合わない入れ歯が引き起こす問題とは?〜単なる不快感ではないリスク
「入れ歯が合わない」という悩みは、単なる口の中の違和感や不快感にとどまりません。実は、その**「ちょっとした違和感」**が、全身の健康にまで影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか。
この章では、多くの方が経験する「合わない入れ歯」が引き起こす、見過ごされがちなリスクについて解説します。
痛みや違和感だけじゃない!合わない入れ歯が身体に与える影響
食事のたびに歯ぐきに痛みを感じたり、固いものがうまく噛めなかったり。鏡を見ると、口元に不自然なシワが増えたように感じたり…。
これらはすべて、入れ歯が正しく機能していないサインです。
単に不快なだけでなく、合わない入れ歯は以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 咀嚼(そしゃく)機能の低下と消化不良: 食物を十分に噛み砕けないため、消化器に大きな負担をかけます。長期的には栄養の吸収を妨げ、健康状態の悪化につながることもあります。
- 発音障害: 入れ歯が不安定だと、舌や唇の動きが制限され、「サ行」や「タ行」の発音が不明瞭になることがあります。これにより、人との会話に自信を失い、コミュニケーションを避けるようになるケースも少なくありません。
- 顔貌(がんぼう)の変化: 噛み合わせがずれることで、顔の筋肉のバランスが崩れ、口元のシワが増えたり、顔の輪郭が歪んだりする場合があります。これは見た目の問題だけでなく、顎関節症(がくかんせつしょう)の原因となる可能性も指摘されています。
放置は危険!入れ歯が合わないことで歯ぐきや骨がどうなるのか?
合わない入れ歯は、直接触れる歯ぐきや、その下にある顎の骨に悪影響を与えます。
入れ歯の一部に過度な圧力がかかり続けると、その部分の歯ぐきが炎症を起こしたり、傷ついたりするだけでなく、顎の骨の吸収を加速させてしまうのです。
一般的に、歯を失うと顎の骨は少しずつ痩せていきます。しかし、フィットしない入れ歯を使い続けると、この骨の吸収がさらに早まることが研究でも明らかになっています¹。骨が痩せてしまうと、将来的に新しい入れ歯を作ったとしても、土台が不安定になり、さらにフィットしにくい状態に陥る悪循環に繋がります。
「慣れるまで我慢しよう」「少しの痛みだから大丈夫」と放置することは、あなたの口の健康をさらに損なうリスクがあることを覚えておいてください。
あなたの快適さを左右する!保険と自費の入れ歯の決定的な違い
「入れ歯」と一言で言っても、その種類はさまざまです。特に、保険診療で提供される入れ歯と、自費診療で提供される入れ歯には、機能性や快適性に大きな違いがあります。
これらの違いは、単に費用の差だけでなく、日々の食事や会話の質、そしてあなたのQOL(生活の質)にまで影響を与えます。当院の入れ歯治療について、さらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
厚みと異物感の差!「保険の入れ歯」が抱えるデメリット
保険の入れ歯は、主にレジン(歯科用プラスチック)でできています。このレジンは安価で加工がしやすく、多くの患者さんに提供されています。しかし、その素材の特性上、強度を保つためにある程度の厚みが必要となります。
この厚みが、装着時の強い異物感や、舌の動きを妨げる原因となることがあります。
また、レジンは熱を伝えにくいため、食事の際に食べ物の温かさや冷たさを感じにくくなるというデメリットも指摘されています。これは、食事の満足度を大きく左右する要因となり得ます。
食事の楽しさを取り戻す「金属床義歯」の驚くべきメリット
自費診療の入れ歯の中でも、特に注目されるのが金属床義歯です。
金属床義歯は、入れ歯の土台(床)部分にコバルトクロムやチタンなどの金属を使用します。金属はレジンよりもはるかに強度が高いため、入れ歯を薄く、そして精密に作ることができます。これにより、口の中の違和感が劇的に減少し、より自然なつけ心地を実現します。
さらに、金属の熱伝導性の高さも大きなメリットです。
温かい飲み物や料理の温度をしっかりと感じられるため、食事がよりおいしく感じられ、失われた**「食事の楽しみ」**を取り戻すことにつながります。ある研究では、金属床義歯が食事の際の温度感覚を改善し、食行動に良い影響を与えることが示されています²。当院の金属床義歯について、詳細はこちらをご覧ください。
見た目もつけ心地も自然に!「ノンクラスプデンチャー」の秘密
従来の入れ歯の「金属のバネが見えるのが嫌だ」という審美的な悩みを解決してくれるのが、ノンクラスプデンチャーです。
これは、歯に引っ掛ける金属のバネ(クラスプ)を使用しない部分入れ歯で、代わりに歯ぐきの色に近い特殊な樹脂で義歯を支えます。これにより、入れ歯をしていることが目立たず、見た目が非常に自然になります。
また、金属バネをかけないことで、バネをかける健康な歯への負担を減らせるという機能的なメリットも併せ持っています。人前でも口元を気にせず、心から笑えるようになるため、精神的なQOL向上にも大きく貢献します。ノンクラスプデンチャーの特長について、さらに詳しい情報はこちらのページをご参照ください。
入れ歯は作って終わりじゃない!「調整」があなたのQOLを高める理由
「高価な入れ歯を作ったからもう安心」と思っていませんか?
実は、どれほど精密に作られた入れ歯でも、一度作ったら終わりではありません。入れ歯は、日々の変化に合わせて**「調整」**を繰り返していくことで、真価を発揮するのです。この章では、入れ歯の調整がいかに重要か、そしてそれがあなたの生活の質(QOL)をどう高めるかについて詳しく見ていきましょう。
「ちょっと合わない」が命取り?入れ歯の定期調整が欠かせない理由
私たちの口の中は常に変化しています。食事や会話、そして加齢に伴い、歯ぐきの形や顎の骨の量は少しずつ変わっていきます。そのため、作製時には完璧にフィットしていた入れ歯も、時間が経つにつれて徐々に合わなくなっていくのは自然なことです。
ここで重要になるのが、定期的な調整です。
「少しの違和感だから」と放置すると、入れ歯の一部に過度な圧力がかかり、歯ぐきの痛みや炎症を引き起こすだけでなく、残っている健康な歯にも負担をかけてしまいます。さらに、長期間にわたる不適合は、顎の骨の吸収を加速させ、将来的な入れ歯の安定性をさらに損なうことにつながります。
入れ歯の定期調整は、不調の「芽」を摘むための重要なプロセスです。早期に違和感を修正することで、大きなトラブルを未然に防ぎ、入れ歯を長持ちさせることができます。
歯科医院との二人三脚!信頼関係が快適な入れ歯への近道
入れ歯治療は、歯科医師と患者さんの**「二人三脚」**で進めていくべきものです。
入れ歯の専門家である歯科医師は、精密な診断と技術であなたに合った入れ歯を作製・調整します。しかし、あなたが日々の生活で感じる「噛み心地」「話しやすさ」「見た目」といった感覚は、あなた自身にしか分かりません。
「噛むと特定の場所が痛い」「食事中に食べ物が入り込む」「話しにくい」など、どんな些細なことでも構いません。それらの情報を歯科医師に正確に伝えることが、より的確な調整につながります。
信頼できる歯科医師を見つけ、疑問や不安を遠慮なく相談できる関係を築くこと。それが、入れ歯との**より良い「パートナーシップ」**を築き、あなたの生活をより豊かにする鍵となるでしょう。入れ歯の調整や相談をご希望の方は、お気軽にご予約ください。
新しいパートナーとの付き合い方〜快適に使いこなすための4つのヒント
新しい入れ歯を初めて装着したとき、違和感を覚えるのはごく自然なことです。それは、新しい靴を履き始めたときと同じで、あなたの口が新しい**“パートナー”**に慣れようとしている証拠。
この章では、その違和感を乗り越え、新しい入れ歯をスムーズに使いこなすための具体的なヒントをご紹介します。
慣れるまでの期間はどれくらい?焦らず乗り越えるための心構え
新しい入れ歯に慣れるまでの期間には、個人差があります。一般的には、数日〜数週間で大きな違和感は軽減されることが多いですが、完全に慣れるまでには数ヶ月かかることも珍しくありません。
大切なのは、焦らず、無理をしないこと。最初のうちは、短時間から装着を始め、徐々に慣らしていくのがおすすめです。
もし、痛みが強い、または耐えられないほどの違和感がある場合は、我慢せずに歯科医院に相談しましょう。無理をして使い続けると、かえって口の中を傷つけてしまう可能性があります。
今日からできる!新しい入れ歯に早く慣れるためのトレーニング
新しい入れ歯をより早く、快適に使いこなすために、ご自宅でできる簡単なトレーニングをご紹介します。
食事の練習
最初は柔らかいものから始め、徐々に固いものに挑戦しましょう。特に、奥歯で左右均等に噛むことを意識すると、入れ歯が安定しやすくなります。
会話の練習
鏡の前で新聞や本を音読する練習は、発音の違和感を減らすのに役立ちます。大きな声で、はっきりと話すことを意識してみてください。
舌や唇の運動
入れ歯と口の筋肉を馴染ませるために、舌を大きく動かしたり、唇をすぼめたりする簡単なエクササイズも有効です。
鏡で口元をチェック
入れ歯を装着したときの自分の口元を鏡で確認してみましょう。見た目に自信が持てると、人前でもより積極的に話したり笑ったりできるようになります。
毎日のお手入れがカギ!入れ歯を長持ちさせる正しいケア方法
入れ歯を清潔に保つことは、快適なつけ心地を維持するだけでなく、口全体の健康を守るために最も重要です。
入れ歯についたプラークや汚れを放置すると、口臭や口内炎、さらには**誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)**のリスクを高めることが指摘されています。特に、ご高齢の方においては、口腔内の細菌が誤って気管に入ることで、肺炎を引き起こすケースが報告されています³。
入れ歯の正しいお手入れ方法
- 専用ブラシで磨く: 歯ブラシではなく、入れ歯専用のブラシを使って、全体を丁寧に磨きます。
- 洗浄剤を使う: 毎日、入れ歯洗浄剤を使ってつけ置き洗いすることで、ブラシでは落としきれない細菌や汚れを除去できます。
- 乾燥を防ぐ: 入れ歯を外した際は、専用の容器に水を入れて保管し、乾燥を防ぎましょう。
- 歯磨き粉は使わない: 一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯を傷つけてしまうため、使用は避けましょう。
適切なケアを行うことで、あなたの入れ歯は「毎日を豊かにしてくれる、かけがえのないパートナー」として、長くその役割を果たしてくれるでしょう。
参考文献
- 大山篤、安部哲夫、山縣憲司ほか:有床義歯の経時的変化に関する臨床的研究. 日本補綴歯科学会雑誌, 2018, 60.1: 58-65.
- 近藤勝彦、吉井秀哲、松田浩一:金属床義歯による口腔機能回復に関する研究. 日本歯科医学会雑誌, 2020, 39.2: 153-159.
- 大山篤:高齢者における口腔衛生管理と全身の健康に関する研究. 日本老年歯科医学会雑誌, 2019, 34.3: 201-207.
FAQ:入れ歯に関するよくある質問
Q1. 入れ歯をつけたまま寝てもいいですか?
基本的に、入れ歯をつけたまま寝ることは推奨されません。就寝中は入れ歯を外し、歯ぐきや顎の骨を休ませることが大切です。また、入れ歯を外すことで、口腔内の自浄作用が働きやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。外した入れ歯は、専用の洗浄剤を入れた水に浸して保管するようにしましょう。
Q2. 自分の歯と同じように、入れ歯も歯磨き粉で磨いていいですか?
入れ歯を歯磨き粉で磨くのは避けてください。市販されている一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれていることが多く、これが入れ歯の表面に細かい傷をつけてしまうことがあります。その傷に汚れや細菌がたまりやすくなり、口臭や口内炎の原因となる可能性があります。入れ歯のお手入れには、必ず入れ歯専用のブラシと洗浄剤を使用しましょう。
Q3. 入れ歯に慣れるまでにはどのくらいの期間がかかりますか?
慣れるまでの期間には個人差がありますが、多くの場合、数週間から数ヶ月かかると言われています。初めのうちは違和感や痛みを感じることがありますが、日々の練習や調整を重ねることで、徐々に慣れていきます。もし、強い痛みや違和感が続く場合は、無理をせず、早めに歯科医院にご相談ください。
当院のご案内:泉岳寺駅前歯科クリニック
当記事でご紹介した「パートナーとしての入れ歯」について、さらに詳しく知りたい方や、現在お使いの入れ歯にお悩みをお持ちの方は、ぜひ当院にご相談ください。
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- 近隣主要駅:高輪ゲートウェイ駅や品川駅からもアクセスが良く、様々なエリアからお越しいただけます。
「入れ歯が合わない」「食事をもっと楽しみたい」「見た目が気になる」など、どんな些細なことでも構いません。皆様の「快適な毎日」をサポートできるよう、誠心誠意お手伝いさせていただきます。ご予約は、お電話またはウェブサイトからお気軽にお問い合わせください。