column 歯周病

持病、薬、歯周病の関係とは?口腔乾燥、歯肉増殖の対策と歯科受診の重要性

2025.09.22

はじめに:なぜ「持病の薬」と「歯周病」の関係を知る必要があるのか?

高血圧や糖尿病、心疾患など、多くの中高年層が抱える持病。これらの病気と歯周病には、実は密接な関係があることをご存じでしょうか。さらに、持病の治療のために服用しているが、その関係をさらに複雑にし、口腔内の環境を悪化させている可能性さえあるのです。

「歯周病は、ただの口の病気でしょ?」そう思っていませんか?しかし、それは大きな誤解です。歯周病は、全身の健康に影響を及ぼす**「全身疾患」**であり、持病を抱える方々にとって、見過ごせないリスクとなっています。

この記事では、持病歯周病の知られざる関係を深掘りし、特に服用薬が口腔内に与える複合的な影響に焦点を当てます。そして、口腔トラブルへの具体的な対策と、歯科医に服用薬リストを伝えることの重要性を、最新の研究データに基づきながら、わかりやすく解説していきます。当院の歯周病治療について詳しくはこちらをご覧ください

その持病、歯周病と関係ありませんか?知られざる口腔内のリスク

持病歯周病は、互いに悪影響を及ぼし合う「悪循環」の関係にあります。例えば、糖尿病を患っている方は、高血糖状態が続くことで免疫機能が低下し、歯周病菌が繁殖しやすくなります。この状態は、歯周組織の炎症を慢性化させ、病気の進行を加速させます。逆に、重度の歯周病によって歯周組織に慢性的な炎症が起こると、体内で炎症性サイトカインなどの物質が生成され、インスリンの働きを妨げることがわかっています。これにより血糖値のコントロールがさらに困難になり、糖尿病の悪化を招くのです。これは高血圧や心疾患においても同様で、歯周病が全身の血管に負担をかけることで、これらの病態を悪化させる可能性が指摘されています。

そして、この悪循環に拍車をかけるのが、持病の治療のために服用しているです。薬の副作用が口腔内の環境を変化させ、気づかないうちに歯周病の進行を早めているケースが少なくありません。多くの人が薬の副作用というと、消化器系や皮膚への影響を想像しがちですが、口腔内にもさまざまな形で現れることを認識しておくことが非常に重要です。

口腔乾燥だけじゃない!薬が引き起こす「3つの副作用」

多くの人が、持病は症状を抑えるためのものだと考えていますが、実は口腔内にさまざまな影響を及ぼすことがあります。その中でも、特に注意したいのが「口腔乾燥」「歯肉増殖」「出血傾向」の3つの副作用です。これらは、あなたの歯周病リスクを飛躍的に高める可能性があります。

ドライマウスは万病の元?唾液が減る本当の怖さ

多くのが副作用として**口腔乾燥(ドライマウス)**を引き起こすことは、あまり知られていません。降圧剤、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など、さまざまな薬が唾液の分泌を抑制することが、研究によって明らかになっています¹。

唾液は単なる水分ではなく、私たちの口腔内を守る天然のバリアです。

  • 自浄作用:食べかすや細菌を洗い流します。
  • 抗菌作用:唾液に含まれる成分が、細菌の増殖を抑えます。
  • 再石灰化作用:歯から溶け出したミネラルを元に戻し、虫歯を予防します。

これらの重要な働きが失われると、口腔内の細菌は増え放題となり、歯周病や虫歯のリスクが急増します。単なる不快感と放置せず、唾液の減少は「万病の元」と考えるべきなのです。

歯茎が腫れる?「歯肉増殖」は薬が原因かもしれない

「歯茎が腫れやすい」「歯磨きすると歯茎がブヨブヨしている」と感じたことはありませんか?その症状、もしかしたらの副作用である歯肉増殖かもしれません。

特定の持病の治療に用いられる薬、例えば高血圧治療薬のカルシウム拮抗薬、免疫抑制剤、抗てんかん薬などは、歯肉の線維芽細胞を過剰に増殖させることがあります²。これは見た目の問題だけでなく、深刻な歯周病リスクにつながります。

  • 歯周ポケットの深化: 増殖した歯茎は、歯と歯の間に深い溝(歯周ポケット)を作り出します。
  • 細菌の温床: 深くなった歯周ポケットには酸素が届きにくく、歯周病菌が繁殖しやすい環境になります。
  • 歯磨きの困難化: 歯茎が分厚く腫れあがることで、歯ブラシの毛先が歯と歯茎の境目に届きにくくなり、汚れが溜まりやすくなります。

血が止まりにくいのはなぜ?歯周病と出血傾向の関係

歯磨きやデンタルフロスを使うと、すぐに歯茎から血が出ませんか?持病の治療で服用しているが、その出血傾向を強めている可能性があります。

心臓病や脳卒中の予防のために、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方は多いでしょう。これらの薬は、血が固まるのを防ぐことで命を守る重要な役割を果たしますが、同時に歯周病による歯肉の炎症で出血しやすくなるという副作用もあります³。出血を恐れて歯磨きを控えてしまうと、口腔内の細菌が増殖し、歯周病がさらに悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

今日からできる!自宅でできる口腔トラブル対策

持病が原因で起こる口腔乾燥歯肉増殖、出血といったトラブルは、日々のセルフケアで軽減することができます。

乾燥を防ぐ!いますぐ始めたい口腔保湿ケア

口腔乾燥歯周病を進行させる大きな要因ですが、自宅で簡単にできる対策があります。

口腔保湿剤の活用

ジェルタイプ、スプレータイプ、洗口液など、さまざまな口腔保湿剤が市販されています。寝る前や、口の乾燥が気になったときに使うことで、潤いを保ち、細菌の繁殖を抑えることができます。

唾液腺マッサージ

唾液の分泌を促すには、唾液腺を直接刺激するのが効果的です。

  • 耳下腺: 耳たぶの下あたりを、指の腹で優しく回すようにマッサージします。
  • 顎下腺: 骨の内側を、耳の下から顎の先に向かってマッサージします。
  • 舌下腺: 顎の真下、舌の付け根あたりを、下から押し上げるようにマッサージします。

歯茎の腫れ・出血を悪化させない正しい歯磨き法

歯肉増殖や出血傾向がある場合、歯磨きがおっくうになりがちですが、正しい方法で丁寧にケアをすることが歯周病の悪化を防ぐ鍵となります。

歯ブラシの選び方とブラッシングテクニック

歯肉に負担をかけないよう、やわらかい毛先の歯ブラシを選びましょう。出血しやすい方は、特に力を入れすぎないことが重要です。歯ブラシの毛先を歯と歯肉の境目に45度の角度で当て、小刻みに動かす「バス法」は、歯周ポケットの歯垢を効率的に除去するのに効果的です。

デンタルフロスや歯間ブラシの活用

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは6割程度しか落とせません⁴。歯肉が増殖している場合は特に、歯周ポケットが深くなっているため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して、歯ブラシが届かない部分の汚れを徹底的に除去することが不可欠です。

セルフケアだけでは不十分?歯科医と連携すべき理由

日々のセルフケアは大切ですが、持病によって引き起こされる口腔トラブルは、それだけでは解決が難しい場合があります。特に、進行した歯周病を食い止めるには、専門的な歯科治療が不可欠です。

なぜ?歯科医に「お薬手帳」を見せるべき理由

「歯医者さんに行くとき、なんでお薬手帳が必要なの?」そう疑問に思ったことはありませんか?実は、あなたが服用している持病は、歯科治療の安全性や治療計画に大きく影響する可能性があるからです。初診の流れについてはこちらをご確認ください

知っておきたい!服用薬が治療計画に影響する理由

歯科医は、お薬手帳を見ることで、あなたに合わせた最も安全で効果的な治療を提供することができます。

麻酔薬の調整

高血圧症を治療する降圧剤を服用している場合、歯科治療で用いる麻酔薬に含まれる血管収縮剤が血圧に影響を及ぼす可能性があります。事前に服用薬リストを共有することで、歯科医は血圧を急激に上げないよう麻酔薬の量を調整したり、血管収縮剤を含まない麻酔薬を選択したりすることができます。

抜歯や外科処置時の出血リスク

心筋梗塞や脳梗塞の予防のために、血液をサラサラにする抗血栓薬を服用している方もいるでしょう。これらの薬は、抜歯やインプラント治療といった出血を伴う処置を行う際に、出血が止まりにくくなるリスクを高めます。複数の研究で、抗血栓薬の服用状況を事前に確認することで、歯科医が処置のタイミングや方法を調整し、合併症を予防できることが示されています⁵。

副作用を早期発見!薬と口腔内の変化を診る歯科医の役割

持病は、口腔内に目に見える変化をもたらすことがあります。これらの変化を早期に発見し、適切な処置を施すためには、歯科医との密な連携が不可欠です。歯科医がお薬手帳の情報と口腔内の状態を照らし合わせることで、その症状が持病服用薬と関連している可能性を早期に判断できます。

まとめ:持病の治療は「全身」と「お口」で考える時代へ

持病歯周病の関係、そしてが口腔内に与える影響について、ここまで解説してきました。歯周病は単なる口のトラブルではなく、高血圧や糖尿病などの持病と密接に関わる全身疾患です。そして、その治療のために服用しているが、口腔乾燥歯肉増殖、出血傾向といった副作用を通じて、歯周病をさらに悪化させる可能性があることをご理解いただけたかと思います。

忘れずに!歯科受診時に「お薬手帳」を持参する重要性

あなたの服用薬リストは、歯科医にとって最も重要な情報の一つです。これを提示することで、歯科医は薬の副作用による口腔トラブルを正確に判断し、抜歯や手術時の出血リスクを事前に把握することができます。この「医科歯科連携」は、あなたの健康を多角的に守るための重要なステップなのです⁶。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 飲んでいる薬が多いのですが、事前に何か準備することはありますか?

A. はい、ぜひ**「お薬手帳」**をお持ちください。お薬手帳がない場合は、現在服用している薬の名前がわかるメモなどでも構いません。この情報は、患者様の全身状態を把握し、安全な治療計画を立てる上で非常に重要となります。

Q2. 歯周病治療と持病の治療は、どちらを優先すべきですか?

A. どちらか一方ではなく、両方を並行して行うことが大切です。特に糖尿病や心疾患と歯周病は密接に関連しており、歯周病を改善することで、持病の数値が安定することもわかっています。

Q3. 薬の副作用で口が乾くのですが、歯医者で何か治療できますか?

A. はい、治療法や対処法があります。当院では、口腔乾燥の程度に応じて、適切な保湿剤の使用方法や、唾液腺マッサージなどのセルフケア指導を行います。また、必要に応じて、持病を診ているかかりつけ医と連携し、最適な解決策を探ることも可能ですので、お気軽にご相談ください。

最後に:ご相談は泉岳寺駅前歯科クリニックへ

この記事を読んで、持病歯周病の関係、そして服用薬の影響についてご理解いただけたなら幸いです。

当院**「泉岳寺駅前歯科クリニック」は、患者様一人ひとりの全身状態を丁寧にヒアリングし、服用薬持病**を考慮した上で、安全で質の高い歯科医療を提供しています。

泉岳寺駅前歯科クリニックは、東京都港区に位置し、泉岳寺駅A3出口から徒歩1分と、非常にアクセスが良い場所にございます。JR高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良く、地域の方々だけでなく、近隣のビジネスパーソンや遠方からも多くの方にご来院いただいております。

ご自身の持病服用薬歯周病の関係について不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちと一緒に、あなたの健康を「全身」と「お口」の両方から守っていきましょう。

参考文献

  1. Turner M., Ship J.A. (2007). “Dry mouth and its effects on oral health.” Journal of the American Dental Association, 138(Suppl 1), 15S-20S.
  2. Livingstone D., et al. (2024). “Drug-induced gingival overgrowth: a review of the mechanisms and management.” British Dental Journal, 236(2), 107-112.
  3. Taba M., et al. (2024). “The effect of antithrombotic medications on gingival bleeding in patients with chronic periodontitis.” Journal of Periodontology, 95(1), 123-131.
  4. American Dental Association. “Flossing and Other Interdental Cleaners.” (最新情報より引用)
  5. Morales-Vadillo G., et al. (2024). “Management of patients on antithrombotic therapy in oral and maxillofacial surgery.” Medicina Oral Patología Oral y Cirugía Bucal, 29(1), e40-e47.
  6. Japan Dental Association. “医科歯科連携の推進.” (公式ウェブサイトより抜粋)

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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