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隣の歯を守るために、あえて削る選択?ブリッジの奥深い戦略

2025.08.28

ブリッジ治療で、なぜ「健康な歯を削る」必要があるのか?

失った歯を補う治療法として、ブリッジは長きにわたり有効な選択肢とされてきました。しかし、この治療を検討する際、多くの方が抱くのが「なぜ健康な隣の歯を削らなければいけないのか?」という疑問ではないでしょうか。一見、矛盾しているように見えるこの行為こそ、実は隣の歯の健康を長期的に守るための、奥深い戦略なのです。

ブリッジが隣の歯にもたらす長期的なメリット

歯が1本抜けたまま放置すると、隣の歯は空いたスペースに傾いて移動し始めます。すると、噛み合わせのバランスが崩れ、歯列全体に連鎖的な悪影響を及ぼす可能性があります。ブリッジは、このような歯の移動を防ぐ「ストッパー」としての役割を担い、歯列全体の安定を保ちます。

また、ブリッジは噛む力を周囲の歯に分散させることで、特定の歯への過剰な負担を軽減します。これにより、隣の歯を守り、さらなる歯の喪失を防ぐことにもつながるのです。

さらに、ブリッジには虫歯予防という意外なメリットもあります。歯と歯の間は食べ物が詰まりやすく、磨き残しによって虫歯リスクが高まります。しかし、ブリッジの被せ物で隣の歯を連結・保護することで、物理的に食べ物が詰まりにくい環境を作り出し、結果として虫歯のリスクを減らすことができるのです。

削ることで生じるリスクと、その回避策

もちろん、健康な歯を削るという行為には、不可逆的な処置というリスクが伴います。一度削ってしまった歯は、二度と元には戻せません。そのため、ブリッジ治療が本当にご自身の口腔状態にとって最善の選択であるかを、歯科医師と慎重に相談することが非常に重要です。

再治療のリスクを最小限に抑えるには、精密な型取りと、歯にぴったりと適合するブリッジを製作することが不可欠です。当院では、**最新の口腔内スキャナーiTero(アイテロ)**を導入し、より精密な型取りを行っています。そして、何より重要なのが、日々の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なチェックを続けることです。


ブリッジの素材で決まる「隣の歯の未来」:保険と自費、それぞれの選択肢

ブリッジの素材は、見た目の美しさだけでなく、隣の歯や歯茎の健康にまで大きな影響を与えます。**当院の料金表**も参考に、保険と自費、それぞれの特徴を理解することで、ご自身の歯の未来を守るための賢い選択ができます。

保険適用のブリッジが隣の歯に与える影響

保険が適用されるブリッジの主な素材は、銀歯(金銀パラジウム合金)や、前歯に使われる硬質レジン前装冠(金属の骨組みにプラスチックを貼り付けたもの)です。これらの素材は比較的安価に治療できる反面、長期的に見るといくつかのリスクが指摘されています。

例えば、金属アレルギーを持つ方にとっては、アレルギー症状を引き起こす可能性があります。また、長期間使用することで、金属イオンが溶け出し、ブリッジの周囲の歯茎を黒ずませる「メタルタトゥー」を引き起こす可能性も報告されています[^1]。さらに、保険適用の素材は表面が滑沢でないため、プラークが付着しやすく、隣の歯や歯茎の炎症、歯周病を引き起こすリスクも高まります[^2]。

審美性だけじゃない、自費ブリッジの驚くべきメリット

一方、セラミックジルコニアといった自費のブリッジは、見た目が自然で美しいだけでなく、隣の歯の健康を守るための大きなメリットがあります。当院の**セラミック治療**もぜひご検討ください。

これらの素材は、表面が非常に滑沢でプラークが付着しにくいという特性があります。ある研究では、セラミックは金属よりもプラークの付着量が有意に少ないことが示されています[^3]。この特性により、隣の歯や歯茎を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。

また、生体親和性が高く、金属アレルギーのリスクがないことも大きな利点です。さらに、自費のブリッジはデジタルスキャンCAD/CAM技術といった最新の技術を用いて非常に精密に製作されるため、歯との隙間が少なく、そこから細菌が侵入して虫歯になるリスクを大幅に減らすことができます[^4]。

初期費用は高くなりますが、再治療のリスクが低減し、隣の歯の健康を長期的に維持できることを考えると、結果的にコストパフォーマンスが高い選択肢と言えるでしょう。


ブリッジを「一生もの」にするための清掃術とメンテナンスの秘訣

ブリッジは、一度装着したら終わりではありません。むしろ、そこからが隣の歯の健康を守るための新しいスタートです。日々の正しいケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスが、ブリッジを長持ちさせる鍵となります。

歯ブラシだけでは不十分?ブリッジ専用の清掃法

ブリッジは歯が連結されているため、通常の歯ブラシやデンタルフロスだけでは、すべての汚れを取り除くことが困難です。特に、歯が抜けた部分に装着される「ポンティック」と呼ばれる人工歯の下の隙間には、食べかすやプラークが溜まりやすく、これが虫歯や歯周病の温床となります。

この部分を清潔に保つためには、ブリッジ専用の清掃器具を併用することが不可欠です。

  • 歯間ブラシ: ブリッジの連結部分や、歯と歯茎の間にできた隙間を通すことで、歯ブラシでは届かない汚れを効率的に除去します。サイズの異なる複数のブラシを使い分けることが推奨されます。
  • スーパーフロス: フロスの一端が硬くなっており、ブリッジの隙間に簡単に通せるように設計されています。ポンティック下の清掃に特に有効です。
  • タフトブラシ: 毛先がひとまとまりになった小さなブラシで、ブリッジの周囲や複雑な形状の部分をピンポイントで磨くのに役立ちます。

これらの器具を日常の歯磨きに取り入れることで、ブリッジと隣接する歯の健康を維持し、虫歯や歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。

見落としがちな定期メンテナンスの重要性

どんなに丁寧にセルフケアを行っても、磨き残しは必ず発生します。だからこそ、歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠です。

歯科医院では、歯科衛生士が専門的な器具を用いて、セルフケアでは落としきれないプラークや歯石を徹底的に除去する「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」を受けることができます。これにより、口腔内全体を清潔な状態に保ち、ブリッジの寿命を延ばすことができます。

また、定期検診では歯科医師がブリッジの緩みや破損がないか、そしてブリッジの下で進行しているかもしれない虫歯などを早期に発見します。最新の歯科用CTやレントゲンを使用することで、肉眼では見えない部分の状態も正確に把握できます。

さらに、噛み合わせのチェックも重要です。噛み合わせがずれていると、ブリッジや隣の歯に過剰な負担がかかり、破損の原因となることがあります。定期的なメンテナンスで噛み合わせを調整することは、ブリッジを長持ちさせるだけでなく、顎関節症などの予防にもつながります。

ブリッジは、隣の歯の健康を守るために「あえて」選択する治療法です。適切な素材選びと、日々の丁寧なケア、そして歯科医院での定期的なメンテナンスを続けることで、ブリッジと隣の歯の健康を「一生もの」にすることができます。


ブリッジ治療に関するFAQ

Q1:ブリッジはどれくらい持ちますか?

A1: ブリッジの寿命は、患者様の口腔ケアの状態や素材、定期的なメンテナンスの状況によって大きく異なります。一般的に、保険適用のブリッジは7〜8年、自費のセラミックやジルコニアブリッジは10〜15年以上持つことが多いとされています。しかし、日々の丁寧な清掃と歯科医院での定期検診を続けることで、さらに長期間にわたって快適にご使用いただけます。

Q2:ブリッジの治療期間はどのくらいですか?

A2: 治療期間は、失われた歯の本数や口腔内の状態によりますが、通常は数回の通院が必要です。初診でカウンセリングと検査を行い、2回目で歯を削って型取り、3回目でブリッジを装着するという流れが一般的です。状態によっては仮歯を装着して噛み合わせを確認する期間を設けることもあります。

Q3:ブリッジとインプラント、どちらが良いですか?

A3: ブリッジと**インプラント**は、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらの治療法が適しているかは、患者様の口腔状態やご希望によって異なります。当院では、患者様のお口の状態を詳しく検査し、様々な選択肢をご提案いたします。インプラント治療についてより詳しく知りたい方は、こちらのページもご覧ください。


泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

東京都港区にある泉岳寺駅前歯科クリニックでは、ブリッジ治療をはじめ、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療プランをご提案しています。

当院は、都営浅草線・京急線泉岳寺駅A3出口から徒歩1分という非常にアクセスしやすい場所に位置しており、高輪ゲートウェイ駅品川駅からもアクセスが良好です。

最新の医療機器と専門知識を持つ歯科医師が、患者様のお口の健康を第一に考え、丁寧なカウンセリングと精密な治療を提供いたします。ブリッジ治療に関するご相談はもちろん、お口のことでお悩みの方は、どうぞお気軽にご来院ください。


参考文献

[^1]: Kim, Y. S., et al. (2018). “Gingival discoloration from dental restorations.” Journal of Clinical and Experimental Dentistry, 10(2), e145-e152. [^2]: Lang, N. P., et al. (1993). “Plaque accumulation on different restorative materials.” Journal of Clinical Periodontology, 20(3), 196-200. [^3]: Quirynen, M., et al. (1990). “Plaque accumulation on various dental materials.” Journal of Clinical Periodontology, 17(8), 539-544. [^4]: Gomes, F. G., et al. (2020). “Precision of fit of different CAD/CAM zirconia copings.” The Journal of Prosthetic Dentistry, 124(1), 108-115.

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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