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【専門家解説】スケーリングは単なる歯石除去じゃない!歯周病治療の『真の入口』と知っておくべきこと

2025.08.15

はじめに:なぜ「歯石除去」が歯周病治療の第一歩なのか?

歯周病の治療」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは「歯石除去」ではないでしょうか。しかし、「単なる歯のクリーニングでしょ?」と思っている方も少なくありません。実は、この「スケーリング(歯石除去)」こそが、本格的な歯周病治療真の入口なのです。

当院のコラム「歯周病治療の『基本』!スケーリング(歯石除去)で何が変わる?」でもお伝えしたように、歯周病は歯に付着した細菌が引き起こす感染症です。これらの細菌の温床となるのが、歯ブラシでは取り除けないほど硬くなった歯石です。歯石がある限り、どんなに頑張って歯磨きをしても、歯周病菌は増殖を続け、歯ぐきの炎症は悪化する一方です。

そのため、歯周病治療は、まずこの歯石を徹底的に取り除くスケーリングから始まります。これは、その後の治療(SRPや外科処置など)を効果的に進めるための、最も重要な土台作りなのです。


スケーリングの真実!専門家が行う「見えない歯石」の徹底除去

スケーリングは、ただのクリーニングではありません。これは、歯科医師や歯科衛生士が、歯周病菌の温床である歯石を徹底的に取り除く、専門的な医療行為です。この処置には、主に2つの専門器具が使い分けられます。

超音波スケーラーだけでは不十分?2つのスケーラーを使い分ける理由

超音波スケーラーは、その名の通り、超音波の微細な振動と水の力を使って歯石を砕き、剥がす器具です。歯の表面や歯周ポケットの比較的浅い部分の歯石を効率的に除去する際に使用します。

しかし、超音波スケーラーだけでは、歯周ポケットの奥深くや、歯の根の複雑な形状に沿った部分の歯石を完全に除去することは困難です。そこで重要になるのが、歯科衛生士の指先の感覚を頼りに、一本一本手作業で歯石を取り除くハンドスケーラーです。この2つの器具を使い分けることで、肉眼では見えない奥の歯石まで確実に除去し、治療の精度を高めます。

「スケーリング」と「SRP」の違いとは?進行度で変わる歯周病治療

スケーリング」と似た言葉に「SRP(スケーリング・ルートプレーニング)」があります。これらは混同されがちですが、目的が少し異なります。

スケーリングは、歯周ポケット内の歯石を取り除く処置です。一方、歯周病が進行している場合、歯の根の表面が細菌の出す毒素でデコボコになり、歯石が付着しやすい状態になっています。このデコボコになった根の表面を専用の器具で滑らかに磨き上げ、細菌の再付着を防ぐ処置がSRPです。

歯周病の進行度合いに応じて、歯科医師がこれらの処置を適切に判断し、使い分けることで、より効果的な歯周病治療が可能になります。


スケーリングで変わる歯ぐき!治療の先に待つ「本当の健康」

スケーリングは、ただ単に歯石を取り除く処置ではありません。これは、歯周病によって傷ついた歯ぐきが、本来の健康な状態を取り戻すための最初のステップです。スケーリングが完了した後に、あなたの口腔内でどのような変化が起こるのか見ていきましょう。

歯ぐきの炎症が治まるメカニズム

歯周病は、歯石に付着した細菌が放出する毒素によって、歯ぐきに炎症を引き起こします。スケーリングによってこの歯石が物理的に除去されると、炎症の原因が根本からなくなるため、歯ぐきは徐々に回復に向かいます。その結果、歯磨き時の出血や慢性的な腫れが改善し、健康的な薄いピンク色へと変化していくのです。これは、細菌という「敵」がいなくなったことで、歯ぐきの免疫システムが正常に機能し始めるためです。

ツルツルの歯面がセルフケア効果を劇的に高める

歯石は表面がザラザラしており、**歯垢(プラーク)**が非常に付着しやすい状態です。このため、歯石がある状態では、どんなに丁寧に歯磨きをしても、歯垢を完璧に除去することは困難でした。

スケーリングによって歯石が除去された後の歯の表面は、ツルツルで滑らかになります。この状態になると、日々の歯磨きで歯垢を効率よく落とせるようになり、セルフケアの効果が格段に向上します。スケーリングは、あなたが日頃行う歯磨きの質を高め、歯周病の再発を防ぐための強力なサポートとなるのです。


スケーリングの効果を最大化するために

スケーリングは、一度で完了する治療だと思われがちですが、そうではありません。歯周病の進行度合いや歯石の付着状況によっては、複数回に分けて丁寧に処置を進めることが非常に重要です。

なぜなら、一度に広範囲の歯石を除去しようとすると、患者さんへの負担が大きくなることや、奥深くの見えにくい歯石の取り残しが発生するリスクがあるからです。歯科医院では、歯ぐきの状態を見ながら慎重に治療計画を立て、段階的にスケーリングを進めていきます。

そして、このスケーリングで健康な状態に戻った口腔内を維持することが、歯周病治療成功の鍵です。その次の重要なステップが、定期的なメインテナンスへの移行です。スケーリングで得られた効果を最大限に活かし、再発を防ぐためにも、治療後の定期的なプロフェッショナルケアが不可欠となります。


まとめ:スケーリングは「未来の歯」を守るための最善の投資

スケーリングは、歯周病治療において単なる歯石除去ではありません。これは、歯周病の原因を根本から取り除き、歯周組織の健康を取り戻すための、最も基本的かつ重要な専門的処置です。

治療の初期段階で歯周病菌の温床である歯石を徹底的に除去することは、将来的な歯の喪失や、より複雑な治療を未然に防ぐための「最善の投資」と言えます。スケーリングによって得られた健康な口腔環境は、その後の定期的なメインテナンスと日々の正しいセルフケアによって初めて維持されるものです。

歯ぐきの出血や腫れ、口臭など、もし少しでも歯周病のサインを感じたら、放置せずに専門的な診断と治療を受けることが何よりも大切です。早期に適切な治療を始めることが、あなたの歯の未来を守ることにつながります。


スケーリングに関するよくある質問(FAQ)

Q1. スケーリングはどのくらいの頻度で受けるべきですか?

A1. 歯周病の進行度合いや歯ぐきの状態によって異なりますが、一般的には3ヶ月〜半年に一度の定期的なクリーニングが推奨されています。歯科医師が患者さんの口腔環境に合わせて、適切な頻度を提案します。

Q2. スケーリングは保険適用になりますか?

A2. 歯周病治療の一環として行われるスケーリングは、基本的に保険適用となります。ただし、治療計画や処置内容によっては自費診療となる場合もありますので、詳しくは受診時にご確認ください。

Q3. スケーリング後に気をつけることはありますか?

A3. 処置後、一時的に歯ぐきが敏感になったり、冷たいものがしみやすくなったりすることがあります。これは炎症が治まる過程で起こる一時的なもので、通常は数日から1週間程度で落ち着きます。刺激の強い飲食物は避け、丁寧に歯磨きを続けてください。


泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

東京都港区にある泉岳寺駅前歯科クリニックでは、患者さん一人ひとりに合わせた丁寧な歯周病治療を行っています。

泉岳寺駅A3出口から徒歩1分と、駅からのアクセスが非常に良いため、お仕事帰りや買い物ついでにもお気軽にお立ち寄りいただけます。また、高輪ゲートウェイ駅品川駅からもアクセスが良い立地です。

歯ぐきの腫れや出血、口臭など、歯周病のサインにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。歯科医師と歯科衛生士が連携し、皆様の口腔内の健康をサポートいたします。

泉岳寺駅前歯科クリニック https://sengakuji-ekimae-dental.com/


参考文献

  • 日本歯周病学会. 「歯周病の診断と治療のガイドライン」, 2015年. (最新の情報として一般的なガイドラインを引用)
  • Lindhe, J., & Nyman, S. “The effect of plaque control and surgical pocket elimination on the establishment and maintenance of periodontal health. A longitudinal study of periodontal therapy in cases of advanced disease.” Journal of Clinical Periodontology, 1975, 2(2), 67-79. (歯周病治療におけるプラークコントロールとメインテナンスの長期的な重要性を確立した古典的な研究)
  • Axelsson, P., & Lindhe, J. “The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults.” Journal of Clinical Periodontology, 1981, 8(3), 215-230. (定期的なプラークコントロールプログラムの長期的な効果を示した論文)
  • 新庄 正明. 『歯周病の治療と予防』. 医歯薬出版, 2021年. (スケーリングやSRPなどの治療法に関する最新の知見がまとめられた書籍)

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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