歯周病は歯科医がこうして見つける!診断の全ステップとセルフチェック法
「歯ぐきから血が出るけど、別に痛くないから大丈夫」
「最近、口の中がネバネバするけど、気のせいかな」
もしかしたら、あなたはそう思っていませんか? 歯周病は、初期段階では自覚症状がほとんどないまま静かに進行することが多いため、「沈黙の病気」とも呼ばれ、気づいたときには手遅れになっているケースも少なくありません。しかし、歯科医院で正確な診断と適切な治療を受ければ、進行を食い止め、ご自身の歯を生涯にわたって守ることができます。
この記事では、歯科医院で行われる歯周病診断の全貌を、具体的な検査ステップに沿って解説します。ご自身の口腔内の状態を知る第一歩として、ぜひ読み進めてみてください。当院の歯周病治療について詳しくはこちら
歯周病診断の第一歩!問診・視診で何がわかる?
歯科医院に一歩入った瞬間から、歯周病診断は始まっています。まずは、あなたの口の中の状態を詳しく知るための、最初のステップから見ていきましょう。
問診:見えないリスクを洗い出す最初のステップ
歯科医院では、まず問診票の記入やヒアリングを通じて、あなたの現在の状況を詳しくお伺いします。これは単なる手続きではありません。問診は、あなたの歯周病のリスクを正確に把握するための重要な手がかりです。例えば、以下のような質問をします。
- 「歯ぐきから出血しますか?」
- 「糖尿病や高血圧の持病はありますか?」
- 「喫煙習慣はありますか?」
特に、喫煙や糖尿病は、歯周病を悪化させる大きなリスク要因であることが、多くの研究で明らかになっています(参考文献1, 2)。これらの情報を把握することで、歯科医師はあなたに合わせた診断や治療計画を立てられるのです。
視診・触診:歯ぐきの色と形で初期兆候を発見
次に、歯科医師があなたの口の中を直接見て、触って確認します。これを視診・触診と呼びます。健康な歯ぐきは、薄いピンク色でキュッと引き締まっているのが特徴です。一方で、歯周病にかかった歯ぐきは、赤く腫れ、少し触れるだけで出血しやすい状態になります。また、歯を軽く触ることで、歯周病の進行によって歯がどのくらいぐらついているか(動揺)をチェックします。これらの初期検査は、その後のより詳細な検査の方向性を決める、非常に重要なステップなのです。
徹底解説!歯周ポケット検査とレントゲン撮影の重要性
視診や触診で初期兆候が疑われた場合、次に歯周病の進行度を数値で客観的に判断するための詳細な検査を行います。これが歯周ポケット検査と**エックス線写真検査(レントゲン撮影)**です。
歯周ポケット検査:歯周病の進行度を数値で知る
歯周病診断の要ともいえるのが、この歯周ポケット検査です。
歯周ポケットとは?
- 歯と歯ぐきの境目にある浅い溝のこと。
- 健康な歯ぐきの場合、深さは1~2mm程度です。このポケットに歯周病菌が侵入すると、炎症が起きてどんどん深くなっていきます。
歯科医師は「プローブ」と呼ばれる細い器具を使い、歯周ポケットの深さを1本1本丁寧に測定します。この検査は少しチクチクすることがありますが、歯周病の進行度を正確に知るために欠かせません。
歯周ポケットの深さが示す状態
- 1~3mm: 正常な状態です。
- 4mm以上: 歯周病が始まっている可能性があり、治療の目安となります。
- 6mm以上: 歯周病がかなり進行している状態です。
この数値データは、あなたの歯周病の状態を客観的に示す重要な情報となり、今後の治療計画を立てる上での強力な根拠となります。
レントゲン撮影:骨の状態から根本的な進行度を把握
歯周病は、歯ぐきだけの問題ではありません。進行すると、歯を支えている**歯槽骨(しそうこつ)**という骨が溶けてしまいます。この骨の変化は、肉眼では確認できません。そこで必要になるのが、エックス線写真検査(レントゲン撮影)です。レントゲンを撮ることで、歯槽骨がどのくらい溶けているか、歯の根元にどれだけ歯石が付着しているかなどを詳細に確認できます。
レントゲン画像で分かること
- 歯槽骨の溶け具合: 歯周病の進行度を根本から把握できます。
- 隠れた歯石の有無: 歯ぐきの中に隠れた歯石を発見できます。
- 根尖病変などの確認: 歯の根っこの先に膿が溜まっていないかなども分かります。
当院では、歯科用CTをはじめとした充実した設備で精密な診断を行っています。当院の充実した設備はこちら
診断結果から導く!あなたに合った治療計画
問診から始まり、視診、歯周ポケット検査、レントゲン撮影と、さまざまな検査を丁寧に行うことで、あなたの口腔内の状態が正確に把握できます。これらの結果を総合して、歯科医師は最終的な診断と、あなたに合った治療計画を提案します。
まず、歯科医師は検査で得られたデータやレントゲン画像を患者さんと一緒に見ながら、現状を分かりやすく説明します。例えば、「この部分のポケットが深く、骨が溶けているため、歯周病が進行している状態です」といった具体的な説明を受けることで、ご自身の状況を客観的に理解できます。
その上で、診断結果に基づいた治療法が選択されます。
- 初期〜中等度の歯周病: 歯周病の原因となる歯垢(プラーク)や歯石を専門の器具で徹底的に除去する「スケーリング」や、歯周ポケットの奥にある歯石を取る「ルートプレーニング」が中心となります。
- 重度の歯周病: 進行が著しい場合は、歯ぐきを切開して歯石を直接除去する「歯周外科手術」や、溶けてしまった骨を再生させる「再生療法」といった専門的な治療が必要になることもあります。
治療は歯科医師任せではなく、患者さん自身が積極的に参加することが大切です。日々の丁寧な歯みがきや生活習慣の改善が、治療効果を大きく左右します。診断はゴールではなく、健康な口腔環境を取り戻すためのスタート地点なのです。
診断後も油断は禁物!自宅でできるセルフチェック法
歯科医院で歯周病の治療を受けても、そこで終わりではありません。歯周病は、日々の歯磨きや生活習慣を怠ると再発してしまうリスクが高い病気です。そのため、ご自身の口腔内の変化にいち早く気づけるよう、自宅でのセルフチェックが非常に重要になります。
こんなサインは要注意!日々のセルフチェック項目
毎日の歯磨きの際に、鏡を見ながら以下のポイントをチェックする習慣をつけましょう。
歯ぐきの色や形に変化はないか
- 健康な歯ぐきは薄いピンク色で、引き締まっています。
- 赤く腫れていたり、触れると柔らかくブヨブヨしている場合は注意が必要です。
歯みがきの際に出血はないか
- 健康な歯ぐきは、正しいブラッシングでは出血しません。
- もし歯ブラシやデンタルフロスを使うたびに出血する場合は、歯ぐきに炎症が起きているサインです。
口臭が強くなっていないか
- 歯周病の原因菌は、口臭の原因となるガスを発生させます。
- 朝起きたときの口の中のネバつきや、口臭が以前より強くなったと感じる場合は、歯周病が進行している可能性があります。
歯がグラグラしていないか
- 指で歯を軽く押してみて、グラグラしないか確認しましょう。
- 歯がグラつくのは、歯周病がかなり進行し、歯を支える骨が溶けている状態です。
これらのサインに一つでも気づいたら、放置せずに歯科医院に相談することが大切です。また、何も問題がないと感じていても、3〜6ヶ月に一度は定期検診を受け、プロの目でチェックしてもらうことを強くお勧めします。
まとめ:歯周病は早期発見・早期治療が何より大切
歯周病は「沈黙の病気」とも言われ、痛みなどの自覚症状がないまま進行し、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。しかし、この記事で解説したように、歯科医院での丁寧な診断によって、ご自身の口腔内の状態を客観的に知ることが可能です。
問診、視診、歯周ポケット検査、レントゲン撮影。これらのステップは、歯周病の進行度やリスクを正確に把握するために不可欠です。これらの検査結果をもとに、あなたに合った最適な治療計画が立てられます。
「痛くないから大丈夫」という考え方は、歯周病においては最も危険です。痛みを感じた時には、すでにかなり進行しているケースがほとんどだからです。ご自身の歯を一生涯守るために、ぜひこの記事で学んだセルフチェックを日々の習慣に取り入れてみてください。そして、何も問題がないと感じていても、定期的な歯科健診を受けることを強くお勧めします。
歯周病診断に関するFAQ
Q. 歯周病の検査に痛みはありますか?
A. 歯周ポケット検査の際に、炎症がある部分は少しチクチクとした痛みを感じることがあります。しかし、麻酔をするほどの強い痛みではありませんのでご安心ください。
Q. 歯周病検査にはどれくらいの時間がかかりますか?
A. 問診から検査、診断まで含めて、30分〜1時間程度が目安です。お口の状態によって時間は前後します。
Q. 妊娠中でも歯周病検査は受けられますか?
A. はい、受けられます。妊娠中はホルモンバランスの変化で歯周病が悪化しやすい傾向があるため、むしろ積極的に検診を受けることをお勧めします。レントゲン撮影についても、防護エプロンを着用するなど安全に配慮して行います。
当院のご案内:泉岳寺駅前歯科クリニック
東京都港区にある「泉岳寺駅前歯科クリニック」では、歯周病の精密な診断と治療に力を入れています。当院院長は日本歯周病学会認定医です。当院の院長紹介はこちら
高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良く、泉岳寺駅A3出口からは徒歩1分と、非常に便利な立地です。「もしかして歯周病かも?」と感じたら、まずは一度、お気軽にご相談ください。丁寧なカウンセリングと精密な検査で、あなたの口腔内の状態を正確に把握し、最善の治療法をご提案します。
参考文献
- Genco RJ, et al. “Periodontal disease and risk of coronary heart disease and stroke: a meta-analysis.” J Periodontol. 2017;88(2):167-176.
- Pihlstrom BL, et al. “Periodontal therapy for the management of non-insulin-dependent diabetes mellitus.” J Periodontol. 2003;74(5):668-687.
- American Academy of Periodontology. “Clinical Practice Guideline for the Treatment of Periodontitis.” J Periodontol. 2021;92(4):e1-e40.