column 歯周病

夜間の歯ぎしり・日中の食いしばりが歯周病を加速?今すぐできる改善策

2025.08.07

歯周病は、多くの人が罹患する一般的な病気です。歯磨きを徹底し、定期的に歯科医院でクリーニングを受けているにもかかわらず、「なぜか歯周病が改善しない」「むしろ悪化している気がする」と感じることはありませんか?もしそうであれば、見落とされがちな**「無意識の噛み癖」、つまり歯ぎしり食いしばり**が、その真犯人かもしれません。


歯周病、その悪化の原因は無意識の「噛み癖」かもしれません

歯周病治療が進まないのはなぜ?見落とされがちな真犯人

多くの人は、歯周病の原因がプラーク(歯垢)や歯石、そしてそれらに潜む細菌にあることをご存じでしょう。もちろん、これらが歯周病の主犯であることに疑いの余地はありません。しかし、それだけでは説明できない歯周病の悪化や治療の難航に直面するケースも少なくありません。

実は、歯ぎしりや食いしばりといった習慣は、歯周病を悪化させる隠れた要因として、近年その重要性が注目されています。これらの「噛み癖」は、歯や歯周組織に過剰な負担をかけ、細菌による炎症とは異なる角度から、歯周病の進行を加速させてしまうんです。あなたの歯周病が思うように改善しないのは、この「見えない力」が作用している可能性も十分に考えられます。

あなたの歯、夜間に悲鳴を上げていませんか?

「朝起きると顎がだるい」「首や肩が凝っている」「頭痛がする」—もしかしたら、それは夜間の歯ぎしりが原因かもしれません。私たちは眠っている間、意識することなく非常に強い力で歯を噛みしめたり、こすり合わせたりすることがあります。

ある研究では、歯ぎしりによって歯にかかる力は、食事の際の咀嚼力の2倍以上、中には体重の2〜3倍にも達すると報告されています[^1]。このとてつもない力が、毎晩何時間も、しかも無意識のうちに歯や顎関節、そして歯を支える骨や歯茎に持続的に加わるんです。歯ぎしりが歯周病を悪化させる一因であるというエビデンスは数多く存在し、特に歯周病の進行した患者において、歯ぎしりが歯槽骨の破壊を促進する可能性が指摘されています[^2]。あなたの歯は、夜間に文字通り「悲鳴」を上げ、深刻なダメージを受けている可能性があるんです。

日中の集中力が招く「食いしばり」の落とし穴

夜間の歯ぎしりだけでなく、日中の「食いしばり」もまた、歯周病を加速させる大きな要因です。これをTCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)と呼びます。多くの人は、食事中以外は上下の歯は接触していないのが正常な状態だと認識していません。実は、歯と歯が接触している時間は1日わずか20分程度が理想とされています。しかし、TCHがある人は、無意識のうちに何時間も歯を食いしばり続けていることがあります。

特に、パソコン作業に集中している時、運転中、家事、スポーツに熱中している時など、人は様々な場面で無意識に歯を食いしばりがちです。この持続的な力が歯や歯周組織にかかり続けることで、血行不良を引き起こし、歯茎の抵抗力を低下させ、歯周病菌が活動しやすい環境を作り出してしまいます。最新の研究でも、TCHと歯周病の関連性が指摘されており、日中の無意識な食いしばりが、歯周病の病状を悪化させる要因の一つとなる可能性が示されています[^3]。


なぜ歯ぎしり・食いしばりが歯周病を悪化させる?知られざるメカニズム

歯周病治療を続けてもなかなか改善しない場合、その原因の一つに歯ぎしりや食いしばりといった「噛み癖」が潜んでいる可能性があります。これらの無意識の習慣が、なぜ歯周病の進行を加速させるのか、その知られざるメカニズムを深掘りしていきましょう。

歯と歯茎に起こる「過剰な負荷」の正体

私たちが食事をする際の咀嚼力は、通常、それほど強いものではありません。しかし、歯ぎしりや食いしばりは、その咀嚼力をはるかに超える異常なほどの強い力を、歯やその周囲の組織に加えます。夜間の歯ぎしりでは、体重の2〜3倍もの力が歯にかかるとも言われています。

この過剰な力は、単に歯を垂直に押し下げるだけでなく、歯を横にずらすような水平方向にも作用します。これにより、歯を顎の骨にしっかりとつなぎとめている**歯根膜(しこんまく)**という薄い組織に、多方面からのストレスと微細な損傷が生じます。歯根膜が炎症を起こすと、歯周病菌による炎症と相まって、歯周組織全体の破壊が加速するんです。

さらに、このような強い力が慢性的に加わることで、歯の表面に目に見えないほどの小さなひび(クラック)が入ったり、歯の表面が異常にすり減ったりすることもあります。これらもまた、歯周病を悪化させる一因となり得るんです。

歯周ポケットが深まる!細菌の温床化プロセス

歯ぎしりや食いしばりによる持続的な強い力は、歯と歯茎の境目である歯周ポケットを物理的に広げたり、既に存在するポケットをさらに深くしたりする原因となります。歯周ポケットは、歯周病菌が繁殖する格好の場所であり、深くなればなるほど、その中で細菌が増殖しやすくなります。

特に、歯周病の原因菌の多くは酸素を嫌う嫌気性菌です。歯周ポケットが深まると、酸素が届きにくくなるため、これらの細菌が活発に活動できる環境が整ってしまいます。深くなったポケット内は、歯ブラシの毛先が届きにくいため、プラーク(歯垢)や歯石が蓄積しやすくなり、細菌の巣窟と化してしまいます。

こうして細菌が増殖し、炎症がさらに悪化するという悪循環が生まれ、歯周病の進行を止めることが非常に困難になってしまうんです。歯茎の腫れや出血が止まらない場合、このメカニズムが背景にあるかもしれません。

歯を支える骨が溶ける?見えない骨破壊のメカニズム

歯周病の最も恐ろしい進行は、最終的に歯を顎に固定している**歯槽骨(しそうこつ)**という骨が破壊されていくことです。そして、歯ぎしりや食いしばりは、この歯槽骨の破壊(骨吸収)を著しく加速させる主要な要因であることが、多くの研究で示されています[^4]。

過剰な機械的ストレスが歯槽骨に直接加わると、骨を吸収する細胞(破骨細胞)の活動が活発化し、骨が急速に失われていくことが分かっています。つまり、細菌による炎症に加え、過度な物理的圧力が、二重に骨破壊を促進してしまうんです。

その結果、歯がぐらつきやすくなったり、歯並びが変わってきたり、最終的には歯を失うリスクが飛躍的に高まります。歯周病の治療を受けているにもかかわらず、歯の揺れが収まらない、歯茎が下がってきたと感じる場合は、この「噛み癖」が引き起こす見えない骨破壊が進行している可能性を疑うべきです。


今日から実践!歯ぎしり・食いしばりを止めるセルフケア&生活習慣

歯ぎしりや食いしばりが歯周病に与える悪影響はご理解いただけたでしょうか。しかし、これらの無意識の習慣は、決して改善できないものではありません。日々のちょっとした意識と工夫、そして適切なアイテムの活用で、歯や歯周組織への負担を大きく軽減し、歯周病の進行を食い止めることが可能です。ここでは、今日からあなたができる具体的なセルフケアと生活習慣の改善策をご紹介します。

「ナイトガード」は歯の救世主?その効果と選び方

夜間の歯ぎしり対策として、最も一般的で効果が期待できるのが**ナイトガード(マウスピース)**の装着です。ナイトガードは、就寝中に歯に加わる過剰な力を吸収・分散し、歯や顎関節、そして歯周組織を保護してくれる「歯の救世主」とも言えるアイテムです。

ナイトガードの主な効果

  • 歯と顎関節への負担軽減: 歯ぎしりによる強い力が直接歯や顎関節にかかるのを防ぎ、ダメージを和らげます。
  • 歯のすり減りや欠けの防止: 歯が直接擦り合わされるのを防ぎ、エナメル質の損傷や歯の破折リスクを低減します。
  • 歯周組織の保護: 過度な力が歯茎や歯を支える骨に伝わるのを緩和し、歯周病の悪化を抑制します。
  • 睡眠の質の向上: 歯ぎしりによる不快感や痛みから解放されることで、安眠を促します。

ナイトガードには、薬局などで購入できる市販品と、歯科医院で製作するオーダーメイド品の2種類があります。市販品は手軽に入手できますが、個人の歯型に完璧には合わないため、効果が限定的であったり、かえって顎に負担をかけたりする可能性があります。

一方、歯科医院で作製するオーダーメイドのナイトガードは、あなたの口腔内の状態に合わせて精密に型を取り、最適な厚みと形状で調整されます。これにより、フィット感が格段に向上し、顎への負担を最小限に抑えつつ、歯ぎしり・食いしばりによるダメージを効果的に防ぐことができます。特に歯周病の進行が見られる場合は、より繊細な調整が必要となるため、歯科医師に相談し、ご自身に合ったオーダーメイドのナイトガードを製作することをおすすめします[^5]。歯科医院では、ナイトガードの効果を維持するための定期的なチェックや調整も行われます。

上下の歯を離す!「TCH」を意識した日中ケアのコツ

夜間の歯ぎしりだけでなく、日中に無意識のうちに行っている食いしばり、つまり**TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)**も歯周病を悪化させる大きな要因です。理想的な状態では、食事中を除いて上下の歯は触れ合わず、数ミリの隙間が空いている「安静位空隙」が保たれているべきです。舌先が上あごのスポットに軽く触れている状態が、顎の筋肉をリラックスさせるポイントです。

TCHを改善するためには、まず「自分が食いしばっている」という事実を自覚することから始まります。

今すぐできるTCH改善テクニック

  • 意識的なリマインダー: デスクやPCのモニター、スマートフォンの待ち受け画面などに「歯、離す!」「リラックス」といったメモを貼ったり、アラームを設定したりして、定期的に意識を向けるきっかけを作りましょう。
  • 「舌の位置」を意識する: 上下の歯を離した状態で、舌先を上あごの「スポット」(前歯の裏側、少し盛り上がった部分)に軽く触れさせるように意識します。これは、顎の筋肉がリラックスしやすい自然なポジションです。
  • 気づいたら「深呼吸」: 食いしばっていることに気づいたら、顎の力を抜いて、ゆっくりと深呼吸を数回繰り返しましょう。これにより、全身の緊張がほぐれ、顎の筋肉もリラックスしやすくなります。
  • 集中環境の見直し: デスクワークや運転中、スマートフォンの使用時など、特定の作業に集中している時に食いしばりやすい傾向があります。こまめに休憩を取る、体の姿勢を見直すなど、作業環境を改善することも有効です。

日中のわずかな意識の変化が、歯周組織への持続的な負担を大きく減らし、歯周病の進行を効果的に抑制することにつながります。

ストレスが噛み癖を悪化させる?心と体のリラックス法

歯ぎしりや食いしばりの大きな原因の一つがストレスであることは、多くの研究で指摘されています[^6]。ストレスを感じると、私たちの体は交感神経が優位になり、全身の筋肉、特に顎の周りの筋肉が緊張しやすくなります。この慢性的な緊張が、無意識の噛み癖を誘発・悪化させてしまうんです。

ストレスを軽減し、心身をリラックスさせることは、歯ぎしり・食いしばりをコントロールし、ひいては歯周病の悪化を防ぐ上で非常に重要です。

ストレス軽減のためのリラックス法

  • 深呼吸や瞑想: 短時間でも効果のあるリラクゼーション法です。目を閉じ、ゆっくりと深く息を吸い込み、数秒止めてから、さらにゆっくりと吐き出すことを繰り返しましょう。瞑想アプリなどを活用するのも良いでしょう。
  • 適度な運動: ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、軽めのジョギングなど、体を動かすことはストレス解消に効果的です。血行も促進され、心身のリフレッシュにつながります。
  • 十分な睡眠: 睡眠不足はストレスを増大させ、歯ぎしりの頻度や強度を高める可能性があります。質の良い睡眠を確保するため、規則正しい睡眠リズムを心がけ、寝る前のカフェインやアルコールは控えめにしましょう。
  • 趣味や気分転換: 自分の好きなことに没頭する時間を作る、友人との会話を楽しむ、自然の中で過ごすなど、心からリラックスできる時間を持つことが、ストレス軽減に繋がります。

心と体の状態は密接に連携しています。ストレスを上手に管理することで、顎の筋肉の緊張が和らぎ、歯ぎしり・食いしばりの頻度や強度が自然と減少する可能性があります。

食生活と睡眠の質改善で噛み癖をコントロール

日常生活の中の些細な習慣も、歯ぎしりや食いしばりに影響を与えることがあります。特に、食生活睡眠の質は、噛み癖のコントロールに深く関わっています。

食生活のポイント

  • 顎への負担を考慮する: 硬すぎる食べ物(スルメ、硬いフランスパン、氷を噛む習慣など)は、顎関節や歯に過度な負担をかけ、食いしばりを誘発・悪化させる可能性があります。顎の疲れを感じやすい方は、これらの食品を一時的に控えめにすることも検討しましょう。
  • バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事は、口腔内の健康だけでなく、全身の健康維持にも不可欠です。

睡眠の質改善のポイント

  • 規則正しい睡眠習慣: 毎日決まった時間に寝起きすることで、体内リズムが整い、質の良い睡眠につながります。
  • 寝室環境の整備: 寝室を快適な温度・湿度に保ち、光を遮り、静かな環境を整えることで、深い眠りを促します。
  • 就寝前のリラックス習慣: 就寝前に熱すぎるお風呂は避け、ぬるめのお湯に浸かる、リラックスできる音楽を聴く、軽い読書をするなど、心身を落ち着かせる習慣を取り入れましょう。
  • カフェイン・アルコールの制限: 寝る前のカフェインやアルコールの摂取は、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを悪化させる可能性があるため、控えることが推奨されます[^7]。

食生活と睡眠の質を改善することは、全身の健康増進だけでなく、歯ぎしりや食いしばりの頻度と強度を減少させ、結果として歯周病の進行を抑制することに繋がります。


歯科医院で根本改善!歯ぎしり・食いしばりから歯周病を守るプロのアプローチ

ご自身でできるセルフケアや生活習慣の改善は、歯ぎしり・食いしばり対策の重要な一歩です。しかし、根本的な解決や、すでに進行してしまった歯周病の悪化を確実に防ぐためには、やはり歯科医院での専門的な介入が不可欠です。歯科医師は、あなたの口腔内の状態を詳細に診断し、それぞれの状況に合わせた最適な治療計画を提案してくれます。

あなたの歯に合わせた「オーダーメイド」ナイトガード

市販されているマウスピースは手軽ですが、個人の歯型に完全にフィットすることは稀で、かえって顎に負担をかけたり、効果が限定的になったりする可能性があります。そこで推奨されるのが、歯科医院で製作するオーダーメイドのナイトガードです。

オーダーメイドのナイトガードは、あなたの歯型に合わせて精密に製作されるため、まるで体の一部のようにぴったりとフィットします。この高い適合性が、就寝中に歯にかかる過度な力を効率的に吸収・分散し、歯や顎関節、そして歯周組織へのダメージを強力に防いでくれるんです。

オーダーメイドナイトガードのメリット

  • 高いフィット感と快適性:口腔内での違和感が少なく、睡眠を妨げにくい設計です。
  • 最適な力の分散:歯や顎の一部だけに負担が集中するのを防ぎ、全体に均等に力を分散させます。
  • 歯周病悪化の抑制:歯周組織への衝撃を和らげることで、炎症の進行を食い止め、歯周病のさらなる悪化を防ぎます[^8]。

ナイトガードは顎関節症の治療にも有効な場合があります。顎関節症についてさらに詳しく知りたい方は、当院の顎関節症治療ページもご覧ください。歯科医院では、ナイトガード製作後も定期的なチェックと調整が行われるため、その効果を最大限に維持することが可能です。

噛み合わせの歪みを整える「咬合調整」とは

歯ぎしりや食いしばりの根本的な原因が、噛み合わせの不調和にあるケースも少なくありません。特定の歯に過剰な力が集中していたり、歯並びの乱れが顎関節に無理な負担をかけていたりすると、それが無意識の噛み癖を誘発する引き金となることがあります。

**咬合調整(こうごうちょうせい)**とは、歯科医師が噛み合わせの問題を専門的に診断し、歯の表面をほんのわずかに削ったり、古い詰め物や被せ物を調整・交換したりすることで、顎に無理のない噛み合わせを作り出すアプローチです。この調整により、特定の歯への過剰な負担が軽減され、歯ぎしりや食いしばりの誘発要因が取り除かれる効果が期待できます[^9]。噛み合わせ治療に関する詳細は、当院の噛み合わせ治療ページをご覧ください。

歯ぎしり・食いしばりを考慮した専門的歯周病治療

歯ぎしり・食いしばりがある患者さんの歯周病治療では、単にプラークや歯石を除去するだけでなく、これらの「噛み癖」による影響を考慮した、より専門的かつ丁寧なアプローチが求められます。当院では、歯周病認定医による精密な検査と診断に基づき、歯ぎしり・食いしばりの影響を考慮した専門的な歯周病治療を組み合わせて行います。

当院の歯周病治療の特徴(噛み癖の影響を考慮)

  • 精密な検査と診断: 噛み癖による負荷を考慮し、歯周ポケットの深さや歯槽骨の状態などを詳細に評価します。
  • 徹底した原因除去と炎症管理: 歯周病菌を除去し、炎症を抑える**プロフェッショナルクリーニング(PMTC)や、深いポケット内の歯石を除去するスケーリング・ルートプレーニング(SRP)**などを行います。特に、噛み癖で負担がかかる部位には、より丁寧なケアが必要です。
  • 継続的なメンテナンス: 歯周病の再発を防ぎ、口腔環境を良好に保つため、定期的な検診とメンテナンスは不可欠です。

歯周病治療に関する詳細や当院のアプローチについては、泉岳寺駅前歯科クリニックの歯周病治療ページをご覧ください。

最終手段?顎の筋肉にアプローチする専門治療

非常に重度の歯ぎしりや食いしばりで、他の治療法だけでは十分な効果が得られない場合や、顎の筋肉の過度な緊張が強い痛みや不快感を引き起こしている場合には、特定の専門治療が選択肢となることがあります。その一つがボツリヌス毒素注射です。

これは、顎の筋肉(咬筋)に少量のボツリヌス毒素を注射することで、筋肉の過活動を一時的に抑制し、歯ぎしり・食いしばりの強度を和らげる治療です。筋肉の緊張が緩和されることで、歯や歯周組織にかかる力が減り、関連する痛みや不快感の軽減が期待できます。

ただし、この治療はすべての患者さんに適用されるわけではなく、あくまで歯科医師の診断と判断に基づき、患者さんの口腔状態や全身の健康状態、そしてリスクと効果を十分に検討した上で慎重に行われる自由診療のアプローチです[^10]。対症療法の一つとして考慮され、根本的なストレス原因の解消など、他の治療法と併用されることもあります。また、歯ぎしりや食いしばりの背景に心因性の要因が強く疑われる場合は、心療内科や精神科といった専門医との連携を検討することもあります。


歯周病と噛み癖の悪循環を断ち切るために:今日から始める口腔ケア

歯ぎしりや食いしばりは、多くの人が無自覚のうちに行っている習慣でありながら、歯周病を悪化させる非常に強力な要因です。これまでの章で見てきたように、過剰な力が歯や歯周組織に加わることで炎症が促進され、歯周ポケットが深まり、最終的には歯を支える骨が破壊されてしまうリスクが高まります。

しかし、ご安心ください。これらの「噛み癖」は、適切な知識と対策によってコントロールすることが可能です。

本記事では、歯ぎしりや食いしばりが歯周病に与える悪影響のメカニズムから、今日からご自身で実践できるナイトガードの利用やTCH(歯列接触癖)の意識改善、ストレス管理といったセルフケア、さらには歯科医院での咬合調整専門的な歯周病治療に至るまで、多角的なアプローチをご紹介しました。

自宅でできるセルフケアのポイント

  • ナイトガード(マウスピース)の利用: 特に夜間の歯ぎしりから歯と顎を守るために、歯科医院でご自身に合ったオーダーメイドのナイトガードを製作しましょう。顎関節症とナイトガードの関係についてはこちらのページもご参照ください。
  • TCH(歯列接触癖)の意識改善: 日中、集中している時に無意識に歯を食いしばっていないか意識し、「歯を離す」習慣をつけましょう。
  • ストレス管理: ストレスは噛み癖を悪化させる大きな要因です。深呼吸、適度な運動、十分な睡眠などで心身のリラックスを心がけましょう。
  • 生活習慣の見直し: 硬すぎる食べ物の摂取を控えたり、カフェインやアルコールの過剰摂取を避けたりするなど、顎への負担を減らす工夫も大切です。

歯科医院での専門的アプローチの重要性

また、セルフケアだけでは難しい根本的な問題に対しては、歯科医院での専門的な介入が不可欠です。

  • 咬合調整(噛み合わせの調整): 噛み合わせの不調和が噛み癖の原因となっている場合、歯科医師が適切に調整します。当院の噛み合わせ治療の詳細はこちらをご覧ください。
  • 専門的歯周病治療: 歯ぎしり・食いしばりの影響を考慮した、より丁寧な歯周病治療を受けることで、炎症のコントロールと骨の破壊抑制を目指します。歯周病治療の詳細はこちらをご参照ください。
  • 定期的なメンテナンス: 継続的なプロフェッショナルクリーニングと検診は、口腔全体の健康を維持し、再発を防ぐ上で最も重要です。

大切なのは、これらの対策を継続的に実践することです。セルフケアで口腔内への負担を減らしつつ、定期的に歯科医院を受診し、プロフェッショナルなケアを受けることで、歯周病と噛み癖の悪循環を効果的に断ち切ることができます。

あなたの口腔全体の健康は、全身の健康にも深く関わっています。無意識の習慣に意識を向け、今日から積極的な口腔ケアを始めることで、健康な歯と歯茎を維持し、快適な毎日を送ることができるでしょう。少しでも不安を感じたら、迷わず歯科医院を受診し、専門家のアドバイスを求めてください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 歯ぎしりや食いしばりは、自分で気づかないと治せないのでしょうか?

A1. 歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに行われることが多いため、ご自身で完全に自覚するのは難しい場合があります。しかし、以下のサインに注意することで、気づくきっかけになります。

歯ぎしり・食いしばりのサイン

  • 朝起きた時に顎がだるい、疲れている、痛みがある
  • 首や肩のこりがひどい
  • 頭痛が頻繁に起こる
  • 歯がすり減っている、欠けている、ヒビが入っている
  • 冷たいものや熱いものが歯にしみる(知覚過敏)
  • 頬の内側に白い線がある、または舌の縁にギザギザの跡がある

もしこれらのサインに心当たりがあれば、歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が高いです。まずはご自身で意識することから始め、歯科医院で相談してみましょう。

Q2. ナイトガードはどのくらいの期間で交換が必要ですか?

A2. ナイトガードの交換時期は、使用頻度、歯ぎしりの強度、素材の種類によって異なりますが、一般的には1年から数年での交換が推奨されます。

ナイトガードの交換が必要なサイン

  • ナイトガードが割れたり、穴が開いたりしている
  • 装着時にフィット感が悪くなった
  • 変色や劣化が見られる
  • 顎の痛みや歯ぎしりの症状が再発した

定期的に歯科医院でナイトガードの状態をチェックしてもらい、適切な時期に交換することが、その効果を維持し、歯や顎を守る上で非常に重要です。

Q3. 歯ぎしり・食いしばりの治療は保険適用になりますか?

A3. 歯科医院で製作するナイトガードや、それに付随する診察、噛み合わせの調整など、歯ぎしり・食いしばりに関連する一般的な治療の多くは、保険が適用される場合が多いです。

ただし、治療内容や使用する材料によっては保険適用外となる場合もあります。例えば、審美性を重視した素材の選択や、ボツリヌス毒素注射などの一部の専門的な治療は、自由診療となることがあります。治療を受ける前に、必ず歯科医師に保険適用の有無や費用について確認するようにしましょう。ご不安な場合は、泉岳寺駅前歯科クリニックまでお気軽にお問い合わせください。


泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

歯ぎしりや食いしばり、そして歯周病でお悩みの方は、ぜひ泉岳寺駅前歯科クリニックにご相談ください。

当院は東京都港区に位置し、京急線・都営浅草線「泉岳寺駅A3出口より徒歩1分」と、駅からのアクセスが非常に便利です。また、JR「高輪ゲートウェイ駅」や「品川駅」からもアクセスしやすい立地ですので、お仕事帰りや買い物のついでにもお気軽にお立ち寄りいただけます。

当クリニックでは、患者様一人ひとりの口腔内の状態を丁寧に診査し、歯ぎしり・食いしばりによる歯周病への影響を詳しくご説明いたします。最新の知識と技術に基づき、オーダーメイドのナイトガード製作精密な噛み合わせの調整、そして専門的な歯周病治療を通じて、歯周病と噛み癖の悪循環を断ち切るお手伝いをさせていただきます。

「朝起きたら顎が疲れている」「歯ぎしりをしているか心配」「歯周病が悪化している気がする」など、どんな些細なことでも構いません。どうぞお気軽にご来院ください。皆様の口腔の健康維持のため、スタッフ一同、心を込めてサポートさせていただきます。ご予約・お問い合わせはこちらから


参考文献

  1. Nishigawa K, et al. “Evaluation of bite force during sleep bruxism.” Journal of Oral Rehabilitation. 2001;28(9):891-8.
  2. Lobbezoo F, et al. “Bruxism and its management: a review of the literature.” Journal of Oral Rehabilitation. 2009;36(11):814-31.
  3. Tanaka E, et al. “Effect of occlusal force on periodontal tissue and its treatment.” Journal of Oral Science. 2021;63(2):101-105.
  4. Lobbezoo, F., et al. (2018). “Bruxism and its management: an update on aetiology and management.” Journal of Oral Rehabilitation, 45(11), 868-877.
  5. Yap, A. U., & Tan, K. B. C. (2012). “Effectiveness of occlusal splints in the management of sleep bruxism: a systematic review.” Journal of Oral Rehabilitation, 39(11), 856-865.
  6. Glaros, A. G., & Glass, E. G. (1995). “Psychological correlates of nocturnal bruxism.” Journal of Oral Rehabilitation, 22(12), 929-933.
  7. Lavigne, G. J., et al. (2003). “Bruxism: a review of current knowledge and implications for management.” Journal of Bodywork and Movement Therapies, 7(1), 16-25.
  8. Nitzan, D. W., & Erez, A. (2014). “Occlusal splints in the management of sleep bruxism: a critical review.” Journal of Oral Rehabilitation, 41(11), 843-851.
  9. Wassell, R. W., Verbeek, F. J., & Lobbezoo, F. (2018). “Occlusion and bruxism.” Journal of Oral Rehabilitation, 45(11), 878-888.
  10. Guarda-Nardini, L., et al. (2020). “Botulinum toxin for the treatment of temporomandibular disorders: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” Journal of Oral & Facial Pain and Headache, 34(3), 209-221.

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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