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【徹底解説】歯肉移植術で歯ぐきの見た目と機能を改善!知覚過敏も解決?

2025.08.01

「最近、歯が長くなった気がする」「歯磨きすると、歯の根元がしみる」「歯と歯の間に隙間ができてきた……」。もし、このような変化に気づいたら、それは**歯ぐきの退縮(歯肉退縮)**が起きているサインかもしれません。歯ぐきの退縮は、見た目の問題だけでなく、お口の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。


歯ぐきの退縮、もしかしてあなたも?その原因と放置するリスク

歯ぐきが下がるってどういう状態?退縮のメカニズムを解説

歯ぐきの退縮とは、歯を支える歯ぐき(歯肉)が下がってしまい、本来歯ぐきに覆われているはずの歯の根元(歯根)が露出してしまう状態を指します。健康な歯ぐきは、歯の根元をしっかりと包み込み、外界からの刺激から守っています。しかし、様々な原因によって歯ぐきが痩せ細り、歯根が露出することで、見た目が悪くなるだけでなく、様々なトラブルを引き起こします。

まるで、土壌が痩せて木の根が見えてしまうように、歯ぐきが下がると歯の土台が不安定になり、様々な問題が表面化してくるのです。

なぜ歯ぐきは下がるの?主な原因を知ろう

では、なぜ歯ぐきは下がってしまうのでしょうか。主な原因は以下の通りです。より詳しい歯ぐきが下がる原因については、当院のコラムもご覧ください。 歯茎が下がる原因と治療法は?下がってしまった歯茎を改善する方法

歯周病

歯ぐきが下がる最も一般的な原因は、歯周病の進行です。歯周病菌が歯ぐきに炎症を引き起こし、最終的には歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてしまいます。骨が失われると、それに伴って歯ぐきも下がってしまうのです。最新の包括的なレビュー[1]でも、歯周病が歯肉退縮の主要な原因であることが強調されています。

不適切な歯磨き

毎日行っている歯磨きも、方法を間違えると歯ぐきを傷つける原因になります。特に、**「ゴシゴシと力を入れすぎるブラッシング」「硬すぎる歯ブラシの使用」**は、歯ぐきに物理的なダメージを与え、徐々に歯ぐきをすり減らして退縮を招いてしまいます。不適切な歯ブラシの使用は、歯肉の擦り減りを引き起こすことが報告されています[2]。

加齢

残念ながら、加齢も歯ぐきの退縮の一因となります。年齢を重ねるにつれて、歯ぐきの組織は自然と薄くなり、弾力性も失われていきます。これは生理的な変化であり、誰にでも起こりうる現象です。

歯並び・咬み合わせの問題

歯並びが悪いと、特定の歯に過剰な咬み合わせの力がかかりやすくなります。このような過度な負担が継続的にかかることで、その部位の歯ぐきに炎症やストレスが生じ、退縮を引き起こすことがあります[3]。

その他の要因

上記の他にも、以下のような要因が歯肉退縮に影響を与えることがあります。

喫煙

血行を悪くし、歯ぐきの健康を損なうため、歯肉退縮のリスクを高めます。

遺伝

歯ぐきの厚さや質には個人差があり、遺伝的な要素も関与することが指摘されています[5]。

特定の全身疾患

糖尿病など、一部の全身疾患は歯周組織の健康に影響を与え、歯肉退縮を悪化させる可能性があります[6]。

過去の歯科治療

不適切な被せ物や、過去の矯正治療が歯ぐきに負担をかけることもあります[3]。

放置するとどうなる?見た目だけじゃない深刻な問題点

「歯ぐきが少し下がったくらい」と軽く考えてはいけません。歯肉退縮を放置すると、以下のような深刻な問題に発展する可能性があります。

審美性の悪化

露出した歯根は、歯が不自然に長く見えたり、歯と歯の間に黒い三角形の隙間(ブラックトライアングル)ができたりと、見た目のコンプレックスに繋がります。特に前歯の退縮は、笑顔に自信が持てなくなる原因にもなりかねません。

知覚過敏の発生

歯の表面はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、歯根の表面は「象牙質」という柔らかい組織でできています。この象牙質には、歯の神経に繋がる**「象牙細管」と呼ばれる小さな穴が無数に開いています。歯ぐきが下がって象牙質が露出すると、冷たいもの、熱いもの、甘いもの、歯磨きの刺激などが直接象牙細管を通して神経に伝わり、「しみる」という知覚過敏の症状**を引き起こします。日常生活での不快感は、想像以上に大きいものです。知覚過敏についてより詳しく知りたい方は、当院のページもご参照ください。 知覚過敏 – 泉岳寺駅前歯科クリニック

虫歯・歯周病リスクの増加

露出した歯根表面の象牙質は、エナメル質よりも柔らかく、酸に弱いため、虫歯になりやすい特徴があります[7]。また、歯ぐきが下がると、歯周ポケットが深くなりやすくなり、プラーク(歯垢)や歯石が蓄積しやすくなります。これにより、歯周病がさらに進行するリスクが高まります。

最終的な歯の喪失リスク

歯肉退縮とそれに伴う歯周病の進行を放置すると、歯を支える骨がさらに失われ、歯がグラグラになり、最終的には大切な歯を失ってしまう可能性もあります。歯の健康は全身の健康にも繋がるため、早期の対応が非常に重要です。


歯肉移植術ってどんな治療?見た目も機能も取り戻すメカニズム

歯ぐきの退縮が引き起こす様々な問題に直面したとき、「もう元には戻らないのかな」と諦めてしまう方も少なくありません。しかし、現代の歯科医療には、失われた歯ぐきを回復させ、見た目と機能を同時に改善できる画期的な治療法があります。それが、歯肉移植術です。

歯肉移植術とは?失われた歯ぐきを「再生」させる治療法

歯肉移植術(Gingival Grafting)とは、文字通り、ご自身の健康な歯肉を体の別の部位(主に上顎の口蓋部)から少量採取し、歯ぐきが退縮している部分に移植する外科治療です。これは単に「歯ぐきを足す」というよりも、失われた歯ぐきの組織を「再生」させる、つまり、もともとあった健全な歯周組織を再構築する治療と捉えることができます。泉岳寺駅前歯科クリニックで行う歯肉移植術の種類については、こちらのページをご覧ください。 歯茎の再生治療 – 泉岳寺駅前歯科クリニック

この治療の主な目的は、露出してしまった歯根を再び歯肉で覆い隠すこと(根面被覆)と、歯ぐきの厚みや強さを増して、今後の歯肉退縮や歯周病の進行を防ぐことにあります。

歯肉移植術にはいくつかの術式がありますが、歯ぐきの見た目を改善し、知覚過敏を解決する上で特に効果的なのが**結合組織移植術(Connective Tissue Graft: CTG)です。これは、口蓋の表面から見えない内側の結合組織のみを採取し、移植するため、より自然な仕上がりが期待できます[8]。他にも、歯周病予防や義歯の安定のために、より強固な歯肉(角化歯肉)を増やす目的で行われる遊離歯肉移植術(Free Gingival Graft: FGG)**などがあります[9]。

歯ぐきの見た目はどう変わる?審美性改善のポイント

歯肉移植術は、歯ぐきの退縮によって損なわれた審美性を大きく改善します。具体的には、以下のような変化が期待できます。

歯が長く見える不自然さの解消

退縮によって長く見えていた歯が、再び歯肉に覆われることで、自然な歯の長さと形に戻ります。これにより、歯ぐきのラインが整い、よりバランスの取れた口元を演出できます。

歯と歯ぐきの境目の改善

露出した歯根は、色味が異なるため、歯と歯ぐきの境目が不自然に見えがちです。歯肉移植術によってこの境目が目立たなくなり、滑らかで健康的なピンク色の歯ぐきが再現されます。特に、結合組織移植術は、移植した歯肉が周囲の歯肉の色調と馴染みやすいため、審美的な仕上がりに優れているとされています[8]。

これらの改善により、人前で笑うことや話すことへの抵抗感がなくなり、自信に満ちた笑顔を取り戻せる方も多くいらっしゃいます。

知覚過敏はなぜ改善する?歯の機能回復メカニズム

歯肉移植術は、見た目だけでなく、歯の機能的な問題、特に知覚過敏の解決に大きく貢献します。

露出した象牙質を物理的に保護

歯ぐきが下がって歯根が露出すると、歯の神経へと繋がる象牙細管が外部にさらされます。この象牙細管を通じて、冷たい飲み物や熱い食べ物、甘いもの、あるいは歯ブラシの摩擦といった刺激が直接神経に伝わり、「キーン」とした不快な知覚過敏の症状を引き起こします。歯肉移植術によって移植された歯肉は、この露出した歯根表面をしっかりと覆い隠します。これにより、外部からの刺激が遮断され、象牙細管を介した神経への伝達が防がれるため、知覚過敏の症状が軽減または解消されるのです[10]。

歯根の保護と虫歯予防

知覚過敏の解消に加え、歯肉移植術は歯根そのものの保護にも繋がります。露出した歯根はエナメル質がなく、酸に弱いため虫歯になりやすいだけでなく、歯ブラシの摩擦などによって物理的に削れやすい特性があります。新しい歯肉が歯根を覆うことで、これらの虫歯や摩耗のリスクから歯根を保護し、歯の寿命を延ばすことにも寄与します。

このように、歯肉移植術は見た目の美しさだけでなく、歯の健康と快適な口腔機能を取り戻すための、非常に効果的な治療法なのです。


歯肉移植術はこんな方におすすめ!適応症と治療を検討すべきケース

歯ぐきの退縮に悩む多くの方にとって、歯肉移植術は非常に有効な治療法となり得ます。しかし、誰もがこの治療に適しているわけではありません。ここでは、歯肉移植術を検討すべき具体的なケースと、治療が難しい、あるいは注意が必要なケースについて詳しく見ていきましょう。

こんなお悩みはありませんか?歯肉移植術が解決する具体的な症状

もしあなたが以下のような症状や悩みを抱えているなら、歯肉移植術が解決策となるかもしれません。

審美的なコンプレックスがある方

「笑うと歯ぐきが下がっているのが目立って気になる」「歯が長くなったように見えて老けて見える」「歯と歯の間に黒い隙間(ブラックトライアングル)ができてしまった」。このような見た目に関するお悩みは、歯肉移植術によって大きく改善できます。露出した歯根が歯肉で覆われることで、自然でバランスの取れた歯ぐきのラインを取り戻し、自信を持って笑顔になれるでしょう。特に前歯の退縮は、見た目の印象を大きく左右するため、この治療が非常に有効です。

知覚過敏で日常生活に支障がある方

冷たい飲み物やアイスクリーム、甘いもの、あるいは歯磨きをするだけで「キーン」としみる知覚過敏の症状に悩まされている方にとって、歯肉移植術は根本的な解決策となる可能性があります。露出した歯根が歯肉で覆われることで、外部からの刺激が遮断され、不快な知覚過敏が軽減または解消されることが期待できます[10]。

歯根の虫歯や摩耗のリスクが高い方

歯ぐきが退縮して露出した歯根は、エナメル質で保護されていないため、酸に弱く虫歯になりやすい(根面う蝕)という特徴があります[7]。また、歯ブラシの摩擦などによって歯根が削れてしまう**摩耗(アブフラクションなど)**のリスクも高まります。歯肉移植術によって歯根が歯肉で覆われることで、これらのリスクから歯根を保護し、大切な歯の寿命を延ばすことにつながります。

歯周病治療後の口腔環境の改善を望む方

重度の歯周病治療が成功し、炎症が治まったとしても、歯ぐきの量が不足している場合があります。このような状況では、歯周病の再発リスクが高いだけでなく、適切なセルフケアが難しくなることもあります。歯肉移植術で丈夫な歯肉(角化歯肉)を増やすことで、歯周病への抵抗力を高め、プラークコントロールを容易にし、口腔全体の長期的な健康維持に貢献します[11]。

インプラント周囲の歯肉が不足している方

インプラントを長期間安定させるためには、その周囲に十分な量の健康な歯ぐき(付着歯肉)があることが重要です。歯肉移植術は、インプラント周囲の歯肉を補強し、インプラント周囲炎の予防や、インプラントの見た目の改善にも役立つことがあります[12]。

治療を検討する前に!受けるべきではないケースと注意点

歯肉移植術は多くのメリットを持つ一方で、すべての方に適しているわけではありません。治療を検討する前に、以下の点を確認しましょう。

重度の歯周病が未治療の場合

活動性の高い重度の歯周病がある場合、先に歯周病の根本的な治療を完了させる必要があります。歯周病がコントロールされていない状態で歯肉移植術を行っても、移植片の生着が悪くなったり、再退縮したりするリスクが高まります。健康な歯周組織を土台にすることで、初めて歯肉移植術の成功率を高めることができます。

全身疾患をお持ちの方

糖尿病や心臓病など、特定の全身疾患をお持ちの方、あるいは免疫抑制剤や血液をサラサラにする薬を服用している方は、出血のリスクや治癒の遅延が考えられます。治療の可否や安全性を慎重に判断するため、必ず事前にかかりつけ医と歯科医師に全ての病歴や服用薬を伝え、連携して治療計画を立てることが重要です。

喫煙者の方

喫煙は、血行を著しく悪化させ、歯ぐきの治癒能力を低下させます。そのため、歯肉移植術の成功率を下げ、術後の合併症のリスクを高めることが複数の研究で示されています[4]。治療を検討している場合は、事前に禁煙を強く勧められます。

口腔衛生状態が極端に悪い方

日頃の歯磨きが不十分で口腔衛生状態が悪い場合、術後の感染リスクが高まり、移植片がうまく生着しない可能性があります。歯肉移植術の成功と長期的な安定のためには、患者さん自身の丁寧なセルフケア(適切な歯磨き習慣)が不可欠です。治療前に、適切な口腔衛生指導を受け、実践することが求められます。

過度な期待を抱いている方

歯肉移植術は素晴らしい効果をもたらす治療法ですが、完全に元の状態(退縮する前の状態)に戻ることを保証するものではありません[13]。また、移植片の生着率や最終的な審美的な仕上がりには個人差があります。治療を受ける前に、歯科医師と十分に話し合い、ご自身の状態での現実的な治療目標と期待値を共有しておくことが非常に大切です。


治療の流れを徹底解説!歯肉移植術で失敗しないためのポイント

歯肉移植術は、専門性の高い外科処置ですが、その治療プロセスを事前に理解しておくことで、安心して臨むことができます。ここでは、カウンセリングから術後のケアまで、歯肉移植術の具体的な流れと、治療を成功させるための重要なポイントを解説します。

STEP1:まずは相談から!精密検査とカウンセリング

歯肉移植術を検討するにあたり、最も重要なのが、経験豊富な歯科医師との丁寧なカウンセリングと精密検査です。

現状の把握と原因の特定

まず、あなたの歯ぐきの状態や具体的なお悩み(「しみる」「見た目が気になる」など)を詳しくヒアリングします。その後、口腔内を視診・触診し、歯ぐきの退縮の程度や、歯周組織全体の健康状態を確認します。歯肉退縮の原因を正確に特定することが、適切な治療計画を立てる上で不可欠です。

精密検査の実施

正確な診断と治療計画のために、以下の検査が不可欠です。

1. レントゲン撮影

歯を支える骨の状態や、隠れた歯周病の進行度合いなどを確認します。

2. 口腔内写真撮影

治療前後の比較や、詳細な治療計画の立案に役立ちます。また、客観的に現状を把握するためにも重要です。

3. 歯周組織検査

歯周ポケットの深さや出血の有無などを測定し、歯周病の活動性を評価します。これは、歯肉移植術の成功に直結する重要な情報です。

4. CT撮影(必要に応じて)

骨の立体的な構造や神経・血管の位置を詳細に把握し、より安全で確実な手術計画を立てるために行われることがあります。

診断と治療計画の説明

これらの検査結果に基づき、歯科医師はあなたの口腔状態に合わせた最適な治療計画を提案します。

1. 最適な術式

結合組織移植術、遊離歯肉移植術など、あなたに最も適した術式とその理由について詳しく説明されます。

2. 期待できる効果

審美性の改善度合い、知覚過敏の軽減度、歯根保護の可能性など、現実的に期待できる効果が具体的に伝えられます。

3. 治療期間と費用

全体の治療期間、手術にかかる時間、そして自由診療となる場合の費用についても、明確な見積もりとともに説明があります。

4. リスクと注意点

手術に伴う可能性のある痛み、腫れ、合併症(感染など)についても、事前にしっかりと説明を受け、理解しておくことが大切です。

この段階で、疑問や不安な点があれば、遠慮なく質問し、納得がいくまで話し合うことが、安心して治療を受けるための鍵となります。

STEP2:手術当日!麻酔と採取・移植の具体的な流れ

十分なカウンセリングと準備を経て、いよいよ手術当日を迎えます。

麻酔による痛みのコントロール

手術は通常、局所麻酔を施して行われます。麻酔がしっかりと効いている間は、痛みを感じることはほとんどありませんのでご安心ください。歯科医院によっては、リラックス効果のある笑気麻酔や、より深い鎮静を得られる静脈内鎮静法などのオプションを提供している場合もあります。不安が強い場合は、事前に相談してみましょう。

歯肉の採取(ドナーサイト)

多くの場合、歯肉の採取は**上顎の口蓋(口の天井部分)**から行われます。この部分は、歯肉が厚く、採取しても機能や見た目に影響が出にくいという特徴があります[14]。採取するのはごく少量であり、見た目の心配はほとんどありません。ご自身の組織(自家組織)を使用するため、拒絶反応やアレルギーのリスクが極めて低いという大きなメリットがあります。採取後は、必要に応じて保護材を適用し、治癒を促します。

歯肉の移植(レシピエントサイト)

採取した歯肉(移植片)は、歯ぐきが退縮している部位(露出した歯根部)に、緻密な技術を用いて丁寧に配置されます。移植片がしっかりと安定し、周りの組織と結合するように、非常に細い糸で慎重に縫い合わせられます。この際、単に歯肉を被せるだけでなく、歯ぐきのラインが自然に見えるよう、審美性も考慮しながら形を整えていくことが、歯科医師の腕の見せ所となります[15]。

STEP3:術後のケアが成功のカギ!回復期間の過ごし方

手術自体が成功しても、その後の適切な術後ケアが、最終的な治療の成功と長期的な安定を左右します

術後の一般的な症状と対処

手術後は、以下のような症状が出ることがありますが、これらは一時的なもので、適切に対処することでコントロールできます。

1. 痛みと腫れ

手術部位(移植部と採取部)に軽度から中程度の痛みや腫れが出ることがあります。処方された痛み止めを服用することで、痛みを抑えられます。腫れは、術後2~3日をピークに徐々に引いていきます。

2. 内出血

稀に、手術部位やその周辺に内出血が見られることがありますが、通常は数日で自然に吸収され消失します。

回復期間の過ごし方と注意点

術後の治癒を妨げないために、以下の点に注意して過ごしましょう。

1. 安静

術後しばらく(通常は数日間)は、激しい運動や重労働、飲酒、喫煙を避け、安静に過ごすことが重要です。喫煙は血行を悪化させ、移植片の生着を大きく阻害するため、最低でも術後数週間は禁煙が強く推奨されます[4]。

2. 食事

術後1週間程度は、手術部位に負担がかからないように、柔らかく刺激の少ない食事(おかゆ、スープ、ゼリーなど)を心がけましょう。採取した口蓋側の負担を避けるため、反対側で噛むなどの工夫も有効です。

3. 口腔ケア

手術部位を直接歯ブラシで磨くのは避け、歯科医師の指示に従い、処方されたうがい薬で優しく消毒してください。その他の部分は、これまで通り丁寧にブラッシングを続け、口腔内全体を清潔に保つことが感染予防に繋がります。

4. 定期的な経過観察と抜糸

術後数日〜1週間程度で再来院し、傷口の状態チェックと消毒、そして必要であれば抜糸が行われます。移植片が生着するまでの大切な期間なので、歯科医師の指示に必ず従いましょう。

長期的なメンテナンスの重要性

歯肉移植術で歯ぐきが回復しても、日々の適切なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケア(定期検診、クリーニング)が不可欠です。これにより、歯ぐきの健康を長期的に維持し、再退縮や新たな歯周病の発生を防ぐことができます。治療後の美しい笑顔と口腔環境を長く保つために、歯科医院との連携を継続しましょう。


知っておきたい!歯肉移植術のメリットとデメリットを徹底比較

どんなに優れた治療法にも、メリットとデメリットが存在します。歯肉移植術も例外ではありません。治療を受ける前に、期待できる効果と潜在的なリスクの両方をしっかりと理解しておくことが、後悔のない選択をするために非常に重要です。

歯肉移植術のココがすごい!治療がもたらす5つのメリット

歯肉移植術は、歯ぐきの退縮に悩む方にとって、生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。主なメリットは以下の5点です。

1. 審美性の劇的な改善

歯ぐきが下がって露出した歯根は、歯が長く見えたり、歯と歯の間に不自然な隙間ができたりと、見た目の大きなコンプレックスになります。歯肉移植術によって、これらの露出した歯根が健康な歯肉で覆われることで、自然でバランスの取れた歯ぐきのラインが回復します。これにより、笑顔に自信が持てるようになり、見た目の印象が大きく向上します。特に結合組織移植術は、移植片が周囲の歯肉と馴染みやすく、審美的な仕上がりに優れているとされています[8]。

2. 知覚過敏の根本的解決

歯ぐきの退縮によって、歯根の象牙質が露出し、冷たいものや甘いものが「しみる」知覚過敏の症状に悩まされる方は少なくありません。歯肉移植術は、この露出した象牙質を物理的に歯肉で覆い隠すため、外部からの刺激が遮断され、知覚過敏の症状が大幅に軽減されるか、完全に解消されることが期待できます[10]。これは、一時的な症状緩和ではなく、原因に対する根本的なアプローチです。

3. 歯根の保護と虫歯・歯周病リスクの低減

露出した歯根の表面はエナメル質がなく、柔らかいため、酸に弱く虫歯になりやすい(根面う蝕)というリスクがあります[7]。また、歯磨きの際に過度な力が加わると、歯根が削れてしまう(摩耗)ことも。移植された歯肉が歯根を物理的に保護することで、これらの虫歯や摩耗のリスクから大切な歯を守り、歯の寿命を延ばすことにつながります。さらに、健康な歯肉はプラーク(歯垢)の付着を抑制し、歯周病への抵抗力も高めます。

4. 口腔全体の健康維持と歯周病への抵抗力向上

歯肉移植術は、単に見た目を良くするだけでなく、口腔全体の健康状態を向上させます。特に、薄く脆弱になった歯肉を補強し、丈夫な**「角化歯肉(付着歯肉)」を増やす**ことで、歯周病菌が侵入しにくい環境を整え、歯周病の進行を抑えることができます[11]。これは、長期的な視点で歯ぐき全体の安定と健康を維持するために非常に重要です。

5. 自己組織の使用による高い生体親和性

歯肉移植術では、患者さんご自身の健康な歯肉(自家組織)を移植に用います。このため、拒絶反応やアレルギー反応のリスクが極めて低いという大きなメリットがあります。人工材料を用いる場合に比べて、生体との馴染みが良く、安全性が高い治療法と言えます。

治療前に確認!知っておくべきデメリットとリスク

多くのメリットがある一方で、歯肉移植術には考慮すべきデメリットとリスクも存在します。

1. 外科手術に伴う身体的負担とダウンタイム

歯肉移植術は外科手術であるため、術後に痛み、腫れ、内出血が発生する可能性があります。特に、歯肉を採取した部位(ドナーサイト、多くは口蓋)に、術後数日間不快感や痛みが続くことがあります[16]。個人差はありますが、一時的に食事の制限や激しい運動の制限など、通常の生活に影響が出るダウンタイムがあることを理解しておく必要があります。

2. 費用が高額になる可能性(自由診療)

歯肉移植術の多くは、健康保険が適用されない自由診療となります。そのため、治療にかかる費用は全額自己負担となり、クリニックや治療範囲によって異なりますが、比較的高額になる傾向があります。泉岳寺駅前歯科クリニックの歯肉移植術の費用に関する詳細な情報は、当院の「歯茎の再生治療」ページでご確認いただけます。 歯茎の再生治療 – 泉岳寺駅前歯科クリニック

治療開始前に、詳細な費用について歯科医師から説明を受け、納得した上で治療を進めることが不可欠です。

3. 仕上がりの個人差と期待値の調整

歯肉移植術は高い成功率を誇りますが、移植片の生着率や最終的な歯ぐきの形状、色調の回復度合いには個人差があります。すべての場合において、完全に退縮する前の状態に戻ることを保証するものではありません[13]。現実的な治療目標と期待値を、事前に担当医と十分に話し合い、理解しておくことが、治療後の満足度を高めるために重要です。

4. 喫煙や不適切な口腔ケアによる影響

喫煙は、血流を悪化させ、歯肉の治癒能力を著しく低下させます。そのため、歯肉移植術の成功率を下げ、感染や移植片の脱落といった合併症のリスクを高めることが、多くの研究で指摘されています[4]。また、術後の指示に従わない不適切な口腔ケアも、トラブルの原因となります。治療を検討している場合は、事前に歯科医師から指導を受け、術前・術後の禁煙と適切な口腔衛生習慣を徹底することが大変重要ですす。

5. ごく稀な合併症のリスク

非常に稀ではありますが、外科手術である以上、以下のような合併症が起こる可能性もゼロではありません。

1. 感染症

術後の不適切なケアなどにより、手術部位が感染を起こすことがあります。

2. 神経損傷

採取部位や移植部位の神経が一時的に損傷し、痺れや感覚の変化が生じることがありますが、ほとんどの場合一時的です。

3. 移植片の壊死

血流が確保できないなどの理由で、移植した歯肉が生着しない場合があります。

これらのリスクについても、事前に歯科医師から十分な説明を受け、理解しておくことが重要です。


歯肉移植術に関するよくある疑問を解決!Q&A

Q. 手術は痛いですか?

A. 手術中は、局所麻酔をしっかりと行うため、基本的に**痛みを感じることはほとんどありません。**安心して治療を受けていただけます。

ただし、麻酔が切れた後や、術後数日間は、手術を受けた部位(歯ぐきを移植した箇所)と、歯肉を採取した部位(多くは上顎の口蓋)に、個人差はありますが、痛みや腫れ、軽い不快感が生じることがあります。これは回復過程で一時的に起こるもので、処方される痛み止めを服用することで十分にコントロールできます。痛みが続く場合や、我慢できないほどの痛みがある場合は、速やかに歯科医師に相談しましょう。

Q. どのくらい費用がかかりますか?

A. 歯肉移植術は、多くの場合、健康保険が適用されない自由診療となります。そのため、治療にかかる費用は全額自己負担となり、クリニックや治療内容、移植する範囲によって大きく異なります。

一般的には、数万円から十数万円程度が目安となることが多いでしょう。泉岳寺駅前歯科クリニックの歯肉移植術の費用に関する詳細な情報は、当院の「歯茎の再生治療」ページでご確認いただけます。 歯茎の再生治療 – 泉岳寺駅前歯科クリニック カウンセリング時に詳細な見積もりが提示されますので、不明な点があれば必ず確認し、納得した上で治療を進めることが重要です。

Q. 手術時間はどのくらいですか?

A. 手術時間は、移植する歯肉の範囲、本数、採用する術式(結合組織移植術か遊離歯肉移植術かなど)によって変わりますが、一般的には30分から1時間半程度で完了することが多いでしょう。

これに加えて、麻酔が効くまでの時間や、術後の注意事項の説明時間なども考慮に入れると、もう少し時間に余裕を見ておくことをおすすめします。比較的短時間で終わる手術ですが、集中力を要するため、術者はもちろん、患者さん自身もリラックスして臨むことが大切です。

Q. 術後に食事はできますか?

A. 手術直後は麻酔が効いているため、食事は控える必要があります。麻酔が完全に切れてから、やわらかく刺激の少ない食事から始めるようにしてください。

具体的には、おかゆ、スープ、ヨーグルト、ゼリーなどがおすすめです。手術部位への負担を避けるため、移植した歯ぐきとは反対側で噛むように意識しましょう。熱すぎるものや冷たすぎるもの、辛いもの、硬いもの、粘り気のあるものは、術後しばらく(数日〜1週間程度)は避けてください。術後の食事に関する具体的な指示は、担当の歯科医師から詳しく説明がありますので、それに従うことが重要です。

Q. 元の状態に完全に回復しますか?

A. 歯肉移植術は、歯ぐきの退縮を改善し、審美性や機能を大きく回復させる非常に有効な治療法です。多くのケースで、見た目も機能も大幅に改善され、非常に自然な状態に近づきます

しかし、退縮の程度や個人の治癒能力、喫煙などのライフスタイルによって結果には個人差があります。そのため、完全に退縮する前の「元の状態」に100%戻ることを保証するものではありません[13]。治療を受ける前に、歯科医師と十分に話し合い、ご自身の状態において現実的にどこまでの改善が見込めるのか、期待値をしっかりすり合わせておくことが、治療後の満足度を高めるために非常に大切です。

Q. 再発することはありますか?

A. 歯肉移植術で得られた効果を長期的に維持するためには、術後の適切なケアが極めて重要です。

手術が成功しても、歯周病の再発、不適切なブラッシング習慣(力の入れすぎなど)、喫煙、あるいは特定の全身疾患などが原因で、残念ながら歯ぐきの退縮が再び進行する可能性はゼロではありません[4]。そのため、日々の丁寧なセルフケア(適切な歯磨き習慣)はもちろんのこと、歯科医院での定期的な検診やプロフェッショナルクリーニングを継続することで、再発リスクを最小限に抑え、健康な歯ぐきを長く維持できます。


健康な歯ぐきで、自信あふれる笑顔へ!歯肉移植術という選択

これまでの解説で、歯ぐきの退縮が単なる見た目の問題ではなく、知覚過敏、虫歯、歯周病のリスクを高め、大切な歯の寿命を縮めてしまう可能性があることをご理解いただけたかと思います。そして、そうした悩みに応える治療法として、歯肉移植術がいかに有効であるかをお伝えしてきました。

歯肉移植術は、下がってしまった歯ぐきを回復させ、露出した歯根を保護するだけでなく、見た目の美しさ(審美性)と歯の機能(知覚過敏の解消、歯周病への抵抗力向上)を同時に取り戻せる画期的な治療です。この治療によって、あなたは以下のような変化を手に入れることができるでしょう。

自信あふれる笑顔

不自然な歯ぐきのラインや長く見える歯に悩むことなく、心から笑えるようになります。

快適な食生活

冷たいものがしみる不快感から解放され、食事を心ゆくまで楽しめるようになります。

長期的な口腔健康

歯根が保護され、歯周病への抵抗力が高まることで、大切な歯を長く健康に保つことが可能になります。

歯ぐきの退縮は、放置すればするほど進行し、治療も複雑になる傾向があります。もし、あなたの歯ぐきに何らかの変化を感じたり、すでに歯ぐきの退縮による症状が出ている場合は、一人で悩まず、できるだけ早く歯科医院に相談することを強くお勧めします。

歯肉移植術は専門性の高い治療であるため、**豊富な経験と知識を持つ歯科医師による正確な診断と、あなたに最適な治療計画が不可欠です。**複数の選択肢や、あなたの口腔状態に合わせた治療法について、納得がいくまで説明を受けましょう。

健康で美しい歯ぐきは、あなたの笑顔と毎日の生活の質を大きく向上させます。歯肉移植術という選択が、あなたの口腔健康の未来を明るく照らし、自信あふれる笑顔を取り戻すきっかけとなることを心から願っています。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

東京都港区にある泉岳寺駅前歯科クリニックでは、歯肉移植術をはじめとする歯ぐきの治療に力を入れています。当院は泉岳寺駅A3出口から徒歩1分とアクセスが非常に良く、高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスしやすい立地です。

歯ぐきの退縮や知覚過敏でお悩みでしたら、ぜひ一度当院にご相談ください。患者様一人ひとりに合わせた丁寧なカウンセリングと精密な検査を行い、最適な治療計画をご提案いたします。

泉岳寺駅前歯科クリニック


参考文献

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監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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