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ストレスが歯周病の「起爆剤」に?30代・40代を襲う免疫力・歯ぎしり・唾液から読み解く口元のSOS

2025.09.14

仕事や育児、社会的な役割が増え、心身ともに多忙を極める30代から40代。この年代で多くの方が直面する**「いつの間にか進行していた歯周病」**は、単なる口腔内の問題ではないかもしれません。

実は、日々のストレスが、その進行を加速させる大きな要因となっていることをご存知でしょうか?

このコラムでは、多忙な壮年層が抱えやすいストレスが、なぜ歯周病の「起爆剤」となるのかを掘り下げます。そして、泉岳寺駅前歯科クリニックが提供する専門的な治療と、ご自身でできる効果的なケアを組み合わせた、新しい歯周病対策についてお伝えします。


なぜ、ストレスが歯周病の「引き金」になるのか?

ストレスが歯ぐきに悪い影響を与える」と言われても、ピンとこないかもしれません。しかし、両者には科学的な根拠に基づいた深い関係性があります。ストレスが直接的に歯周病を引き起こすわけではありません。いくつかのメカニズムを介して、お口の健康を蝕んでいくのです。

免疫力の低下:細菌の攻撃を許してしまう体

継続的なストレスは、私たちの体を守る免疫システムの働きを弱めます。最新の研究でも、心理的ストレスが唾液中の免疫グロブリンIgAの分泌を減少させ、細菌への抵抗力を低下させることが示唆されています。ストレスを感じると、脳の視床下部からストレスホルモン(コルチゾールなど)が分泌されます。このコルチゾールが過剰になると、免疫細胞の働きが抑制されてしまうのです。

例えば、風邪をひきやすい時期や、疲れが溜まっている時に口内炎ができやすいのは、免疫力が低下しているためです。これと同じように、口腔内でも歯周病菌に対する抵抗力が弱まり、細菌が活発に活動しやすい環境が生まれてしまいます。その結果、歯ぐきの炎症が起こりやすくなり、歯周病が進行してしまうのです。

歯ぎしり・食いしばり:歯と歯ぐきへの過剰な負担

ストレスを感じると、無意識のうちに歯を食いしばったり夜間に歯ぎしりをしたりすることが増えます。これは、心身の緊張を和らげようとする、体の無意識な反応です。しかし、この行動は歯や歯ぐきに大きなダメージを与えます。

歯ぎしりや食いしばりによって歯にかかる力は、食事の際の何倍にもなると言われています。この過剰な力が、歯を支える歯周組織を破壊し、歯周病の進行を加速させてしまうのです。朝起きた時に顎がだるい、歯がしみる、といった症状がある場合は、歯ぎしり食いしばりが原因かもしれません。

唾液の減少:お口の自浄作用がストップ

唾液には、食べカスや細菌を洗い流す**「自浄作用」や、細菌の増殖を抑える「抗菌作用」、そして酸で溶けかかった歯を修復する「再石灰化作用」**といった、多くの重要な役割があります。

しかし、ストレスが溜まると自律神経が乱れ、唾液腺の働きが抑制されてしまいます。その結果、唾液の分泌量が減少し、お口の中が乾燥しやすくなります。唾液が減ると、お口の中の歯周病菌が繁殖しやすくなり、虫歯や口臭の原因にもつながります。


歯周病は「心からのSOS」かもしれない

「歯ぐきからの出血」や「歯のぐらつき」といった歯周病の症状は、単なる口腔内の問題として片付けられがちです。しかし、実はこれらの症状は、私たちの心身が発するSOSである可能性も示唆しています。

歯の健康は、全身の健康状態を映し出す鏡です。例えば、糖尿病や心臓病といった全身疾患が歯周病と深く関連していることが、近年の研究で明らかになっています。

ストレスが原因で心身のバランスを崩すと、お口の中にもその影響が現れます。 「最近、イライラしやすい」「夜、ぐっすり眠れない」「肩や首のこりがひどい」といった症状は、もしかしたら歯周病の進行を加速させるストレスのサインかもしれません。

私たちは、口腔内の診察を通じて、患者様の生活習慣やストレスの有無など、全身の健康状態までを考慮に入れた診療を心がけています。

歯ぐきの異変をきっかけに、ご自身の心と体の状態を見つめ直してみませんか? 泉岳寺駅前歯科クリニックは、単に歯を治療するだけでなく、患者様のトータルヘルスをサポートするパートナーでありたいと考えています。


歯科医院とタッグを組む「歯周病治療」と「ストレスマネジメント」

ストレスと歯周病の深い関係性をご理解いただけたでしょうか? 歯周病の治療を成功させるためには、単に歯石を取るだけでなく、その根源にあるストレスにアプローチすることが非常に重要です。

ここでは、泉岳寺駅前歯科クリニックで行っている専門的な治療と、ご自身でできる効果的なケアを組み合わせた、新しい歯周病治療についてご紹介します。

歯科医院でできること:マウスピースによる「守りの治療」

ストレスが原因の歯ぎしり食いしばりは、歯周組織に大きなダメージを与え続けます。この悪循環を断ち切るために有効なのが、マウスピースの作成です。

歯科医師が患者様一人ひとりの歯型に合わせて作成するカスタムメイドのマウスピースは、就寝中や日中の無意識な食いしばりから、歯や歯ぐきを保護します。歯にかかる過剰な力を分散させることで、歯周組織への負担を軽減し、歯周病の進行を抑える効果が期待できます。

また、マウスピースは顎関節への負担を減らし、肩こりや頭痛の改善にもつながることがあります。私たちは、お口全体のバランスを考慮した上で、患者様に最適な治療法をご提案します。

ご自身でできること:日常で取り入れる「ストレス軽減術」

歯周病治療の効果を最大限に引き出すには、歯科医院での治療と並行して、ご自宅でのセルフケアも欠かせません。ストレスを溜めないライフスタイルを意識することが、お口の健康を守る重要な鍵となります。

質の良い睡眠

睡眠は、心身の疲れを癒し、免疫力を回復させるために不可欠です。毎日、決まった時間に眠り、十分な睡眠時間を確保することで、体のストレスに対する抵抗力を高めることができます。

適度な運動

ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。適度な運動は、ストレスホルモンの分泌を抑え、気分転換にもつながります。

リラックスできる時間の確保

入浴、アロマテラピー、好きな音楽を聴く、読書をするなど、心からリラックスできる時間を持つことも大切です。副交感神経を優位にすることで、心身の緊張を解きほぐし、ストレスを軽減することができます。


ストレスをケアして、心と口元の健康を手に入れる

仕事や育児、日々の責任に追われる30代から40代。気づかないうちに心身に蓄積されたストレスは、知らず知らずのうちに歯周病という形で現れることがあります。

歯周病は、単にお口の中だけの問題ではありません。それは、心と体のバランスが崩れていることのバロメーターであり、見過ごしてはいけない重要なサインなのです。

もし、あなたが「歯みがきのたびに血が出る」「最近、口の中がネバつく」「朝起きると顎がだるい」といった症状に心当たりがあるなら、それはストレスが原因かもしれません。

放置すれば、歯周病はさらに進行し、大切な歯を失うことにもつながります。

泉岳寺駅前歯科クリニックでは、単に歯周病を治療するだけでなく、患者様の生活習慣やストレスの状況も考慮に入れた、トータルでの健康サポートを心がけています。

一人で悩まずに、まずは一度ご相談ください。私たちは、あなたの歯の健康を通じて、心と体の健康をサポートする一番のパートナーでありたいと願っています。

健康な歯と笑顔で、より充実した毎日を過ごせるよう、私たちと一緒にストレス歯周病に向き合っていきましょう。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. ストレスが原因で歯周病になることはありますか?

A1. 直接的に歯周病を引き起こすわけではありませんが、ストレスが間接的に歯周病を悪化させることは科学的に証明されています。ストレスは免疫力を低下させたり、無意識の歯ぎしり・食いしばりを引き起こしたり、唾液の分泌量を減らしたりすることで、歯周病菌が活動しやすい環境を作り出してしまいます。

Q2. 歯周病の治療でマウスピースを作ることはありますか?

A2. はい、ございます。特にストレスによる歯ぎしりや食いしばりが原因で歯周病が進行しているケースでは、マウスピースの作成を推奨しています。カスタムメイドのマウスピースが、歯や歯ぐきにかかる過剰な力を和らげ、歯周病の進行を抑制する効果が期待できます。

Q3. 歯ぐきからの出血は、歯周病のサインですか?

A3. はい、その可能性が非常に高いです。歯ぐきからの出血は、歯周病の初期症状として最も一般的なサインの一つです。出血がある場合は、すでに歯周病が始まっている可能性がありますので、早めの歯科医院へのご相談をお勧めします。


参考文献

  1. Genco, R. J., & Borgnakke, W. S. (2013). Risk factors for periodontal disease. Periodontology 2000, 62(1), 59-93.
  2. Peruzzo, D. A., et al. (2010). A systematic review of stress and psychological factors as an etiologic agent of periodontal disease. Journal of Periodontology, 81(11), 1603-1615.
  3. Newton, J. T., & Litonjua, L. A. (2009). The role of psychological stress in periodontitis. Periodontology 2000, 50(1), 141-150.

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

泉岳寺駅前歯科クリニックは、**「ストレスは歯周病の起爆剤」**という考えに基づき、患者様の心身の健康を考慮した丁寧な歯科医療を提供しています。

アクセス

  • 泉岳寺駅 A3出口から徒歩1分
  • 高輪ゲートウェイ駅、品川駅からアクセスが良く、お仕事帰りにもお立ち寄りいただけます。

東京都港区にある当院は、地域の皆様の「かかりつけ歯科医」として、お口の健康をトータルでサポートします。

歯周病治療はもちろん、予防歯科、審美歯科など、お口に関するお悩みは何でもお気軽にご相談ください。

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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