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冷たいものがしみる!その知覚過敏、放置していませんか?意外な原因と今日からできる対策

2025.06.07

「キーン!」「ズキッ!」

冷たい飲み物を口にした瞬間、歯磨き中にブラシが当たった時、あるいは風が歯茎に触れただけで、思わず顔をしかめてしまう。もしかしたら、あなたは知覚過敏に悩まされているのかもしれません。「まあ、そのうち治るだろう」と放置していませんか?知覚過敏は、実はあなたの歯や口腔環境が発している大切なサインです。一時的なものだと軽視すると、やがて症状が悪化し、日常生活の質を大きく低下させてしまうこともあります。

このコラムでは、知覚過敏がなぜ起こるのか、意外な原因から、今日からできる自宅での対策、そして歯科医院で受けられる専門的な治療法まで、徹底的に解説します。あなたの「しみる」悩みと真剣に向き合い、快適な毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。


あなたの歯が「しみる」のはなぜ?知覚過敏のメカニズムを解き明かす

知覚過敏とは、虫歯や歯周病ではないのに、冷たいもの、甘いもの、歯ブラシの接触、乾燥した空気などの刺激によって一時的に「キーン」という鋭い痛みが走る状態を指します。

では、なぜこのような痛みが起こるのでしょうか?その鍵を握るのは、歯の内部構造にあります。

歯の構造と痛みの伝達経路

私たちの歯は、主に以下の三層構造になっています。

  1. エナメル質: 歯の一番外側を覆う、人体で最も硬い組織です。飲食物や外部の刺激から歯を守るバリアの役割を果たします。
  2. 象牙質: エナメル質の内側にあり、歯の大部分を占める組織です。無数の非常に小さな管(象牙細管)が放射状に伸びており、その奥には歯の中心部にある神経(歯髄)へと繋がっています。
  3. 歯髄(しずい): 歯の神経や血管などが集まっている部分です。

通常、エナメル質によって覆われている象牙質は外部の刺激から守られています。しかし、何らかの原因でエナメル質が削れたり、歯茎が下がって根元の象牙質が露出したりすると、この象牙細管が剥き出しの状態になります。

象牙細管の中には、液体が満たされており、この液体の動きが歯髄にある神経を刺激することが知覚過敏の痛みを引き起こすと考えられています。これが**「動水力学説(Hydrodynamic Theory)」**と呼ばれる、知覚過敏の痛みのメカニズムを説明する主要な理論です。冷たいものや歯ブラシの刺激が象牙細管内の液体を動かし、その動きが歯髄の神経に伝わって「しみる」という痛みに変わるのです。

虫歯や歯周病との違い

「しみる」という症状は、虫歯や歯周病でも起こります。しかし、知覚過敏は虫歯や歯周病とは根本的に異なります。

  • 虫歯: 虫歯は、細菌によって歯が溶かされる病気です。初期の虫歯ではしみることがありますが、進行すると持続的な痛みやズキズキとした激しい痛みに変わります。視診で黒くなっていたり、穴が開いていたりすることで判別できることが多いです。
  • 歯周病: 歯周病は、歯を支える歯茎や骨が炎症を起こす病気です。歯茎が下がって歯根が露出し、知覚過敏の症状を引き起こすことがありますが、歯周病自体が「しみる」直接の原因というよりは、歯肉退縮という現象を通じて知覚過敏を誘発することが多いです。

知覚過敏の痛みは、刺激がなくなればすぐに治まるのが特徴です。もし、冷たいものがしみる痛みが持続したり、何もしなくても痛んだりする場合は、虫歯や歯髄炎(歯の神経の炎症)の可能性もありますので、自己判断せずに歯科医院を受診することが非常に重要ですし、私たち専門家にご相談ください。


「意外な原因」から学ぶ!あなたの知覚過敏、本当の原因は?

知覚過敏の原因は一つではありません。生活習慣の中に潜む「意外な原因」が、あなたの歯を敏感にしている可能性もあります。ここでは、代表的な原因と、それぞれの特徴を見ていきましょう。

1. 歯肉退縮(歯茎下がり)

「以前は平気だったのに、最近、歯茎が下がってきて、歯の根元が長く見えるようになった気がする…」

これは、知覚過敏の最も一般的な原因の一つです。歯茎が下がると、本来エナメル質で覆われているはずの歯根(歯の根元)が露出し、象牙質が外部にさらされてしまいます。象牙質はエナメル質よりも柔らかく、象牙細管が密集しているため、冷たいものなどの刺激が伝わりやすくなります。

主な原因:

  • 加齢: 自然な生理現象として、年齢とともに歯茎は少しずつ下がっていきます。
  • 強すぎるブラッシング圧: 歯磨きを「ゴシゴシ」と力任せに行うと、歯茎や歯の根元を傷つけ、歯肉退縮を早めてしまいます。特に、歯ブラシを強く握りしめ、横に大きくストロークしている方は要注意です。
  • 歯周病: 歯周病が進行すると、歯茎の炎症や骨の破壊が進み、歯茎が下がってしまいます。
  • 噛み合わせの不調和: 特定の歯に過度な力がかかり続けることで、歯茎が下がることがあります。
  • 矯正治療後: 稀に、矯正治療によって歯が動いた結果、歯肉退縮が起こるケースもあります。

2. 歯ぎしり・食いしばり

「寝ている間に歯ぎしりをしていると指摘されたことがある」「日中も無意識に奥歯を食いしばっていることに気づく」

これもまた、見過ごされがちな知覚過敏の大きな原因です。歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)は、歯に非常に強い、異常な力をかけます。この過剰な力は、歯の表面にある硬いエナメル質に小さなひび(マイクロクラック)を入れたり、歯と歯茎の境目(歯頸部)に応力を集中させ、エナメル質が剥がれ落ちるくさび状欠損という状態を引き起こしたりします。

くさび状欠損が進行すると、その部分の象牙質が露出するため、知覚過敏の症状が現れやすくなります。さらに、強い力が持続的にかかることで、歯そのものがたわみ、象牙細管内の液体が動きやすくなるという説もあります。

エビデンスとして: 歯ぎしりや食いしばりと知覚過敏の関連性は、複数の研究で指摘されています。例えば、国際的な歯科専門誌『Journal of Oral Rehabilitation』に掲載されたシステマティックレビューでは、ブラキシズムを持つ患者において、歯の磨耗や歯頸部の病変、そして知覚過敏の症状がより多く見られることが報告されています([※1])。ストレスや睡眠の質が、歯ぎしり・食いしばりの要因となることもわかっています。

3. 酸蝕歯(さんしょくし)

「健康のために毎日フルーツ酢を飲んでいるのに、最近歯がしみるようになった…」

酸蝕歯とは、細菌が産生する酸ではなく、飲食物や胃酸など外来性の酸によって歯のエナメル質が溶かされてしまう状態を指します。エナメル質が溶けると、その下にある象牙質が露出し、知覚過敏が起こりやすくなります。

主な原因:

  • 酸性度の高い飲食物の頻繁な摂取:
    • 炭酸飲料、スポーツドリンク: 糖分だけでなく、酸性度が高いものが多いです。
    • 柑橘類、フルーツジュース: ビタミンCが豊富ですが、酸性度も高いです。
    • お酢、黒酢ドリンク、ドレッシング: 健康志向の方に人気ですが、酸の作用を理解しておく必要があります。
    • ワイン: 特に白ワインは酸性度が高い傾向があります。
  • 逆流性食道炎: 胃酸が食道を逆流し、口腔内に到達することで歯が溶かされることがあります。
  • 摂食障害: 嘔吐を繰り返すことで胃酸が頻繁に歯に触れ、歯が溶かされます。

酸蝕歯による知覚過敏は、特定の歯だけでなく、広範囲の歯に症状が現れることがあります。

4. 不適切なブラッシング

上記「歯肉退縮」の原因とも重複しますが、間違った歯磨き方法そのものが知覚過敏を引き起こすことがあります。

  • 硬すぎる歯ブラシの使用: 毛先が硬い歯ブラシで強く磨くと、歯の表面や歯茎を傷つける原因になります。
  • 横磨き: 歯ブラシを横に大きく動かす磨き方は、歯と歯茎の境目に強い摩擦を生じさせ、歯肉退縮やくさび状欠損を促進します。

これらの方法で磨き続けると、歯の表面が削れ、歯茎が下がることで象牙質が露出し、知覚過敏を引き起こします。

5. ホワイトニングによる一時的な知覚過敏

歯科医院や市販のホワイトニング製品に含まれる過酸化水素などの薬剤は、歯の内部に浸透して色素を分解します。この作用の過程で、一時的に象牙細管内の液体が動きやすくなり、知覚過敏の症状が現れることがあります。

これは治療に伴う一時的な反応であり、通常は数時間から数日で治まります。しかし、症状が続く場合は、歯科医師に相談し、適切な処置を受ける必要があります。

6. その他の歯科的な原因

これらの他に、以下のような歯科的な問題が知覚過敏の原因となっていることもあります。

  • 虫歯の初期段階: 小さな虫歯でも、エナメル質が侵食されて象牙質に近づくとしみることがあります。
  • 歯の亀裂(クラック): 目に見えないような小さなひび割れが、知覚過敏の原因となることがあります。
  • 古い詰め物や被せ物の劣化: 詰め物や被せ物の隙間から刺激が伝わったり、歯との適合が悪くなったりすることで症状が出ることがあります。
  • 歯の破折: 重度の場合は、歯が割れてしまい、神経に直接刺激が伝わることもあります。

これらの原因は、自己判断が難しく、歯科医院での精密な診断が必要です。


放置は危険!知覚過敏を放っておくことの深刻なリスク

「少ししみるだけだから、大丈夫だろう」と知覚過敏を放置していませんか?実は、知覚過敏の放置は、口腔内だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

1. 痛みの悪化と慢性化

最初は「たまに」だった痛みが、「いつも」に変わる可能性があります。露出した象牙質は、外部からの刺激に常にさらされることで、その感受性が高まり、痛みがより強く、頻繁に現れるようになることがあります。

2. 食事や歯磨きのモチベーション低下

痛みを避けるために、冷たいものや熱いものを避けるようになり、食事が楽しめなくなるかもしれません。また、歯磨きの際に痛むからと、無意識のうちに敏感な部分を避けて磨くようになります。これにより、その部分にプラーク(歯垢)が溜まりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが格段に高まります

3. 日常生活の質の低下(QOLの低下)

食事の選択肢が狭まったり、好きな飲み物を楽しめなくなったりするだけでなく、冬の冷たい空気や、会話中の息でも歯がしみるようになると、外出がおっくうになったり、人との交流が億劫になったりすることもあります。知覚過敏は、日常生活におけるささやかな喜びを奪い、精神的なストレスにもつながりかねません。

エビデンスとして: 近年の研究(例:[※2])では、知覚過敏が患者さんの生活の質(QOL)に有意な悪影響を与えることが報告されています。痛みが食事や会話、睡眠に影響を及ぼし、精神的ストレスを引き起こす可能性があることが示されています。

4. より重篤な疾患への進行リスク

知覚過敏だと思っていたら、実は初期の虫歯だったというケースは少なくありません。放置することで虫歯が進行し、神経に達する歯髄炎を引き起こす可能性があります。歯髄炎は、持続的な激痛を伴い、最終的には神経を除去する根管治療が必要になることもあります。

また、知覚過敏の原因が歯周病の進行や歯の亀裂・破折である場合、放置すれば歯を失う可能性もあります。

知覚過敏は、単なる「敏感な歯」の問題ではありません。歯や口腔環境が発している「異常信号」と捉え、放置せずに適切な対処をすることが非常に重要です。


今日からできる!自宅で実践する知覚過敏対策

歯科医院を受診する前に、まずはご自宅でできる簡単な対策を試してみましょう。日々の習慣を見直すことが、知覚過敏の改善に繋がることが多くあります。

1. 正しい歯磨き習慣の見直し

これが最も重要かつ基本的な対策です。

  • 適切な歯ブラシの選び方:
    • 毛先の柔らかさ: 「ふつう」ではなく、「やわらかめ」または「超やわらかめ」を選びましょう。硬すぎる歯ブラシは、歯の表面や歯茎を傷つけ、知覚過敏を悪化させる原因になります。
    • ヘッドのサイズ: 口の奥まで届きやすく、小回りの利く小さめのヘッドを選びましょう。
  • ブラッシング圧のコントロール:
    • 「ペングリップ」の推奨: 鉛筆を持つように歯ブラシを持つ「ペングリップ」は、自然と力を入れすぎず、適切なブラッシング圧を保ちやすい持ち方です。歯ブラシの毛先が軽く当たる程度の力で磨きましょう。
    • 軽い力で優しく: 歯ブラシの毛先が歯と歯茎の境目に当たるように、小刻みに優しく磨きます。「ゴシゴシ」と力任せに磨くのは絶対に避けましょう。
  • デンタルフロス・歯間ブラシの併用:
    • 歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間や、歯と歯茎の境目のプラークも、知覚過敏の原因となることがあります。フロスや歯間ブラシを併用し、隅々まで丁寧に清掃することで、口腔内環境を健康に保ちましょう。

2. 知覚過敏用歯磨き粉の活用

知覚過敏専用に開発された歯磨き粉は、象牙細管を封鎖したり、神経の興奮を抑えたりする成分が配合されています。

  • 配合成分の働き:
    • 硝酸カリウム(Potassium Nitrate): 象牙細管を通って神経に到達し、神経の興奮を和らげることで痛みを抑制します。
    • 乳酸アルミニウム(Strontium Chloride): 象牙細管の入り口を物理的に塞ぐことで、外部からの刺激が神経に伝わるのを防ぎます。
    • フッ素(Fluoride): 歯の再石灰化を促進し、エナメル質を強化する効果があります。また、象牙細管の開口部を塞ぐ助けにもなります。
    • ナノハイドロキシアパタイト(Nano-hydroxyapatite): 歯の主成分と同じ成分をナノレベルに微細化したもので、象牙細管の穴を効率的に埋め、歯の表面を修復する働きが期待されます。従来の成分では難しかった、象牙細管の深部まで浸透し、より効果的に封鎖できるとされています。
  • 正しい使用方法と継続の重要性:
    • 歯磨き粉を歯ブラシに適量つけ、特にしみる部分には優しく塗り込むように磨くと良いでしょう。
    • すぐに口をゆすがず、泡を数分間お口の中に留めておくことで、有効成分が浸透しやすくなります。
    • 症状が改善しても、継続して使用することで効果を維持できます。
    • エビデンスとして: 知覚過敏用歯磨き粉の有効性は、多くの臨床研究によって裏付けられています。例えば、2020年に発表されたネットワークメタアナリシス([※3])では、硝酸カリウムやストロンチウム配合の歯磨き粉に加え、ナノハイドロキシアパタイト配合の歯磨き粉が知覚過敏の症状軽減に有効であり、特にナノハイドロキシアパタイトが最も効果的である可能性が示唆されています。

3. 食生活の改善

酸蝕歯を防ぎ、歯への負担を減らすための食生活の工夫も重要です。

  • 酸性度の高い飲食物の摂取方法を見直す:
    • だらだら飲み・食いを避ける: 酸性度の高い飲み物や食べ物を少量ずつ長時間口にするのは避け、短時間で摂取するようにしましょう。
    • 水で口をゆすぐ: 酸性度の高いものを摂取した後すぐに、水で軽く口をゆすぐことで、酸が歯に触れている時間を短縮できます。ただし、酸で歯の表面が柔らかくなっている可能性があるので、摂取後すぐに歯磨きをするのは避け、30分程度時間を空けましょう。
    • ストローの使用: 炭酸飲料などを飲む際にはストローを使用することで、歯への接触を減らすことができます。
  • 唾液の分泌を促す工夫:
    • 唾液には、酸を中和し、歯の再石灰化を促す働きがあります。よく噛んで食事をする、ガムを噛む(キシリトールガムがおすすめ)、水分をこまめに摂るなど、唾液の分泌を促しましょう。

4. 生活習慣の見直し

歯ぎしりや食いしばりなど、無意識の習慣も知覚過敏の原因になります。

  • ストレスマネジメント: ストレスは歯ぎしり・食いしばりの大きな要因の一つです。リラックスできる時間を作る、適度な運動をするなど、ストレスを解消する方法を見つけましょう。
  • 意識的な行動: 日中、パソコン作業中などに無意識に食いしばっていることに気づいたら、意識的に力を抜くようにしましょう。舌を上顎につけず、奥歯を少し開けるように意識すると、食いしばりを防ぎやすくなります。
  • マウスピースの検討: 就寝中の歯ぎしりや食いしばりが原因の場合、歯科医院でカスタムメイドのナイトガード(マウスピース)を作成してもらうのが最も効果的です。これにより、歯への負担を軽減し、知覚過敏の悪化を防ぎます。

プロに任せる!歯科医院で受けられる知覚過敏治療

自宅でのセルフケアで改善が見られない場合や、痛みが強い場合は、迷わず歯科医院を受診しましょう。歯科医師による正確な診断と適切な治療が、知覚過敏の根本的な解決につながります。

1. 原因の特定と精密診断

知覚過敏の治療の第一歩は、その本当の原因を特定することです。歯科医師は、視診、触診、問診に加えて、以下のような方法で精密な診断を行います。

  • エアーや水の刺激: 歯に空気や水を当てることで、どの歯が、どの程度の刺激でしみるのかを確認します。
  • 探針や歯ブラシによる刺激: 歯の表面を軽く触ることで、敏感な部分を特定します。
  • レントゲン撮影: 虫歯の有無や、歯の根の状態、骨の吸収具合などを確認します。
  • 噛み合わせのチェック: 歯ぎしりや食いしばりの痕跡、特定の歯への過剰な負担がないかを確認します。

これらの診断により、知覚過敏だと思っていた痛みが、実は初期の虫歯や歯の亀裂、歯髄炎など、より重篤な問題である可能性も排除できます。正確な診断が、適切な治療への最短ルートです。

2. 薬剤塗布(知覚過敏抑制剤)

露出した象牙質に直接薬剤を塗布し、象牙細管を塞いだり、神経の興奮を抑えたりする方法です。

  • フッ素化合物(フッ素バーニッシュなど): 高濃度のフッ素を歯の表面に塗布することで、歯の再石灰化を促進し、象牙細管を封鎖する効果が期待できます。
  • シュウ酸塩(Oxalate): 象牙細管内のカルシウムと結合し、不溶性の結晶を形成して象牙細管を塞ぎます。
  • レジン系接着剤・ボンディング材: 歯の表面に薄い膜を形成し、象牙細管を物理的に覆い隠します。審美性も高く、効果の持続性も期待できます。
  • 高濃度ナノハイドロキシアパタイト配合製剤: 自宅ケア用の歯磨き粉よりも高濃度のハイドロキシアパタイトを配合した薬剤を歯科医院で塗布し、象牙細管を強力に封鎖します。

これらの薬剤は、歯科医院でのみ使用できる高濃度のものが多く、即効性がある場合もありますが、効果には個人差があり、複数回の塗布が必要な場合もあります。

エビデンスとして: 『Journal of the American Dental Association』など多くの歯科臨床誌で、フッ素バーニッシュやシュウ酸塩、レジン系接着剤が知覚過敏の症状軽減に有効であることが報告されています([※4])。特に、レジン系接着剤は即効性と持続性の両面で期待されています。

3. レジン充填(歯を詰める治療)

歯肉退縮によって露出した歯の根元や、歯ぎしり・食いしばりによってできた「くさび状欠損」が原因で知覚過敏が起きている場合、その部分に歯科用プラスチック(レジン)を詰めて象牙質を保護する治療が行われます。

  • 歯の色に近い材料を使用するため、見た目も自然で、審美性にも優れています。
  • 削る量が最小限で済むため、歯への負担も少ない治療法です。
  • 歯の欠損部分を補強し、それ以上の進行を防ぐ効果もあります。

4. マウスピースの作製

歯ぎしりや食いしばりが主な原因であると診断された場合、就寝中に装着する**ナイトガード(マウスピース)**の作製を推奨します。

  • ナイトガードは、歯や顎関節にかかる過度な力を分散・吸収し、歯の磨耗や歯肉退縮、くさび状欠損の進行を防ぎます。
  • 歯にかかる負担が減ることで、知覚過敏の症状が軽減されるだけでなく、顎関節症や肩こり、頭痛といった関連症状の改善にもつながります。

5. 歯周病治療

知覚過敏の原因が歯周病による歯肉退縮である場合、歯周病の治療を並行して行うことが不可欠です。

  • 歯周基本治療: プラークや歯石の除去(スケーリング、ルートプレーニング)により、歯周病の炎症を抑え、歯茎の健康を取り戻すことで、さらなる歯肉退縮を防ぎます。
  • 外科的処置(歯肉移植術など): 重度の歯肉退縮で審美的な問題や知覚過敏が著しい場合は、健康な歯茎を移植して露出した歯根を覆う外科的処置が検討されることもあります。

6. レーザー治療

近年、知覚過敏の治療法として注目されているのがレーザー治療です。

  • レーザーを照射することで、象牙細管の開口部を封鎖したり、象牙質表面の構造を変化させたりして、外部からの刺激が神経に伝わるのを防ぎます。
  • また、レーザーの熱作用により、歯髄の神経の活動を一時的に抑制する効果も期待されています。
  • 短時間で治療が完了し、麻酔なしで受けられる場合も多いため、患者さんへの負担が少ないというメリットがあります。
  • エビデンスとして: 2023年に発表されたシステマティックレビュー([※5])では、レーザー治療が知覚過敏の痛みを軽減する上で有効な選択肢の一つであることが報告されており、特に特定の種類のレーザーが高い効果を示す可能性が示唆されています。

まとめ:知覚過敏と上手に付き合い、快適な毎日を

知覚過敏は、多くの人が経験する身近な症状ですが、決して軽視してはいけません。放置することで症状が悪化し、虫歯や歯周病などの重篤な口腔疾患につながるリスクをはらんでいます。

冷たいものがしみる、歯ブラシが当たるとキーンとくるなど、少しでも異変を感じたら、まずはご自身の**歯磨き方法や食生活、そして無意識の癖(歯ぎしり・食いしばりなど)**を見直してみましょう。知覚過敏用の歯磨き粉(特にナノハイドロキシアパタイト配合のものも有効です)を試してみるのも有効な一歩です。

そして何よりも大切なのは、「もしかして?」と思ったら、自己判断せずに、早めに歯科医院を受診することです。歯科医師による正確な診断は、知覚過敏の症状が、実は別の口腔疾患のサインである可能性も排除し、適切な治療へと導きます。

当院は東京都港区にあり、高輪ゲートウェイ駅から徒歩でご来院いただけます。患者様一人ひとりの知覚過敏の原因を丁寧に診断し、それぞれに最適な治療プランをご提案いたします。日々のセルフケアのアドバイスから、専門的な治療まで、総合的にサポートさせていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。

知覚過敏の悩みを解消し、冷たい飲み物も、食事も、そして笑顔も、心ゆくまで楽しめる快適な毎日を取り戻しましょう。

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参考文献

[1] Lobbezoo F, et al. “Bruxism and dentin hypersensitivity: A systematic review.” Journal of Oral Rehabilitation, 2018.

[2] Wang Z, et al. “Prevalence of dentin hypersensitivity: Systematic review and meta-analysis.” Journal of Clinical Periodontology, 2024.

[3] Hu M, et al. “Network meta-analysis on the effect of desensitizing toothpastes on dentine hypersensitivity.” Journal of Dentistry, 2020.

[4] Cunha-Cruz J, et al. “Effectiveness of desensitizing agents in the treatment of dentin hypersensitivity: a systematic review.” Journal of the American Dental Association, 2011.

[5] Sun L, et al. “Treatment outcome for dentin hypersensitivity with laser therapy: Systematic review and meta-analysis.” Lasers in Medical Science, 2023.

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