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「歯石取る」って痛いの?不安を解消する歯石除去の真実

2025.06.14

「歯石を取る」って聞くと、「痛そう…」「なんだか怖い」と感じる方も多いかもしれませんね。特に、まだ歯石除去を経験したことがない方にとっては、どんなことをされるのか不安でいっぱいだと思います。でも、本当に歯石除去は痛いものなのでしょうか?今回は、そんな皆さんの疑問や不安を解消して、安心して歯石除去を受けてもらえるように、正しい情報をお届けします!


第1部:歯石って何?なぜ「取らなきゃ」いけないの?

私たちの口の中には、常にたくさんの細菌が住んでいます。歯磨きを怠ると、これらの細菌が歯の表面にネバネバとした膜を作り出します。これが「プラーク」と呼ばれるもので、いわゆる歯垢のことです。プラークは食べ物の残りカスと混ざり合い、歯の表面にしっかりと付着します。

このプラーク、実は時間と共に変化していきます。唾液の中にはカルシウムなどのミネラル成分が豊富に含まれているのですが、このミネラルがプラークと結合し、石のように硬く固まってしまうことがあります。これが「歯石」の正体です。一度歯石になってしまうと、どんなに頑張って歯ブラシでゴシゴシ磨いても、残念ながら自分では取り除くことができません。まるで、やかんの内側にこびりつく水垢のようなものだと考えると、イメージしやすいかもしれませんね。

歯石には、主に2つの種類があります。

  1. 歯ぐきより上の歯石(歯肉縁上歯石): これは、歯ぐきの上の部分、鏡で見える歯の表面に付着する歯石です。主に唾液腺の開口部付近(下の前歯の裏側や上の奥歯の外側)にできやすく、色は白っぽいものから黄色、茶色、さらには黒っぽいものまで様々です。比較的柔らかく、歯科医院での除去も比較的容易なことが多いです。
  2. 歯ぐきの中の歯石(歯肉縁下歯石): こちらは、歯ぐきの中に隠れている部分、つまり歯周ポケットの中にできる歯石です。歯周病が進行して歯周ポケットが深くなると、その中にプラークや歯石が溜まりやすくなります。この歯肉縁下歯石は、歯ぐきの出血などから血液成分を取り込むため、黒っぽい色をしていることが多いです。また、歯の根の表面にしっかりと付着し、非常に硬くなっているため、除去するのが難しいとされています。

なぜ、この歯石を「取る」ことがそんなに大切なのでしょうか?歯石を放っておくと、あなたの口の中に様々な困った問題を引き起こすからです。

  • 歯周病がどんどんひどくなる: 歯石の表面はザラザラしていて、まるでスポンジのように、さらにたくさんのプラーク(バイ菌の塊)を吸い寄せてしまいます。このプラークの中にいるバイ菌が、歯ぐきに炎症を起こす主な原因となるんです。炎症が続くと、歯ぐきは腫れて赤くなり、出血しやすくなります。これが「歯肉炎」です。さらに放置すると、炎症は歯を支えている骨にまで広がり、骨が溶けてしまう「歯周炎」へと進行します¹。歯周炎がひどくなると、歯がグラグラしてきたり、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。歯石は、この歯周病の進行を加速させる、非常にやっかいな存在なんです。

  • 口臭が強くなる: 歯石やその周りにびっしりと付着したプラークの中には、口臭の原因となる特定のバイ菌がたくさん住んでいます。これらのバイ菌は、食べ物のカスなどを分解する際に、嫌なニオイのガス(揮発性硫黄化合物、VSC) を作り出すことが分かっています²。歯石が溜まっていると、歯ブラシが届きにくくなり、バイ菌が増殖しやすい環境になるため、口臭がより一層強くなる原因になるのです。

  • 見た目が悪くなる: 特に目立つ下の前歯の裏側や、上の奥歯の外側などに歯石がついてしまうと、歯が黄ばんで見えたり、黒っぽい塊が付着しているように見えたりして、見た目も気になりますよね。人前で口を開けるのをためらってしまう原因になることもあります。

このように、歯石は単なる汚れではなく、お口の健康を大きく損なう原因となります。だからこそ、自分では取り除けない歯石を定期的に歯科医院で「取る」ことが、健康な歯と歯ぐきを保つために非常に重要なのです。


第2部:「歯石を取る」時の痛み、その真実と、痛みの原因

さて、皆さんが一番気になる「歯石を取る時の痛み」について、いよいよ本題です。

「歯石を取るのって、やっぱり痛いんでしょ?」

この問いに対する一番正直な答えは、「痛みの感じ方には個人差がある」ということです。全く痛みを感じない方もいれば、少しだけ不快感や「キーン」としみる感覚がある方もいます。激しい痛みを伴うことは稀ですが、どう感じるかは人それぞれなんです。

では、なぜ痛みを感じる人がいるのでしょうか?その主な原因を、詳しく見ていきましょう。

1. 歯石の量と質が関係します

歯石の量が多く、しかもカチカチに硬くこびりついている場合は、除去するのに時間がかかり、歯ぐきへの刺激も大きくなりがちです。特に、長い間歯医者さんに行っていなくて、歯石がびっしり溜まっていると、取り除く際に少し痛みを感じやすい傾向があります。これは、例えるなら、固まってしまった古い汚れを落とすのが大変なのと似ています。

2. 歯ぐきの炎症(歯周病)が痛みを強くします

歯ぐきに炎症があるかどうかが、痛みの感じ方に大きく影響します。歯周病が進んで歯ぐきが赤く腫れていたり、触ると血が出やすくなっている場合、歯ぐきはとても敏感になっています。炎症を起こしている歯ぐきは、少し触れるだけでも痛みを感じやすい状態なのです。これは、歯周病による炎症が、歯ぐきの神経を過敏にしてしまうためと考えられています。研究でも、炎症が強い歯ぐきは、そうでない歯ぐきに比べて痛みを感じやすいことが示唆されています¹。

3. 「知覚過敏」があると、よりしみることも

歯ぐきが下がって、歯の根っこの部分が露出している人や、歯の表面にあるエナメル質が薄くなっている人は、歯石を取る際に「キーン」と歯がしみるような痛みを感じることがあります。これを「知覚過敏」と言います³。歯の根っこの部分は、エナメル質で覆われている歯の頭の部分と違って、象牙細管(ぞうげさいかん)という小さな管がたくさん開いています。歯石が取れてその部分がむき出しになると、外からの刺激(冷たい水や、器具の振動など)が直接神経に伝わりやすくなり、しみることがあるのです。

4. 使う器具の種類と、歯科医師・歯科衛生士の技術

歯石を取る際には、主に2つの種類の器具が使われます。

  • 超音波スケーラー: これは、超音波の振動を使って歯石を砕き、同時に水で洗い流す器具です。効率よく広範囲の歯石を取り除けるのが特徴です。しかし、この振動と水が、炎症を起こした歯ぐきや知覚過敏のある歯に触れると、「キーン」としみたり、歯の奥に響くような感覚を覚えることがあります。器具の振動の周波数や強さ、水の温度なども、感じ方に影響を与える可能性があります。

  • ハンドスケーラー: これは、歯科医師や歯科衛生士が手作業で歯石をかき出す、ヘラのような形の器具です。細かい部分や、超音波スケーラーでは取りにくいカチカチの歯石を取るのに使われます。こちらは物理的に力を加えて取るため、歯ぐきに少し圧迫感を感じることがあります。

どちらの器具を使うか、またそれを使う歯科医師や歯科衛生士の技術や経験も、痛みの感じ方に大きく影響します。経験豊富な術者は、患者さんの状態を見極め、できるだけ痛みを感じさせないように、適切な力加減や角度で器具を操作してくれます。

5. 不安や緊張も痛みを強くする?

私たちの心と体は密接につながっています。歯医者さんが苦手な方や、治療に対して強い不安や緊張を感じている方は、実際に痛みを感じやすくなることがあります。これは、「ノセボ効果」と呼ばれる現象で、痛みを予想することで、実際に痛みが強く感じられてしまうことがあるのです。逆に、安心してリラックスして治療を受けることができれば、痛みを和らげる効果も期待できます⁴。

このように、歯石除去の痛みには、歯石の状態、歯ぐきの健康状態、歯の感受性、そして治療の方法や皆さんの心の状態まで、様々な要因が複雑に絡み合っているのです。


第3部:痛みをやわらげるための歯医者さんの取り組みと、あなたにできること

「歯石を取る」時の痛みが心配な方も、どうかご安心ください。歯医者さんでは、皆さんができるだけ快適に治療を受けられるよう、様々な工夫や対策を行っています。

歯医者さんがしてくれる痛みをやわらげる工夫

  1. 丁寧なカウンセリングと説明: 治療が始まる前に、歯科医師や歯科衛生士が、どんなことをするのか、どれくらいの時間がかかるのか、そしてどんな感覚があるのかを丁寧に説明してくれます。何が起こるか分かっているだけでも、不安は大きく和らぐものです。不安なことや気になることがあれば、遠慮なく質問して、解消しておくことが大切です。
  2. 麻酔の活用: もし、歯石が大量に付着していて痛みが予想される場合や、歯周病がかなり進行していて歯ぐきが非常に敏感になっている場合、あるいは皆さんの希望に応じて、局所麻酔を使うことができます⁴。麻酔をすれば、治療中にほとんど痛みを感じることなく歯石除去を受けることができます。麻酔の注射自体も、最近では細い針を使ったり、表面麻酔を塗ってから行ったりと、痛みを最小限に抑える工夫がされています。
  3. 最新機器の導入: 歯科医院によっては、患者さんの負担を減らすための新しい機器を導入しているところもあります。例えば、超音波スケーラーのチップ(先端部分)がより細くなっていたり、振動がより穏やかになっていたり、温水が出るタイプのものもあります。これらの機器は、歯石を効率よく除去しながらも、歯や歯ぐきへの刺激を少なくするよう設計されています。
  4. 知覚過敏への対応: 歯石除去後に歯が「キーン」としみる知覚過敏が出た場合、歯医者さんではフッ素を塗ったり、知覚過敏を抑えるお薬(硝酸カリウムなど)を塗ってくれたりする処置を行ってくれます⁵。これにより、症状を和らげ、快適に過ごせるようになります。
  5. 患者さんのペースに合わせた治療: 治療中に痛みや不快感を感じたら、遠慮なく手を挙げるなどして、中断を申し出てください。無理に我慢する必要は全くありません。あなたのペースに合わせて休憩を挟んだり、痛みの原因を再度確認したりして、安心して治療を進めてくれます。

歯石除去後に起こりうる症状と、その対処法

歯石除去の直後には、以下のような一時的な症状が出ることがありますが、これらは通常、回復の過程で起こるもので、心配いりません。

  • 歯ぐきの腫れや出血: 歯周病で炎症を起こしていた歯ぐきは、歯石が取り除かれることで回復に向かいます。その過程で、一時的に歯ぐきが少し腫れたり、歯磨きの際に出血しやすくなったりすることがあります。これは、健康な状態に戻っていくための「好転反応」のようなもので、通常、数日〜1週間程度で落ち着いてきます
  • 知覚過敏: 歯石が厚く付着していた場合、それが取り除かれることで、これまで歯石で覆われていた歯の根の表面が露出します。その部分が冷たいものや空気に触れると、「キーン」と歯がしみるように感じることがあります。これも一時的なもので、時間が経てば落ち着くことが多いです。もし症状が続く場合は、先ほど述べたように歯医者さんに相談すれば、適切な処置をしてくれます。
  • 歯と歯の間に隙間ができたように感じる: 特に歯周病が進んでいて、歯と歯の間に大量の歯石がびっしり詰まっていた場合、歯石が取り除かれると、そこに空間ができたように感じることがあります。これは、歯ぐきの炎症が改善して、歯ぐきが引き締まった証拠でもあります。見た目の変化に驚くかもしれませんが、お口が健康に向かっている証拠と考えてください。

これらの症状は一時的なものであり、歯医者さんで教えてもらった通り、毎日の丁寧な歯磨きを続けることで、歯ぐきは徐々に健康な状態へと回復していきます。

痛みを感じにくい歯石除去のために、あなたが「今」できること

痛みを最小限に抑え、快適に歯石除去を受けるためには、患者さんであるあなた自身にもできることがあります。

  1. 定期的に歯医者さんに行くこと: これが最も重要です。歯石がまだ少量で、硬くこびりつく前に定期的に除去してもらうことで、痛みを感じにくくなります。歯石が少ないうちに取れば、治療時間も短く済み、歯ぐきへの刺激も少なくて済みます。一般的には、3ヶ月〜6ヶ月に一度の定期検診が推奨されています⁶。定期的に通うことで、もし小さな問題が見つかっても、早めに対処できるので、大がかりな治療になるリスクも減らせます。
  2. 日頃から丁寧な歯磨きを心がける: 歯石の元となるプラークをしっかり除去することで、歯石の形成を抑えることができます。毎日の歯磨きを丁寧に行い、デンタルフロスや歯間ブラシも活用して、歯と歯の間や歯ぐきの境目もきれいに保ちましょう。これにより、歯石の量を減らし、歯ぐきの炎症を抑えることができます。
  3. 不安なことや過去の経験を率直に伝える: もし、あなたが歯石除去に対して不安を感じている、または過去に痛い経験がある場合は、予約の際や診察時に、そのことを歯科医師や歯科衛生士に必ず伝えてください。あなたの状況を事前に知ることで、歯医者さんは麻酔の準備をしたり、より慎重に処置を進めたりと、あなたに合わせた最適な対応をしてくれます。

第4部:まとめとメッセージ

「歯石を取る」ことは、決して怖くて痛いだけの治療ではありません。現代の歯科医療では、患者さんの痛みをできる限り抑えるための様々な工夫がされています。そして何よりも、歯石除去はあなたのお口の健康、ひいては全身の健康を守るために、非常に大切な予防処置です。

痛みへの不安で歯医者さんに行くのをためらってしまう気持ちは、よくわかります。しかし、歯石を放置すればするほど、歯周病は進行し、口臭などの問題も悪化してしまう可能性があります。そうなる前に、ぜひ一度、信頼できる歯科医院に相談してみてください。

きっと、あなたの不安を解消し、健康的で快適な口元を手に入れるための手助けをしてくれるはずです!定期的な歯石除去で、いつまでもご自身の歯で美味しい食事を楽しみ、自信を持って笑顔になれる毎日を送りましょう!

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参考文献

  1. 日本歯周病学会. 歯周病とは. https://www.perio.jp/perio/about/ (参照 2025-06-03).
  2. 日本歯科医師会. 口臭とは. https://www.jda.or.jp/mouth/diagnosis/halitosis.html (参照 2025-06-03).
  3. 日本歯科保存学会. 知覚過敏. https://www.jacd.or.jp/for-citizen/disease/hypersensitivity (参照 2025-06-03).
  4. 日本歯科麻酔学会. 患者さんへの情報提供. https://www.jsca.or.jp/general/ (参照 2025-06-03).
  5. 亀山敦史. 知覚過敏症に対する治療法と薬物応用. 日本歯科保存学雑誌, 2011, 54巻, 1号, p. 11-18.
  6. Axelsson, P., & Lindhe, J. (2004). The long-term effects of a plaque control program on tooth mortality, resistance to periodontal destruction, and the professional and self-care input of patients with advanced periodontal disease. Journal of Clinical Periodontology, 31(6), 506-512. (定期的なプロフェッショナルケアの有効性に関する長期研究の一例)
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