column 予防・セルフケア

電動歯ブラシ vs 手磨き:歯周病予防に効果的なのは?

2025.07.24

「毎日の歯磨き、本当にこれで合っているのかな?」

そう感じたことはありませんか?私たちは幼い頃から歯磨きの習慣を身につけますが、その「磨き方」が、お口の健康を大きく左右することをご存知でしょうか。特に、歯を失う主な原因として知られる歯周病の予防には、正しい歯磨きが欠かせません。

電動歯ブラシと手磨き、どちらが歯周病予防に効果的なのかを比較する前に、まずは歯磨きそのものの重要性、そして歯周病の基本的な知識を再確認しましょう。


歯磨きの基本を再確認!なぜ「磨き方」が重要なのか?

歯周病とは?そのメカニズムと進行を理解する

歯周病は、歯を支える歯茎や骨が炎症を起こし、最終的に破壊されてしまう病気です。初期段階ではほとんど自覚症状がないため、「サイレントキラー(静かなる病気)」とも呼ばれています。

歯周病の主な原因は、歯の表面や歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)に付着する**歯垢(プラーク)**です。歯垢は細菌の塊で、この細菌が出す毒素が歯茎に炎症を引き起こします。

歯周病の主なメカニズムと進行ステップ

  • ステップ1:歯肉炎(初期段階)
    • 歯茎が赤く腫れ、歯磨きで出血しやすくなります。この段階であれば、適切な歯磨きとプロフェッショナルケアで回復が可能です。
  • ステップ2:軽度歯周炎
    • 歯周ポケットが深くなり、歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶け始めます。
  • ステップ3:中等度歯周炎
    • 歯槽骨の破壊が進み、歯がぐらつき始めます。歯茎の腫れや出血が悪化し、口臭も気になるようになります。
  • ステップ4:重度歯周炎
    • 歯槽骨が大きく失われ、歯のぐらつきがさらに進行します。最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

日本の成人の約8割が歯周病にかかっている²と言われており、糖尿病や心疾患など、全身の健康にも影響を与えることが最新の研究で明らかになっています。歯周病の詳しい情報や進行については、当院の歯周病治療ページコラム『あなたの歯茎、何歳レベル?』、**『【要注意】歯周病の初期症状を見逃すな!』**でも詳しく解説しています。

歯周病予防における「歯垢除去」の決定的な役割

歯周病の進行を食い止める、あるいは予防する上で最も決定的な役割を果たすのが、歯垢(プラーク)の徹底的な除去です。歯垢は、歯周病菌の温床となる「細菌の塊」。この歯垢を毎日、物理的に取り除くことができれば、歯茎の炎症を抑え、歯周病の発生や悪化を防ぐことができるのです。

口腔内の清潔さを保つことは、歯周病予防だけでなく、虫歯予防口臭対策にも直結します。どんなに高価な歯ブラシを使っても、どんなに良い歯磨き粉を使っても、歯垢が残っていては意味がありません。

歯磨きの目的は、単に「磨いた気」になることではなく、**「歯垢を確実に除去すること」**にあります。この基本的な目的を達成するために、電動歯ブラシと手磨いがそれぞれどのような特徴を持ち、どの程度効果的なのかを見ていきましょう。


電動歯ブラシの真価:科学的根拠に基づくメリットとデメリット

近年、薬局や家電量販店には多種多様な電動歯ブラシが並び、「手磨きよりも電動歯ブラシの方が良いの?」と疑問に感じる方も多いでしょう。電動歯ブラシは、その進化と共に高い歯垢除去能力が注目されていますが、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここでは、科学的根拠に基づいてその真価を探ります。

高い歯垢除去能力の秘密:回転式と音波式の違い

電動歯ブラシは、その動き方によって大きく「回転式」と「音波式(または超音波式)」に分けられます。それぞれ異なるメカニズムで歯垢にアプローチします。

電動歯ブラシの種類と歯垢除去のメカニズム

  • 回転式(丸形ヘッド):
    • ヘッドが高速で左右に反復回転することで、歯の表面の歯垢を物理的にこすり落とします。
    • 歯にブラシを当てるだけで良いため、磨き残しが少なく、効率的に歯垢を除去できるのが特徴です。
    • 特に、ブラシが届きにくい歯の裏側や奥歯にもフィットしやすいとされています。
  • 音波式・超音波式(横長ヘッド):
    • 音波振動(毎分2万~4万回程度)や超音波振動(毎秒120万回以上)によって、毛先が直接触れない範囲の歯垢も、水流や泡の力で浮かせて除去します。
    • 歯と歯茎の境目や歯間にも振動が伝わりやすく、広範囲の歯垢にアプローチできるのが特徴です。
    • 歯や歯茎への負担が比較的少ないと言われています。

これらの電動歯ブラシは、手磨きでは再現が難しい高速かつ均一な動きによって、効率的な歯垢除去を実現します。

歯周病への効果:最新研究が示すエビデンス

電動歯ブラシの歯周病予防効果については、多くの研究でその有効性が示されています。

2014年に発表されたコクランレビュー³は、電動歯ブラシに関する多数の臨床試験を系統的に評価した大規模な研究です。このレビューでは、回転振動式電動歯ブラシが手用歯ブラシと比較して、短期および長期的に見て、歯垢と歯肉炎の有意な減少をもたらすと結論づけています。特に、3ヶ月以上の使用では、手用歯ブラシに比べて歯垢が平均11%減少し、歯肉炎が平均6%減少したと報告されています。

また、別の研究⁴では、音波式電動歯ブラシも手用歯ブラシと比較して優れた歯垢除去効果と歯肉炎の改善効果を示すことが示唆されています。

これらの科学的根拠は、電動歯ブラシが歯周病の主要な原因である歯垢を効果的に除去し、歯茎の炎症を軽減する上で非常に有効なツールであることを裏付けています。歯周病治療と予防の重要性については、当院の歯周病治療ページもご参照ください。

電動歯ブラシのメリット:時間短縮、磨きムラ軽減、正しい圧力

電動歯ブラシが提供する具体的なメリットは多岐にわたります。

  • 高い歯垢除去能力: 前述の通り、手磨きでは難しい高速振動や回転により、効率的かつ確実に歯垢を除去できます。
  • 時間短縮: 多くの電動歯ブラシにはタイマー機能が搭載されており、歯科医師が推奨する2分間のブラッシングを効率的に行うことができます。手磨きで同等の効果を得るには、より時間と労力が必要です。
  • 磨きムラを軽減: 磨くべき部位に均一な圧力をかけやすく、自分で意識しなくても一定の品質で磨けるため、磨き残しを減らすことができます。
  • 正しい圧力: 過度なブラッシング圧は歯や歯茎を傷つける原因となりますが、一部の電動歯ブラシには「押し付け防止センサー」が搭載されており、歯や歯茎への負担を軽減しながら磨くことができます。これは特に、力を入れすぎてしまう癖がある方にとって大きなメリットです。
  • 疲れにくい: 手を細かく動かす必要がないため、腕や手の疲れを感じにくいです。高齢者や手の不自由な方にも適しています。

電動歯ブラシのデメリット:コスト、初期投資、使用上の注意点

メリットが多い一方で、電動歯ブラシにはいくつかのデメリットも存在します。

  • 初期費用とランニングコスト: 本体価格が手用歯ブラシよりも高価であり、さらに交換用のブラシヘッドも定期的に購入する必要があるため、長期的なランニングコストがかかります。
  • 音と振動: 使用時の音や振動が気になる方もいます。特に超音波式は静かですが、回転式は音や振動が大きめです。
  • 故障のリスク: 電化製品であるため、故障のリスクがゼロではありません。
  • 持ち運び: サイズが大きく、旅行などでの持ち運びには不便を感じる場合があります。
  • 慣れが必要: 手磨きとは異なる独特の操作感があるため、慣れるまでに時間がかかる場合があります。正しい当て方を習得しないと、十分な効果が得られないこともあります。

これらのメリットとデメリットを比較検討し、ご自身のライフスタイルや口腔状態に合った選択をすることが重要です。


手磨きの底力:正しいテクニックで最大限の効果を引き出す

電動歯ブラシのメリットを理解したところで、「やっぱり手磨きの方が慣れているし…」と感じる方もいるでしょう。確かに、高速で動く電動歯ブラシに比べると、手磨きは地味に感じるかもしれません。しかし、手磨きにはその「底力」が秘められています。重要なのは、正しいブラッシングテクニックを習得し、その効果を最大限に引き出すことです。

バス法からスクラビング法まで:主要なブラッシングテクニック

手磨きで歯垢を効率的に除去するためには、いくつかの効果的なブラッシングテクニックがあります。ご自身の口腔状態や磨く部位に合わせて、適切な方法を選ぶことが重要です。これらのブラッシングテクニックや、より詳細な歯磨きの習慣については、**当院のコラム『理想的な歯みがきの習慣って?』**でも詳しくご紹介しています。

主要なブラッシングテクニック

  • バス法:
    • 特徴: 歯周ポケット内の歯垢除去に最も効果的とされる方法です。歯周病予防において非常に重要視されます。
    • 方法: 歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、毛先を歯周ポケットの中に軽く差し込むようにします。細かく振動させるように小刻みに動かし、歯周ポケット内の歯垢を掻き出します。
    • メリット: 歯周ポケット内のプラーク除去に優れています。
    • デメリット: 正しい角度と力加減が難しく、習得に時間がかかります。
  • スクラビング法:
    • 特徴: 歯の表面と歯茎の境目を同時に磨くことができる、比較的簡単な方法です。
    • 方法: 歯ブラシの毛先を歯の表面に垂直に当て、小刻みにブラシを動かします。
    • メリット: 比較的簡単で、歯の表面の汚れを効率的に除去できます。
    • デメリット: 歯周ポケットの奥深くまでは届きにくい場合があります。
  • フォーンズ法:
    • 特徴: 円を描くように磨く方法で、主に小さなお子様や、手の動きが不自由な方に推奨されます。
    • 方法: 歯を噛み合わせた状態で歯ブラシを大きく円を描くように動かして磨きます。
    • メリット: 簡単で楽しく磨けるため、習慣化しやすいです。
    • デメリット: 歯間の汚れや歯周ポケットの歯垢除去には不十分な場合が多いです。

これらのテクニックは、患者の口腔状態に合わせて歯科医師や歯科衛生士が指導する「プラークコントロール」の基礎となります。正しいテクニックを習得すれば、手磨きでも十分な歯垢除去効果が期待できます⁵。

手磨きのメリット:コスト、繊細なコントロール、歯茎への優しさ

電動歯ブラシが普及した現代においても、手磨きには依然として多くのメリットがあります。

  • 低いコスト: 本体価格も替えブラシも安価で、経済的負担が少ないのが最大のメリットです。
  • 繊細なコントロール: 自分の手で直接ブラシを操作するため、歯や歯茎の状態に合わせて力加減や角度を微調整しやすいです。これにより、敏感な部分や治療済みの部位(詰め物、被せ物など)も優しく磨くことができます。
  • 歯茎への優しさ: 電動歯ブラシのような強い振動や回転がないため、歯茎への刺激が少なく、炎症が起きている歯茎にも比較的優しくアプローチできます。
  • 電源不要: 電源や充電を気にする必要がなく、どこでも手軽に歯磨きができます。
  • 種類が豊富: ヘッドの大きさ、毛の硬さ、ハンドルの形状など、多種多様な歯ブラシから自分に合ったものを選べます。

手磨きのデメリット:磨きムラ、時間と労力、自己流の限界

一方で、手磨きには次のようなデメリットも存在します。

  • 磨きムラが生じやすい: 自分で意識的に全ての歯面を均等に磨くには、熟練したテクニックと集中力が必要です。特に奥歯の裏側や歯並びが複雑な部分は磨き残しが生じやすい傾向があります。
  • 時間と労力: 歯科医師が推奨する2分間以上のブラッシングを、隅々まで丁寧に行うには、それなりの時間と労力を要します。
  • 過度な力: 力を入れすぎてしまい、歯や歯茎を傷つけてしまう「オーバーブラッシング」のリスクがあります。これにより、歯茎が下がったり、歯の表面が削れたりする可能性があります。
  • 自己流の限界: 正しいブラッシングテクニックを知らずに自己流で磨いている場合、いくら時間をかけても効果的な歯垢除去ができていないことがあります。専門家による指導が不可欠です。

手磨きは、その自由度の高さゆえに、個人の技術や意識が結果に直結します。最大限の効果を引き出すには、正しい知識と実践が求められることを理解しておきましょう。


徹底比較!電動歯ブラシ vs 手磨き、歯周病予防に「本当に」効果的なのは?

ここまで、電動歯ブラシと手磨きのそれぞれの特徴、メリット、デメリットを詳しく見てきました。では、結局のところ、歯周病予防に「本当に」効果的なのはどちらなのでしょうか? 科学的なデータに基づき、両者を比較してみましょう。

プラーク除去能力の比較:データが示す真実

歯周病予防の基本は、いかに効率良く、そして徹底的に歯垢(プラーク)を除去できるかにかかっています。この点において、多くの研究が電動歯ブラシの優位性を示しています。

特に、第2章でも触れたコクランレビュー³(2014年)は、電動歯ブラシと手磨きの比較に関する最も信頼性の高いエビデンスの一つです。このレビューでは、回転振動式電動歯ブラシが手用歯ブラシと比較して、短期的にも長期的にも、歯垢除去能力において優れていると結論づけています。具体的には、3ヶ月以上の使用で、手用歯ブラシに比べて平均11%の歯垢減少が確認されました。

これは、電動歯ブラシの高速で均一な動きが、手磨きでは難しい部分の歯垢も効率的に除去できるためと考えられます。特に、磨き残しが多い傾向にある奥歯の裏側や歯間部において、その差が顕著に現れることがあります。

ただし、重要なのは「電動歯ブラシを使えば誰でも完璧に磨ける」わけではないということです。研究ではあくまで「平均的な結果」が示されています。手磨きでも、正しいブラッシングテクニックを習得し、時間をかけて丁寧に磨けば、電動歯ブラシに匹敵する、あるいはそれ以上の歯垢除去効果を得ることは可能です。これは個人の技術と努力に大きく依存します。

歯肉炎・歯周炎への影響:長期的な視点での比較

歯垢除去能力の差は、歯肉炎や歯周炎への影響にも繋がります。プラークが効果的に除去されることで、歯茎の炎症が抑えられ、歯周病の進行を遅らせることが期待できるからです。

同じくコクランレビュー³では、回転振動式電動歯ブラシが手用歯ブラシに比べ、歯肉炎の症状を平均6%減少させることが示されています。これは、歯垢の減少が直接的に歯茎の炎症の軽減に繋がっていることを示唆しています。

長期的な視点で見ると、継続的に高いレベルで歯垢を除去できる電動歯ブラシは、歯周病の発生リスクを低減し、既存の歯肉炎の改善に貢献する可能性が高いと言えるでしょう。特に、自己流の歯磨きで磨き残しが多いと感じる方や、歯周病の進行が気になる方にとっては、電動歯ブラシが有効な選択肢となり得ます。

しかし、電動歯ブラシを使用しているからといって、歯周病が完全に予防できるわけではありません。歯間ブラシやデンタルフロスによる歯間清掃、そして歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが、歯周病予防の総合的なアプローチには不可欠です。

コストパフォーマンスと継続性の観点から

どちらを選ぶかを考える際には、プラーク除去能力だけでなく、コストパフォーマンス継続性も重要な要素です。

コストパフォーマンス

  • 手磨き: 初期費用が非常に安価で、替えブラシも手軽に購入できます。全体的なコストは最も低いです。
  • 電動歯ブラシ: 初期投資は数千円から数万円と高めです。さらに、数ヶ月に一度の替えブラシ購入が必要なため、長期的なランニングコストがかかります。

継続性

  • 手磨き: 充電や電源を気にせず、どこでも手軽に磨けます。慣れた方法のため、心理的なハードルは低いかもしれません。しかし、十分な効果を得るには時間と集中力が必要です。
  • 電動歯ブラシ: 高い歯垢除去能力を短時間で実現できるため、忙しい方や効率を重視する方には継続しやすいメリットがあります。タイマー機能や圧力センサーなどの機能が、正しいブラッシング習慣の確立をサポートします。

最終的にどちらを選ぶかは、あなたのライフスタイル、予算、そして口腔ケアに対する意識によって異なります。最も重要なのは、選択した方法で毎日、効果的に歯垢を除去し続けることです。


最も効果的な歯周病予防のために:あなたの歯磨きを「格上げ」する方法

電動歯ブラシと手磨いの比較から、それぞれのメリット・デメリット、そして歯周病予防における効果について見てきました。しかし、どちらの歯ブラシを選ぶにしても、歯磨き単体では完璧な歯周病予防は難しいのが現実です。

本当に効果的な歯周病予防のためには、日々の歯磨きに「プラスα」のケアを取り入れ、さらに歯科医院でのプロフェッショナルなサポートを組み合わせることが不可欠です。あなたの歯磨きを次のレベルに「格上げ」する方法をご紹介します。

電動・手磨いどちらでも必須!「プラスα」のオーラルケアアイテム

歯ブラシの種類にかかわらず、歯と歯の間や歯周ポケットの奥深くなど、歯ブラシの毛先が届きにくい「死角」は必ず存在します。これらの部位の歯垢を効果的に除去するために、「プラスα」のケアアイテムを日々のルーティンに加えることを強くおすすめします。これらの「プラスα」のケアアイテムの重要性については、**当院のコラム『歯ブラシだけじゃ不十分?デンタルフロス・歯間ブラシで口腔ケアを格上げ』**もぜひご参照ください。

歯周病予防を強化する「プラスα」のアイテム

  • デンタルフロス:
    • 歯と歯の間が狭い方、特に歯周ポケットの入り口付近の歯垢除去に優れています。
    • 歯ブラシでは届きにくい歯間の側面を清掃し、虫歯予防にも効果的です。
    • 歯と歯の接触点(コンタクトポイント)を通過させるには、正しい使い方が重要です。
  • 歯間ブラシ:
    • 歯と歯の間に隙間がある方、歯茎が下がっている方、歯周病が進行している方に特に有効です。
    • 様々なサイズがあり、ご自身の歯間に合ったサイズを選ぶことが重要です。歯垢や食べかすを効率的にかき出します。
    • 歯間ブラシの選び方や使い方については、**当院のコラム『歯間ブラシの選び方完全ガイド:あなたの歯に合ったサイズを見つけよう』**で詳しく解説しています。
  • 洗口液(マウスウォッシュ):
    • 歯磨き後の補助として使用することで、口腔内の細菌数を一時的に減らし、口臭予防や歯肉炎の軽減に役立ちます。
    • 歯垢を物理的に除去する効果はないため、あくまで補助的な位置づけであることを理解しましょう。殺菌成分(CPC, IPMPなど)や抗炎症成分(GK2など)配合のものが歯周病予防に推奨されます。口臭の具体的な原因や対策については、当院の口臭ケアページでも詳しくご紹介しています。
  • タフトブラシ:
    • 特定の部位(親知らずの周り、矯正装置の周り、孤立した歯、生えかけの歯など)の清掃に特化した小型の歯ブラシです。
    • 歯ブラシでは届きにくい複雑な部分の歯垢をピンポイントで除去するのに非常に有効です。

これらの補助的な清掃用具を適切に活用することで、歯ブラシだけでは難しい**「面」と「点」の多角的な歯垢除去**が可能になり、歯周病予防効果を格段に高めることができます。

プロの目線が不可欠:定期検診とブラッシング指導の重要性

どんなに毎日丁寧にセルフケアを行っていても、自己流の限界や見落としはつきものです。歯周病予防において、歯科医院での定期検診とプロによる専門的なケアは、セルフケアと並ぶ二本柱と言えます。

歯科医院でのプロフェッショナルケアの重要性

  1. 磨き残しのチェックとブラッシング指導:
    • 歯科衛生士が、あなたの磨き癖や磨き残しが多い部位を特定し、一人ひとりに合ったブラッシング方法(電動・手磨い問わず)や補助清掃用具の具体的な使い方を丁寧に指導してくれます。これは、最も効果的なプラークコントロールを身につける上で非常に重要です。
  2. PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング):
    • 歯科専門家が特殊な器具を用いて、歯ブラシでは除去できないバイオフィルム(細菌の集合体)や、歯磨きでは落ちない歯石を徹底的に除去します⁹。歯石は歯周病菌の温床となるため、定期的な除去は歯周病予防に不可欠です。
  3. 口腔内の状態チェック:
    • 虫歯や歯周病の初期症状、噛み合わせの問題、詰め物・被せ物の状態など、自分では気づかない口腔内の変化を早期に発見し、適切な処置を受けることができます。早期発見・早期治療は、治療の負担を減らし、歯を守る上で極めて重要です。
  4. フッ化物塗布:
    • 虫歯予防のために、高濃度のフッ化物を歯に塗布することもあります。これは、歯質を強化し、酸への抵抗力を高めます。

スウェーデンにおける長期的な研究⁸では、定期的なプロフェッショナルケアと適切なホームケアを組み合わせることで、歯周病の進行を大幅に抑制し、歯の喪失を防ぐことができると報告されています。

セルフケアで口腔内の清潔さを保ち、定期的にプロの目でチェック・クリーニングを受ける。この両輪が揃って初めて、あなたの歯周病予防は「最も効果的」なレベルへと到達するのです。当院の予防歯科・定期検診ページでは、定期的なプロフェッショナルケアの重要性についてご説明しています。


まとめ:あなたにとっての「ベスト」を見つけよう!

電動歯ブラシと手磨き、どちらが歯周病予防に効果的かという問いに対する明確な答えは、**「あなたの使い方と習慣、そしてお口の状態による」**ということです。

この記事では、歯周病予防における歯磨きの重要性から、電動歯ブラシと手磨きのそれぞれの特徴、科学的根拠に基づくメリット・デメリットを詳しく解説してきました。

  • 電動歯ブラシは、その高速で均一な動きにより、手磨きよりも効率的に歯垢を除去できるという明確な科学的エビデンスがあります。特に、磨きムラを減らしたい方や、短時間で効率的にケアしたい方には強力な味方となるでしょう。
  • 一方、手磨きは、コストパフォーマンスに優れ、ブラシの動きや力加減を繊細にコントロールできるというメリットがあります。正しいブラッシングテクニックを習得すれば、電動歯ブラシに匹敵する効果を得ることも可能です。

どちらを選ぶにしても、最も重要なのは、**「毎日、正しい方法で、隅々まで歯垢を徹底的に除去し続けること」**です。

歯周病予防の真の鍵は、歯ブラシの種類だけでなく、以下の3つの要素を組み合わせることにあります。

  1. 日々の正しい歯磨き: 電動歯ブラシか手磨いかに関わらず、ご自身に合った方法で丁寧に磨くこと。
  2. 「プラスα」の補助清掃: 歯間ブラシやデンタルフロスなど、歯ブラシでは届きにくい部分のケアを怠らないこと。
  3. プロによる定期的なサポート: 歯科医院での定期検診やPMTC、ブラッシング指導を通じて、セルフケアの限界を補い、専門的なケアを受けること。

ご自身のライフスタイル、お口の状態、そして予算を考慮し、最も継続しやすい方法を選ぶのが、あなたにとっての「ベスト」な選択です。そして、その選択が、生涯にわたる健康な歯と、自信あふれる笑顔を育む第一歩となるでしょう。


よくある質問(FAQ)

Q1: 電動歯ブラシと手磨き、結局どちらが歯周病予防に優れていますか?

A1: 多くの研究³では、回転振動式電動歯ブラシが手磨きに比べて、歯垢除去能力と歯肉炎の改善において優位性を示すと報告されています。しかし、最も重要なのは、毎日正しく丁寧に磨き続けることです。手磨きでも、正しいブラッシングテクニックを習得すれば十分な効果が得られます。ご自身のライフスタイルやお口の状態、予算に合った、**継続しやすい方法を選ぶことが「ベスト」**と言えるでしょう。

Q2: 電動歯ブラシを使えば、歯間ブラシやデンタルフロスは不要になりますか?

A2: いいえ、**電動歯ブラシを使っていても、歯間ブラシやデンタルフロスは必須です。**電動歯ブラシも手磨きと同様に、歯と歯の間など、歯ブラシの毛先が届きにくい「死角」が存在します。歯周病菌が潜む歯間の歯垢を徹底的に除去するためには、歯間ブラシやデンタルフロスとの併用が不可欠です。

Q3: 歯磨き中に歯茎から血が出た場合、どうすれば良いですか?

A3: 歯磨き中や歯間ブラシ使用時に歯茎から出血するのは、多くの場合、歯茎に炎症が起きている(歯肉炎や歯周病のサイン)ためです。これは歯茎が傷ついているのではなく、歯垢が溜まって炎症を起こしているデリケートな状態であることを示しています。出血があっても中断せず、むしろ正しい方法で丁寧に歯垢を除去し続けることが重要です。数日〜数週間で炎症が治まり、出血は減っていくはずです。もし出血が長く続く場合や、激しい痛みを伴う場合は、放置せずに必ず歯科医院で相談してください。

Q4: 歯周病予防のために、他にできることはありますか?

A4: 日々の適切な歯磨きに加えて、以下の点を心がけることが歯周病予防には効果的です。

  • 「プラスα」の清掃用具の活用: 歯間ブラシ、デンタルフロス、タフトブラシなどを使い、歯ブラシでは届きにくい部分の歯垢を除去しましょう。
  • 定期的な歯科検診とプロフェッショナルクリーニング: 歯科医院でのPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)やブラッシング指導は、セルフケアでは落としきれない歯垢や歯石を除去し、お口の状態を専門的にチェックするために不可欠です⁹。
  • 食生活の改善: バランスの取れた食事を心がけ、糖分の摂取を控えることも重要です。
  • 禁煙: 喫煙は歯周病を悪化させる最大の要因の一つです。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

この記事を読んで、ご自身の歯磨きの方法や歯周病予防について、さらに専門的なアドバイスを受けたいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。東京都港区にある「泉岳寺駅前歯科クリニック」では、患者様一人ひとりに寄り添い、最適な口腔ケアをサポートしています。

当院は、泉岳寺駅A3出口から徒歩1分という大変アクセスしやすい場所にございます。また、高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良いため、お仕事帰りやショッピングのついでにもお立ち寄りいただけます。

経験豊富な歯科医師と歯科衛生士が、電動歯ブラシや手磨きの正しい使い方のご指導はもちろんのこと、予防歯科・定期検診ブラッシング指導など、専門的なケアを通じて皆様の健康をサポートいたします。最新の設備と技術で、皆様の歯の健康を全力でサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

「自分に合った歯磨き方法を知りたい」「歯周病が気になる」と感じたら、ぜひ一度、泉岳寺駅前歯科クリニックへお越しください。皆様の健康で美しい笑顔のために、スタッフ一同、心よりお待ちしております。

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参考文献

¹ Reimers, K., et al. (2007). “A comparison of the efficacy of two manual toothbrushes.” Journal of Clinical Periodontology, 34(3), 209-216.

² 厚生労働省. 歯科口腔保健の推進に関する基本的事項 (平成24年8月29日厚生労働省告示第509号) 令和4年一部改正. (2022).

³ Yaacob, M., et al. (2014). “Powered versus manual toothbrushing for oral health.” Cochrane Database of Systematic Reviews, 2014(6), CD002281.

⁴ Van der Weijden, F. A., et al. (2000). “An investigation into the effect of a new sonic toothbrush on plaque and gingivitis.” Journal of Clinical Periodontology, 27(2), 114-119.

⁵ Newman, M. G., Takei, H. H., Klokkevold, F. P., & Carranza, F. A. (Eds.). (2018). Carranza’s Clinical Periodontology (13th ed.). Elsevier.

⁶ Särner, J. (2007). “Dental hygienist performed professional mechanical tooth cleaning in individuals with gingivitis. A systematic review.” Journal of Clinical Periodontology, 34(7), 563-573.

⁷ Jepsen, S., et al. (2015). “Primary prevention of peri-implantitis: managing risk factors.” Journal of Clinical Periodontology, 42(S16), S150-S154.

⁸ Axelsson, P., & Lindhe, J. (1978). “The significance of maintenance care in the treatment of periodontal disease.” Journal of Clinical Periodontology, 5(4), 223-239.

⁹ Pihlstrom, B. L., Michalowicz, B. S., & Johnson, N. W. (2005). “Periodontal diseases.” The Lancet, 366(9499), 1809-1820.


監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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