column 歯周病

10代・20代のあなたへ 「歯周病は他人事」ではない理由と、よくある疑問に答えるQ&A

2025.09.11

なぜ若者は「歯周病なんて他人事」と思ってしまうのか?

「歯周病」と聞くと、多くの人が「年配の人がなる病気」というイメージを持つのではないでしょうか? しかし、それは大きな間違いです。特に10代から20代にかけての若い世代も、歯周病のリスクを抱えています。中には、すでに歯周病が進行している人も少なくありません。

この章では、なぜ若者が歯周病を他人事だと思ってしまうのか、そしてその認識がどれほど危険なのかを掘り下げていきます。

若者こそ注意すべき「侵襲性歯周炎」とは?

私たちが一般的にイメージする歯周病は、時間をかけてゆっくりと進行することが多いです。しかし、若年層に多く見られるのは**「侵襲性歯周炎」**と呼ばれる、非常に進行が速いタイプの歯周病です。これは、特定の細菌(アグレガティバクター・アクチノマイセテムコミタンスなど)が原因で、自覚症状がほとんどないまま、短期間で歯を支える骨が溶けてしまうという特徴があります。

痛みや歯ぐきの腫れが少ないため、気づいた時にはかなり進行していて、歯がグラグラになってしまうケースも少なくありません。若いからと油断していると、将来的に歯を失う大きなリスクに直面することになります。若年層の歯周病についてさらに詳しく知りたい方は、**当院の歯周病コラム**をご覧ください。

あなたの日常がリスクを高める?若年層特有の生活習慣

侵襲性歯周炎だけでなく、あなたの普段の生活習慣も歯周病のリスクを高めています。 特に、不規則な食生活やストレス、睡眠不足、そして喫煙は、歯周病を悪化させる重大な要因です。喫煙者の歯周病は非喫煙者に比べて約3.3倍リスクが高く、さらに進行が早いことが報告されています(参考文献1)。喫煙による血行不良が、症状を隠してしまう危険性もはらんでいます。

これらの生活習慣と歯周病の意外な関係について、詳しくは**当院のコラムで詳しく解説しています**。

歯周病の初期サインを見逃していませんか?

「自分は大丈夫」と思っていても、以下のような初期サインがある場合は注意が必要です。

  • 歯磨き中に歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが赤く腫れている
  • 口臭が気になる
  • 歯が長くなったように見える(歯ぐきが下がっている)

これらのサインは、単なる疲れや磨きすぎではなく、歯周病の始まりである可能性が高いことを示しています。ご自身の「歯周病年齢」をチェックしたい方や、これらの症状に心当たりのある方は、**年代別で知る歯周病の危険信号のページ**もご参照ください。


若年層の歯周病「よくある疑問Q&A」

この章では、10代から20代の読者が特に抱きやすい歯周病に関する疑問に、Q&A形式でお答えします。

Q1. 歯磨きの時、歯ぐきから血が出るのですが、これって歯周病ですか?

A. 歯ぐきからの出血は、歯周病の初期サインです。健康な歯ぐきは、歯磨きで出血することはありません。このサインを見過ごさず、歯磨きの方法を見直したり、歯科医院で専門的なアドバイスをもらうことが、歯周病の進行を防ぐ第一歩です。

Q2. まだ10代/20代なのですが、歯周病は私にも関係ありますか?

A. はい、大いに関係あります。歯周病は年配の方だけの病気ではありません。特に若年層には**「侵襲性歯周炎」**という、急速に進行するタイプがあり、自覚症状がないまま進行していることがあります。早期に気づくためにも、定期的な歯科検診が大切です。

Q3. 歯周病になると、どんな見た目の変化がありますか?

A. 歯周病が進行すると、歯ぐきが赤く腫れて見えたり、ひどくなると歯ぐきが下がって歯が長く見えたりします。また、歯ぐきが下がると歯と歯の間に隙間ができ、見た目の印象にも影響することがあります。

Q4. 歯周病を放置すると、どんなリスクがありますか?

A. 歯周病を放置すると、歯を支える骨が溶け、最終的に歯が抜け落ちてしまいます。また、歯周病菌が全身の血流に乗って、糖尿病や心臓病、脳梗塞などの全身疾患を悪化させる可能性もあります(参考文献2)。

Q5. 歯周病を放置すると、何歳くらいで歯が抜け始めますか?

A. 進行スピードには個人差がありますが、若年性の侵襲性歯周炎の場合、10代から20代のうちに歯を支える骨が溶け始め、30代から40代で歯が抜け落ちてしまうケースもあります。歯周病は気づかぬうちに進行するため、「まだ大丈夫」と思わないことが大切です。

Q6. 歯周病の治療って痛いですか?

A. 初期段階の治療(歯石除去など)は、麻酔をせずにできることがほとんどで、痛みはほとんどありません。進行している場合は麻酔をして治療することもありますが、治療中の痛みはコントロールできます。治療後の痛みも、ほとんどの場合は数日で収まります。

Q7. 歯周病予防に効果的なサプリメントはありますか?

A. 歯周病予防に特定のサプリメントが劇的に効果を発揮するという科学的根拠はまだ確立されていません。大切なのは、サプリメントに頼るのではなく、日々の正しい歯磨きと、バランスの取れた食生活を心がけることです。

Q8. 喫煙が歯周病を悪化させるのはなぜですか?

A. タバコに含まれるニコチンは、歯ぐきの血管を収縮させ、血行を悪くします。これにより、歯ぐきが歯周病菌と戦うための酸素や栄養が行き渡りにくくなり、免疫機能が低下します。また、タバコを吸うと歯ぐきの出血が抑えられ、症状に気づきにくくなることも悪化の一因です。

Q9. 一人暮らしを始めたら、歯周病のリスクは上がりますか?

A. はい、上がることがあります。生活リズムが不規則になったり、外食やコンビニ食が増えたりすることで、栄養バランスが偏ったり、歯磨きがおろそかになったりすることがあります。これらはすべて歯周病のリスクを高める要因となります。

Q10. 歯医者に行くのが怖い/面倒です。それでも行くべきですか?

A. 治療が必要な歯周病の場合、残念ながらセルフケアだけでは治せません。しかし、初期の歯周病であれば、専門家によるクリーニングとブラッシング指導で改善できることが多いです。将来の自分の歯を守るために、勇気を出して一度、歯科医院を訪れてみてください。

Q11. 歯並びが悪いと、歯周病になりやすいと聞いたのですが、本当ですか?

A. はい、本当です。歯並びが悪いと、歯と歯が重なった部分や隙間に歯ブラシの毛先が届きにくく、歯垢(プラーク)が溜まりやすくなります。これにより、歯周病のリスクが高まります。歯列矯正を検討することも、歯周病予防の一つと言えます。

Q12. 口臭が気になるのは、歯周病が原因ですか?

A. 口臭の主な原因の一つは、歯周病菌が作り出す硫黄化合物です。歯周病が進行すると、この菌が増え、独特の嫌なにおいを発生させます。口臭が気になる場合は、歯周病の可能性が高いので、一度歯科医院でチェックしてもらうことをお勧めします。

Q13. 将来インプラントになるのは嫌です。今からできることは?

A. 若いうちから歯周病を予防・治療しておけば、将来的な歯の喪失を防ぐことができます。日々の正しい歯磨きとフロス、そして年に1〜2回の定期検診が、将来のインプラント治療を回避するための最も確実な方法です。

Q14. ストレスや睡眠不足は歯周病に影響しますか?

A. はい、影響します。精神的なストレスや睡眠不足は、体の免疫力を低下させ、歯周病菌への抵抗力を弱めることがあります。また、ストレスから歯ぎしりや食いしばりをすることがあり、歯周病を悪化させる原因にもなります。

Q15. 歯周病ってうつるんですか?

A. 歯周病菌は、キスや食器の共有など、唾液を介して家族や恋人に感染する可能性があります。ただし、感染したからといって必ず発症するわけではありません。大切なのは、日々の丁寧な口腔ケアで、菌が増殖しにくい口内環境を保つことです。


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歯が痛くなってから行く場所ではなく、歯の健康を維持するために通う場所。そうした「予防歯科」の考え方を持つことが、生涯にわたる健康な口元を保つ鍵となります。


歯周病は、あなたの未来の「自信」と「健康」を左右する

ここまで歯周病の怖さや、忙しい中でもできるケア方法についてお話ししてきました。 最後に伝えたいのは、歯周病予防が単なる「歯の健康維持」にとどまらないということです。若いうちから始める口腔ケアは、あなたの将来の「自信」と「健康」、そして「豊かな人生」を左右する重要な投資なのです。

口腔ケアがもたらす、生涯の財産

健康な歯と歯ぐきは、あなたの人生に多くのポジティブな変化をもたらします。 笑顔に自信が持て、豊かな食生活をいつまでも楽しむことができます。さらに、歯周病が全身疾患と密接に関連しているという研究結果も多数報告されています。口腔ケアは、全身の健康を守るための「見えない予防策」と言えるでしょう。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

歯周病は、気づかぬうちに進行し、あなたの未来を脅かすかもしれません。しかし、今日から始める小さな一歩が、将来の大きな財産となります。

泉岳寺駅前歯科クリニックは、東京都港区高輪に位置し、地域の皆さまのお口の健康をサポートしています。

  • 泉岳寺駅:A3出口から徒歩1分
  • 高輪ゲートウェイ駅:徒歩13分
  • 品川駅:徒歩15分

お口の健康に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Nishida, N., Tanaka, M., et al. (2005). “Cigarette smoking and the prevalence of periodontitis.” Journal of Periodontal Research, 40(2), 163-169.
  2. 日本歯周病学会. (2016). 歯周病と全身の健康に関する見解. https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_body.pdf

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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