歯周病 コラム

歯並びが悪いと歯周病になりやすい?原因と対策で健康な口元を手に入れよう

2025.07.09

あなたの歯並び、もしかして「歯周病予備軍」かも?

鏡を見るたび、あなたの歯並びが気になっていませんか?「少しガタガタしているけれど、見た目だけの問題だろう」と軽く考えている方もいるかもしれません。しかし、そのデコボコ歯が、実は歯周病という深刻なお口のトラブルを引き起こす温床になっている可能性があるのをご存じでしょうか?

歯周病は、歯を支える骨が溶けてしまう恐ろしい病気です。初期には自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行していることがほとんどです。歯磨き中に歯茎から血が出る、口臭が気になる、歯茎が赤く腫れている、といったサインがあるなら、それは歯周病の初期症状かもしれません。そして、その原因の陰に、あなたの歯並びの乱れが潜んでいる可能性があるのです。

本記事では、なぜ歯並びが悪い歯周病になりやすいのか、その具体的な原因と、健康な口元を手に入れるための効果的な対策について詳しく解説していきます。見た目の美しさだけでなく、生涯にわたる歯の健康を守るために、ぜひ読み進めてみてください。


デコボコ歯が歯周病を招くメカニズム:磨き残しと噛み合わせの真実

歯並びが悪いと、なぜ歯周病になりやすいのでしょうか?その答えは、主に「磨き残し」と「噛み合わせの悪さ」という二つの要因に集約されます。それぞれのメカニズムを詳しく見ていきましょう。

歯ブラシが届かない!デコボコ歯が「磨き残し」を生む理由

あなたのデコボコ歯、例えば八重歯歯が重なり合っている(叢生)部分は、歯磨きの際に歯ブラシの毛先が非常に届きにくいことをご存じでしょうか。正常な歯並びであれば、歯ブラシを当てれば簡単に清掃できる場所も、デコボコしていると途端に難易度が上がります。

こうして磨き残された食べカスや細菌は、ネバネバとした塊である「歯垢(プラーク)」として歯の表面に付着します。歯垢は放置されると、唾液中のミネラルと結合して、硬い「歯石」へと変化してしまいます。一度歯石になってしまうと、もはや歯ブラシでは取り除くことができません。これは、歯周病の原因となる細菌にとって、まさに格好の住処となってしまうのです。

歯垢・歯石の温床に?歯周病菌が繁殖しやすい環境とは

歯垢や歯石の内部では、酸素を嫌う「嫌気性菌」と呼ばれる歯周病菌が活発に繁殖します。これらの細菌が出す毒素が、歯茎に炎症を引き起こすことで歯周病が始まります。初期の歯肉炎では、歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりといった症状が現れます。

そして、歯周病菌がさらに奥深くへと侵入すると、歯を支える骨である歯槽骨(しそうこつ)を徐々に破壊し始めます。これは、歯周病が進行すると歯がグラつき、最終的には抜け落ちてしまう主な原因です。日本臨床歯周病学会のデータ(2023年時点)によれば、歯周病は成人の8割が罹患しているとされており、その中でも歯並びの乱れは進行リスクを高める要因の一つとして広く認識されています。

意外な盲点!噛み合わせの悪さが歯周組織に与えるダメージ

歯並びの悪さは、清掃性の問題だけでなく、**噛み合わせ(咬合)**にも影響を及ぼします。不正咬合と呼ばれる悪い噛み合わせでは、特定の歯に過剰な噛む力が集中してしまうことがあります。例えば、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、その負担はさらに増大します。

歯に過度な力が繰り返し加わると、歯を支える骨や歯根膜(歯と骨をつなぐ膜)に継続的なストレスがかかります。このような外傷性咬合と呼ばれる状態は、歯周組織の抵抗力を低下させ、すでに存在する歯周病の進行を加速させたり、健康な歯周組織であっても歯周病になりやすい状態を作り出したりすることが報告されています(1)。

このように、デコボコ歯は単なる見た目の問題ではなく、磨き残しによる細菌の温床化と、噛み合わせの悪さによる歯周組織への負担という二重のメカニズムで、あなたの歯周病リスクを大きく高めているのです。


歯周病を防ぐ!今日から始める効果的な対策【セルフケアとプロの力】

デコボコ歯歯周病のリスクを高めることはご理解いただけたかと思います。しかし、ご安心ください。適切な対策を講じることで、歯周病は予防・改善が可能です。ここでは、ご自宅でできるセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアの重要性について解説します。

自宅で実践!デコボコ歯を磨き残さないブラッシングテクニック

歯並びが悪いと磨きにくいのは事実ですが、正しいブラッシングテクニックを習得すれば、磨き残しを大幅に減らせます。

まず、歯ブラシ選びから見直しましょう。ヘッドが小さく、毛先が細くて柔らかいものがおすすめです。これにより、デコボコした部分や歯と歯茎の境目にも毛先が届きやすくなります。最近では、手磨きでは難しい細かな振動で汚れを掻き出す電動歯ブラシも進化しており、効率的な歯垢除去に役立ちます。

次に、磨き方です。歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を45度の角度で当て、小刻みに優しく動かす「バス法」や「スクラビング法」が基本です。特に、歯が重なっている部分は歯ブラシを縦に使ったり、一本ずつ丁寧に磨いたりする意識が大切です。鏡を見ながら、磨き残しがないか確認する習慣をつけましょう。力を入れすぎると歯茎を傷つけたり、歯を削ってしまったりする原因になるため注意してください。

歯間ケアがカギ!デンタルフロス・歯間ブラシの正しい使い方

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは全体の約6割しか落とせないと言われています。残りの約4割の歯垢を除去するために不可欠なのが、デンタルフロス歯間ブラシといった歯間ケアグッズです。

デンタルフロスは、細い繊維を歯間に通して歯の側面についた歯垢を絡め取る道具です。適切な長さに切り取り、両手の指に巻き付け、歯と歯の間にゆっくりと挿入します。無理に押し込まず、ノコギリのように動かしながら優しく入れ、歯の側面に沿わせて上下に動かし、歯垢を掻き出しましょう。

歯間ブラシは、歯と歯の間の隙間に合わせてサイズを選びます。細いものから始め、無理なく挿入できるサイズを選んでください。歯間に入れ、数回前後に動かすことで、歯垢を効果的に除去できます。タフトブラシのような部分用ブラシも、特定の磨きにくい箇所に役立ちます。これらの補助清掃用具を毎日使う習慣をつけることで、歯周病予防効果が格段に高まります。

プロの力を借りる!定期検診とクリーニングで歯周病を徹底予防

ご自宅でのセルフケアも非常に重要ですが、それだけでは完全に歯周病を防ぎきることは困難です。なぜなら、歯ブラシでは取り除けない「歯石」があるからです。

歯科医院での定期的な歯科検診プロフェッショナルクリーニングは、歯周病予防に不可欠です。歯科医師や歯科衛生士は、口腔内の状態を専門的な目でチェックし、初期の歯周病の兆候を見逃しません。

専門機器を使った「スケーリング」では、歯にこびりついた歯石を徹底的に除去します。さらに「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」では、歯ブラシでは落としきれないバイオフィルム(細菌の膜)を専用の研磨剤と器具で除去し、歯の表面をツルツルに仕上げます。これにより、歯垢がつきにくい状態になり、歯周病菌の活動を抑えることができます。

もし歯周病が発見された場合でも、早期に治療を開始することで、歯の喪失を防ぎ、治療期間や費用を抑えることが可能です。日本歯周病学会は、歯周病の診断と治療において、専門家による定期的な管理の重要性を強調しています(2)。


根本解決!歯列矯正がもたらす歯周病予防効果とは?

これまで、デコボコ歯歯周病のリスクを高める理由と、日々のセルフケアや歯科医院でのプロフェッショナルケアの重要性について解説してきました。しかし、歯並びの悪さ歯周病の根本的な原因である場合、最終的な解決策として「歯列矯正」を検討することも非常に有効です。

歯並び改善で劇的変化!歯周病リスクを根本から減らすメカニズム

歯列矯正によって歯並びが整うと、口腔内の環境は劇的に改善されます。まず、歯ブラシデンタルフロスの毛先が歯の隅々まで届きやすくなるため、これまで磨き残していた部分の歯垢を効率的に除去できるようになります。これにより、歯周病菌の温床となる歯垢歯石の蓄積を大幅に抑制でき、歯周病の発生リスクを根本から低減させます。

さらに、噛み合わせ(咬合)が正常になることも大きなメリットです。不正咬合によって特定の歯に集中していた過剰な力が、歯列全体に均等に分散されるようになります。これにより、歯を支える歯周組織への負担が減少し、歯周病の進行を抑制し、健康な歯周組織を維持しやすくなります。日本矯正歯科学会も、歯列矯正が咀嚼機能の改善や歯周病予防に寄与することを認めており、口腔機能全体の向上に繋がるとしています。

矯正治療の種類と選択肢:あなたに合った治療法を見つけよう

歯列矯正には、様々な方法があります。ご自身のライフスタイルや歯並びの状態に合わせて、最適な選択肢を歯科医師と相談することが重要です。

  • ワイヤー矯正(ブラケット矯正):歯の表面に小さな「ブラケット」を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を少しずつ動かしていく、最も一般的な矯正方法です。様々な不正咬合に対応でき、確実な治療効果が期待できます。
  • マウスピース矯正(インビザラインなど):透明なプラスチック製のマウスピースを段階的に交換しながら歯を動かす方法です。目立ちにくく、取り外しができるため食事や歯磨きがしやすいというメリットがあります。近年では、最新のテクノロジーを駆使したデジタルプランニングにより、精度の高い治療が可能になっています。
  • 部分矯正や裏側矯正(舌側矯正):前歯など、一部の歯並びだけを整えたい場合は部分矯正が選択肢になります。また、歯の裏側に装置を取り付ける裏側矯正は、表からは見えにくいため、見た目を気にされる方に適しています。

どの矯正方法もメリットとデメリットがありますので、必ず歯科医院で専門医の診断を受け、ご自身の状況に合った治療計画を立ててもらいましょう。

矯正後のセルフケア:美しい歯並びと健康な歯周を長く保つ秘訣

歯列矯正歯並びが整った後も、その状態を維持するためには継続的なケアが不可欠です。

矯正治療が終了すると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」を防ぐために「保定装置(リテーナー)」を使用します。歯科医師の指示に従い、正しくリテーナーを装着することが、せっかく整った歯並びを長く保つための鍵となります。

そして何よりも大切なのが、日々の口腔ケアの継続です。歯並びが整ったことで、歯磨きは格段にしやすくなっています。この機会に、正しいブラッシング方法デンタルフロス歯間ブラシの使用を習慣化し、磨き残しゼロを目指しましょう。

もちろん、定期的な歯科検診もこれまで以上に重要です。プロの目で口腔内をチェックしてもらい、クリーニングを受けることで、歯周病の再発や虫歯を防ぎ、健康な口元を生涯にわたって維持することができます。矯正治療で得た美しい歯並びと健康な歯周組織を、未来へと繋げていきましょう。


歯並びと歯周病ケアで、健康な口元と未来を手に入れよう

これまでの解説で、歯並びの悪さ歯周病のリスクをいかに高めるか、そしてその原因と具体的な対策についてご理解いただけたかと思います。デコボコ歯による磨き残しの問題から、噛み合わせの負担、さらには歯列矯正による根本的な改善まで、多角的に健康な口元を目指す道筋を示してきました。

歯周病は、単にお口の中だけの問題ではありません。近年、歯周病菌が全身に影響を及ぼし、糖尿病の悪化、心血管疾患のリスク増加、さらには誤嚥性肺炎早産といった、様々な全身疾患との関連が指摘されています(3)。つまり、歯並びを整え、歯周病ケアを徹底することは、全身の健康を守ることに直結するのです。

美しい歯並びは、自信につながるだけでなく、歯周病予防という観点からも非常に重要です。そして、日々のセルフケア、歯科医院でのプロフェッショナルケア、さらに必要であれば歯列矯正という選択肢を組み合わせることで、あなたは健康な口元を維持し、豊かな未来を手に入れることができるでしょう。

もし、ご自身の歯並び歯茎の状態に少しでも不安を感じたら、迷わず歯科医院を受診してください。プロの診断を受け、あなたに最適な歯周病対策矯正治療について相談することが、健康な歯全身の健康を守るための最初の一歩となります。

今日から始める歯並び歯周病ケアが、あなたの明るい未来を支える強力な基盤となるはずです。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. 歯並びが悪いと必ず歯周病になりますか?

A1. 歯並びが悪いと歯ブラシが届きにくい部分が増え、磨き残しが生じやすくなるため、歯周病のリスクは高まります。しかし、必ずしも歯周病になるわけではありません。日々の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアを徹底することで、リスクを最小限に抑えることは可能です。心配な場合は、一度歯科医師にご相談ください。

Q2. 歯周病の治療中に矯正治療はできますか?

A2. 歯周病が進行している場合は、まず歯周病治療を優先し、炎症を抑えて歯茎や骨の状態を安定させることが一般的です。歯周組織が健康な状態に改善されてから、矯正治療を開始することが推奨されます。歯周病が活動している状態で矯正を行うと、歯周病が悪化するリスクがあるためです。必ず専門医と相談し、治療計画を立てましょう。

Q3. 歯列矯正をすれば、もう歯周病の心配はありませんか?

A3. 歯列矯正によって歯並びが整うと、歯磨きがしやすくなり、歯周病のリスクは大幅に低減されます。しかし、矯正治療後も歯周病菌がいなくなるわけではありません。健康な口内環境を維持するためには、矯正後の保定期間に加えて、日々の丁寧なセルフケアと、定期的な歯科検診・クリーニングを継続することが非常に重要です。


泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

当院「泉岳寺駅前歯科クリニック」は、東京都港区にございます。都営浅草線・京急本線「泉岳寺駅」A3出口から徒歩1分と、駅直結の便利な立地です。

また、JR山手線・京浜東北線「高輪ゲートウェイ駅」からは徒歩4分JR各線・京急線「品川駅」高輪口からも徒歩8分と、複数路線からのアクセスも良好です。

歯並びに関するお悩みや、歯周病でお困りの方はもちろん、口腔内の健康維持のための定期検診クリーニングも承っております。当院の院長は歯周病認定医の資格を有しており、専門的な知識と経験に基づいた丁寧な治療を提供しています。

患者様一人ひとりに寄り添い、最適な治療計画をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。皆様の健康な口元笑顔をサポートできるよう、スタッフ一同お待ちしております。


参考文献

[1] 日本歯周病学会. 歯周病の分類と診断の手引き 2018. Available from: https://www.perio.jp/publication/guideline/pdf/classification2018.pdf (最終閲覧日:2025年7月8日)

[2] 日本歯周病学会. 歯周病治療のガイドライン2023. Available from: https://www.perio.jp/publication/guideline/pdf/treatment2023.pdf (最終閲覧日:2025年7月8日)

[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット. 歯周病と全身の健康. Available from: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-005.html (最終閲覧日:2025年7月8日)


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