column 歯周病

原因と対策】10代・20代に忍び寄る歯周病|喫煙・ストレス・食生活チェックリスト付き

2025.09.06

若者こそ知っておきたい!歯周病が「静かに進行する」理由

「歯周病なんて、年配の人がなる病気でしょ?」

そう思っている10代、20代のあなたは、もしかしたらすでに歯周病の初期段階にあるかもしれません。

実は、**若い世代でも歯周病は広がっており、**20代でも歯ぐきの出血や腫れといった初期症状が見られるケースは珍しくありません。歯周病は、もはや「年配の病気」ではありません。 あなたの生活習慣が、知らず知らずのうちに歯ぐきの健康を蝕んでいる可能性があるのです。

初期の歯周病は、痛みや目立った症状がほとんどありません。そのため、「口の中がネバつく」「歯磨きをするとたまに出血する」といった小さなサインを見過ごしてしまいがちです。

歯周病は、歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)に溜まった細菌が、歯ぐきに炎症を引き起こすことから始まります。この炎症が進行すると、最終的には歯を支えている骨が溶かされ、歯がグラグラしたり、抜け落ちたりする原因となります。

この記事では、若年層に特有の歯周病の原因と、今日からできる対策を分かりやすく解説します。将来の後悔をなくすために、まずは歯周病がなぜ「静かに」進行するのか、その理由を知ることから始めましょう。より詳しい歯周病の進行段階や当院の治療方針については、**歯周病治療のページ**をご覧ください。


タバコが歯ぐきを老けさせる?喫煙と歯周病の意外な関係

「タバコは吸うけど、歯磨きはちゃんとしてるから大丈夫」

そう思っていませんか?実は、その考えは非常に危険です。喫煙は、歯磨きだけでは防ぎきれない、歯周病の重大なリスク因子です。喫煙者の歯周病は、非喫煙者に比べて約2倍も進行しやすいという研究結果もあります。

 喫煙が歯周病を隠す本当の理由

タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。これにより、歯ぐきへの血流が悪くなります。健康な歯ぐきであれば、炎症が起きると赤く腫れて出血し、SOSのサインを出します。しかし、喫煙者の歯ぐきは血行が悪いため、炎症が起きても出血しにくく、歯周病が進行していることに気づきにくいのです。

この「隠された進行」こそが、喫煙者の歯周病が重症化しやすい最大の理由です。あなたが気づかないうちに、歯を支える骨が静かに溶けている可能性があります。

喫煙が免疫力と治療効果を阻害するメカニズム

喫煙は、歯周病菌と戦うための体の免疫機能を低下させます。具体的には、タバコに含まれる一酸化炭素が白血球の機能を低下させ、免疫応答を鈍らせることがわかっています。

さらに、喫煙は歯周病の治療効果そのものも妨げます。血行不良は、治療に必要な酸素や栄養が患部に届くのを邪魔し、治療後の回復も遅らせてしまいます。多くの研究で、禁煙した歯周病患者は、喫煙を継続した患者よりも治療効果が高く、再発リスクが低いことが示されています。例えば、2023年に発表されたレビュー論文では、喫煙者の臨床転帰が非喫煙者に比べて50〜75%悪いと報告されています。

つまり、日々の丁寧なケアや、歯科医院での治療も、喫煙を続けている限りは十分な効果を得られない可能性が高いのです。歯周病を本気で治したいなら、禁煙は避けては通れない道と言えるでしょう。喫煙によるリスクを減らし、健康な口腔内を保つための専門的なクリーニングや予防ケアについては、**予防歯科のページ**で詳しくご紹介しています。


歯周病は「心の病気」?ストレスが引き起こすメカニズムと対策

「最近、疲れが取れない」「ストレスが溜まっている…」

このような心の状態は、実はあなたの歯ぐきに直接的なダメージを与えているかもしれません。ストレスと歯周病は、一見関係なさそうですが、深く結びついています。

ストレスが免疫力を低下させる

ストレスを感じると、私たちの体はコルチゾールというホルモンを大量に分泌します。このコルチゾールは、歯周病菌と戦うための免疫細胞(リンパ球など)の働きを抑え込むことがわかっています。

免疫力が低下すると、健康なときには抑えられていた歯周病菌が活発になり、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。これは、風邪をひきやすくなるのと似たメカニズムです。

無意識の歯ぎしり・食いしばりが歯ぐきを傷つける

ストレスは、無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりを引き起こす大きな原因です。特に寝ている間や、何かに集中しているときに、驚くほどの強い力が歯にかかっています。

この過剰な力が歯や歯ぐきに繰り返し加わることで、歯を支えている骨に負担がかかり、歯周病の進行を早めてしまいます。歯ぎしりや食いしばりは、歯周病を悪化させる「二次的なリスク」として、近年特に注目されています。

ストレスをコントロールして歯周病を予防する

ストレスを完全にゼロにすることは難しいですが、上手に付き合うことで歯周病のリスクを減らすことができます。

質の良い睡眠を確保する

睡眠は、免疫システムを回復させる重要な時間です。十分な睡眠は、歯周病の進行を抑えるだけでなく、ストレス軽減にもつながります。

適度な運動を取り入れる

ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、ストレスホルモンを減らし、精神的なリフレッシュにも効果的です。

歯科医師に相談する

もし、歯ぎしりや食いしばりの自覚がある場合は、歯科医院でマウスピースを作成してもらうことをお勧めします。これは歯や歯ぐきへの負担を軽減する最も効果的な方法です。当院でも、歯周病治療の一環として歯ぎしり・食いしばりのご相談を承っております。詳しくは**歯周病治療のページ**をご覧ください。


好きなものを食べたい人必見!食生活が歯周病を招く本当の理由

「甘いものが大好き」「エナジードリンクが手放せない」

そんな食生活は、あなたの歯周病リスクを飛躍的に高めているかもしれません。歯周病は、ただの「歯磨き不足」だけで起きるわけではありません。日々の食習慣が、歯周病菌にとって最適な環境を作り出しているのです。

糖分が歯周病菌の「餌」になるメカニズム

歯周病の原因となるのは、歯と歯ぐきの間に付着したプラーク(歯垢)に潜む細菌です。これらの細菌は、食事から摂取した糖分を栄養源として増殖します。

特に砂糖やブドウ糖は、細菌が分解してネバネバとした多糖体を作り出すため、歯にプラークを固着させ、歯周病菌がさらに繁殖しやすい環境を作り出します。これは、まるで歯周病菌に「食事」を与えているようなものです。

「だらだら食べ・飲み」が口腔内の環境を悪化させる

食事をするたびに、口腔内は一時的に酸性になり、歯が溶けやすい状態になります。通常、唾液の力で中和され、歯は再石灰化(修復)されます。しかし、だらだらと間食をしたり、甘い飲み物を長時間かけて飲んだりすると、口腔内が常に酸性の状態に保たれてしまいます。

この状態が続くと、再石灰化が追いつかず、歯周病菌が繁殖しやすい環境が作られ、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。2022年に発表された複数の研究をまとめたレビュー論文でも、砂糖を頻繁に摂取することが歯周病のリスクを高めることが示唆されています。

食生活の改善で歯周病を予防する

大好きな食べ物をすべて我慢する必要はありません。少しの工夫で、歯周病のリスクを減らすことができます。

間食の回数を減らす

食事と食事の間にダラダラと食べ続けるのではなく、時間を決めて楽しむようにしましょう。

飲み物を変えてみる

ジュースやエナジードリンクを、水やお茶に変えるだけでも大きな効果があります。

食後のケアを徹底する

すぐに歯磨きができない場合は、うがいをしたり、キシリトール入りのガムを噛んだりして、口腔内の環境をリセットしましょう。より詳しいセルフケア方法や、定期的なクリーニングについては、**予防歯科のページ**をご参照ください。


今すぐチェック!あなたの歯周病リスク診断シート

ここまで、若者世代の歯周病を蝕む3つの原因について解説してきました。あなたの生活習慣は、どれくらい歯周病のリスクを抱えているのでしょうか?

これから示すチェックリストを使って、ご自身の口腔内の健康状態を客観的に見つめ直してみましょう。これはあくまで自己診断ですが、将来の歯の健康を守るための第一歩となるはずです。

3つのリスクを自己診断!チェックリスト

以下の項目に当てはまるものにチェックを入れてください。

喫煙のリスク

  • 毎日、紙巻きタバコや電子タバコを吸っている
  • 周囲に喫煙者が多く、受動喫煙の機会が多い
  • 口腔内の乾燥や、口臭が気になるときがある

ストレスのリスク

  • 仕事や人間関係で強いストレスを感じることが多い
  • 就寝中に歯ぎしりや食いしばりをしていると指摘されたことがある
  • 集中しているとき、無意識に歯を食いしばっている

食生活のリスク

  • 毎日、甘い飲み物(ジュース、エナジードリンクなど)を飲む
  • 食事の時間が不規則で、間食が多い
  • 食後すぐに歯磨きをしないことが多い

診断結果と次のアクション

チェックの数によって、あなたの歯周病リスクレベルと、取るべきアクションを診断します。

チェックが0~1個:低リスク

現時点ではリスクは低いですが、油断は禁物です。現在の良い習慣を継続し、定期的に歯科健診を受けることで、将来も健康な歯を維持できるでしょう。

チェックが2~4個:中リスク

歯周病が静かに進行している可能性があります。まずは、チェックが入った項目の生活習慣から、できることを一つずつ改善していきましょう。この時期に対策を始めることが、重症化を防ぐ鍵となります。

チェックが5個以上:高リスク

すでに歯周病が進行している可能性が非常に高い状態です。今すぐ歯科医院を受診し、専門的な診断と治療を受けることを強くお勧めします。このまま放置すると、大切な歯を失ってしまうかもしれません。

このチェックリストは、あくまで自己診断の目安です。 正確な診断のためには、歯科医院での専門的な検査が不可欠です。口臭が気になる方は、歯周病が原因かもしれません。当院の**口臭外来**でもご相談を承っております。


将来の歯の健康に「今」投資しよう

歯周病は、ただの口腔内の問題ではありません。近年、歯周病菌が血液を介して全身に広がり、糖尿病や心臓病、さらにはアルツハイマー病などの様々な疾患と関連していることが、多くの研究で明らかになっています。

つまり、歯周病対策は「将来のあなたの健康」への賢い投資なのです。

歯周病予防は「未来への投資」

若い頃から歯周病予防に取り組むことは、将来的に高額な治療費を払ったり、大切な歯を失ってしまったりするリスクを大きく減らします。80歳になっても20本以上自分の歯を保つことを目標とする「8020運動」を達成するためにも、若いうちからのケアが不可欠です。もし歯周病が進行し、歯を失ってしまった場合の治療法については、**インプラントページ**もご参照ください。

この記事で学んだことを、ぜひ今日からの行動に繋げてください。

歯科医院での定期健診を習慣にしよう

今回のチェックリストでリスクが高かった人も、そうでない人も、まずは歯科医院での定期健診を強くお勧めします。プロの目でしか気づけない小さな変化を早期に発見し、適切なケアを受けることが、歯周病予防の最も確実な方法です。

毎日のお手入れを見直そう

歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを活用して、歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間や、歯周ポケットの汚れを丁寧に除去しましょう。

生活習慣を少しずつ改善しよう

「タバコの本数を減らす」「間食を控える」「質の良い睡眠を心がける」など、できることから一つずつで構いません。あなたの小さな一歩が、未来のあなたの歯と全身の健康を守る大きな一歩となります。

歯周病は、決して怖い病気ではありません。正しい知識と行動があれば、予防できる病気です。あなたの意識と行動が、10年後、20年後の健康な笑顔を作ります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 歯周病の治療にはどれくらいの期間がかかりますか?

A. 歯周病の進行度合いによって大きく異なります。初期の歯周病であれば数回のクリーニングで改善が見られますが、重度の場合は数ヶ月から年単位の治療が必要になることもあります。まずは歯科医院で、あなたに合った治療計画を立ててもらいましょう。

Q2. 歯周病の治療は痛いですか?

A. 歯周病治療の基本である歯石除去は、多くの場合、麻酔なしで受けられます。しかし、歯周ポケットの深い部分まで治療が必要な場合は、痛みを伴うことがあるため、局所麻酔を使用します。患者さんの痛みを最小限に抑えるよう配慮しますのでご安心ください。

Q3. 歯周病は一度治ったら再発しませんか?

A. 歯周病は生活習慣病のため、再発リスクが高い病気です。治療後も、毎日の丁寧な歯磨きと、歯科医院での定期的なメンテナンス(プロによるクリーニングやチェック)を続けることが非常に重要です。


最後に

この記事を通じて、若者世代の歯周病リスクについて、少しでもご理解いただけたなら幸いです。

歯周病は、早期に発見し適切なケアをすれば、決して怖くない病気です。しかし、放置すれば、将来の大切な歯を失いかねません。あなたの「今」の意識と行動が、未来の健康な笑顔を作ります。

もし、ご自身の歯周病リスクが気になったり、専門家のアドバイスが必要だと感じたりした場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

当院「泉岳寺駅前歯科クリニック」は、東京都港区に位置し、泉岳寺駅A3出口から徒歩1分と、非常にアクセスしやすい場所にあります。高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良く、 お仕事帰りや買い物のついでにも立ち寄りやすいクリニックです。

私たちは、一人ひとりの患者さんに寄り添い、丁寧なカウンセリングと専門的な治療を提供しています。あなたの歯の健康を守るパートナーとして、全力でサポートさせていただきます。


参考文献

  • 日本歯周病学会. 「歯周病に関するQ&A」. https://www.perio.jp/publication/qa/
  • Kusama, T. et al. (2022). “Free Sugar Intake and Periodontal Diseases: A Systematic Review.” Nutrients.
  • Ramseier, C. A. et al. (2023). “Maintenance of oral health and prevention of periodontal disease: A systematic review and meta‐analysis of the effects of smoking cessation on the outcomes of periodontal therapy.” Journal of Clinical Periodontology.
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  • Preshaw, P. M. et al. (2022). “Periodontitis and diabetes: a two-way relationship.” British Dental Journal, 233, 440–445.
  • Genco, R. J., & Borgnakke, F. S. (2020). “Risk factors for periodontal disease.” Oral Diseases, 26(S1), 17–23.
  • Ramseier, C. A. et al. (2023). “Maintenance of oral health and prevention of periodontal disease: A systematic review and meta‐analysis of the effects of smoking cessation on the outcomes of periodontal therapy.” Journal of Clinical Periodontology, 50(S26), 56–78.
  • Meyle, J. & Chapple, I. (2017). “Molecular aspects of the pathogenesis of periodontitis.” Periodontology 2000, 75(1), 35-43.
  • Sanz, M., & Tonetti, M. S. (2019). “Impact of smoking cessation on periodontal therapy: a systematic review.” Journal of Clinical Periodontology, 46(S21), 1-13.

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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