column 歯周病

ルートプレーニングとは? 歯周ポケットの奥の汚れを徹底除去

2025.07.29

1. スケーリングだけでは不十分?進行した歯周病に潜む「見えない敵」とは

なぜスケーリングだけでは歯周病を食い止められないのか?

前回のコラムで、歯周病治療の第一歩として「スケーリング」が非常に重要であることをお話ししましたね。スケーリングは、歯茎の上の部分や、比較的浅い歯周ポケットの中に付着したプラーク(歯垢)や歯石を効果的に除去する処置です。これにより、歯周病の初期段階である歯肉炎であれば、多くのケースで炎症を鎮め、歯茎の健康を取り戻すことが期待できます。スケーリングについて詳しくはこちらもご覧ください

しかし、歯周病は進行性の病気であり、常に初期段階で発見できるわけではありません。病気が進行し、歯茎の炎症が深部にまで及ぶと、歯周ポケットはますます深くなります。すると、毎日の歯磨きはもちろんのこと、スケーリングで用いられる器具の届く範囲にも限界が生じてしまうのです。

歯周ポケットの奥に潜む「頑固な汚れ」の正体

深くなってしまった歯周ポケットの奥には、「見えない敵」が潜んでいます。それは、通常の歯石よりもさらにやっかいな、歯茎の下にこびりついた「歯肉縁下歯石」や、歯周病菌が歯の根の表面(歯根面)に作り出す「バイオフィルム」、そして細菌の毒素に汚染された歯根面そのものです。

見えない敵の主な種類

  • 歯肉縁下歯石
    • 歯周ポケットの奥深く、歯茎の下に形成された歯石。非常に硬く、ご自宅でのケアでは絶対に除去できません。
  • 細菌バイオフィルム
    • 歯石の表面や歯根面に強固に付着し、ネバネバとした膜を形成する細菌の集合体。歯周病菌がこの中で繁殖し、持続的に毒素を放出します。
  • 汚染された歯根面
    • 歯周病菌が放出する毒素(エンドトキシンなど)は、歯根の表面を覆う「セメント質」という組織に浸透し、歯周組織の回復を阻害する要因となります。(ただし、現代の治療方針としてセメント質自体を積極的に除去するのではなく、汚染部分を清浄化することが目的であるというニュアンスを念頭に置く)

これらの「頑固な汚れ」が歯周ポケットの奥に残ってしまうと、炎症は慢性的に続き、歯槽骨(歯を支える骨)の破壊も止まらず、歯周病はますます悪化の一途を辿ってしまいます。スケーリングだけではこれらを完全に除去することが困難なため、より専門的な処置が必要となるのです。


2. ルートプレーニングの真髄:歯周病菌の温床を根絶し、歯根を再生する

ルートプレーニングとは?スケーリングとの決定的な違い

進行した歯周病の「見えない敵」に対処するために不可欠なのが、「ルートプレーニング(Root Planing: SRP)」です。これは、単なる歯のクリーニングとは一線を画す、より専門的で治療的な処置です。

ルートプレーニングは、深い歯周ポケットの奥深く、歯の根の表面(歯根面)にこびりついた歯石や、歯周病菌毒素に汚染された歯根表面を徹底的に清掃し、滑らかで清浄な状態に仕上げることを目的とします。

スケーリングが主に歯茎の上の部分や、比較的浅い歯周ポケット内のプラーク・歯石を除去するのに対し、ルートプレーニングは歯肉縁下(歯茎の下)の深い部分、特に歯根面に特化した処置である点が決定的に異なります。歯周病菌が最も活発に活動し、歯周組織を破壊する「温床」を根こそぎ取り除くことで、歯周病の進行を食い止め、歯周組織の回復を促すことが、この治療の真髄と言えるでしょう。

「生物学的に許容できる歯根面」の重要性

ルートプレーニングの現代的な目標は、単に歯石を取り除くだけではありません。最も重要なのは、歯根面を「生物学的に許容できる状態(biologically acceptable surface)」にすることです[1]。これは、歯周病菌が放出する毒素(エンドトキシンなど)で汚染されたセメント質の表面を、健康な歯周組織が再びしっかりと付着できるような、清潔で滑らかな状態にすることを意味します。

以前は、汚染されたセメント質を積極的に削り取ることが一般的でしたが、近年の研究では、セメント質自体は歯周組織の再生に重要な役割を果たすことが分かっています[1]。そのため、現在のルートプレーニングでは、歯周病菌のバイオフィルムや毒素が付着した表層の除去に焦点を当て、健康なセメント質を可能な限り温存することが重視されています。

歯根面が生物学的に許容できる状態になることで、歯茎の線維や骨などの歯周組織がそこに再付着しやすくなり、歯周ポケットの深さが減少したり、場合によっては失われた歯周組織がある程度回復する「アタッチメントゲイン」という現象が促されたりするのです[1]。

歯周病菌の毒素を徹底除去するメカニズム

歯周病が進行すると、歯周ポケットの奥深くでは、酸素を嫌う様々な歯周病菌が繁殖します。これらの細菌は、集まって「バイオフィルム」という強固な膜を形成し、その中で互いに協力し合いながら、**エンドトキシン(内毒素)**をはじめとする様々な有害な毒素を放出します[2]。このエンドトキシンこそが、歯茎の炎症を悪化させ、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かす主要な犯人なのです[2]。

ご自身の歯磨きや、スケーリングだけでは、この歯周ポケットの奥にこびりついたバイオフィルムやエンドトキシンを完全に除去することは困難です。そこで、ルートプレーニングの出番です。この処置では、専用の精密な器具を使い、歯根面に付着した歯石だけでなく、このしつこいバイオフィルムや、歯根面に染み込んだエンドトキシンを徹底的に物理的に除去します。

歯周病菌の「温床」であるこれらを取り除くことで、歯茎への刺激がなくなり、体は過剰な炎症反応を鎮めることができます。これにより、歯周ポケット内の細菌数が大幅に減少し、歯周組織が炎症から回復するための環境が整うのです。まさに、歯周病の根本原因にアプローチし、歯周組織が持つ本来の回復力を引き出すための重要なメカニズムと言えるでしょう。


3. 痛みを抑えて徹底アプローチ!ルートプレーニングの治療プロセス

麻酔で安心!痛みを感じさせない治療の工夫

「歯周ポケットの奥を触るなんて、痛そう…」そう不安に思う方もいるかもしれませんね。ご安心ください。ルートプレーニングは、歯周ポケットの深部、つまり歯の根の表面に直接アプローチする処置のため、患者さんの負担を最小限に抑えることを最優先に考えます。そのため、通常は治療部位に局所麻酔を使用して行われます。

局所麻酔をすることで、治療中の痛みはほとんど感じずに、リラックスして処置を受けていただけます。麻酔が効いている間は、歯茎の感覚が鈍くなったり、唇や舌が一時的にしびれたりすることがありますが、これは麻酔がきちんと効いている証拠ですので心配いりません。麻酔の効果は、治療後数時間で自然に切れていきます。

もし、痛みに敏感な方や治療に対して強い不安がある場合は、遠慮なく歯科医師や歯科衛生士にご相談ください。麻酔量を調整したり、より丁寧な対応を心がけたりするなど、お一人おひとりの状態に合わせた工夫をいたします。

プロの技が光る!精密器具による歯根面クリーニング

麻酔が十分に効いた後、いよいよルートプレーニングの処置が始まります。この治療では、主に「手用スケーラー(キュレット)」と呼ばれる、非常に繊細で精密な専門器具が用いられます。このキュレットは、歯周ポケットの複雑な形状や、歯の根のデコボコした表面に沿って設計されており、肉眼では見えない歯周ポケットの奥深くを探りながら作業を進めます。

歯科医師や歯科衛生士は、キュレットの先端から伝わる微妙な振動や感触を頼りに、歯根面に付着した歯石や、歯周病菌の毒素(エンドトキシンなど)に汚染された部分を慎重に除去していきます。この際、単に削り取るのではなく、健康なセメント質を可能な限り温存し、歯根面を滑らかで清浄な状態に仕上げることを意識します。これは、歯周組織が再び健全に付着しやすい「生物学的に許容できる歯根面」を形成するために不可欠なプロセスです[1]。

場合によっては、超音波スケーラーも併用し、効率的に大きな歯石を除去した後、手用スケーラーでより精密な仕上げを行うこともあります。この一連の作業は、非常に高い専門知識と熟練した技術、そして繊細な感覚が求められる「プロの技」と言えるでしょう。

ルートプレーニングで使用される主な器具

  • 手用スケーラー(キュレット)
    • 歯周ポケットの奥の歯石や汚染物質を、歯根面を傷つけずに精密に除去するために使用されます。術者の繊細な感覚が重要です。
  • 超音波スケーラー
    • 振動と水流によって歯石を効率的に除去します。広範囲の歯石除去や初期のステップで用いられることがあります。

治療は通常、お口全体を一度に行うのではなく、患者さんの負担を考慮し、数回に分けて行われるのが一般的です。これにより、各部位に対してより丁寧かつ徹底した処置が可能になります。

治療後の過ごし方:知っておくべき注意点とケア

ルートプレーニングの処置自体は麻酔のおかげで痛みを感じにくいですが、麻酔が切れた後にいくつかの変化を感じることがあります。これらの症状は一時的なもので、適切なケアで落ち着きますのでご安心ください。

治療後に起こりうる症状と対処法

  • 歯茎の腫れや痛み、違和感
    • 治療直後から数日間、処置した歯茎が一時的に腫れたり、軽い痛みや違和感を伴ったりすることがあります。これは、炎症が治癒に向かう過程で生じる正常な反応です。
    • 対処法: 歯科医師から痛み止めが処方された場合は、指示に従って服用してください。痛みが強い場合は、患部を冷やすのも有効です。
  • 知覚過敏
    • 歯根面に付着していた歯石が除去され、歯根面が露出することで、冷たいものや熱いものが一時的にしみる「知覚過敏」が生じることがあります。
    • 対処法: 通常は数日から数週間で徐々に治まりますが、知覚過敏用の歯磨き粉を使用したり、症状が強い場合は歯科医院でフッ素塗布などの処置を受けたりすることも可能です。
  • 軽い出血
    • 治療後しばらくは、歯磨き時などに少量出血することがあります。
    • 対処法: 優しく丁寧に歯磨きを続け、清潔を保つことで出血は収まります。

これらの症状は通常、数日から1週間程度で治まりますが、もし症状が長引く、または悪化すると感じる場合は、迷わず泉岳寺駅前歯科クリニックにご連絡ください。

治療後のセルフケアのポイント

  • 優しく丁寧な歯磨き
    • 治療部位は、歯ブラシの毛先を歯茎に強く当てすぎず、優しく丁寧にブラッシングしてください。清潔に保つことが治癒を早める鍵となります。
  • 食事の注意
    • 治療直後は、麻酔が効いている間は誤って唇や舌を噛んでしまうリスクがあるため、食事を控えるか、麻酔が切れてから摂るようにしましょう。また、刺激の強いものや硬い食べ物は避け、消化しやすく柔らかいものを中心に摂ることをおすすめします。
  • 処方薬の服用
    • 歯科医師から抗生物質やうがい薬が処方された場合は、感染予防や炎症抑制のために、必ず指示通りに服用・使用してください。

適切な治療後のケアを行うことで、歯茎は引き締まり、健康な状態へと回復していきます。焦らず、歯科医師や歯科衛生士の指示に従ってケアを進めましょう。


4. 劇的改善を実感!ルートプレーニングがもたらす口腔内と全身の健康効果

歯周ポケットの劇的な改善と歯茎の引き締め効果

ルートプレーニングの真価は、その後の口腔内環境の劇的な変化で実感できます。歯周ポケットの奥深くから歯周病菌の温床となる歯石や毒素が徹底的に除去されることで、歯周病の進行は抑制され、停滞していた歯周組織の回復が促されます。

炎症で赤く腫れ上がっていた歯茎は、徐々に引き締まり、健康なピンク色へと変化していきます。これは、歯周病菌による刺激がなくなったことで、体が本来持っている治癒力が最大限に発揮されるためです[1]。結果として、深かった歯周ポケットが浅くなったり、歯茎が歯の根に再びしっかりと付着するアタッチメントゲイン」という現象が起こり、歯周病の改善を実感できるでしょう[1]。この改善は、目で見てわかるほど劇的な変化をもたらすことも少なくありません。

歯のぐらつきを安定化!歯の寿命を延ばす効果

歯周病が進行すると、歯を支えている大切な歯槽骨が徐々に溶かされてしまいます。これにより、歯がグラグラと動き出す「歯の動揺」が生じ、最終的には歯が抜け落ちてしまう、あるいは抜歯せざるを得なくなる深刻な事態に至る可能性があります。

しかし、ルートプレーニングによって歯周ポケット内の歯石や歯周病菌、そしてその毒素が徹底的に除去されると、炎症の原因が取り除かれます。これにより、歯槽骨の破壊が食い止められ、歯の動揺が安定化する効果が期待できます[1]。

一度失われた歯槽骨が完全に元に戻ることは難しい場合が多いですが、これ以上の骨破壊を防ぎ、残っている歯周組織を健全な状態に保つことは、ご自身の歯の寿命を延ばす上で非常に重要です。ルートプレーニングは、大切な歯を守り、将来にわたって美味しく食事をするための基盤を築く、非常に価値のある治療と言えるでしょう。

口臭もスッキリ解消!口腔内環境の劇的変化

歯周病が進行すると、多くの方が悩まされるのが口臭です。歯周病による口臭の主な原因は、歯周ポケットの奥深くに潜む嫌気性歯周病菌が、口腔内のタンパク質を分解する際に産生する「揮発性硫黄化合物(VSC)」というガスです[3]。これは、腐った卵のような、あるいは生ゴミのような不快な臭いとして感じられることが多いでしょう。

ルートプレーニングによって、これらの歯周病菌が作り出すバイオフィルムや、歯根面に付着した毒素が徹底的に除去されると、VSCの産生が大幅に抑制されます。これにより、口臭が劇的に改善されることが期待できます[3]。多くの患者さんが、ルートプレーニング後に「口臭が気にならなくなった」と実感されるのは、口腔内の環境が根本から改善された明確なサインです。

口臭は、日常生活における自信や人間関係にも影響を与えるデリケートな問題です。ルートプレーニングによる根本的な口臭改善は、単にお口の中がきれいになるだけでなく、精神的な負担からも解放され、QOL(生活の質)の向上にも繋がる大きなメリットと言えるでしょう。

全身の健康への波及効果:糖尿病・心臓病リスクの低減

歯周病は、もはや単なるお口の中の病気ではありません。近年の研究により、歯周病菌や歯茎の慢性的な炎症が、全身の健康に深刻な影響を及ぼすことが科学的に明らかになっています[4]。歯周ポケットの奥で増殖した歯周病菌は、歯茎の血管から体内に侵入し、血流に乗って全身を巡ることがわかっています。

特に、以下のような全身疾患との関連が強く指摘されています。

歯周病と関連する主な全身疾患

  • 糖尿病
    • 歯周病は糖尿病の合併症の一つであり、相互に悪影響を及ぼし合う「双方向性(Two-way relationship)」の関係にあります。歯周病が改善されると、糖尿病の血糖コントロールも改善する可能性が示されています[4]。
  • 心血管疾患(心臓病、脳卒中など)
    • 歯周病菌が動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める可能性が指摘されています[4]。口腔内の炎症を抑えることは、これらのリスク低減に繋がります。
  • 誤嚥性肺炎
    • 高齢者において、口腔内の歯周病菌が気管から肺に入り込み、肺炎を引き起こす「誤嚥性肺炎」のリスクを高めます。口腔ケアは肺炎予防に重要です。
  • 早産・低体重児出産
    • 妊婦さんの場合、歯周病が早産や低体重児出産の原因となる可能性も示唆されています[4]。

ルートプレーニングによって口腔内の歯周病菌や炎症がコントロールされることは、これらの全身疾患のリスクを低減し、全身の健康維持に大きく貢献します。お口の中をきれいに保つことは、健康寿命を延ばし、より充実した人生を送るための重要な取り組みなのです。歯周病と全身疾患の関連性について詳しくはこちらもご参照ください。


5. 治療のその先へ:ルートプレーニング後の「再発させない」ための秘訣

治療はスタートライン!継続的なセルフケアの重要性

ルートプレーニングによって、歯周病菌の温床である歯石や毒素は徹底的に除去され、歯茎は健康な状態を取り戻し始めます。しかし、これで歯周病治療が完了したわけではありません。歯周病は、糖尿病や高血圧と同じように、生活習慣病の一面を持つ慢性疾患です。そのため、一度治療しても、その後のケアを怠ると再発するリスクが常に付きまといます。

せっかく回復したお口の健康を長く維持し、歯周病の再発を防ぐためには、日々の丁寧なセルフケアが不可欠です。ルートプレーニングは、いわばお口の中の「大掃除」。この大掃除で得られた清潔な環境を維持していくのは、あなたの毎日の努力にかかっています。

歯周病再発を防ぐためのセルフケアのポイント

  • 正しい歯磨き
    • 歯と歯茎の境目、そして歯と歯の間に汚れが残りやすいので、そこに歯ブラシの毛先をしっかり当て、軽い力で小刻みに動かす「バス法」などの正しいブラッシング方法を実践しましょう。正しい歯磨き方法の基本はこちら電動歯ブラシと手磨きの比較はこちらもご参照ください。
  • 適切な歯ブラシの選択
    • 毛先が細く、柔らかめの歯ブラシを選び、歯周ポケットの奥まで毛先が届きやすいものが理想的です。電動歯ブラシも、効果的なプラーク除去に役立つことがあります。
  • 歯間ケアの徹底
    • 歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは6割程度しか落とせません[5]。残りの4割の汚れを除去するために、歯間ブラシデンタルフロスを毎日使うことが非常に重要です。これらは、歯周病菌が隠れやすい歯間のプラークを効果的に取り除きます。歯間ブラシの選び方完全ガイドはこちらもぜひ参考にしてください。
  • 口腔ケア補助製品の活用
    • 歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、殺菌成分を含む洗口液(マウスウォッシュ)なども、セルフケアの補助として有効です。

毎日の積み重ねが、歯周病の再発を防ぎ、治療効果を最大限に引き出す鍵となります。

プロの目で徹底サポート!定期検診とPMTCの役割

どんなに完璧なセルフケアを毎日実践していても、どうしても磨き残しは発生してしまうものです。また、一度硬くなってしまった歯石は、ご自身の歯ブラシでは決して取り除けません。そこで、ルートプレーニングで得られた良好な口腔環境を維持するために不可欠なのが、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアです。

定期検診で「見えない」リスクを早期発見

定期検診では、歯科医師や歯科衛生士があなたの口腔内を専門的な視点から詳細にチェックします。

定期検診でチェックする主なポイント
  • 歯周ポケットの深さ
    • 歯周病の再発や進行がないか、歯周ポケットの深さを定期的に測定します。
  • 歯茎の状態
    • 腫れや出血の有無、引き締まり具合などを確認します。
  • プラークや歯石の付着状況
    • セルフケアでは届きにくい部分の磨き残しや、新たな歯石の形成がないかをチェックします。

これらのチェックにより、歯周病の再発の兆候や、新たな問題の発生を早期に発見し、対処することが可能になります。問題が小さいうちに見つかれば、簡単な処置で済む場合も多く、歯周病の再進行を防ぐ上で極めて重要です[6]。

PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)で徹底清掃

定期検診と合わせて行われるのが「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」です。これは、歯科医師や歯科衛生士が専用の器具を使用し、歯の表面や歯周ポケットの浅い部分に付着したプラークバイオフィルム、そして日常生活で付着する茶渋などの着色汚れを徹底的に除去する処置です。

ルートプレーニングでは対応しきれない微細な汚れや、再付着したばかりの細菌の塊を取り除くことで、虫歯や歯周病の予防効果をさらに高めます。歯面がツルツルになることで、汚れがつきにくくなる効果も期待できます。

一般的に、ルートプレーニングの後は、3ヶ月から6ヶ月に一度の定期的な検診とPMTCが推奨されます[7]。この継続的なプロフェッショナルケアこそが、歯周病治療で得た健康な口腔環境を長期的に維持するための最も効果的な方法なんです。ご自身の歯を守るためにも、歯科医院と「二人三脚」でのケアをぜひ続けていきましょう。


6. 歯周病治療は泉岳寺駅前歯科クリニックへ:あなたの大切な歯を守るために

ここまで、歯周病がなぜ進行するのか、そしてその根本的な治療である「ルートプレーニング」がいかに重要であるかについて詳しく解説してきました。ルートプレーニングは、歯周ポケットの奥深くに潜む歯周病菌の温床を徹底的に除去し、歯根面を健康な状態に整えることで、歯茎の炎症を鎮め、歯の寿命を延ばすだけでなく、全身の健康にも良い影響をもたらす、非常に価値のある治療です。

あなたの大切な歯を守るために、今すぐ行動を!

歯周病は、初期段階ではほとんど自覚症状がないため、「サイレントキラー」と呼ばれます。痛みがないからと放置している間に、病気は静かに進行し、気づいた時には手遅れになることも少なくありません。だからこそ、早期発見・早期治療が何よりも大切です。

もし、歯茎からの出血、腫れ、口臭、あるいは歯のぐらつきなど、少しでも気になる症状があるなら、それは歯周病のサインかもしれません。また、自覚症状がなくても、前回の歯科検診から時間が経っている場合は、一度お口の状態をチェックしてもらうことを強くお勧めします。口腔内の健康は、全身の健康に直結する大切な要素です。あなたの歯を守るための第一歩は、今すぐ行動することから始まります。

泉岳寺駅前歯科クリニックの専門性とサポート体制

東京都港区にある泉岳寺駅前歯科クリニックでは、歯周病治療の基本となるスケーリングから、より専門的なルートプレーニングまで、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な口腔ケアを提供しています。当院の歯周病治療について詳しくはこちらをご覧ください。

経験豊富な歯科医師と歯科衛生士が、丁寧なカウンセリングと精密な検査に基づき、あなたの歯と歯茎の健康を全力でサポートいたします。治療後の適切なセルフケア指導や、**定期的なメインテナンス(PMTC)**を通じて、歯周病の再発を防ぎ、健康な口腔内環境を長期的に維持できるよう、二人三脚で伴走させていただきます。

当院は、都営浅草線・京急本線の泉岳寺駅A3出口から徒歩1分と、非常にアクセスしやすい立地です。JR線の高輪ゲートウェイ駅品川駅からもアクセスが良く、お仕事帰りや買い物ついでにもお立ち寄りいただけます。

ルートプレーニング」は、あなたの歯を守り、健康的で快適な毎日を送るための重要なステップです。歯周病でお悩みの方も、予防を始めたい方も、どうぞお気軽に泉岳寺駅前歯科クリニックへご相談ください。皆様のご来院を心よりお待ちしております。


FAQ(よくある質問)

Q1. ルートプレーニングは痛いですか?

A1. ルートプレーニングは、歯周ポケットの深部を処置するため、通常は局所麻酔を使用して行われます。そのため、治療中に痛みを感じることはほとんどありません。麻酔が切れた後に一時的に軽い痛みや違和感、冷たいものがしみるような知覚過敏が生じることがありますが、これらは通常、数日から1週間程度で治まります。痛みに敏感な方や不安がある場合は、事前に歯科医師にご相談ください。

Q2. ルートプレーニングは何回くらい通院が必要ですか?

A2. 通院回数は、歯周病の進行度合いや歯石の付着状況、治療を行う範囲によって異なります。お口全体に広範囲にわたる場合は、患者さんの負担を考慮し、通常2~4回に分けて行われることが多いです。具体的な治療計画や回数については、診察後に歯科医師から詳しくご説明しますのでご安心ください。

Q3. ルートプレーニングで歯周病は完治しますか?

A3. ルートプレーニングは、歯周病の原因となる歯石や細菌毒素を徹底的に除去し、歯周組織の回復を促す非常に効果的な治療です。しかし、歯周病は生活習慣病の側面も持つため、「完治」というよりは「長期的なコントロール」が重要となります。治療後も、毎日の適切なセルフケアと、歯科医院での定期的な検診やPMTCを継続することで、健康な状態を維持し、再発を防ぐことが可能になります。

Q4. ルートプレーニングの費用はどのくらいかかりますか?

A4. ルートプレーニングは、歯周病治療の一環として健康保険が適用される処置です。そのため、費用は全国一律で定められており、患者さんの自己負担割合(1割、2割、3割など)によって異なります。処置を行う部位の数や、歯周病の進行度合いによって費用は変動しますので、治療前に概算の費用について、歯科医院で詳しく説明があります。

Q5. ルートプレーニング後に注意することはありますか?

A5. 治療直後は、麻酔が効いている間は誤って噛んでしまわないよう、食事を控えるか注意して摂りましょう。また、治療部位の歯茎は一時的にデリケートになっているため、刺激の強い食べ物や硬いものは避け、優しく丁寧に歯磨きをしてください。歯科医師から痛み止め抗生物質が処方された場合は、指示通りに服用することが大切です。症状が長引いたり、悪化したりするようであれば、速やかに歯科医院にご連絡ください。


参考文献

[1] Carranza, F. A., Takei, H. H., Newman, M. G., & Klokkevold, P. R. (Eds.). (2018). Carranza’s Clinical Periodontology (13th ed.). Elsevier. (歯根面処理、アタッチメントゲイン、歯周組織治癒の原則に関する記述)

[2] Socransky, S. S., & Haffajee, A. D. (2005). Periodontal microbial ecology. Periodontology 2000, 38(1), 135-187. (歯周病菌のバイオフィルム形成、エンドトキシン、病原性に関する記述)

[3] Yaegaki, K., & Coil, J. M. (2000). The effect of periodontal treatment on oral malodor. Journal of Periodontology, 71(5), 794-802. (歯周病治療と口臭改善に関する記述)

[4] Sanz, M., & Teughels, W. (Eds.). (2015). Periodontology 2000: Periodontal Medicine. Wiley Blackwell. (歯周病と全身疾患(糖尿病、心血管疾患、早産・低体重児出産など)の関連性に関する広範な記述)

[5] Axelsson, P., & Lindhe, J. (1978). Effect of controlled oral hygiene procedures on the progression of periodontal disease. Journal of Clinical Periodontology, 5(2), 133-151. (正しい口腔清掃方法によるプラーク除去効果と歯周病進行抑制に関する記述)

[6] Lang, N. P., Tonetti, M. S., & Working Group 4 of the European Workshop on Periodontology. (2003). Periodontal risk assessment (PRA) for patients in supportive periodontal therapy (SPT). Journal of Clinical Periodontology, 30(Suppl 4), 167-170. (定期検診によるリスク早期発見の重要性に関する記述)

[7] Tonetti, M. S., et al. (2017). Principles in Periodontal Maintenance: Consensus Report of Working Group 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. Journal of Periodontology, 89(S1), S295-S301. (歯周病メインテナンスにおける推奨される定期検診間隔に関する記述)


監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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