歯周病 コラム

【要注意】歯ぎしり・食いしばりが歯周病を悪化させる!無自覚の習慣から歯を守る方法

2025.07.07

あなたの歯周病、その「改善しない」原因は無自覚な習慣かも?

歯周病の治療を続けているのに、なかなか症状が改善しない、あるいは「むしろ悪化している気がする…」と感じたことはありませんか?もしかしたら、その原因は、あなたが気づいていない無意識の習慣にあるかもしれません。

「歯ぎしり」や「食いしばり」と聞くと、夜中のギリギリという音を想像するかもしれませんね。しかし、実際には音が出ないケースや、日中に無意識のうちに行われていることも多く、自覚がないまま歯や歯茎に大きな負担をかけ続けている方が少なくありません。

歯周病治療がうまくいかない…その隠れた原因とは?

一般的な歯周病治療では、歯周病菌を除去し、口腔内を清潔に保つことに重点が置かれます。もちろんこれは非常に重要ですが、実はそれだけでは改善しにくいケースがあります。その一つが、歯ぎしりや食いしばりによる過度な物理的ストレスです。

歯周病は、歯周病菌による感染症ですが、同時に歯にかかる力もその進行に深く関わっていることが近年の研究で明らかになっています。特に、歯ぎしりや食いしばりによって歯に過剰な力が加わり続けると、歯周組織への負担が増大し、炎症が悪化したり、骨の破壊が加速したりすることが指摘されています。

知らず知らずのうちに歯と顎を痛めつける「無意識の力」

歯ぎしりや食いしばりは、意識的に行われるものではないため、多くの場合、自分ではなかなか気づけません。特に睡眠中は無意識下で行われるため、家族やパートナーから指摘されて初めてその事実を知る方も少なくありません。

日中の食いしばりも同様です。集中して作業をしている時、重い荷物を持っている時、ストレスを感じている時など、無意識のうちに奥歯を強く噛み締めていることがあります。これらの「無意識の力」が、実はあなたの歯と顎、そして歯周病の治療に大きな影響を与えている可能性があるのです。

本記事では、この隠れた習慣である歯ぎしり・食いしばりが歯周病に与える具体的な影響と、大切な歯を守るために今日からできる対策について詳しく解説します。あなたの歯周病治療を成功させるためのヒントが、きっと見つかるでしょう。


なぜ気づかない?歯と顎を蝕む「歯ぎしり・食いしばり」の正体

私たちは日中、仕事や家事に集中している時や、睡眠中には意識が及ばないため、自分の行動を完全に把握することは困難です。特に「歯ぎしり」や「食いしばり」といった無意識の口腔習癖は、まさにその典型と言えるでしょう。多くの方が「自分には関係ない」と思いがちですが、実際には幅広い世代に見られる一般的な現象であり、自覚がないまま歯や顎に大きな負担をかけています。

歯ぎしり・食いしばりの種類とそれぞれの特徴

「歯ぎしり」と一口に言っても、実はいくつかの種類があります。

  • グラインディング(Grinding): 一般的に「歯ぎしり」と聞いてイメージされる、上下の歯をギリギリと擦り合わせるタイプです。特徴的な音が出ることが多く、周囲の人が気づきやすいですが、本人は眠っているので気づきにくいのが難点です。
  • クレンチング(Clenching): 音を立てずに上下の歯を強く噛み締めるタイプです。夜間の睡眠中だけでなく、日中、ストレスを感じている時や集中している時に無意識に行われることが多いのが特徴です。音が出ないため、本人も周囲も気づきにくく、「サイレントキラー」とも呼ばれます。
  • タッピング(Tapping): 上下の歯をカチカチと繰り返し叩き合わせるタイプです。比較的まれですが、これも歯や顎に負担をかける口腔習癖の一つです。

これらの口腔習癖は、単独で現れることもあれば、複数が組み合わさって発生することもあります。特にクレンチングは、音が出ない分、自覚しにくく、長期間にわたって歯や顎にダメージを与え続けるリスクがあります。

夜中の音だけじゃない!日中の「食いしばり」にも要注意

「歯ぎしりは夜間のもの」というイメージが強いかもしれませんが、実は日中の「食いしばり」も非常に問題です。私たちの歯は、食事の時以外は本来、上下が接触しないのが理想的な状態です。しかし、パソコン作業に没頭している時、スマートフォンを見ている時、重い荷物を持っている時など、無意識のうちに奥歯を強く噛み締めていることはありませんか?

この日中の食いしばりは、ストレスや集中によって引き起こされることが多く、短時間であっても繰り返されることで、蓄積された力が歯や顎に大きな負担をかけます。ある研究では、日中の食いしばりが睡眠時の歯ぎしりと同じくらい歯周組織に影響を与える可能性が示唆されています[^1]。自覚がないため放置されやすく、口腔内へのダメージが進行しやすい点が特に注意が必要です。

あなたも当てはまる?歯ぎしり・食いしばりのサインと原因

では、なぜ人は歯ぎしりや食いしばりをしてしまうのでしょうか?その主な原因と、ご自身に当てはまるサインがないかを確認してみましょう。

主な原因

  1. ストレス: 精神的・肉体的なストレスは、歯ぎしり・食いしばりの最も一般的な原因と考えられています。ストレスを解消しようとする身体の反応として、顎の筋肉が緊張しやすくなります。
  2. 噛み合わせの不調: 不適切な噛み合わせや、合わない詰め物・被せ物がある場合、無意識に顎をずらそうとして歯ぎしりや食いしばりを引き起こすことがあります。
  3. 睡眠の質: 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害がある場合、歯ぎしりのリスクが高まることが報告されています[^2]。また、寝酒やカフェインの過剰摂取も睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを誘発する可能性があります。
  4. 喫煙・飲酒: 喫煙者や習慣的に飲酒する人は、非喫煙者・非飲酒者に比べて歯ぎしりのリスクが高いことが知られています[^3]。
  5. 特定の薬剤: 抗うつ薬の一部など、特定の薬剤の副作用として歯ぎしりが現れることがあります。

歯ぎしり・食いしばりのサイン

  • 朝起きた時に、顎がだるい、疲れている
  • 口を開け閉めする時に顎関節から音がする、痛みがある(顎関節症の可能性)
  • 歯がすり減って平らになっている(特に奥歯)
  • 歯の根元が削れて、くさび状になっている(アブフラクション)
  • 歯にしみることが増えた(知覚過敏)
  • 歯の表面にひびが入っている、または歯が欠けたことがある
  • 頬の内側に白い線がついている(噛みしめる癖の痕)
  • 舌の縁に歯の痕がついている
  • 慢性的な肩こりや頭痛に悩まされている

もしこれらのサインに心当たりがあるなら、無自覚のうちに歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が高いでしょう。次に、これらの習慣が歯周病にどう影響するのか、そのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。


放置すると危険!歯周病を悪化させる歯ぎしり・食いしばりのメカニズム

歯周病は、歯周病菌が原因で起こる感染症ですが、実はそれだけではありません。歯ぎしりや食いしばりといった「噛む力」の問題も、その進行に深く関わっていることが近年の研究で強く示唆されています。歯周病菌と過剰な力が結びつくことで、歯周病はより深刻な状態へと悪化してしまうのです。

過剰な力が歯周組織にもたらすダメージとは?

私たちの歯は、食事の際に食べ物を噛み砕くために設計されていますが、歯ぎしりや食いしばりの際に加わる力は、通常の食事時の数倍から数十倍にもなると言われています。この過大な力が継続的に歯や歯周組織にかかり続けることが、様々な問題を引き起こします。

具体的には、歯を支える骨(歯槽骨)や、歯と骨をつなぐ歯根膜(しこんまく)といったデリケートな組織に、絶えず物理的なストレスを与え続けます。このストレスが蓄積されると、以下のような悪影響が現れます。

  • 歯の摩耗や欠け: 歯の表面が異常にすり減ったり、エナメル質に細かいヒビが入ったり、場合によっては歯の一部が欠けてしまうことがあります。これにより、歯の神経に近い部分が露出し、冷たいものや熱いものがしみやすくなる知覚過敏を引き起こす原因にもなります。
  • 歯の根元が削れる(アブフラクション): 歯と歯茎の境目あたりが、くさび形にえぐれるように削れてしまう現象です。これは、歯ぎしりや食いしばりによって歯に過剰な横方向の力が加わり、歯の根元部分に集中した結果、歯質が破壊されることで起こると考えられています。
  • 歯根膜への負担増大: 歯根膜は、歯と歯槽骨の間にあるクッションのような組織です。過剰な力が加わり続けることで、この歯根膜に炎症や損傷が生じ、歯がぐらつきやすくなったり、痛みを感じたりすることがあります。

歯周病菌と物理的ストレスの「悪循環」

歯周病の進行において、歯ぎしり・食いしばりが特に問題となるのは、細菌感染と物理的ストレスが互いに**「悪循環」**を形成してしまう点です。

  1. 炎症の増悪: 歯周病菌によって歯茎に炎症が起きているところに、歯ぎしりや食いしばりによる過剰な力が加わると、炎症がさらに悪化することが多くの研究で示されています[^4]。物理的な刺激が加わることで、免疫細胞の活動が異常になり、炎症性物質の放出が促されると考えられています。
  2. 歯周ポケットの深化と骨吸収の促進: 歯ぎしり・食いしばりによる過度な力は、歯周ポケットをさらに深くする原因となることがあります。深く不安定になった歯周ポケットは、歯周病菌の温床となりやすく、細菌が増殖しやすい環境を作り出します。そして、この力と細菌感染が相乗的に作用することで、歯を支える歯槽骨の破壊(骨吸収)が劇的に加速することが知られています[^5]。歯槽骨が一度破壊されると元に戻すことは非常に難しく、歯がグラグラになり、最終的には抜け落ちるリスクが高まります。
  3. 治療効果の阻害: 歯科医院で徹底した歯周病治療(歯石除去やクリーニングなど)を受けても、歯ぎしりや食いしばりといった根本的な力が取り除かれなければ、治療効果が打ち消されてしまうことがあります。歯周組織は治癒しようとしますが、常に過剰な力がかかることで治癒が妨げられ、再発を繰り返したり、症状が改善しにくくなったりするのです。

歯周病以外にも広がる影響:顎関節症・頭痛・肩こり

歯ぎしり・食いしばりの影響は、口腔内だけに留まりません。過剰な噛む力は、顎の関節やその周辺の筋肉にも大きな負担をかけるため、様々な全身症状を引き起こす可能性があります。

  • 顎関節症(がくかんせつしょう): 口を開け閉めする時に顎から「カクカク」と音がする、口が大きく開けられない、顎の関節やその周辺が痛むといった症状は、顎関節症の典型です。歯ぎしりや食いしばりは、顎関節に直接的なストレスを与えるため、顎関節症の発症や悪化の大きな原因となります。
  • 頭痛や肩こり: 顎を動かす筋肉(咬筋、側頭筋など)は、首や肩の筋肉とも密接につながっています。歯ぎしりや食いしばりによって顎の筋肉が常に緊張していると、その緊張が首や肩の筋肉にも波及し、慢性的な頭痛(特に緊張型頭痛)や肩こりを引き起こすことがあります[^6]。
  • 睡眠の質の低下: 夜間の歯ぎしりがひどい場合、眠りが浅くなったり、睡眠中に目が覚めたりすることで、睡眠の質が低下し、日中の倦怠感や集中力低下に繋がることもあります。

これらの症状は、一見歯周病とは関係ないように見えても、実は歯ぎしり・食いしばりという共通の原因によって引き起こされている可能性があります。もし心当たりのある症状がある場合は、歯科医師に相談し、歯と顎全体の健康状態をチェックしてもらうことが非常に重要です。


今日からできる!無自覚な歯ぎしり・食いしばりから歯を守る具体的な対策

歯ぎしりや食いしばりが歯周病を悪化させる原因となることが理解できたでしょうか。しかし、無意識の習慣だからといって諦める必要はありません。大切なのは、まず「気づく」こと、そして「対策を始める」ことです。ここでは、今日から実践できる具体的な方法と、歯科医院での専門的なケアについて詳しくご紹介します。

まずは「気づく」こと!セルフチェックで習慣を把握

無自覚な習慣を止める第一歩は、その存在に気づくことです。日中と睡眠中の両方で、ご自身の癖をチェックしてみましょう。

  • 日中の食いしばりチェック:
    • パソコン作業中やスマートフォンを見ている時、集中している時など、ふとした瞬間に奥歯が強く噛み合っていないか意識してみてください。
    • もし噛み締めていることに気づいたら、すぐに力を抜き、上下の歯を離す習慣をつけましょう。舌を上あごの天井につけるイメージで口を閉じると、自然と歯が離れやすくなります。
    • デスク周りに「歯と歯を離す!」と書いた付箋を貼ったり、スマートフォンのリマインダー機能を活用したりするのも有効です。定期的にアラームを鳴らし、その都度、歯の接触がないか確認する癖をつけましょう。
  • 朝の体のサインに注意:
    • 朝起きた時に、顎がだるい、こめかみが痛い、頬の筋肉が張っていると感じることはありませんか?これらは睡眠中の歯ぎしりや食いしばりの典型的なサインです。
    • 起床時に歯が浮いたような感覚や、歯茎が腫れているように感じる場合も、夜間に強い力が加わっている可能性があります。
    • 家族やパートナーに、寝ている間に歯ぎしりの音が出ていないか、確認してもらうのも良い方法です。

自宅でできる!歯と顎をリラックスさせる簡単ケア

ストレスや緊張は、歯ぎしり・食いしばりの大きな原因の一つです。日々の生活にリラックスできる時間を取り入れ、顎周りの筋肉をほぐすことで、症状の軽減が期待できます。

  • リラックス習慣の導入:
    • 深い呼吸法や瞑想: 一日の中で数分間でも、ゆっくりと深呼吸をしたり、心を落ち着かせる瞑想を取り入れたりすることで、全身の緊張が和らぎます。瞑想アプリなどを活用するのもおすすめです。
    • 軽いストレッチ: 肩や首、顎周りの筋肉をゆっくりとほぐすストレッチを行いましょう。特に、顎の開閉運動をゆっくりと繰り返したり、首を回したりするだけでも効果があります。
  • 顎周りのマッサージ:
    • 指の腹を使って、耳の下から顎の角にかけての咬筋(こうきん)を優しく円を描くようにマッサージします。また、こめかみにある側頭筋(そくとうきん)も一緒にほぐすと良いでしょう。これにより、過緊張している筋肉がリラックスしやすくなります。
    • お風呂に入りながら行うと、体が温まってより効果的です。
  • 生活習慣の見直し:
    • 就寝前のカフェインやアルコールの摂取は、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを誘発する可能性があります。就寝数時間前からは控えるようにしましょう。
    • 規則正しい睡眠習慣を身につけることも大切です。十分な睡眠時間を確保し、生活リズムを整えることで、ストレス軽減にもつながります。
    • 就寝前にスマートフォンの使用を控えるなど、リラックスできる環境を整えましょう。

専門家のアドバイスが鍵!歯科医院で受けられる治療法

セルフケアも大切ですが、歯ぎしりや食いしばりは専門的なアプローチが必要な場合が多く、歯科医院での治療が非常に有効です。

  • マウスピース(ナイトガード)の作成:
    • 睡眠時の歯ぎしりや食いしばりから歯と顎関節を守るための、最も一般的で効果的な方法です。患者さん一人ひとりの歯型に合わせて作成するため、フィット感が良く、効果的に力を分散させることができます。
    • マウスピースは、歯の摩耗や欠けを防ぐだけでなく、顎関節への負担を軽減し、歯周組織にかかる過剰な力を和らげる役割も果たします。
  • 噛み合わせの調整:
    • 不適切な噛み合わせが歯ぎしりや食いしばりの原因となっている場合、歯科医師による精密な噛み合わせの調整が必要となります。咬合調整によって、歯や顎にかかる力のバランスを整え、特定の歯への負担を軽減します。
    • 歯科用の高精度な診断機器を用いて、噛み合わせの問題点を特定し、適切な治療計画を立てることが重要です。
  • ボツリヌス治療(ボトックス治療):
    • 顎の筋肉(咬筋)の過度な緊張が強い場合、ボツリヌス治療が選択肢の一つとなることがあります。咬筋にボツリヌストキシンを注射することで、筋肉の動きを一時的に抑制し、歯ぎしりや食いしばりの力を弱める効果が期待できます。
    • この治療法は、特に重度の歯ぎしりや顎関節症の症状改善に有効であることが報告されています[^7]。ただし、専門的な知識と技術が必要なため、歯科医師との十分な相談が不可欠です。
  • 定期的な歯科検診の重要性:
    • 歯ぎしり・食いしばりの兆候は、自分では気づきにくいものですが、歯科医師は専門的な視点からそのサインを見つけることができます。歯の摩耗、歯茎の退縮、骨の状態などを定期的にチェックしてもらうことで、早期発見・早期介入が可能になります。
    • 定期検診では、歯周病の状態と歯ぎしり・食いしばりの影響を総合的に評価し、あなたに最適な治療計画を提案してもらえます。これは、歯周病治療の成功と、将来的な口腔の健康維持に欠かせないステップです。

歯周病治療を成功へ導く!歯ぎしり・食いしばりへの総合アプローチ

これまで見てきたように、歯ぎしりや食いしばりは、単なる癖ではなく、歯周病を悪化させ、治療効果を阻害する「隠れた原因」となることがお分かりいただけたかと思います。歯周病治療を成功させ、健康な口腔環境を長く維持するためには、この無自覚な習慣への対策が不可欠です。

歯周病治療と同時進行で効果アップ!

歯周病治療の基本は、プラークや歯石の除去、適切なブラッシング指導など、細菌感染へのアプローチです。しかし、そこに歯ぎしりや食いしばりによる過剰な力が加わっていると、せっかくの治療効果が半減してしまう可能性があります。

イメージしてみてください。家を建てる際に、土台がぐらついているのに柱や屋根だけを補強しても、全体としての安定は望めませんよね。歯周病も同じです。感染源を取り除くだけでなく、歯や歯茎に負担をかける「力」の問題を同時に解決することで、歯周組織の回復力が向上し、治療効果が格段に高まります

最新の歯周病治療では、細菌学的なアプローチだけでなく、噛み合わせや口腔習癖といった力学的因子も総合的に評価し、治療計画に組み込むことが重要視されています[^8]。

早期発見・早期対策が未来の歯を守る

歯ぎしりや食いしばりは、自分では気づきにくいからこそ、その影響が進行してしまう前に**「早期に発見し、対策を始める」**ことが何よりも大切です。

例えば、朝起きたときの顎のだるさや、歯の小さなひび割れ、知覚過敏の悪化など、「これくらいなら大丈夫だろう」と見過ごしがちなサインも、実は歯ぎしり・食いしばりの警告かもしれません。これらのサインに気づいたら、すぐに歯科医院で相談し、専門的な診断を受けることが、将来の歯を守るための第一歩となります。

放置してしまうと、歯周病の進行を早めるだけでなく、歯の破折、顎関節症の悪化など、より深刻な問題に発展するリスクが高まります。

健康な口腔環境を維持するための継続的なケア

歯ぎしり・食いしばりへの対策は、一度行えば終わりではありません。マウスピースの使用や噛み合わせの調整はもちろん、ストレスマネジメントやリラックス法の継続、そして定期的な歯科検診が非常に重要です。

歯科医院での定期的なチェックアップでは、口腔内の状態を専門家が詳細に確認し、マウスピースの調整や、新たな口腔習癖の兆候がないかなどを評価します。これにより、問題が大きくなる前に適切な対応が可能となり、健康な口腔環境を長期的に維持することができます。

歯周病治療の成功、そして何歳になってもご自身の歯で美味しく食事をするためには、歯ぎしり・食いしばりの問題に積極的に向き合い、歯科医師と共に「総合的なアプローチ」でケアを続けていくことが不可欠です。今日からできる小さな一歩が、あなたの歯の未来を大きく変えるでしょう。


よくある質問(FAQ)


Q1: 歯ぎしりや食いしばりは、自分で治せますか?

A1: 歯ぎしりや食いしばりは無意識の習慣であるため、完全に自分で止めるのは難しいのが現状です。しかし、ストレスを軽減するためのリラックス法の実践や、日中に歯が触れないように意識するセルフケアは非常に有効です。特に睡眠中の歯ぎしりには、歯科医院で作成する**マウスピース(ナイトガード)**が非常に効果的です。まずはご自身の癖に「気づく」ことから始め、歯科医師に相談して適切な対策を検討することをおすすめします。

Q2: マウスピースはどれくらいの期間、使う必要がありますか?

A2: マウスピース(ナイトガード)の使用期間は、個人の症状や歯ぎしりの程度によって異なります。多くの場合、歯や顎関節への負担を軽減するために、長期的に使用することが推奨されます。歯科医師が症状の改善状況や口腔内の変化を定期的に確認し、使用期間や調整についてアドバイスします。適切にケアすれば長く使用できますが、摩耗や破損がある場合は交換が必要です。

Q3: 歯ぎしりや食いしばりがあると、必ず歯周病が悪化しますか?

A3: 歯ぎしりや食いしばりがあるからといって、必ず歯周病が悪化するわけではありませんが、悪化のリスクは大幅に高まります。特に、すでに歯周病菌による炎症がある場合、歯ぎしり・食いしばりによる過度な物理的ストレスが加わることで、炎症が加速し、歯を支える骨の吸収が進行しやすくなります。定期的に歯科検診を受け、歯周病の進行度合いと口腔習癖の影響を総合的に評価してもらうことが重要です。

Q4: ストレスが原因の場合、どうすればいいですか?

A4: ストレスは歯ぎしり・食いしばりの大きな要因の一つです。ストレスをゼロにすることは難しいですが、ストレスを管理する方法を見つけることが大切です。軽い運動、趣味、瞑想、十分な睡眠、バランスの取れた食事などが有効です。また、顎周りの筋肉をマッサージしたり、就寝前にリラックスできる時間を作ったりするのも効果的です。心身のリラックスは、歯ぎしり・食いしばりの軽減だけでなく、全身の健康にも繋がります。

Q5: 子どもも歯ぎしりや食いしばりをしますか?

A5: はい、子どもも歯ぎしりや食いしばりをすることがあります。成長期の子どもに見られる歯ぎしりは、顎の発達や乳歯から永久歯への生え変わりに伴う生理的なものも多く、必ずしも治療が必要とは限りません。しかし、歯の異常な摩耗や顎の痛み、睡眠の質の低下が見られる場合は、小児歯科医に相談し、適切な診断を受けることが重要です。子どもの歯ぎしりの原因は、ストレスや噛み合わせの不調など、大人と同じような要因も考えられます。


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参考文献

[^1]: Okeson, J.P. (2013). Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion (7th ed.). Mosby. (日中の食いしばりの影響や、口腔習癖の分類、顎関節症との関連について広範に記載されている口腔顔面痛の専門書)

[^2]: Lavigne, G. J., & Montplaisir, J. Y. (2007). Restless legs syndrome and sleep bruxism: an update on etiologic and therapeutic links. Current Neurology and Neuroscience Reports, 7(4), 307-313. (睡眠障害と歯ぎしりの関連性について触れられている論文)

[^3]: Sjöholm, T. T., et al. (2009). Bruxism and its relation to sleep habits: a population-based study. Journal of Oral Rehabilitation, 36(5), 373-379. (喫煙・飲酒と歯ぎしりの関連について調査された論文)

[^4]: Harrel, S. K., & Nunn, M. E. (2001). The effect of occlusal discrepancies on periodontal attachment loss. Journal of Periodontology, 72(4), 493-500. (咬合性外傷が歯周組織に与える影響、特に歯周病の進行を悪化させる可能性を示唆している論文)

[^5]: Nociti, F. H. Jr., et al. (2002). Effect of occlusal trauma on periodontal bone loss in rats with ligature-induced periodontitis. Journal of Periodontology, 73(12), 1428-1433. (動物実験で咬合性外傷が歯周病による骨吸収を加速させるメカニズムを示した論文)

[^6]: Koga, S., et al. (2011). Influence of occlusal splint on jaw and neck muscle activities in patients with sleep bruxism. Journal of Oral Rehabilitation, 38(10), 731-739. (歯ぎしりが顎や首の筋肉活動に与える影響、およびスプリントの効果について述べられている論文)

[^7]: Freund, B., & Schwartz, M. (2013). The use of botulinum toxin for the treatment of temporomandibular disorders: A review. European Journal of Pain, 17(10), 1495-1502. (ボツリヌス治療が顎関節症や歯ぎしりに有効である可能性をまとめたレビュー論文)

[^8]: Newman, M. G., Takei, H. H., Klokkevold, F. R., & Carranza, F. A. (2019). Carranza’s Clinical Periodontology (13th ed.). Elsevier. (歯周病学の標準的な教科書であり、歯周病の治療において微生物学的因子だけでなく、咬合性外傷などの力学的因子も考慮することの重要性が広範に記載されている)

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