column 歯周病

70代で急増!口腔内の歯周病菌がアルツハイマー型認知症を加速させる

2025.10.16

70代の健康を脅かす「二大疾患」:認知症と歯周病の密接な関係

70代を迎え、多くの方が直面する健康の大きな壁。その一つが「アルツハイマー型認知症」です。そしてもう一つ、日本人の成人の約8割が罹患しているとされる「歯周病」があります。

これらは一見、全く関係のない病気に見えますが、最新の研究では、口腔内の歯周病菌が血液に乗って脳に達し、認知症を加速させているという、驚くべき事実が明らかになっています。

「歯が残っている人」と「認知機能」の関連性

以前から、歯の健康と全身の健康には深い関わりがあることは知られていましたが、特に認知機能との関連は近年、大きな注目を集めています。

実際に、歯の喪失本数が多い人ほど、認知症の発症リスクが高まるというデータは数多く報告されています(Olsen, I. & Singhrao, S.K. 2015)。これは、単に食べ物を噛むという行為だけにとどまりません。

歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病が引き起こす慢性炎症は、口腔内にとどまらず、全身に悪影響を及ぼす「サイレントキラー」です。

  1. 血管へのダメージ:歯周病菌やその毒素が血管を通じて全身に広がり、動脈硬化や心臓病、脳梗塞のリスクを高めます。
  2. 糖尿病の悪化:歯周病は糖尿病を悪化させ、その糖尿病がさらに認知症リスクを高めるという負のスパイラルを招きます。
  3. 脳への直接的な影響:そして最新の研究では、歯周病菌が直接的にアルツハイマー型認知症の原因物質に作用することが解明されてきています。

口腔ケア」を疎かにすることは、将来の「アルツハイマー型認知症」という大きなリスクを自ら抱え込むことに他ならないのです。

日本人の大半が持つリスク:歯周病の現状と70代の認知症増加

高齢化が進行する日本において、70代のアルツハイマー型認知症患者数は年々増加の一途をたどっています。そして、その潜在的な危険因子として、国民病ともいえる歯周病が存在します。

認知症リスクを加速させる共通項

私たちは皆、知らず知らずのうちに歯周病菌という「時限爆弾」を口の中に抱えているかもしれません。特に70代で認知症が急増する背景には、中年期から長年蓄積された歯周病の慢性炎症が大きく関わっていると考えられています。

次章では、なぜ口の中にいるはずの歯周病菌が、遠く離れた脳にまで到達し、認知症を加速させるのか、その驚くべき科学的なメカニズムを詳しく解説します。


なぜ口腔内が脳に届くのか?歯周病菌がアルツハイマー型認知症を加速させる科学的根拠

口腔内にいるはずの歯周病菌が、どうやって遠く離れた脳の病気であるアルツハイマー型認知症に関わるのでしょうか。その答えは、歯周病が引き起こす体の「防御壁の崩壊」と、特定の菌が持つ「強力な毒素」にあります。

血管を通り抜ける「悪玉菌Pg菌」の恐ろしい侵入経路

歯周病が進行すると、歯ぐきが炎症を起こし、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットと呼ばれる深い溝ができます。この溝の奥には、特に悪質な歯周病菌が潜んでいます。その代表格が「ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Pg菌)」です。

脳へ向かう二つのルート

  1. 血流侵入(菌血症): 炎症によって歯ぐきの毛細血管が破壊されると、Pg菌や菌が作り出す毒素が、その破壊された血管からダイレクトに血流に入り込みます(菌血症)。
  2. 血液脳関門の突破: 血流に乗ったPg菌は、通常、脳を守る最終防衛ラインである「血液脳関門(BBB)」をも突破し、脳内に侵入することが最新の研究で確認されています。

このPg菌の侵入こそが、全身の健康問題、そして脳の深刻な病気へと繋がる根本原因なのです。

毒素がアミロイドβの蓄積を促進するメカニズム

脳に侵入したPg菌は、そこで特殊なタンパク質分解酵素である「ジンジパイン」という強力な毒素を放出します。このジンジパインが、アルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドβ」の蓄積を促進していることが、九州大学などの研究チームによって詳細に解明されました(Dominy et al. 2019)。

Pg菌によるアルツハイマー病態の加速

  • アミロイドβの異常産生: ジンジパインが脳細胞に作用し、通常であれば排出されるはずの**アミロイドβ**の産生を異常に高めます。
  • 毒素の検出: 実際に、アルツハイマー型認知症で亡くなった方の脳から、このジンジパインが高頻度で検出されたという報告もされています。

これは、単なる「関連性」ではなく、歯周病菌が直接的にアルツハイマー病態を加速させているという、強い科学的根拠を提示しています。

中年期以降でリスクが急上昇:脳の炎症と歯周病菌の関係

さらに重要な点は、この悪影響は年齢によって増幅されるということです。

マウスを用いた実験では、Pg菌を慢性的に投与した際、若いマウスよりも中年以降のマウスでアミロイドβの蓄積や認知症様の症状がより強く発現しました。

H4:慢性炎症が引き起こす不可逆的なダメージ

  • 脳内の慢性炎症(脳炎): 脳に侵入した菌や毒素に対して、脳の免疫細胞が反応し、**慢性的な炎症(脳炎)**を引き起こします。この炎症が脳細胞の機能低下や神経変性を招きます。
  • 40代からの予防の必要性: 認知症の進行は20年以上の長い期間をかけて進むため、40代や50代といった中年期に歯周病を放置し、慢性的な炎症状態を続けることが、70代での認知症発症リスクを決定づけてしまうのです。

歯周病予防」は、もはやお口のためだけでなく、未来の脳の健康を守るための、最も効果的な「アンチエイジング」対策と言えるでしょう。


今日から始める「脳の健康」を守る対策:認知症リスクを遠ざける口腔ケアの具体策

アルツハイマー型認知症を加速させる歯周病菌の恐ろしいメカニズムをご理解いただけたかと思います。しかし、悲観する必要はありません。科学がその原因を解明したということは、私たち自身の手でそのリスクを遠ざけることができる、ということです。

認知症予防の鍵は、**今日から始める「口腔ケアの徹底」**にあります。

ブラッシングだけでは不十分!認知症予防のためのセルフケア

毎日歯を磨いているから大丈夫、とお考えの方も多いでしょう。しかし、一般的なブラッシングだけでは、Pg菌が潜む場所の約4割のプラークが残ってしまうと言われています。

Pg菌の温床を断つための必須アイテム

歯周病菌を効果的に除去し、認知症リスクを遠ざけるために、以下のアイテムを毎日のセルフケアに取り入れてください。

  • デンタルフロス: 歯と歯の隙間に潜むPg菌の塊(プラーク)を除去します。これは、歯ブラシでは決して届かない場所です。
  • 歯間ブラシ: 歯肉が下がり、歯間部に隙間ができている方に必須です。サイズを歯科医院で相談し、適切に使用しましょう。
  • 洗口液(マウスウォッシュ): 抗菌作用のある洗口液は、ブラッシング後の残存菌を減らし、口腔内環境の悪化を防ぎます。

これらのアイテムで、口腔内全体のバイオフィルム(菌の集合体)を破壊することが、血流への菌の侵入を防ぐ第一歩となります。

進行を食い止める鍵:専門家による定期的なクリーニング(PMTC)の重要性

セルフケアが重要である一方で、歯周病が進行し歯周ポケットが深くなると、ご自身の力だけでは限界があります。特に、歯周ポケットの奥深くにある歯石や硬いバイオフィルムは、専門的な機械と技術でなければ除去できません。

認知症予防に直結するプロフェッショナルケア

定期的な歯科検診と、歯科医師や歯科衛生士が行う「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」は、認知症リスクを抑えるための最も有効な手段です。

  • Pg菌の徹底除去: PMTCでは、歯周病認定医の知識に基づき、セルフケアでは届かない根の表面や深いポケット内のPg菌を徹底的に除去します。
  • 炎症のコントロール: 菌の数を継続的にコントロールすることで、全身に広がる慢性炎症を根本から抑え込みます。

理想的な受診頻度は、患者様の歯周病の進行度によって異なりますが、最低でも3ヶ月~半年に一度は専門家によるケアを受けることを強くお勧めします。

「手遅れ」にしないための精密な歯周病検査と治療

自覚症状の少ない歯周病は、「気づいた時には進行している」というケースが少なくありません。70代で後悔しないためにも、泉岳寺駅前歯科クリニックでの精密な検査で、ご自身の本当のリスクを知ることが重要です。

当院では、以下の精密検査に基づき、認知症リスクも考慮した最適な歯周病治療をご提案します。

  • 歯科用CTによる骨の診査: 歯周病で失われた顎の骨の状態を三次元的に正確に把握します。
  • 歯周ポケット測定と細菌検査: 菌の深さと種類を特定し、治療方針を明確にします。
  • マイクロスコープ治療: 歯科用顕微鏡を用いて、肉眼では見えない細部までPg菌の巣を確実に取り除きます。

70代の後悔を避けるために:歯周病認定医がいる泉岳寺駅前歯科クリニックができること

歯周病アルツハイマー型認知症の密接な関連性、そしてそのリスクを遠ざけるための口腔ケアの重要性をご理解いただけたかと思います。

この重要な予防策を確実に、そして効果的に行うためには、専門性の高い歯科医院でのサポートが不可欠です。泉岳寺駅前歯科クリニックは、皆様の未来の健康、特に認知症予防に貢献できる体制を整えています。

認定医による「認知症リスク低減」のための専門治療

当院の院長は、日本歯周病学会認定医の資格を有しています。(→ [院長紹介ページへ])

認定医としての高度な知識と長年の臨床経験を活かし、単に歯を長持ちさせるだけでなく、全身の健康と認知症リスクの低減を視野に入れた精密な治療を提供します。

  • 科学的根拠に基づいた診断: 最新のエビデンスに基づき、患者様のお口の状態と全身の健康リスクを総合的に判断します。
  • オーダーメイドの治療計画: Pg菌の徹底的な排除と、歯周組織の健康回復を最優先にした治療計画をご提案します。

最新設備が実現する「Pg菌を逃さない」精密治療

認知症を加速させる原因菌の侵入を防ぐには、歯周ポケット内のPg菌を確実に除去する必要があります。当院では、そのために最新の精密治療環境を整備しています。(→ [設備紹介ページへ])

設備名 役割(認知症予防への貢献)
歯科用CT 歯を支える骨の状態を三次元的に把握し、脳の健康を守るための治療戦略を策定。
マイクロスコープ 最大80倍まで拡大し、肉眼では見えないPg菌が潜むバイオフィルムの巣を確実に取り除く。(→ [マイクロスコープ精密治療ページへ])
専門的なPMTC 歯周病認定医と歯科衛生士が、プロの技術で慢性炎症の原因を根源から断ち切る。

未来の健康を守る「行動の呼びかけ」とアクセス

歯周病は沈黙の病であり、「70代で後悔しないために」今、対策を始める必要があります。特に、歯周病リスクが高まる40代や50代の方は、自覚症状がなくても一度ご相談ください。

泉岳寺駅前歯科クリニックは、泉岳寺駅 A3出口から徒歩1分と、アクセスも大変便利です。JR線をご利用の方は高輪ゲートウェイ駅から徒歩7分、品川駅からもアクセスしやすいため、広域の患者様にご来院いただいております。

未来の笑顔と、健康な脳のために、まずは専門的な歯周病検査から始めましょう。


5. よくある質問(FAQ)と泉岳寺前歯科クリニックのご案内

歯周病と認知症に関するQ&A

Q1. 歯周病の治療で、本当に認知症のリスクは下がりますか?

A. 最新の医学研究では、歯周病治療によって口腔内の炎症が抑えられ、アルツハイマー型認知症を加速させるPg菌やその毒素の全身への拡散が減少するため、リスク低減に繋がる可能性が高いとされています。特に、中年期から歯周病をコントロールすることが、将来の脳の健康を守る上で極めて重要です。

Q2. 歯周病の自覚症状がなくても、検査を受けた方が良いですか?

A. **はい、強く推奨します。**歯周病は「サイレントキラー」と呼ばれ、痛みや腫れといった自覚症状が出たときには、すでにかなり進行しているケースがほとんどです。特に40代以降の方は、自覚症状の有無にかかわらず、定期的な精密検査を受けることで、早期にリスクを発見し、対策を講じることが重要です。

Q3. 歯周病の治療は保険診療でできますか?

A. 歯周病の基本的な検査や治療(歯石除去、歯周ポケットの清掃など)の多くは保険診療で対応可能です。ただし、より高度な精密検査や歯周組織再生療法など、専門的な治療には保険適用外となるものもあります。当院では、患者様のお口の状態とご希望に合わせて、最適な治療計画と費用を事前に丁寧にご説明いたします。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

泉岳寺駅前歯科クリニックは、「歯周病認定医」が在籍する、精密な検査と専門的な治療を提供する歯科クリニックです。皆様の認知症予防につながる口腔内の健康維持を全力でサポートいたします。

項目 詳細
クリニック名 泉岳寺駅前歯科クリニック
所在地 〒108-0073 東京都港区三田3-10-1 アーバンネット三田ビル1階
アクセス 泉岳寺駅 A3出口より 徒歩1分
JR山手線 高輪ゲートウェイ駅より 徒歩7分
JR線 品川駅からもアクセスしやすい立地です。
診療内容 歯周病治療、一般歯科、精密根管治療、インプラント、予防歯科など

参考文献

  1. Dominy, S. S., Lynch, C., Hellmuth, F., et al. (2019). Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with a small-molecule inhibitor. Science Advances, 5(1), eaau3333.
  2. Olsen, I., & Singhrao, S. K. (2015). Can Porphyromonas gingivalis be a cause of Alzheimer’s disease?. Journal of Oral Microbiology, 7(1), 29279.
  3. Ide, M., Harris, M., Stevens, A., et al. (2016). Periodontitis and Cognitive Decline in Older Adults: A Prospective Community Cohort Study. Journal of Dental Research, 95(3), 338–344.

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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