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重度の歯周病でも『インプラント』はできる? 治療の可否を分ける条件

2025.10.06

重度の歯周病でもインプラントは可能? 治療可否を分ける2大条件

「インプラントは無理」と諦める前に知ってほしい事実

重度の歯周病で歯を失ってしまった。インプラントでしっかり噛めるようになりたいけれど、自分の口の状態では無理なんじゃないか…?」

そう不安に感じている方は決して少なくありません。歯周病は顎の骨を溶かす病気であり、インプラント治療の土台となる骨を失っているケースが多いため、このような不安は当然のことと言えます。

しかし、結論からお伝えします。

適切な手順と徹底した準備を経ることで、重度の歯周病を経験された方でもインプラント治療を受けて、快適な生活を取り戻すことは十分に可能です。

インプラント治療の成否は、手術そのものの技術以上に、「治療前の準備をどれだけ丁寧に行ったか」に全てがかかっていると言っても過言ではありません。この準備こそが、インプラントを長期間維持できるかどうかの決定的な差を生みます。

治療の成否を握る「歯周病の活動性」とは?

私たちが重度の歯周病患者様のインプラント治療の可否を判断する際、まずチェックする最も重要な条件の一つが「歯周病の活動性」です。

活動性とは、現在進行形で歯ぐきに炎症や出血があり、病気が進んでいる状態を指します。もしこの活動性が高い状態のままインプラント手術を行えば、患部に細菌が入り込み、手術が初期段階で失敗する、あるいは早期にインプラント周囲炎を発症するリスクが飛躍的に高まります。

このため、インプラント治療は「病気が治まって安定していること」が絶対条件となります。

インプラント治療は「治療前の準備」が成功の全て

重度の歯周病の既往がある方のインプラント治療は、単に歯を抜いてインプラント体を埋入するだけでは成功しません。

インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病の既往がある患者様ほど発症しやすいという研究結果も多く報告されています。つまり、歯周病という「病気の原因」を取り除かずに人工の歯根を入れても、再発リスクを抱えたままになってしまうのです。

当クリニックでは、この「準備期間」を治療全体の最も重要なステップと位置づけています。準備を徹底することで、インプラントを一生涯、健康に機能させられる状態を目指します。

なぜ重度の歯周病だとインプラントは「すぐできない」のか? 2つのリスク要因

【リスク要因1】インプラントの土台が失われる「骨量不足」

重度の歯周病を経験された方がすぐにインプラント治療に移行できない最大の物理的要因は、顎の骨の量が不足していることにあります。

歯周病が進行すると、歯を支えているはずの顎の骨が細菌によって徐々に溶かされていきます。これは、家を支える地盤が失われるのと同じ状態です。インプラント体(人工歯根)はチタン製ですが、骨と結合してこそ初めて機能します。

骨量不足が引き起こす問題点

  • インプラントの不安定性 骨の幅や高さが不足していると、インプラント体がしっかりと固定されず、早期にグラつきや脱落を引き起こすリスクがあります。
  • 神経・血管の損傷リスク 骨の量が少ない状態で無理に埋入しようとすると、骨の中を通る神経や血管を損傷する危険性が高まります。
  • オッセオインテグレーションの不全 骨とインプラントが強固に結合すること(オッセオインテグレーション)が妨げられ、治療そのものが失敗に終わる可能性があります。

適切な治療計画を立てるためには、まずCT検査による精密な診断が不可欠です。これにより、どの程度骨が失われているのか、そして次にどのような骨造成が必要なのかを正確に把握します。

【リスク要因2】インプラントの敵!「インプラント周囲炎」の脅威

重度の歯周病を経験された患者様にとって、長期的なインプラント維持を脅かす最大の敵が「インプラント周囲炎」です。

この病気は、天然歯の歯周病と酷似しており、インプラント周囲の歯肉に炎症が起こり、進行するとインプラントを支える骨が溶けてしまう病気です。

H4: 歯周病既往歴が周囲炎のリスクを高める根拠

最新の研究や統計データによると、過去に重度の歯周病で歯を失った方は、インプラント周囲炎を発症するリスクが一般の患者様よりも高いことが示されています。なぜなら、歯周病になりやすい口腔内の環境(細菌の種類や免疫反応の傾向)がそのまま残っているためです。

そのため、インプラント周囲炎を予防するには、単にインプラントを埋入するだけでなく、口腔内から病気の原因菌や炎症の因子を徹底的に排除し、安定させることが求められます。

インプラント周囲炎についてさらに詳しく知りたい方はこちら

活動性が高い口腔内では「手術が禁忌」となる理由

歯周病の活動性が高い(出血や炎症が残っている)状態で手術を行うことは、医療行為として原則的に禁忌とされています。

これは、手術によって開いた傷口から、活発な歯周病菌が骨の内部へ侵入する感染症のリスクが極めて高くなるためです。手術中に細菌が混入すれば、インプラントと骨の結合を妨げ、初期の段階で失敗に終わる可能性が飛躍的に高まることを記述する。

この禁忌の判断は、患者様の一時的な不利益ではなく、インプラントの長期的な成功と、全身の健康を守るための最も重要なルールです。

【最重要】インプラント成功のための「治療の優先順位」と準備

第一ステップ:徹底的な歯周病治療で口腔環境を安定させる

重度の歯周病を乗り越えてインプラントの成功を目指す上で、最も重要な概念が「治療の優先順位」です。

泉岳寺駅前歯科クリニックでは、この優先順位を厳格に守ります。

H4: インプラント治療の優先順位

  1. 徹底的な歯周病の安定化(現在の病気の原因を根絶する)
  2. 骨造成術(骨量が不足している場合)
  3. インプラント体埋入
  4. 上部構造の装着、長期メインテナンス

見ての通り、まず取り組むべきは**「歯周病の徹底的な治療」です。過去の症例を分析した臨床研究(エビデンス)でも、インプラント治療の前に既存の歯周病をコントロールすることが、術後のインプラント周囲炎**のリスクを大幅に減少させることが明らかになっています。

このステップでは、残っている天然歯の歯周ポケット内の深い汚れや細菌(プラーク、歯石)をすべて除去し、炎症や出血のない健康な状態を目指します。

インプラント周囲炎を防ぐための「安定」の定義

私たちがインプラント手術に進むために求める「口腔内の安定」とは、単に「症状が治まった」という状態ではありません。それは、インプラント周囲炎を未然に防ぐための、具体的な医学的基準を満たした状態です。

H4: インプラント手術へ進める「安定」のチェックリスト

  • 出血率の低下: 歯周ポケット内のプロービング(深さを測る検査)時に出血する部位が15%以下であること。(理想は10%未満
  • 歯周ポケットの改善: 破壊的な歯周病菌が繁殖しにくい、浅いポケット深度(通常4mm以下)が保たれていること。
  • 衛生管理の確立: 患者様ご自身による歯磨き(セルフケア)が適切に行え、磨き残し(プラークスコア)が極めて少ないこと。

この安定した環境を確立することで、インプラントが生涯にわたって細菌の攻撃を受けにくい、理想的な状態を整えることができるのです。

歯周ポケットや出血のない状態を目指す

重度の歯周病から立ち直るためには、歯科医院でのプロフェッショナルケアだけでなく、患者様ご自身の意識改革が不可欠です。

当クリニックでは、歯周病治療の過程で、炎症がなくなるまで徹底的に指導と治療を行います。

安定化に向けた治療の目的

  • 全ての炎症(出血や腫れ)をゼロに近づける。
  • 歯周ポケットを浅くし、細菌の「隠れ家」をなくす。
  • 治療後の再発を防ぐための、正しいセルフケア習慣を身につけていただく。

この努力によって築かれた「出血のない、引き締まった歯ぐき」こそが、インプラントを迎え入れるための、最も確実で安全な準備となります。

骨が足りない、は諦めないで! 骨造成術という解決策

歯周病で失われた骨を回復させる「骨造成術」とは

重度の歯周病治療によって口腔内の炎症が治まり、「活動性」がなくなったとしても、溶けてしまった顎の骨は自然には戻りません。しかし、骨量不足が判明したからといって、インプラントを諦める必要は一切ありません。

現代のインプラント治療には、この骨量不足を克服するための高度な技術、「骨造成術(こつぞうせいじゅつ)」があります。

骨造成術の目的は、インプラント体を埋入するために必要な十分な高さと幅の骨を外科的に回復させることです。これは、天然歯を失う原因となった歯周病が完全に治癒し、口腔内が安定していることを前提として行われます。

インプラントを安全に埋入するための準備(骨移植・GBRなど)

骨造成術には、患者様の骨の欠損状態やインプラントを埋入する部位に応じて、いくつかの専門的な手法があります。

当クリニックでは、術前のCTによる精密な三次元分析に基づき、患者様にとって最適な方法を選択します。

H4: 代表的な骨造成術の例

術式 目的と適用部位
GBR法 (Guided Bone Regeneration) 骨が幅や高さ方向に足りない場合に、骨補填材を用いて骨の再生を促す方法。
サイナスリフト/ソケットリフト 上顎の奥歯の骨が薄い場合に、上顎洞(鼻の横の空洞)の底を挙上し、骨を造成する方法。
ブロック骨移植 大量の骨の欠損がある場合に、患者様自身の他の部位から骨を採取し、移植する方法。

これらの技術を活用することで、重度の歯周病によって失われた土台を再構築し、インプラントが長期的に安定するための強固な基盤を確保することが可能になります。骨造成術は、インプラント治療成功への重要な架け橋なのです。

当院の骨造成術・骨移植の詳細はこちら当院の骨造成専門ページへ

泉岳寺駅前歯科クリニックで行うインプラントのための土台作り

重度の歯周病の既往がある方の治療計画では、骨造成術は治療プロセスの一部として組み込まれます。

当クリニックでは、骨造成手術の精度を高めるために、詳細なCTデータを用いたシミュレーションを行い、計画通りに骨を造成できるよう努めています。

インプラントを安全かつ確実に成功させるためには、歯周病治療による環境の安定化と、この骨造成による物理的な土台作り、この両輪が揃うことが不可欠です。

泉岳寺駅前歯科クリニックが提示する重度歯周病患者様のインプラント治療方針

重度の歯周病を乗り越え、インプラント治療によって再び噛める喜びを得ることは、決して夢ではありません。しかし、その成功の道のりは、単なる「歯の欠損」を補う治療とは一線を画します。

泉岳寺駅前歯科クリニックでは、この特殊なケースにおけるインプラント治療を**「再発させないための予防医療の集大成」**として捉えています。

当クリニックのインプラント治療の流れ(一般)はこちら当院のインプラント治療ページへ

H4: 当クリニックが守る4つのステップと治療哲学

ステップ 治療哲学 重視するポイント
I. 精密なリスク評価 原因の特定 過去の歯周病の進行度や、患者様の細菌学的傾向を正確に分析(CT、歯周組織検査)。
II. 環境の安定化 治療の土台作り インプラント周囲炎のリスクを極限まで下げるため、炎症や出血がない「安定」状態を確実に確立します。
III. 土台の再構築 安全性の確保 骨量不足が判明した場合、無理な手術はせず、骨造成術によってインプラントを支える強固な土台を準備します。
IV. 長期メインテナンス 生涯の維持 インプラント手術後の定期的な専門的ケアを最も重要視し、患者様と二人三脚でインプラントを守り続けます。

インプラントは、治療後のメインテナンスを怠れば、再びインプラント周囲炎によって失われる可能性がある人工物です。だからこそ、重度の歯周病を克服された方には、治療の過程で培った正しいセルフケアと、定期的なプロによるケアが欠かせません。

当クリニックは、あなたのインプラントを**「一生涯の財産」**にするために、この包括的な治療方針と最新のエビデンスに基づいた技術を提供することをお約束します。

「自分の口ではインプラントは無理かもしれない」と不安に思われている方こそ、まずはご相談ください。現在の歯周病の状態を詳しく検査し、あなたに最適な**「治療の優先順位」**と、未来の可能性を切り拓く治療計画をご提案いたします。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 歯周病が治っていなくてもインプラント手術はできますか?

A. 原則として、歯周病の活動性が高い状態(出血や炎症がある状態)では、インプラント手術は行うべきではありません。活動性が残ったまま手術をすると、インプラントと骨が結合しなかったり、早期にインプラント周囲炎を発症したりするリスクが極めて高くなるためです。当クリニックでは、まず徹底した歯周病治療によって口腔内を安定させることが最優先となります。

Q2. 骨造成術は痛いですか? また、期間はどれくらいかかりますか?

A. 骨造成術の手術中は、局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。術後に腫れや鈍痛が生じる場合がありますが、処方された内服薬で十分にコントロールが可能です。

治療期間については、造成する骨の量や術式によりますが、埋入した骨補填材や移植骨が患者様自身の骨として定着し、インプラントの土台として使えるようになるまでに、通常4ヶ月〜6ヶ月程度の治癒期間が必要です。この治癒期間を経て、次のステップに進みます。

骨造成の費用やさらに詳細な治療例はこちら当院のインプラント特設ページへ

Q3. インプラント治療後のメインテナンスはどれくらいの頻度で必要ですか?

A. 重度の歯周病の既往がある方は、特にインプラント周囲炎のリスクが高いため、メインテナンスが非常に重要です。インプラントを長持ちさせるためには、一般的に3〜4ヶ月に一度の定期的な専門的クリーニングとチェックアップが必要です。このメインテナンスを通じて、インプラント周囲の微細な変化を早期に発見し、トラブルを未然に防ぎます。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

所在地・アクセス情報

当クリニックは、地域にお住まいの方だけでなく、周辺の主要駅からもアクセスしやすい立地にございます。

項目 詳細
クリニック名 泉岳寺駅前歯科クリニック
所在地 東京都港区三田3-10-1 アーバンネット三田ビル1階
ウェブサイト https://sengakuji-ekimae-dental.com/
最寄駅 都営浅草線・京急線 泉岳寺駅 A3出口より徒歩1分
アクセス JR高輪ゲートウェイ駅品川駅からもアクセスが良く、周辺地域だけでなく広範囲の患者様にお越しいただいております。

ご相談・ご予約は、お電話またはウェブサイトから承っております。お口のことでお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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