
このスパイラルに陥ってしまうと、どちらか一方の治療だけでは、なかなか改善が見込めません。しかし、ご安心ください。この悪循環は「断ち切る」ことが可能です。次章では、この負の連鎖を止めるための具体的な最新対策について詳しく掘り下げていきます。
3. 【専門家が提唱】悪循環を断ち切る!今日から始める最新の予防と治療法
糖尿病と歯周病の「負の連鎖」を断ち切るためには、単にどちらか一方の病気だけを診るのではなく、両方を総合的に管理するアプローチが不可欠です。この章では、私たちが健康寿命を延ばすために、今日から始められる具体的な最新対策と、専門家が提唱する治療法について詳しく解説します。
3-1. 歯科医院で受けるべき「攻めの口腔ケア」
歯周病の治療と予防は、自己流のケアだけでは限界があります。特に糖尿病患者さんは、ご自身のリスクを理解し、「待つ」のではなく「攻める」姿勢で歯科医院を活用することが非常に重要です。
まず、最も基本となるのが**定期的な歯科検診とPMTC(専門的機械的歯面清掃)**です。歯周病の原因となる歯垢(プラーク)や歯石は、日々の歯磨きだけでは完全に除去することが困難です。歯科医院では、歯科衛生士が専用の器具を用いて、歯の表面や歯周ポケットの奥深くにこびりついたバイオフィルム(細菌の塊)を徹底的にクリーニングします。このPMTCは、歯周病菌の数を減らし、炎症を抑える上で非常に効果的です[^2]。糖尿病患者さんの場合、炎症が血糖値に与える影響が大きいため、3ヶ月から半年に一度の定期的なPMTCが推奨されることが多いです。
次に、歯周組織検査と個別指導の重要性です。歯科医師や歯科衛生士は、歯周ポケットの深さ、歯ぐきの状態、出血の有無、骨の吸収度合いなどを詳しく検査し、あなたの歯周病の進行度を正確に診断します。その診断に基づき、一人ひとりの口腔状態や歯磨きの癖、生活習慣に合わせたブラッシング指導を行います。市販の歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなど、効果的な清掃補助具の正しい使い方を学ぶことで、自宅でのセルフケアの質を飛躍的に高めることができます。
さらに、進行した歯周病に対しては、歯石除去を行う「スケーリング」や、歯根表面を滑らかにする「ルートプレーニング」といった基本的な治療から、必要に応じて「歯周外科治療」を行うこともあります。これらの専門的な治療によって、歯周病の原因を根本から取り除き、歯周組織の健康を取り戻すことが、糖尿病の安定にも繋がるのです。
3-2. 歯周病改善に直結!糖尿病の血糖値を安定させる生活習慣
歯周病を改善し、その悪循環を断ち切るためには、血糖値の安定が不可欠です。日々の生活習慣を見直すことが、薬物療法と同じくらい重要になってきます。
特に意識したいのが、「食後血糖値スパイク」を防ぐ食事の工夫です。食事によって血糖値が急激に上昇する「血糖値スパイク」は、血管への負担を増やし、インスリン抵抗性を悪化させます。これを防ぐためには、食事の際に野菜から先に食べる「ベジタブルファースト」を実践したり、血糖値が上がりにくい低GI(グリセミックインデックス)食品(例:玄米、全粒粉パン、そばなど)を積極的に取り入れたりすることが効果的です[^13]。また、バランスの取れた食事を心がけ、過度な糖質摂取を避けることも基本中の基本です。
次に、「継続できる」運動習慣の見つけ方も重要です。運動は、インスリンの働きを改善し、血糖値を下げる効果があります[^14]。ウォーキング、軽いジョギング、ストレッチなど、無理なく毎日続けられる運動を見つけることが大切です。特に食後に軽い運動を行うことは、食後の血糖値上昇を抑えるのに役立ちます。運動はストレス解消にも繋がり、それが間接的に血糖コントロールを助けることもあります。
そして何より、医師との密な連携と服薬遵守の徹底です。糖尿病の治療薬やインスリン注射は、医師の指示通りに正確に使用することが、血糖コントロールの基盤となります。自己判断で服薬を中断したり、量を調整したりすることは非常に危険です。かかりつけの内科医と定期的に話し合い、血糖値の目標設定や治療方針について積極的に関わることが、歯周病の改善にも繋がります。
3-3. 医科歯科連携がカギ!全身で治す「統合医療」のススメ
糖尿病と歯周病の悪循環を真に断ち切り、健康寿命を延ばすためには、歯科医と内科医が連携する**「医科歯科連携」**こそがカギとなります。これは、口の中と全身の健康を一体と捉える「統合医療」の考え方に基づいています。
医科歯科連携において、患者さん自身の役割も非常に重要です。あなたは、自身の健康情報を伝える「橋渡し役」です。例えば、歯科を受診する際には、ご自身の糖尿病の診断名、HbA1cの数値、現在服用している薬、合併症の有無などを正確に歯科医師に伝えましょう。逆に、内科を受診する際には、歯周病の診断状況、歯科での治療内容、口腔内の現在の状態などを内科医に共有することが求められます。この情報共有によって、それぞれの医師があなたの全身状態と口腔状態を総合的に把握し、より効果的な治療計画を立てることが可能になります[^15]。
医科歯科連携のメリットは計り知れません。歯科治療と糖尿病治療が並行して行われることで、相乗効果が期待でき、それぞれの治療効果が最大化されます。例えば、歯周病の炎症が治まることでインスリン抵抗性が改善され、糖尿病の薬が効きやすくなることもあります。これは、糖尿病の安定だけでなく、心臓病や腎臓病、脳卒中といった他の糖尿病合併症のリスク低減にも繋がり、結果としてあなたの健康寿命を飛躍的に延ばすことに貢献するでしょう。
実際に、医科歯科連携によって歯周病と糖尿病の両方が改善したケースは少なくありません。あなたの健康を「口」と「全身」の両方から守るために、ぜひ積極的に歯科と医科の連携を促してください。
4. 歯周病を克服し、糖尿病を改善へ!健康寿命を延ばす明るい未来
これまで、糖尿病と歯周病の「危険な関係」や「負の連鎖」について解説してきました。しかし、ご安心ください。この悪循環は、適切な知識と行動で「断ち切る」ことができます。そして、その先には、糖尿病の安定だけでなく、健康寿命を延ばし、人生をより豊かにする明るい未来が待っています。
4-1. 歯周病治療で糖尿病が改善?全身にもたらす驚きの好影響
歯周病治療が糖尿病の血糖コントロールに良い影響を与えることは、数多くの研究で示されています。歯周病の炎症が改善すると、体内で作られる炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)の量が減少します[^3]。これにより、インスリンが細胞に作用するのを妨げていた「インスリン抵抗性」が改善され、インスリンが効きやすい体へと変化していきます。
その結果、血糖値が安定しやすくなり、HbA1cの数値が改善することが期待できます[^6]。実際、歯周病治療によってHbA1cが平均で0.3〜0.4%改善したという報告もあります[^16]。これは、糖尿病の薬の量を減らせる可能性や、病気の進行を遅らせる可能性にも繋がり得る、非常に大きな成果です。
さらに、歯周病の改善は、糖尿病だけでなく、他の全身疾患のリスク低減にも繋がる「驚きの好影響」をもたらします。歯周病菌が血管に侵入し、全身に広がることで、動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めることが指摘されていますが[^17]、歯周病治療によってこれらのリスクも低減される可能性があります。
また、近年では**認知症(特にアルツハイマー型認知症)**と歯周病の関連性も注目されています[^18]。口腔内の慢性炎症が脳の健康に影響を及ぼす可能性が示唆されており、歯周病ケアが認知機能の維持にも寄与するかもしれません。腎臓病や呼吸器疾患など、他の全身疾患との関連性も研究されており、歯周病治療が全身の健康全体を底上げする「全身の健康投資」となることが分かります。
4-2. QOL(生活の質)が劇的に向上!「口元から始まる」健康と自信
歯周病を克服することは、数値の改善だけでなく、あなたのQOL(生活の質)を劇的に向上させます。その変化は、口元から始まり、日々の生活に大きな喜びをもたらすでしょう。
まず、食生活の改善と楽しみの回復です。歯ぐきの炎症や出血が治まり、歯がしっかりと安定することで、これまで避けていた硬いものや、お気に入りだった食べ物を再び楽しめるようになります。痛みや不快感なく食事ができることは、食べる喜びを取り戻し、全身への適切な栄養摂取にも繋がり、健康的な毎日を支えます。
次に、口臭の改善と自信の回復です。歯周病は、歯周ポケット内の細菌が原因で不快な口臭を引き起こすことが多いです。歯周病の治療が進めば、この口臭が劇的に改善されます。口臭の悩みがなくなることで、人との会話や笑顔に自信が持てるようになり、ストレスなく社会生活を送れるようになるでしょう。これは、精神的な健康にも大きく寄与します。
さらに、歯ぐきの腫れや赤みがなくなり、健康的なピンク色になるなど、口元の見た目が美しくなるという効果も期待できます。自信を持って笑顔を見せられるようになることで、積極的な人とのコミュニケーションや、趣味活動など、より充実した社会生活を送ることが可能になります。
口腔内の不快感がなくなることは、全身の活動意欲向上にも繋がります。運動など、糖尿病の管理に必要な生活習慣の改善にも、より前向きに取り組めるようになる可能性を示唆します。歯周病の克服は、あなたの「口」だけでなく、「心」と「体」全体に活力をもたらし、より豊かな人生を謳歌するための大切なステップとなるのです。
5. あなたの健康は口から始まる!今すぐ行動を起こす「健康革命」の第一歩
糖尿病と歯周病の「危険な関係」は、決して見過ごすことはできません。これまでの章で、互いに悪影響を及ぼし合う恐ろしい悪循環や、その背後にあるメカニズム、そしてそれを断ち切るための最新対策について詳しく解説してきました。しかし、大切なのは、これらの知識を「知っている」だけでなく、今日から行動を起こすことです。
あなたの口腔内の状態は、全身の健康、特に糖尿病のコントロールに深く関わっています。そして、その歯周病を適切に管理・治療することが、糖尿病を安定させ、さらには心臓病や認知症といった他の重篤な全身疾患のリスクを減らし、最終的にあなたの健康寿命を大きく延ばすことに繋がるのです。
考えてみてください。歯周病が改善されれば、痛みや出血なく食事がおいしく楽しめます。口臭の悩みから解放され、人前で自信を持って笑顔を見せられるようになるでしょう。これらは、単なる身体的な改善に留まらず、あなたのQOL(生活の質)を劇的に向上させ、人生をより豊かにする「口元から始まる」大きな変化です。
この「健康革命」への第一歩は、非常にシンプルです。まずは、かかりつけの歯科医院を受診し、現在の口腔内の状態を専門家に見てもらいましょう。症状がなくても、定期的な検診は、病気の早期発見と予防にとって非常に重要です。あなたの口は、全身の健康状態を映し出す「窓」であり、早期の介入が将来の大きな病気を防ぐ賢明な投資となります。
そして、ご自身の糖尿病の状況(HbA1cの値や服薬状況など)を歯科医師に正確に伝え、逆に歯周病の状況(治療内容や進行度など)を内科医に共有することも忘れないでください。医科と歯科が連携することで、あなたの全身と口腔の両方からアプローチする、最も効果的で統合的な治療計画が立てられます。
「まだ痛みがないから大丈夫」「忙しいから後回しでいい」そう思って、大切な体のサインを見過ごさないでください。歯周病は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行することが少なくありません。
私たちは、あなたの口腔と全身の健康を守るための最も信頼できるパートナーです。一歩踏み出す勇気を持って、あなた自身の「健康革命」を始めましょう。あなたの健康で豊かな未来は、まさにこの一歩から開かれるのです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 糖尿病と診断されたら、必ず歯周病の治療も必要ですか?
A1: はい、強く推奨されます。 糖尿病患者さんは、高血糖の影響で歯周病が進行しやすく、逆に歯周病が悪化すると血糖コントロールが難しくなる「悪循環」に陥るリスクが高いためです。自覚症状がなくても、口腔内のチェックと定期的なプロフェッショナルケアを受けることが、糖尿病管理と全身の健康維持において非常に重要です。
Q2: 歯周病を治療すれば、糖尿病は完治しますか?
A2: 歯周病治療によって糖尿病が「完治」するわけではありません。しかし、歯周病の炎症を抑えることで、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が改善され、血糖値が安定しやすくなることが多くの研究で報告されています。これにより、糖尿病の治療効果を高め、合併症のリスクを減らすことが期待できます。歯周病治療は、糖尿病治療を「サポートする重要な柱」と考えるべきです。
Q3: 糖尿病の薬を飲んでいれば、歯周病の治療は必要ないですか?
A3: いいえ、そのようなことはありません。糖尿病の薬を飲んでいても、歯周病という「慢性炎症の火種」が口腔内に存在すると、全身の炎症性物質が増加し、薬の効果を妨げてしまう可能性があります。実際に、歯周病が進行している患者さんでは、糖尿病治療薬の効果が十分に現れないケースも報告されています。薬物療法と並行して歯周病治療を行うことで、より効果的な血糖コントロールが期待できます。
Q4: 歯周病治療は痛いですか?どのくらいの期間がかかりますか?
A4: 歯周病の治療方法は、進行度によって異なります。初期段階であれば、痛みはほとんどなく、歯のクリーニング(PMTCやスケーリング)が中心となります。進行した歯周病の場合、麻酔を使用して痛みを感じないように治療を進めることが可能です。治療期間も個々の状態によりますが、初期であれば数回、重度の場合は数ヶ月から年単位で継続的なケアが必要となることもあります。まずは歯科医院でご自身の状態を診てもらい、具体的な治療計画について相談しましょう。
Q5: 糖尿病でも歯科治療中に注意することはありますか?
A5: はい、いくつか注意点があります。特に、抜歯や外科処置の際は、血糖値のコントロールが良好であることが重要です。また、治療中の感染リスクを抑えるために、歯科医師と内科医が連携し、あなたの全身状態や服薬状況(特に血糖降下薬や血液をサラサラにする薬など)を共有することが不可欠です。歯科医院を受診する際は、必ずご自身の糖尿病の状態を正確に伝えるようにしてください。
泉岳寺駅前歯科クリニックのご紹介:あなたの「かかりつけ歯科医」として
泉岳寺駅前歯科クリニックは、都営浅草線・京急本線「泉岳寺駅」からすぐの好立地に位置しています。さらに、JR高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良く、港区内外の多くの皆様にご利用いただいております。地域の皆様の口腔健康を支える「かかりつけ歯科医」として、日々診療を行っております。
当院では、虫歯や歯周病といった一般的な歯科治療はもちろんのこと、予防歯科、審美歯科、インプラント治療、小児歯科など、幅広い診療メニューに対応しております。特に、今回の記事で詳しくお伝えした糖尿病患者さんの歯周病治療にも力を入れており、全身の健康を考慮した包括的な歯科医療をご提供しています。
患者様一人ひとりのお口の状態やお悩みに真摯に耳を傾け、丁寧なカウンセリングを通じて、最適な治療計画をご提案することを大切にしています。清潔で快適な院内環境と、最新の医療設備を整え、安心して治療を受けていただけるよう心がけております。
全身の健康と口腔の健康が密接に関わっているという考えに基づき、患者様が生涯にわたってご自身の歯で美味しく食事をし、心からの笑顔で毎日を過ごせるよう、総合的な視点での歯科医療を提供しています。
お口のことで何か気になることがございましたら、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。泉岳寺駅前歯科クリニックは、地域の皆様の健康を「口元から」サポートすることをお約束いたします。
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