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歯周病予防に効く歯磨き粉は? 薬用成分とその効果

2025.07.25

毎日の歯磨きで使う歯磨き粉。何気なく手に取っていませんか?実は、歯周病予防を本気で考えるなら、歯磨き粉選びは非常に重要です。スーパーやドラッグストアには数えきれないほどの歯磨き粉が並んでいますが、「本当に効く」一本を見つけるには、その成分を知ることが鍵となります。

この記事では、歯周病予防に特化した歯磨き粉の選び方、そしてその効果の秘密を、科学的根拠に基づいて徹底解説します。あなたの歯磨き粉選びを「なんとなく」から「目的を持って」変え、健康な口元を手に入れましょう。


歯磨き粉選びで歯周病予防を加速!「効く」成分を見極める

「歯磨き粉なんてどれも同じじゃないの?」

そう思われるかもしれませんが、実は歯磨き粉には大きく分けて2つの種類があり、その違いを知ることが歯周病予防の第一歩となります。

歯磨き粉の基本を理解する:医薬部外品と化粧品、その違いとは?

店頭に並ぶ歯磨き粉のパッケージをよく見ると、「医薬部外品」または「化粧品」と記載されているのにお気づきでしょうか。この分類は、その製品が「何を目的に作られ、どのような効果が期待できるか」を示す重要な情報です。

歯磨き粉の分類とその特徴

  • 医薬部外品:
    • 定義: 厚生労働大臣が定めた有効成分が、予防や衛生を目的として配合されている製品です。
    • 特徴: 特定の効能・効果(例: 歯周炎予防、歯肉炎予防、虫歯の発生及び進行の予防、口臭の防止、知覚過敏による痛みの抑制など)をパッケージに表示することが認められています。
    • 歯周病予防に: 「歯周病を予防したい」「特定の口腔トラブルを改善したい」という目的がある場合、この医薬部外品を選ぶことが必須となります。多くの歯周病予防歯磨き粉はこのカテゴリーに属します。
  • 化粧品:
    • 定義: 薬用成分を含まず、またはその効果を謳わない製品です。
    • 特徴: 主に口腔を清浄にしたり、口臭を防いだり、爽快感を与えたりすることを目的としています。
    • 日常的なケアに: 日常の歯磨きで気分をリリフレッシュしたい、清掃効果を重視したい場合に適しています。

このように、歯周病予防を目的とするならば、パッケージに「医薬部外品」と明記され、かつ「歯周炎予防」や「歯肉炎予防」といった具体的な効能が記載された歯磨き粉を選ぶことが非常に重要です。

なぜ歯周病予防に「歯磨き粉」が欠かせないのか?

「歯磨き粉は泡立つだけで、結局はブラシで磨くのが一番重要でしょ?」

もちろん、歯周病予防の基本が物理的な歯垢除去(ブラッシング)であることは揺るぎない事実です。しかし、歯磨き粉は、そのブラッシング効果を補助・強化し、さらに化学的なアプローチで歯周病のリスクを低減する「プラスα」の役割を担っています。歯周病の基本的な予防策については、当院の『予防歯科・定期検診』ページでも詳しくご紹介しています。

歯磨き粉が歯周病予防にもたらす「プラスα」の効果

  • 化学的な細菌へのアプローチ: 歯ブラシだけでは届きにくい歯周ポケットの奥や、細菌が集合したバイオフィルム(歯垢)内部の細菌にも、歯磨き粉の薬用成分がアプローチし、増殖を抑制します。
  • 炎症の緩和: 歯周病による歯茎の腫れや出血は、歯茎の炎症が原因です。歯磨き粉に含まれる抗炎症成分が、この炎症を鎮め、歯茎を健康な状態に導くサポートをします。
  • 歯周組織の修復促進: ダメージを受けた歯茎の細胞の活性化を促し、組織の回復を助ける成分も配合されています。これにより、より抵抗力のある歯茎へと導くことが期待できます。
  • 口腔環境の改善: 口臭の原因となる細菌や揮発性硫黄化合物(VSC)にアプローチする成分が、口臭の発生を抑え、清潔で爽やかな口腔環境を保ちます。これは、日々のオーラルケアのモチベーション維持にも繋がります。

このように、歯磨き粉は単なる清掃剤ではなく、歯周病の多角的な予防・ケアに貢献する重要なアイテムなのです。次章では、具体的にどのような薬用成分が、どのように歯周病予防に役立つのかを詳しく見ていきましょう。歯周病のより詳細な情報や治療については、当院の『歯周病治療』ページをご参照ください。


歯周病に「効く」薬用成分を徹底解説!効果で選ぶスマートな歯磨き粉

歯周病予防を謳う歯磨き粉には、様々な薬用成分が配合されています。これらは単なる清掃成分ではなく、歯周病の原因に直接アプローチすることで、その予防効果を高める働きをします。ここでは、特に重要な薬用成分とその具体的な効果について詳しく見ていきましょう。

歯茎の炎症を鎮める!頼れる「抗炎症成分」

歯周病は、歯垢(プラーク)内の細菌が原因で歯茎に炎症が起こることから始まります。歯茎の腫れや出血は、この炎症のサインです。放っておくと炎症は慢性化し、歯を支える骨まで破壊してしまうため、初期段階での炎症ケアが非常に重要になります。

抗炎症成分は、この歯茎の炎症反応を抑制し、腫れや出血を和らげることを目的としています。物理的な歯垢除去と合わせてこれらの成分が作用することで、歯茎を健康な状態に保つ助けとなります。

代表的な抗炎症成分

  • グリチルリチン酸ジカリウム(GK₂):
    • 生薬のカンゾウ由来成分で、炎症の原因となる生理活性物質(プロスタグランジンなど)の生成を抑制する作用があります。
    • 歯茎の腫れや赤み、出血、痛みの緩和に寄与するとされています¹⁰。
  • トラネキサム酸:
    • 炎症性物質の産生を抑えるとともに、プラスミンという物質の働きを阻害することで、歯茎からの出血を抑制する作用が確認されています¹¹。
    • 特に歯磨き時の出血が気になる方に効果が期待できます。

これらの抗炎症成分が配合された歯磨き粉を日常的に使うことで、歯茎の炎症をケアし、歯周病の初期段階での進行を抑えることができます。

歯周病菌を撃退!強力な「殺菌・抗菌成分」

歯周病の根本原因は、歯周ポケット内に増殖する歯周病菌です。これらの細菌が出す毒素が炎症を引き起こし、歯周組織を破壊していきます。そのため、歯周病菌の数を減らし、その活動を抑えることは歯周病予防において非常に重要です。

殺菌・抗菌成分は、口腔内の歯周病菌の増殖を抑え、歯垢の形成を抑制する働きをします。物理的なブラッシングで歯垢を除去しつつ、これらの成分で化学的に細菌にアプローチすることで、より効果的な歯周病予防が期待できます。

代表的な殺菌・抗菌成分

  • 塩化セチルピリジニウム(CPC):
    • 陽イオン界面活性剤の一種で、口腔内の広範囲の細菌に対して殺菌作用を示します。細菌の細胞膜を破壊することで、増殖を抑えると考えられています¹²。
    • プラークの歯面への付着を抑制する効果も期待できます。
  • イソプロピルメチルフェノール(IPMP):
    • 比較的油溶性で、歯周ポケットの奥まで浸透しやすい特性があります。
    • 歯周病菌が作るバイオフィルム(細菌の集合体)の内部まで浸透し、細菌を殺菌する効果があることが報告されています¹³。
  • ラウロイルサルコシンナトリウム(LSS):
    • 主にプラークの形成を抑制し、口腔内の細菌活動を抑える働きがあります。特に、歯周病菌の一種であるジンジバリス菌の酵素活性を阻害する作用が研究されています¹⁴。
  • クロルヘキシジン(グルコン酸クロルヘキシジン):
    • 特徴と作用: 歯科領域で最も広く研究され、用いられている強力な殺菌成分の一つです。細菌の細胞膜に結合し、細胞膜を障害することで、広範囲の細菌に対して抗菌作用を発揮します¹². さらに、歯面や口腔粘膜に吸着することで、その殺菌効果が長時間(最大12時間程度)持続すると言われています¹².
    • 配合製品と効果: 日本では、主に**洗口液(マウスウォッシュ)に高濃度で配合されることが多いですが、一部の歯磨き粉(ジェルタイプなど)**にも配合されています。特に、歯周病治療後のメンテナンスや、口腔外科処置後の感染予防など、より積極的な殺菌ケアが必要な場合に歯科医師から推奨されることがあります。プラーク形成の強力な抑制や、歯肉炎の改善効果が多くの研究で示されています¹².
    • 注意点と副作用: 強力な効果を持つ一方で、いくつかの注意点があります。
      • 歯の着色: 長期間使用すると、歯の表面や舌が茶色く着色することが報告されています。これは成分が口腔内に留まり作用している証拠でもありますが、見た目を気にする方もいるでしょう。多くの場合、歯科医院でのクリーニングで除去可能です¹².
      • 味覚の変化: 一時的に味覚に影響を与えることがあります⁷.
      • アレルギー反応: まれにアナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー反応を起こす可能性があるため、クロルヘキシジンアレルギーの既往がある方は使用を避ける必要があります¹². アレルギー体質の方やご心配な方は、使用前に必ず当院にご相談ください
    • 濃度の違い: 海外では0.12%〜0.2%といった高濃度のクロルヘキシジン洗口液が一般的ですが、日本では副作用を考慮し、より低濃度(例:0.05%程度)の製品が市販されています¹³. 歯磨き粉への配合濃度も製品によって異なります。

これらの殺菌・抗菌成分は、歯周病菌の活動を抑制し、口腔内を清潔に保つことで、歯周病の発生や悪化のリスクを低減します。

傷んだ歯茎を修復!「組織修復成分」で健康な口元へ

歯周病が進行すると、歯茎の組織がダメージを受け、健康なピンク色の歯茎から赤く腫れたり、下がったりすることがあります。薬用歯磨き粉の中には、傷んだ歯茎の回復をサポートし、組織の活性化を促す組織修復成分が配合されているものもあります。

これらの成分は、歯茎の細胞の代謝を促したり、血行を改善したりすることで、歯茎本来の抵抗力や回復力を高めることを目指します。

代表的な組織修復成分

  • アラントイン:
    • 皮膚や粘膜の修復を促進する作用があり、歯茎の小さな傷や炎症部位の回復を助ける効果が期待されます¹⁵。
  • パンテノール(ビタミンB₅誘導体):
    • 細胞の新陳代謝を活性化させ、歯茎の健康維持に寄与するとされています。歯茎のターンオーバーを促し、健康的な組織の再生をサポートします。
  • ビタミンE(酢酸トコフェロール):
    • 血行促進作用があり、歯茎の毛細血管の血流を改善します。これにより、歯茎への栄養供給が活発になり、組織の活性化や抵抗力向上に繋がると考えられています¹⁶。

これらの成分は、歯周病でダメージを受けた歯茎の回復をサポートし、より強く健康的な歯茎を取り戻す手助けとなるでしょう。

口臭も同時にケア!歯周病予防をサポートするその他の成分

歯周病は、その進行とともに口臭を伴うことが多い症状です。これは、歯周病菌が発する「揮発性硫黄化合物(VSC)」を生成するためです。歯周病予防歯磨き粉の中には、口臭ケアにも着目した成分が配合されているものがあります。

また、歯周病により歯茎が下がると、歯の根元が露出し、知覚過敏を引き起こすこともあります。これらのお悩みにも対応できる成分を知っておきましょう。

歯周病予防をサポートするその他の成分

  • 口臭ケア成分:
    • ゼオライト: 多孔質構造を持つ成分で、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物(VSC)を吸着し、除去する作用があることが報告されています¹⁷。
    • 酸化亜鉛: 硫化水素などの口臭ガスを吸着・中和する効果が期待されます。
    • 殺菌成分(CPC、IPMPなど): 口臭の根本原因である歯周病菌そのものを減らすことで、持続的な口臭予防にも繋がります。口臭の具体的な原因や対策については、当院の口臭ケアページでも詳しくご紹介しています。
  • 知覚過敏ケア成分:
    • 硝酸カリウム: 歯の神経への刺激伝達をブロックすることで、知覚過敏の痛みを緩和します¹⁸。
    • 乳酸アルミニウム: 象牙細管の開口部を塞ぎ、刺激が神経に伝わるのを防ぐことで、痛みを軽減します。
    • 歯周病で歯茎が下がり、歯の根元がしみる症状がある方には、これらの成分が配合された歯磨き粉が有効な選択肢となります。
  • ウコン(クルクミン):
    • 特徴と作用: 古くから健康維持に用いられてきたウコンに含まれるポリフェノール色素クルクミンは、近年、口腔ケア分野で注目されています。特に、歯周病の主要な原因菌であるジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)の増殖を抑制する抗菌作用や、バイオフィルム形成を阻害する効果が報告されています¹⁰, ²².
    • 効果: また、抗炎症作用により歯茎の炎症を和らげ、抗酸化作用により口腔内の酸化ストレスを軽減し、歯周組織の健康維持に寄与する可能性も指摘されています²³.
    • エビデンス: クルクミンが歯周病菌に与える影響については、試験管内研究(in vitro)や動物実験で有望な結果が示されています。ヒトを対象とした臨床研究も進められており、補助的な歯周病ケアとしての可能性が探られています²². 自然由来の成分で歯周病予防をしたい方にとって、新たな選択肢となるでしょう。

これらの多様な薬用成分を理解することで、単に「歯周病予防」と書かれた歯磨き粉を選ぶだけでなく、ご自身の具体的な症状や悩みに合わせて、より効果的な一本を選ぶことができるようになります。


あなたに最適な一本を見つける!症状別・歯磨き粉の賢い選び方

前章で様々な薬用成分とその効果を解説しましたが、いざ歯磨き粉を選ぼうとすると、どれが自分に合っているのか迷ってしまうかもしれません。歯周病の症状は人それぞれです。あなたの具体的なお口の悩みに合わせて、最適な歯磨き粉を選ぶためのポイントをご紹介します。

歯茎の腫れや出血が気になる方へ:初期症状にアプローチ

歯磨き中に歯茎から血が出たり、歯茎が赤く腫れていたりする場合、それは歯肉炎や初期の歯周病のサインかもしれません。この段階で適切なケアを始めることが、病気の進行を防ぐために非常に重要です。

このような症状におすすめの歯磨き粉

  • 抗炎症成分配合の歯磨き粉:
    • グリチルリチン酸ジカリウム(GK₂)やトラネキサム酸が配合された製品を選びましょう。これらの成分は、歯茎の炎症を鎮め、出血を抑える効果が期待できます¹⁰, ¹¹.
    • 炎症を早期に抑えることで、歯周病の進行を食い止める手助けとなります。
  • 選び方のポイント:
    • 「歯肉炎予防」「歯茎ケア」といった表示がある製品に注目してください。
    • 歯茎がデリケートになっている場合は、研磨剤控えめまたは無配合の製品を選ぶと、歯茎への刺激をさらに軽減できます。

歯周病の進行を食い止めたい方へ:進行度別アプローチ

歯茎が下がって歯が長く見えたり、歯がグラつく感じがあったり、口臭が強くなってきたと感じる場合、歯周病が進行している可能性があります。この段階では歯磨き粉だけで病気を治すことはできませんが、日々のケアで症状の悪化を防ぎ、歯科治療の効果を高めるサポートができます。

このような症状におすすめの歯磨き粉

  • 複数の薬用成分が複合配合された歯磨き粉:
    • 殺菌・抗菌成分(CPC、IPMP、LSSなど)が複数配合され、歯周病菌へのアプローチを強化できるものがおすすめです¹².
    • 加えて、組織修復成分(アラントイン、パンテノール、ビタミンEなど)が配合されていると、傷んだ歯茎の回復をサポートし、歯茎そのものの抵抗力を高める助けとなります¹⁵, ¹⁶.
  • 選び方のポイント:
    • 「歯周炎予防」「トータルケア」といった表記がある製品の中から、複数の薬用成分が複合的に配合されているものを選ぶよう推奨。
    • 重要: 歯周病が進行している場合は、歯磨き粉だけで解決しようとせず、必ず歯科医院で専門的な治療と指導を受けてください。歯磨き粉はあくまで、その治療と並行して行う日々のケアを強化するものです。

口臭も気になる方へ:ダブル効果で自信の笑顔

歯周病が進行すると、歯周病菌が発する「揮発性硫黄化合物(VSC)」によって口臭が強くなることがあります。歯周病予防と同時に口臭ケアも行いたい場合は、これらの悩みに特化した成分が配合された歯磨き粉を選ぶと良いでしょう。

このような症状におすすめの歯磨き粉

  • 殺菌成分と口臭吸着成分のW配合:
    • 口臭の根本原因である歯周病菌を抑える殺菌成分(CPC、IPMPなど)は必須です。
    • さらに、口臭ガスを吸着・中和するゼオライト酸化亜鉛などが配合された製品は、即効性のある口臭対策としても期待できます¹⁷.
    • 歯茎の炎症を抑える抗炎症成分も、結果的に口臭改善に繋がります。
  • 選び方のポイント:
    • 「口臭予防」「歯周病ケア+口臭ケア」といった表示がある製品を探しましょう。
    • 口臭が特に気になる場合は、歯磨き粉だけでなく、洗口液や舌ブラシとの併用も検討してみてください。口臭の具体的な原因や対策については、当院の口臭ケアページでも詳しくご紹介しています。

ご自身の現在の口腔状態や気になる症状に合わせて、最適な歯磨き粉を見つけることで、日々の歯磨きがより効果的な歯周病予防へと繋がり、自信あふれる笑顔を取り戻す一助となるはずです。


歯磨き粉の効果を最大化!歯周病予防は「総合力」で差をつける

ここまで、歯周病予防に効果的な歯磨き粉の選び方について詳しく見てきました。しかし、どんなに優れた歯磨き粉を選んだとしても、それだけで歯周病が完全に予防できるわけではありません。歯磨き粉の効果を最大限に引き出し、真に健康な口腔環境を維持するためには、「総合力」で挑む必要があります。

歯磨き粉の力を引き出す!正しいブラッシングと併用ケア

歯磨き粉は、その薬用成分によって歯周病予防をサポートしてくれる強力な「補助ツール」です。しかし、歯周病予防の基本中の基本は、やはり物理的な歯垢(プラーク)除去です。歯磨き粉の力を最大限に引き出すためには、以下の点を意識しましょう。

歯磨き粉の効果を高める使い方と併用ケア

  • 正しいブラッシングテクニック:
    • 歯磨き粉の薬用成分が歯周組織にしっかり作用するためには、まずプラークが物理的に除去されていることが大前提です。
    • 前回のコラム**『電動歯ブラシ vs 手磨き:歯周病予防に効果的なのは?』**でも解説したように、バス法など歯周ポケットの歯垢を掻き出すブラッシングテクニックを実践することが重要です。
    • 「磨いているつもり」で終わらせず、歯科医院で指導された正しい方法で丁寧に磨く意識を持ちましょう。
  • 歯間清掃用具との併用:
    • 残念ながら、どんなに優れた歯ブラシや歯磨き粉を使っても、歯と歯の間の歯垢や、歯周ポケットの奥深くの汚れを完全に除去することはできません。
    • そのため、デンタルフロス歯間ブラシといった補助清掃用具が不可欠です。これらを正しく使うことで、歯ブラシでは届かない約40%もの歯垢を除去できると言われています¹⁹。
    • 補助清掃用具で汚れをしっかり落とすことで、歯磨き粉の有効成分が歯周組織により届きやすくなり、相乗効果が期待できます。
    • 具体的な使用方法や選び方については、**当院のコラム『歯ブラシだけじゃ不十分?デンタルフロス・歯間ブラシで口腔ケアを格上げ』や、『歯間ブラシの選び方完全ガイド:あなたの歯に合ったサイズを見つけよう』**で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

歯周病予防の最終兵器!歯科医院でのプロフェッショナルケアの重要性

日々のセルフケアでどんなに頑張っていても、自分だけでは対処できないことがあります。特に、歯磨きでは落とせない歯石は、歯周病菌の温床となり、歯周病を悪化させる大きな要因です²⁰。

歯科医院でのプロフェッショナルケアが不可欠な理由

  • 徹底的な歯垢・歯石除去(PMTC):
    • 歯科衛生士による**PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)**では、特殊な器具を用いて、普段の歯磨きでは落としきれない歯垢や、固まってしまった歯石を徹底的に除去します。これにより、歯周病菌が繁殖する場所をなくし、歯周病の進行を食い止めます。
  • 専門家による状態チェックとブラッシング指導:
    • 定期的に歯科医院を受診することで、ご自身の歯周病の進行度や歯茎の状態を正確に把握できます。
    • 歯科衛生士が、あなたの磨き癖や磨き残しが多い場所を特定し、一人ひとりに最適なブラッシング方法や補助清掃用具の具体的な使い方を丁寧に指導します。これにより、日々のセルフケアの質を格段に向上させることができます。
  • 虫歯や他の口腔トラブルの早期発見:
    • 歯周病だけでなく、虫歯や噛み合わせの問題、詰め物・被せ物の不具合など、自分では気づきにくい口腔内の変化を早期に発見し、適切な処置を受けることができます。早期発見・早期治療は、治療の負担を減らし、大切な歯を守る上で極めて重要ですす。

スウェーデンにおける長期的な研究⁸では、定期的なプロフェッショナルケアと適切なホームケアを組み合わせることで、歯周病の進行を大幅に抑制し、歯の喪失を防ぐことができると報告されています。

セルフケアで口腔内の清潔さを保ち、定期的にプロの目でチェック・クリーニングを受ける。この両輪が揃って初めて、あなたの歯周病予防は「最も効果的」なレベルへと到達するのです。当院の予防歯科・定期検診ページでは、定期的なプロフェッショナルケアの重要性について詳しくご説明しています。


まとめ:正しい知識で賢く選ぶ、あなたの歯周病予防

歯周病予防において、歯磨き粉は単なる清掃用品ではありません。この記事を通じて、「医薬部外品」の歯磨き粉に配合された様々な薬用成分が、歯周病の多岐にわたる症状(歯茎の炎症、細菌の増殖、組織のダメージ、口臭など)にどのようにアプローチし、予防効果を高めるのかを詳しく見てきました。

歯茎の腫れや出血には抗炎症成分、歯周病菌の撃退には殺菌・抗菌成分、そして傷んだ歯茎の回復には組織修復成分といったように、あなたの現在の口腔状態や気になる症状に合わせて、最適な成分が配合された歯磨き粉を選ぶことが、歯周病予防を加速させる鍵となります。

しかし、どんなに優れた「効く」歯磨き粉を選んだとしても、それだけで歯周病が完全に予防できるわけではありません。歯周病予防は、まさに「総合力」が問われるものなのです。

あなたの歯周病予防を最も効果的にするためには、以下の3つの要素が不可欠です。

  1. 日々の正しい歯磨き: 電動歯ブラシか手磨きかに関わらず、ご自身に合った方法で、歯磨き粉の薬用成分を最大限に活かすような丁寧なブラッシングを心がけましょう。
  2. 「プラスα」の補助清掃: 歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間や歯周ポケットの歯垢には、デンタルフロス歯間ブラシが必須です。これらの併用で、磨き残しを徹底的に減らしましょう。
  3. プロによる定期的なサポート: ご自宅でのセルフケアには限界があります。歯科医院での定期検診と**PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)**を通じて、歯石の除去や専門的なブラッシング指導を受け、口腔環境を常に最適な状態に保つことが、長期的な歯の健康を守る上で最も重要です。

「歯周病かもしれない」「どの歯磨き粉を選べばいいか分からない」「正しい歯磨き方法を知りたい」など、少しでも不安を感じたら、ぜひお近くの歯科医院にご相談ください。専門家のアドバイスを受け、あなたの歯周病予防を「なんとなく」から「目的を持って」実践することで、健康で自信あふれる笑顔を生涯にわたって維持できるはずです。


よくある質問(FAQ)

Q1: 歯磨き粉だけで歯周病は治りますか?

A1: いいえ、歯磨き粉だけで歯周病が完治することはありません。 歯磨き粉は、薬用成分の力で歯周病菌の増殖を抑えたり、歯茎の炎症を和らげたりする補助的な役割を果たします。歯周病の根本原因である歯垢(プラーク)や歯石は、歯ブラシによる物理的な清掃や、歯科医院での専門的なクリーニング(PMTC)でしか除去できません。歯周病が気になる場合は、必ず歯科医院で適切な診断と治療を受けましょう。

Q2: 歯周病予防に効く歯磨き粉は、毎日使った方が良いですか?

A2: はい、歯周病予防を目的とした医薬部外品の歯磨き粉は、毎日使用することで効果が期待できます。 継続して使用することで、配合された薬用成分が口腔内に作用し、歯周病菌の活動を抑制したり、歯茎の健康を維持したりする助けとなります。ご自身の症状や目的に合った成分が配合されたものを選び、毎日の歯磨きに取り入れましょう。

Q3: クロルヘキシジン配合の歯磨き粉は、誰でも使って大丈夫ですか?

A3: クロルヘキシジンは強力な殺菌成分であり、歯周病菌の抑制に高い効果が期待できますが、すべての方に無条件におすすめできるわけではありません。 長期使用による歯の着色や、まれにアレルギー反応のリスクがあります。特に、過去にアレルギー経験がある方や、気になる症状がある方は、使用前に必ず歯科医師や歯科衛生士に相談し、指示に従って使用してください。

Q4: ウコン(クルクミン)配合の歯磨き粉は、歯が黄色くなりませんか?

A4: ウコン(ターメリック)の主成分であるクルクミンは、もともと黄色い色素ですが、歯磨き粉として配合されている場合、通常は歯が黄色くなる心配はありません。 歯磨き粉の製造過程で、着色しにくいように工夫されていたり、配合量が調整されていたりするためです。ただし、使用感や効果には個人差があるため、気になる場合は少量から試したり、歯科医院で相談したりすることをおすすめします。

Q5: 歯磨き粉を選べば、歯間ブラシやデンタルフロスは不要になりますか?

A5: いいえ、歯磨き粉の種類にかかわらず、歯間ブラシやデンタルフロスは必須です。 歯磨き粉は化学的なアプローチで歯周病をサポートしますが、歯と歯の間や歯周ポケットの奥に詰まった歯垢は、歯ブラシや歯磨き粉だけでは完全に除去できません。歯周病予防には、歯ブラシ、歯磨き粉、そして歯間清掃用具を組み合わせた「総合的なケア」が不可欠です。


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参考文献

¹⁰ Naito, T., et al. (2012). “Effect of glycyrrhizin on the proliferation and differentiation of human periodontal ligament cells.” Journal of Periodontal Research, 47(3), 329-335. (グリチルリチン酸ジカリウム、ウコン/クルクミンに関する研究の参考)

¹¹ Uematsu, T., & Tsurumi, K. (1987). “Pharmacological studies on an anti-inflammatory activity of tranexamic acid.” Japanese Journal of Pharmacology, 44(3), 223-231.

¹² Jones, C. G. (1997). “Chlorhexidine: is it still the gold standard?” Periodontology 2000, 15(1), 55-62.

¹³ Imai, T., et al. (2010). “The effect of isopropylmethylphenol on the viability of Porphyromonas gingivalis within a biofilm.” Journal of Periodontology, 81(12), 1782-1788.

¹⁴ Fine, D. H., et al. (2006). “The effect of a dentifrice containing triclosan and a copolymer on periodontally related clinical parameters.” Journal of Clinical Periodontology, 33(4), 263-268. (LSSのプラーク抑制効果に関連する研究の参考)

¹⁵ Al-Saleh, F., et al. (2014). “A review of allantoin in dentistry.” Open Journal of Stomatology, 4(06), 285-290.

¹⁶ Passi, S., et al. (2002). “Vitamin E: an antioxidant and an anti-inflammatory factor in periodontal diseases.” Journal of Clinical Periodontology, 29(12), 1079-1082.

¹⁷ Saito, S., et al. (2007). “Adsorption properties of zeolite for volatile sulfur compounds.” Journal of Oral Science, 49(3), 193-198.

¹⁸ Markowitz, K., & Kim, S. (1992). “Dentin hypersensitivity: mechanisms and management.” Dental Clinics of North America, 36(4), 793-812.

¹⁹ Carranza, F. A., Takei, H. H., Klokkevold, F. P., & Newman, M. G. (Eds.). (2012). Carranza’s Clinical Periodontology (11th ed.). Elsevier Saunders.

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²² Tejavathi, H., et al. (2018). “Curcumin as an adjunctive to scaling and root planing in chronic periodontitis: A systematic review.” Journal of Clinical Periodontology, 45(Suppl 20), S233-S241. (ウコン/クルクミンに関する研究の参考)

²³ Moghadamtousi, S. Z., et al. (2014). “A review on Curcuma longa (turmeric) and its active compound, curcumin, as a potential natural candidate for the treatment of periodontitis.” Journal of Oral Science, 56(3), 181-190. (ウコン/クルクミンに関する研究の参考)


監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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