お口の悩み コラム

【歯が欠けた】緊急時の応急処置から最適な治療法、後悔しないための予防策まで徹底解説

2025.06.18

突然、カチッと嫌な音がして、口の中に違和感。鏡を見ると、歯が欠けている――。

もしもあなたが今、そんな状況に直面しているなら、とても不安な気持ちでいることでしょう。食事中、転倒、あるいは無意識の歯ぎしりなど、歯が欠ける原因は多岐にわたりますが、大切なのは落ち着いて適切な行動をとることです。

この記事では、歯が欠けた時の応急処置から、歯科医院での最適な治療法、そして二度と歯を欠かないための効果的な予防策までを、専門的な視点からわかりやすく解説します。また、欠けた歯を放置することの危険性についても触れるので、ぜひ最後まで読んで、後悔のない選択をしてください。

1. 歯が欠けた!まずは落ち着いて行うべき応急処置

「歯が欠けた」と気づいたら、まずは冷静になり、以下の手順で初期対応を行いましょう。適切な応急処置は、その後の治療の成否を左右する重要なステップです。

  • 欠けた歯の破片を探す:

    もし歯の破片が見つかったら、絶対に捨てないでください。乾燥させないよう、牛乳、生理食塩水、または市販の歯牙保存液(なければ清潔な水でも可)に浸して保存し、すぐに歯科医院へ持参しましょう。破片を元の位置に戻して接着できる可能性があり、歯の構造と機能を維持する上で非常に有利です。

  • 出血と痛みの管理:

    出血がある場合は、清潔なガーゼやティッシュを患部に当てて軽く圧迫し、止血を図ります。痛みを伴う場合は、市販の鎮痛剤(例:アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)を服用して痛みを和げることができます。ただし、これは一時的な緩和策であり、根本的な治療にはなりません。

  • 欠けた場所と範囲を確認:

    前歯、奥歯、エナメル質だけなのか、象牙質が露出しているのか、あるいは神経まで達しているのか。欠損の程度を把握しておくことは、歯科医師への正確な情報伝達につながり、迅速な診断と治療計画の立案に役立ちます。

2. 歯科医院受診までの注意点と対処法

歯科医院にすぐ行けない場合でも、以下の点に注意し、適切な対処を行うことで、症状の悪化や感染リスクを最小限に抑えることができます。

  • 口腔内の清潔を保つ:

    欠けた部分に食べかすや細菌が侵入し、感染を起こすのを防ぐため、飲食後は水やうがい薬で優しく口をゆすぎ、口腔内を清潔に保ちましょう。

  • 刺激を避ける:

    欠けた歯はデリケートな状態です。冷たいものや熱いもの、硬いもの、粘着性の高いものの飲食は避けてください。また、患部で強く咬むことは控え、できるだけ負担をかけないようにしましょう。

  • 市販の応急処置キットの利用:

    薬局などで入手できる応急処置キットは、欠けた部分を一時的に保護するのに役立つ場合があります。しかし、これらはあくまで「一時的なもの」であり、専門的な治療の代わりにはなりません。必ず速やかに歯科医院を受診してください。

3. 歯が欠けた時の最適な治療法とは?症状に応じた選択肢

歯が欠けた際の治療法は、欠損の大きさ、深さ、部位、残っている歯の状態、そして患者様の希望や予算によって多岐にわたります。歯科医師が詳しく診断し、最適な治療計画を提案します。

  • ごく小さな欠け(エナメル質のみの損傷)の場合

  • レジン充填:

    歯の色に合わせた歯科用プラスチック(コンポジットレジン)を直接詰めて形を整える治療です。見た目が自然で、削る歯の量が少なく、比較的短期間で治療が完了します。

    ラミネートベニア:

    特に前歯の審美性を重視する場合に選択されます。歯の表面をわずかに削り、薄いセラミックの板を貼り付けることで、色や形を美しく整えます。

  • 比較的大きな欠け(象牙質の露出、神経に近い場合)の場合

  • インレー・アンレー(部分的な詰め物):
  • 欠けた部分の型を取り、セラミックや金属で作った詰め物を装着する方法です。欠けた範囲が広く、咬む力がかかる奥歯などに適しています。セラミック製は見た目も自然で、強度も高いです。
    クラウン(全部被覆冠):
  • 歯の大部分が欠けてしまった場合や、神経の治療(根管治療)を行った後に、歯全体を覆う被せ物です。歯の強度と機能を回復させ、金属、セラミック、またはそれらの組み合わせ(メタルボンドセラミック、ジルコニアなど)から素材を選べます。
  • 歯髄保存療法・根管治療:

    もし欠けた歯が神経(歯髄)にまで達している場合は、神経の炎症や感染を防ぐための治療が必要になります。

    1. 歯髄保存療法: 神経をできるだけ温存するための治療です
    2. 根管治療: 神経が細菌感染を起こしている場合に、感染した神経や血管を取り除き、根管内をきれいに清掃・消毒・充填する治療です。歯を残すための重要な治療であり、治療後にはクラウンを被せて歯を保護するのが一般的です。

歯の根っこまで折れてしまった場合や、歯を失った場合

  • 抜歯:

    残念ながら、歯の根まで折れてしまったり、重度の感染や歯周病で歯を残すことが難しいと判断された場合は、抜歯が必要になります。

    抜歯後の治療選択肢:

    失われた歯を補うために、以下の治療法が検討されます。

    • ブリッジ:

      失った歯の両隣の歯を削って支台とし、連結された人工歯を橋のように被せる方法です。固定式で安定感がありますが、健康な歯を削る必要があります。

      入れ歯(義歯):

      取り外し可能な人工歯で、部分的な歯の欠損から全ての歯の喪失まで対応できます。比較的治療費は抑えられますが、異物感や安定性に課題が生じることもあります。

      インプラント:

      顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上から人工歯を取り付ける治療法です。周囲の歯に負担をかけず、天然の歯に近い咬み心地と見た目を再現できるため、近年注目されています。ただし、外科的処置が必要であり、費用も他の治療法に比べて高くなる傾向があります。

4. 歯が欠けるのを防ぐ!二度と後悔しないための効果的な予防策

一度歯が欠けると、元の状態に完全に戻すことは非常に難しいです。そのため、歯が欠けることを未然に防ぐための予防が非常に重要になります。

  • 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア:

    虫歯や歯周病の早期発見・早期治療はもちろん、歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔清掃(PMTC)は、歯の構造を健康に保ち、小さな亀裂や弱点を早期に発見する上で不可欠です。少なくとも半年に一度の定期検診が推奨されます。

  • 適切な口腔衛生習慣の実践:
  • 毎日の正しい歯磨き習慣は、プラークや歯石の蓄積を防ぎ、虫歯や歯周病から歯を守ります。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯と歯の間の清掃も徹底しましょう。フッ化物配合歯磨剤の使用は、エナメル質を強化し、虫歯への抵抗力を高める効果が科学的に証明されています。
    食生活の見直し:

    硬すぎる食べ物(氷など)を直接かじることや、キャラメルのような粘着性の高い食品は歯への負担が大きいため控えめにしましょう。また、酸性の強い飲食物(柑橘類、炭酸飲料、スポーツドリンクなど)の過剰な摂取は、歯のエナメル質を溶かす「酸蝕症」を引き起こし、歯を脆弱にする原因となります。これらを摂取した後は、水で口をゆすぐなどの対策が有効です。

    ナイトガード(マウスピース)の使用:

    もし睡眠中の歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)の癖がある場合、歯に過度な力がかかり、歯の欠けや摩耗、顎関節症の原因となります。歯科医院で作成するカスタムメイドのナイトガードを就寝時に装着することで、歯への負担を大幅に軽減できます。

    スポーツマウスガードの装着:

    コンタクトスポーツや転倒のリスクがあるスポーツ(バスケットボール、サッカー、格闘技など)を行う際は、外力から歯を守るためにスポーツマウスガードの装着が強く推奨されます。カスタムメイドのものは、フィット感が良く、高い保護効果を発揮します。

5. 欠けた歯を放置するとどうなる?潜在的なリスクと合併症

「少し欠けただけだから大丈夫だろう」「痛みがないから放っておこう」と、欠けた歯を放置することは、非常に危険です。見た目の問題だけでなく、口腔全体の健康、さらには全身の健康にまで悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 痛みの悪化と神経への影響:

    欠けた部分から冷たいものや熱いものがしみやすくなるだけでなく、細菌が侵入して神経(歯髄)に感染を起こすと、激しい痛みや腫れを引き起こす「歯髄炎」へと進行します。放置すれば神経が死んでしまい、さらには根の先に膿がたまる「根尖病巣」に発展する恐れもあります。

    虫歯の進行:

    欠けた部分は歯磨きがしにくく、食物残渣やプラークがたまりやすいため、新たな虫歯や二次う蝕が急速に進行する温床となります。

    歯周病の悪化:

    欠けた歯の形態が不適切だと、歯周ポケットに汚れが停滞しやすくなり、歯周病を悪化させるリスクが高まります。最悪の場合、歯を支える骨が溶けて、歯が抜け落ちてしまうこともあります。

    咬み合わせの乱れと顎関節症:

    欠けた歯をかばって咬むことで、全体の咬み合わせのバランスが崩れてしまいます。これにより、他の健康な歯に過剰な負担がかかったり、顎関節に悪影響を及ぼし、顎関節症(口を開けにくい、顎が痛い、音が鳴るなど)を引き起こす可能性があります。
    審美性の低下と心理的影響: 特に目立つ前歯が欠けた場合、見た目が損なわれることで、自信を失い、人前で口を開けることに抵抗を感じたり、笑顔が減ったりするなど、精神的な負担となることも少なくありません。

まとめ:歯が欠けたら、放置せず「早期受診」と「予防」が鍵

歯が欠けたという経験は、誰にとっても不安なものです。しかし、冷静に応急処置を行い、できるだけ早く歯科医院を受診することで、その後の治療の選択肢が広がり、歯の寿命を延ばすことができます。

また、歯が欠ける原因は様々ですが、日頃からの適切な口腔ケアと歯科検診、そして必要に応じたマウスガードやナイトガードの使用など、継続的な予防策が非常に重要です。

もし歯が欠けてしまったら、「これくらいなら…」と決して自己判断で放置せず、専門家である歯科医師に相談してください。あなたの歯の健康を守り、快適な毎日を送るために、この記事が役立つことを願っています。

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[医院名] 泉岳寺駅前歯科クリニック
[住所] 東京都港区三田3-10-1アーバンネット三田ビル1階
[電話番号] 03-6722-6741
高輪ゲートウェイ駅から徒歩7分/都営浅草線・京急線 泉岳寺駅より徒歩1分

参考文献

本コラムの記述は、以下の信頼できる学術団体や公的機関が発表しているガイドライン、臨床推奨、およびそれらの根拠となる質の高い研究結果に基づいています。

  1. International Association of Dental Traumatology (IADT). Dental Trauma Guidelines: Fracture, Luxation & Avulsion. (歯牙外傷の管理に関する国際的なガイドライン)
    • IADTの公式サイトにて最新版が公開されています。
  2. 日本口腔外科学会. 『歯科外傷診療ガイドライン』など、歯科外傷の診断・治療に関する指針。
    • 同学会のウェブサイトや関連書籍にて参照可能です。
  3. 日本歯科保存学会. 『歯の保存治療ガイドライン』、『接着歯学に関するガイドライン』など、う蝕治療(コンポジットレジン修復を含む)、歯髄保存療法、根管治療に関する最新の知見と臨床推奨。
    • 同学会のウェブサイトにて公開されています。
  4. 日本歯内療法学会. 『歯内療法ガイドライン』など、根管治療の標準術式と成功率に関するエビデンスベースの推奨。
    • 同学会のウェブサイトにて公開されています。
  5. 日本口腔インプラント学会. 『口腔インプラント治療ガイドライン』、『インプラントの長期予後に関する研究報告』など、インプラント治療の安全性、有効性、リスク管理に関する情報。
    • 同学会のウェブサイトにて公開されています。
  6. 日本顎関節学会. 『顎関節症の診断と治療のガイドライン』など、ブラキシズムや顎関節症に関する臨床推奨。
    • 同学会のウェブサイトにて公開されています。
  7. 日本口腔衛生学会. 『フッ化物応用に関するガイドライン』、『う蝕予防に関する推奨』など、公衆衛生学的視点からの口腔保健対策に関する情報。
    • 同学会のウェブサイトにて公開されています。
  8. 日本スポーツ歯科医学会. 『スポーツマウスガードの推奨に関するガイドライン』など、スポーツによる口腔外傷の予防に関する知見。
    • 同学会のウェブサイトにて公開されています。
  9. 世界保健機関(WHO). Oral Health Fact Sheets and Reports. (口腔保健に関する国際的な勧告、統計データ、公衆衛生戦略)。
    • WHOの公式ウェブサイト(www.who.int)にて参照可能です。
  10. Cochrane Library (コクランライブラリー). 歯科分野におけるシステマティックレビューおよびメタアナリシス。フッ化物応用、さまざまな歯科修復材料の比較、歯周病治療の有効性などに関するエビデンスの要約。
    • 個別のレビューを検索して参照可能です。

注記: 歯の治療法や予防法に関する情報は日々更新されており、個々の患者の口腔状態や全身状態によって最適な治療法は異なります。必ず専門の歯科医師にご相談ください。

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