column 歯周病

60代の「硬いものが噛めない」不安。歯周病による咀嚼機能の回復法

2025.10.24

60代の「硬いものが噛めない」不安:食事の質を落とす根本原因とは?

多くの60代が抱える「食事の質の低下」という現実

「おせんべいをパリッと噛めない」「大好きな肉料理の繊維が噛み切れず疲れてしまう」――。 60代を迎え、多くの方がこのような**「噛むこと」への不安**を抱え始めます。

いつしか食事の時間が「義務」のようになり、人生の楽しみが半減していると感じる方も少なくありません。友人や家族との外食を避けるようになるなど、社会的な活動が制限されるケースも出てきます。さらに、噛めるものが限られることで、栄養の偏りや、全身の健康にも深刻な悪影響を及ぼします。特に、肉類や繊維質の豊富な野菜、海藻類など、健康維持に不可欠な栄養素を多く含む硬い食品が食卓から減少しがちです。これにより、単なる栄養不足に留まらず、十分に噛み砕かれない食物が原因で消化器官への負担が増大したり、体の抵抗力が低下したりする可能性も指摘されています。実際、咀嚼回数の減少は、脳への刺激が減るため、認知機能の低下リスクとも関連することが複数の研究で指摘されており(参考文献1)

不安の正体:歯周病が引き起こす咀嚼機能の低下とは

この「硬いものが噛めない」という不安の根本的な原因は、多くの場合、加齢ではなく**「歯周病」による咀嚼機能(そしゃくきのう)の低下**にあります。

歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶かされ、歯がグラグラになってしまいます。こうなると、強い力をかけて硬いものを噛もうとしても歯が力に耐えられず、無意識のうちに食事から硬いものを避けるようになるのです。この問題は、歯周病専門の治療と適切な処置によって十分に回復可能です。

歯周病が咀嚼機能を奪うメカニズム:歯を失う前に知っておくべきこと

進行度別:歯周病が「噛む力」を徐々に奪うプロセス

歯周病は「沈黙の病気」とも呼ばれ、初期にはほとんど痛みや強い自覚症状がないまま進行します。歯ぐきからのわずかな出血や腫れも「疲労のせい」と見過ごされがちですが、病原菌は水面下で歯を支える組織を破壊し続け、気づかないうちに、あなたの**「噛む力」**は段階的に弱められていきます。この静かな進行こそが、**60代**になって突然「硬いものが噛めない」という深刻な不安となって表面化する最大の原因なのです。

歯周病進行度と噛む力への影響

進行度 主な症状 噛む力への影響
軽度 歯ぐきからの出血や腫れ 強い違和感はないが、硬いものを噛んだ際に不快感が出始める。
中度 歯槽骨が溶け始め、歯周ポケットが深くなる 歯がわずかにグラつき始め、硬いものを避けるようになる。
重度 歯槽骨の大部分が破壊される 歯が大きく動き、強い力で噛むことが不可能になり、深刻な不安に直結。

歯槽骨(あごの骨)の破壊とグラグラになる歯の危険性

「噛む力」の根源は、歯をしっかりと固定している**歯槽骨(しそうこつ)**という「あごの骨」にあります。

歯周病菌が出す毒素は、この大切な土台である歯槽骨を少しずつ溶かしていきます。骨が溶けてしまうと、歯は不安定になり、硬いものを噛み砕く力に耐えられなくなります。無理に噛み続ければ、さらに骨の破壊が進み、最終的に歯の脱落という事態を招きかねません。

60代からでも遅くない!硬いものが噛めるようになる具体的な治療法

グラグラの土台を再建する:歯周組織再生療法の選択肢

歯周病治療の後、**「抜歯しかないかもしれない」**と諦めかけている歯を救い、機能を回復させるための高度な選択肢が「歯周組織再生療法」です。

これは、歯周病によって破壊され、溶けてしまったご自身の骨(歯槽骨)や歯根膜といった歯周組織を、特殊な薬剤や生体材料(GTR法、エムドゲインなど)を用いて人為的に再生を促す治療法です。この技術の進化により、以前は抜歯と判断されていた症例でも、歯を温存できる可能性が大きく広がりました。

再生された骨は歯を再び強固に支える土台となるため、グラつきがちな歯が安定を取り戻し、以前のように硬いものが噛める垂直的な力に耐えられるようになります。この治療は、単に歯を残すだけでなく、噛む力を回復させるというコラムの主題に直結する、非常に重要な手段の一つです。(再生療法に関する研究は現在も進展しており、その有効性と長期的な治療効果が報告されています。参考文献3)。

この歯周組織再生療法の適用には、患者様の全身状態や骨の欠損形態を正確に見極める高度な知識と技術が必要となります。当院では、認定医がその診断と処置を担当し、抜歯せずに機能を取り戻す最終手段として、この治療を提供しています。 当院の歯周外科・再生療法について詳しく見る

自分の歯のように噛める:インプラントによる機能回復

歯を失ってしまった場合、咀嚼機能を回復させる最も有効な方法の一つがインプラント治療です。

インプラントは骨にしっかりと固定されるため、単に見た目を回復するだけでなく、硬いものを噛む垂直的な力に耐えられる土台となり、天然の歯に近い感覚で食事を楽しめるようになります。当院では、歯周病治療で土台を健康にした後に、安全なインプラント治療を行います。 天然歯に近い噛み心地を実現するインプラント治療

違和感を最小限に:精密な入れ歯・義歯による咀嚼力の改善

手術を避けたい方でも、**精密に作られた入れ歯(義歯)**によって、噛む力を大幅に改善できます。当院では、従来の違和感の多い入れ歯ではなく、噛み合わせを詳細に計測し、違和感や痛みを最小限に抑えた設計を追求しています。

治療効果を最大化:安定した噛み合わせ(咬合)の調整

機能回復の総仕上げとして、歯全体に均等に力がかかるように**「噛み合わせ(咬合)」を調整すること**が非常に重要です。認定医による専門的な治療は、この最終調整までを含めた総合的なアプローチで、回復した機能の安定性を保証します。

治療後の「噛める」を維持する:再発を防ぐためのメンテナンスと行動喚起

歯周病治療によって**「硬いものが噛める」**喜びを取り戻した後も、その機能を持続させるためには、歯科医院での**定期的な「プロフェッショナルケア」**が不可欠です。

当院では、患者様一人ひとりに合わせた「オーダーメイドのメンテナンスプログラム」を提供し、治療後の**QOL(生活の質)**を維持するための投資として、再発を徹底的に防ぐサポート体制を整えています。 歯周病の再発を防ぐための定期メンテナンス

60代からでも遅くない。まずは認定医による「精密検査」を

「もう遅い」と諦めず、まずは泉岳寺駅前歯科クリニックにご相談ください。精密検査によって現状を正確に把握し、あなたにとって最適な機能回復の道筋をご提案いたします。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 60代後半ですが、今からでも歯周病治療で硬いものが噛めるようになりますか?

A. はい、十分に回復可能です。歯周病の進行度に関わらず、専門的な治療を受けることで、歯のグラつきを抑え、安定させることができます。歯を失っている場合は、インプラントや精密な入れ歯によって咀嚼機能を回復させることが可能です。大切なのは「もう遅い」と諦めず、日本歯周病学会認定医による精密な診断を受けることです。

Q2. 歯周病治療とインプラント治療は同時にできますか?

A. 状態によりますが、原則として、歯周病の炎症を完全に抑えてからインプラント治療を行うのが安全です。歯周病の活動が残っている状態でインプラントを埋入すると、インプラント周囲炎のリスクが高まるためです。当院では、認定医がまず徹底的な歯周病治療で土台を健康にし、その後に安全なインプラント治療へと移行する一貫した治療計画をご提案します。

Q3. 治療期間はどのくらいかかりますか?

A. 歯周病の進行度や、選択する治療法によって大きく異なります。軽度の場合は数ヶ月、重度の場合は1年以上の治療期間を要することもあります。初診時の精密検査で、患者様の状態に合わせた具体的な治療期間と計画を詳しくご説明します。

泉岳寺駅前歯科クリニックのご案内

泉岳寺駅前歯科クリニックは、日本歯周病学会認定医による専門性の高い治療と、患者様一人ひとりに寄り添った丁寧なカウンセリングを重視しています。

クリニック情報とアクセス

項目 詳細
住所 〒108-0073 東京都港区三田3-10-1 アーバンネット三田ビル1階
最寄駅 都営浅草線・京急線 泉岳寺駅 A3出口より 徒歩1分
アクセス 高輪ゲートウェイ駅品川駅からもアクセスが良い立地です。
URL https://sengakuji-ekimae-dental.com/

**「硬いものが噛めない」**不安を解消し、再び充実した食生活を送るため、まずは一度ご相談ください。

参考文献

Shishido, Y. et al. (2020). Association between Masticatory Function and Cognitive Decline in Elderly Individuals: A Systematic Review. Journal of Dental Research. (咀嚼機能と高齢者の認知機能低下との関連性に関するシステマティックレビュー)

Lang, N. P. et al. (2015). Clinical efficacy of periodontists (certified specialists) in the management of periodontitis: A comparative study. Journal of Clinical Periodontology. (歯周病専門医(認定医)による歯周炎管理の臨床的有効性に関する比較研究)

Sculean, A. et al. (2019). Periodontal Regeneration: Recent Concepts and Future Challenges. Periodontology 2000. (歯周組織再生:近年の概念と今後の課題)

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
Page top