お口の悩み コラム

鏡に映る赤い歯茎…それ、歯周病のサインかも?今日からできる緊急対策とプロの治療

2025.05.31

「あれ?歯茎が赤い…」「歯磨きすると血が出る…」

洗面台の鏡に映る自分の口元を見て、そう感じた経験はありませんか?もしかしたら、「ちょっと疲れてるだけかな」「歯磨きが強すぎたかな」と、軽い気持ちでやり過ごしているかもしれません。しかし、その**「赤い歯茎」は、あなたの口腔、そして全身の健康を守るためのSOS**である可能性が高いのです。

特に、日本人の8割が罹患していると言われる歯周病は、自覚症状が出にくい「沈黙の病気」です。気づいた時には手遅れ、ということも珍しくありません。ですが、早期にサインに気づき、適切な対策を講じれば、進行を食い止め、健康な歯と歯茎を取り戻すことは十分に可能です。

このコラムでは、歯茎が赤くなる原因の深掘りから、今日からご自宅で始められる緊急対策、そして私たち歯科医院で提供する専門的な治療法まで、徹底的に解説していきます。あなたの「赤い歯茎」の謎を解き明かし、健康で美しい口元を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。


序章:なぜ「赤い歯茎」は危険なサインなのか?歯周病の恐ろしさ

歯茎が赤く腫れていたり、歯磨き時に出血したりする。これは、ほとんどの場合、歯周病のサインです。歯周病と聞くと、「歯が抜ける病気」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その影響は歯を失うだけにとどまりません。

歯周病とは何か?

歯周病とは、歯を支える組織(歯茎、歯を支える骨など)が、歯周病菌と呼ばれる細菌の感染によって炎症を起こし、破壊されていく病気です。初期段階では歯肉炎と呼ばれ、歯茎が赤く腫れたり、出血しやすくなったりします。この段階であれば、適切なケアで比較的簡単に改善が見込めます。

しかし、歯肉炎を放置すると、炎症は歯の根を覆う歯周組織(歯槽骨、歯根膜など)にまで広がり、歯周炎へと進行します。歯周炎になると、歯と歯茎の間に歯周ポケットと呼ばれる隙間が深くなり、そこにさらに歯周病菌が侵入・増殖し、歯を支える骨が徐々に溶かされていきます。

骨が溶けてしまうと、一度失われた骨を完全に元に戻すことは非常に困難です。歯を支える土台がなくなることで、最終的には健康な歯であってもグラグラになり、抜け落ちてしまう可能性があります。

歯周病は「沈黙の病気」

歯周病の最も恐ろしい点の一つは、初期段階では自覚症状がほとんどないことです。痛みを感じることも稀で、多くの方が「歯茎がちょっと腫れている」「時々血が出るけど、すぐに治るから大丈夫」と軽く考えてしまいがちです。気づいた時には、歯周病がかなり進行しているケースが少なくありません。

そのため、「赤い歯茎」や「歯磨き時の出血」といった些細な変化が、歯周病を発見する上で非常に重要なSOSサインとなるのです。

歯周病と全身疾患の意外な関係

「歯周病は口の中だけの問題」と思っていませんか?実は、歯周病は全身の健康と深く関わっていることが、近年の研究で明らかになっています。

歯周病菌は、歯茎の炎症部位から血管に入り込み、全身へと運ばれます。そして、様々な疾患のリスクを高めたり、悪化させたりすることが報告されています。

  • 糖尿病: 歯周病と糖尿病は「相互に悪影響を及ぼし合う関係」にあると言われています。歯周病が悪化すると血糖コントロールが難しくなり、逆に糖尿病が悪化すると歯周病も進行しやすくなります。
  • 心臓病・脳卒中: 歯周病菌が血管に入り込み、動脈硬化を促進したり、血栓(血の塊)の形成に関与したりすることで、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高める可能性があります。
  • 誤嚥性肺炎: 高齢者や嚥下機能の低下した方の場合、口腔内の歯周病菌を誤って気管に吸い込んでしまうことで、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。
  • 早産・低体重児出産: 妊婦さんの場合、歯周病が早産や低体重児出産のリスクを高めることが指摘されています。
  • 認知症: 近年、歯周病がアルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性が示唆されています。

このように、歯周病は単に歯を失うだけでなく、全身の健康を脅かす深刻な病気なのです。だからこそ、「赤い歯茎」というサインを見逃さず、早期に対策を講じることが極めて重要となります。


第1章:「赤い歯茎」の正体は?歯茎が赤くなる主な原因とメカニズム

それでは、具体的にどのような原因で歯茎が赤く腫れたり、出血したりするのでしょうか?ここでは、主な原因とそのメカニズムを詳しく見ていきましょう。

1. 歯周病(歯肉炎・歯周炎)

やはり最も大きな原因は歯周病です。 歯周病の始まりは、歯の表面に付着する**プラーク(歯垢)**です。プラークは、食べカスと口腔内の細菌が混ざり合ってできるネバネバした塊で、歯周病菌が大量に含まれています。

このプラークが歯と歯茎の境目(歯周ポケット)に溜まると、歯周病菌が出す毒素によって歯茎に炎症が起こります。これが歯肉炎です。炎症を起こした歯茎は、健康なピンク色から赤みを帯び、腫れてぶよぶよした状態になり、歯磨きなどのわずかな刺激でも出血しやすくなります。

さらに、プラークが石灰化して硬くなると歯石になります。歯石は表面がザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなり、悪循環を生み出します。歯石は歯ブラシでは除去できないため、歯科医院での専門的なクリーニングが必要となります。

歯肉炎を放置すると、炎症は歯周ポケットの奥深くへと進行し、歯を支える骨(歯槽骨)が溶け始める歯周炎へと移行します。この段階になると、歯茎の赤みや腫れに加え、歯茎の下がり、歯のぐらつき、口臭などの症状が現れ始めます。

2. 強すぎる歯磨き

「しっかり磨かないと」という意識から、力を入れすぎて歯磨きをしている方も少なくありません。しかし、ゴシゴシと強すぎるブラッシングは、歯茎にダメージを与え、炎症や出血を引き起こす原因になります。特に、毛先の硬い歯ブラシを使用している場合は注意が必要です。歯茎が傷つき、赤くなったり、最悪の場合、歯茎が下がって知覚過敏を引き起こすこともあります。

3. 不適合な被せ物や詰め物

過去に治療した銀歯やセラミックの被せ物・詰め物が、歯とぴったり合っていない場合も、歯茎の炎症の原因となることがあります。 隙間があると食べカスやプラークが詰まりやすくなり、細菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまいます。また、被せ物の縁が歯茎を刺激したり、圧迫したりすることで、慢性的な炎症を引き起こし、歯茎が赤く腫れることがあります。

4. むし歯の進行

歯茎が赤く腫れている原因が、実はむし歯の進行にある場合もあります。むし歯が進行して歯の神経(歯髄)まで達し、その神経が死んでしまうと、細菌が歯の根の先端から骨の中に広がり、根尖性歯周炎と呼ばれる炎症を起こすことがあります。この炎症によって、歯茎が部分的に腫れたり、膿が出てきたりすることがあります。

5. 親知らずの炎症(智歯周囲炎)

奥歯の一番奥に生えてくる親知らず(智歯)は、生え方やスペースの問題で、きれいに生えきらないことが多いです。斜めに生えたり、一部だけ歯茎から顔を出したりしている場合、その周囲に食べカスやプラークが溜まりやすく、歯磨きもしにくいため、細菌が繁殖して炎症を起こしやすくなります。これを智歯周囲炎と呼び、歯茎の強い腫れや痛み、口を開けにくいといった症状が現れることがあります。

6. ホルモンバランスの変化

特に女性の場合、ホルモンバランスの変化が歯茎の状態に影響を与えることがあります。思春期、生理中、妊娠中、更年期などはホルモンバランスが大きく変動し、歯茎が敏感になり、炎症や出血が起こりやすくなることがあります。

  • 妊娠性歯肉炎: 妊娠中は女性ホルモンの分泌が増えるため、歯周病菌が活発になりやすく、歯茎が腫れやすくなります。これを「妊娠性歯肉炎」と呼び、多くの妊婦さんが経験する症状です。

7. 金属アレルギー(歯科金属アレルギー)

意外に思われるかもしれませんが、お口の中に入っている歯科金属が原因で歯茎が赤くなることがあります。いわゆる金属アレルギーです。お口の中の金属(銀歯や差し歯の金属部分など)が唾液によって少しずつ溶け出し、それが体内に吸収されることでアレルギー反応を引き起こすことがあります。

歯科金属アレルギーの症状は、口の中だけでなく全身にも現れることがあります。

  • 口腔内の症状:
    • 歯茎の赤み、腫れ、出血
    • 口内炎が頻繁にできる
    • 舌がヒリヒリする(舌痛症)
    • 口の中が荒れる、ただれる
    • 味覚がおかしくなる
  • 全身の症状:
    • 手のひらや足の裏に水疱ができる(掌蹠膿疱症)
    • アトピー性皮膚炎の悪化
    • 全身の湿疹やじんましん

もし、特定の金属の詰め物や被せ物の周りの歯茎だけが赤くなっている、あるいは原因不明の口内炎が続いているといった場合は、金属アレルギーの可能性も疑われます。当院では、必要に応じて金属アレルギーの検査(パッチテストなど)を行うことも可能です。金属アレルギーと診断された場合は、アレルギー反応を起こしにくいセラミックなどのメタルフリー素材への交換をご提案し、歯茎の症状の改善を目指します。

8. 全身疾患の影響

上記以外にも、一部の全身疾患が歯茎の状態に影響を与えることがあります。

  • 糖尿病: 血糖値が高い状態が続くと、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。歯周病も感染症の一種であるため、糖尿病患者さんは歯周病が悪化しやすく、治療しても治りにくい傾向があります。
  • 白血病: 白血病の一部では、歯茎の腫れや出血が初期症状として現れることがあります。
  • 服用している薬の副作用: 血圧を下げる薬(カルシウム拮抗薬)やてんかんの薬など、一部の薬剤には歯茎が腫れる副作用があるものもあります。

このように、「赤い歯茎」の背景には様々な原因が潜んでいます。自己判断せずに、まずは専門家である歯科医師に相談し、適切な診断を受けることが重要です。

歯周病と全身疾患の関係の詳細はこちら

第2章:今日からできる!歯茎の腫れを和らげる緊急対策(自宅編)

「すぐに歯医者に行きたいけど、今すぐには行けない…」「少しでもこの腫れを落ち着かせたい」

そんな時、ご自宅でできる緊急対策があります。これらはあくまで一時的な対処法であり、根本的な治療にはなりませんが、症状を和らげ、悪化を防ぐ助けになります。

1. 丁寧で優しいブラッシングを徹底する

歯茎が腫れていると、歯磨きが痛くて避けたくなるかもしれません。しかし、歯茎の炎症の主な原因はプラークです。プラークをきちんと除去しないと、炎症はさらに悪化してしまいます。

  • 歯ブラシの選び方: 歯茎に負担をかけないよう、毛先の柔らかい歯ブラシを選びましょう。
  • 磨き方: 力を入れすぎず、優しく小刻みに歯ブラシを動かしましょう。歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を45度の角度で当て、軽い力で細かく振動させるように磨くのがポイントです。出血しても、恐れずに優しく磨き続けることが大切です。
  • デンタルフロスや歯間ブラシ: 歯と歯の間のプラークは歯ブラシだけでは除去できません。歯間ブラシやデンタルフロスを使って、丁寧に清掃しましょう。歯茎が腫れている場合は、歯間ブラシのサイズを小さめにするか、フロスで優しく清掃してください。

2. 抗菌作用のある洗口液を活用する

歯周病菌の活動を抑えるために、**抗菌作用のある洗口液(マウスウォッシュ)**を使用するのも効果的です。ただし、アルコール成分が多く含まれているものは刺激が強すぎることがあるため、ノンアルコールのタイプを選ぶのがおすすめです。

  • 使用方法: 歯磨き後に、製品の指示に従って口をすすぎましょう。ただし、洗口液はあくまで補助的なものであり、歯磨きの代わりにはなりません。

3. 食生活を見直す

口腔内の健康は、日々の食生活と密接に関わっています。

  • 糖分の摂取を控える: 糖分は歯周病菌のエサとなります。お菓子やジュースなど、糖分が多い食品の摂取は控えめにしましょう。
  • バランスの取れた食事: 免疫力を高めるためにも、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜、果物、タンパク質などをバランス良く摂取することが大切です。特に、歯茎の健康維持に役立つビタミンC(抗酸化作用、コラーゲン生成促進)やビタミンD(骨の健康維持)は意識して摂りたい栄養素です。

4. 喫煙・飲酒を控える

喫煙は歯周病の最大の危険因子の一つです。タバコに含まれる有害物質は、歯茎の血流を悪化させ、免疫機能を低下させ、歯周病の進行を早めます。また、歯周病の治療効果も阻害します。可能であれば、この機会に禁煙を検討しましょう。 過度な飲酒も、口腔内の免疫機能に影響を与える可能性があるため、控えることが望ましいです。

5. ストレスを管理する

ストレスは免疫力を低下させ、歯周病を含む様々な病気を悪化させる要因となります。適度な運動、十分な睡眠、趣味の時間など、ご自身に合った方法でストレスを解消し、管理することも大切です。

6. 患部を冷やす(一時的な腫れがひどい場合)

もし歯茎の腫れがひどく、熱を持っているような場合は、外側から冷たいタオルや冷却パックで頬を冷やすと、一時的に痛みが和らぐことがあります。ただし、冷やしすぎると血行が悪くなることもあるので、様子を見ながら行いましょう。

これらの緊急対策は、あくまで歯科医院を受診するまでの応急処置として活用してください。根本的な解決のためには、やはり歯科医院での専門的な診断と治療が不可欠です。


第3章:専門家による解決!歯科医院で受けられる歯茎の腫れ治療(プロケア)

ご自宅でのケアでは限界があります。歯茎の腫れの原因を特定し、根本的に治療するためには、私たち歯科医院でのプロケアが必要です。東京都港区高輪ゲートウェイ駅最寄りの当院では、患者様一人ひとりの口腔状態に合わせた、最適な治療プランをご提案しています。

1. 精密な検査と診断

まず、患者様の歯茎の状態を正確に把握するために、 thorough な検査を行います。

  • 視診・触診: 歯茎の色、腫れ、出血の有無などを目と手で確認します。
  • 歯周ポケットの深さの測定(プロービング): 歯と歯茎の境目にある「歯周ポケット」の深さを専用の器具(プローブ)で測定します。この深さが歯周病の進行度を示す重要な指標となります。健康な歯茎のポケットの深さは1~3mm程度ですが、歯周病が進行すると4mm以上になります。
  • レントゲン検査: 歯を支える骨の状態を詳しく確認します。骨がどの程度溶けているか、むし歯の有無、親知らずの状態などを把握できます。
  • 口腔内写真撮影: 治療前後の状態を客観的に比較するために、口腔内の写真を撮影します。
  • 細菌検査(必要に応じて): 歯周病菌の種類や量を特定するために、歯周ポケット内の細菌を採取して検査を行うことがあります。
  • 金属アレルギー検査(必要に応じて): 口腔内の金属が原因でアレルギー症状が出ている可能性がある場合は、パッチテストなどを用いてアレルギー反応の有無や原因物質を特定します。

これらの検査結果に基づき、歯茎の腫れの正確な原因と、歯周病の進行度を診断し、患者様に分かりやすく説明します。

2. 歯周基本治療(プロフェッショナルクリーニング)

歯周病治療の基本は、炎症の原因となるプラーク(歯垢)と歯石の徹底的な除去です。

  • スケーリング: 歯周ポケットの浅い部分や歯の表面に付着した歯石を、専用の器具(スケーラー)を使って除去します。超音波スケーラーや手用スケーラーを使い分け、歯石を丁寧に剥がしていきます。
  • ルートプレーニング: 歯周ポケットの奥深くにある歯の根の表面に付着した歯石や、細菌が感染した部分(汚染されたセメント質)をきれいに除去し、根の表面を滑らかにします。これにより、細菌の再付着を防ぎ、歯茎の回復を促します。
  • PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning): 専門の器具とペーストを用いて、歯ブラシでは落としきれない歯の表面のプラークや着色汚れを徹底的に除去します。歯の表面がツルツルになることで、プラークがつきにくくなります。

これらの処置により、歯茎の炎症が治まり、健康な状態へと回復していきます。多くの場合、歯茎の腫れや出血は、この歯周基本治療で大きく改善します。

3. OHI(Oral Health Instruction):口腔衛生指導

どんなにプロのクリーニングを受けても、日々の歯磨きが適切でなければ、すぐにプラークが溜まり、炎症が再発してしまいます。当院では、歯科衛生士が患者様一人ひとりの口腔状態や歯並びに合わせて、**正しい口腔清掃の方法(OHI)**を丁寧に指導します。

  • 適切な歯ブラシの選び方: 歯茎に負担をかけず、効果的にプラークを除去できる歯ブラシの種類や毛の硬さ、ヘッドの大きさなどをアドバイスします。
  • 正しいブラッシング圧と角度: 歯と歯茎の境目を優しく、しかし確実に磨くための適切な力加減や、歯ブラシの当て方を実演を交えて指導します。
  • デンタルフロスや歯間ブラシの使い方: 歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間のプラークを除去するための、デンタルフロスや歯間ブラシの正しい使い方を指導します。
  • 補助的清掃用具の紹介: 舌ブラシや洗口液など、必要に応じて口腔ケアをサポートする補助的清掃用具の活用方法についても説明します。

正しいセルフケアを習得することは、歯周病治療において非常に重要なステップです。

4. 歯周外科治療(必要に応じて)

歯周基本治療で改善が見られない、あるいは歯周病がかなり進行している場合、歯周外科治療が必要となることがあります。これは、歯周ポケットが深く、歯石や病巣が器具で届かない場所にある場合や、歯を支える骨の形態を修正する必要がある場合に行われます。

  • フラップ手術(FOP:歯肉剥離掻爬術): 歯茎を切開し、一時的にめくり上げることで、歯の根の表面や骨に付着した歯石、病巣を直視下で徹底的に除去する手術です。術後は歯茎を元の位置に戻し、縫合します。これにより、深い歯周ポケットを浅くし、プラークコントロールを容易にします。
  • 歯周組織再生療法: 歯周病で失われた歯槽骨や歯根膜などの歯周組織を、GTR法(組織誘導再生法)やエムドゲイン®リグロス®などの薬剤や特殊な膜を用いて再生を促す治療法です。これらの治療は、重度の歯周病で歯を支える骨が大きく失われた場合に、歯の保存の可能性を高めるために検討されます。
  • 骨移植(骨造成術): 歯周病によって失われた顎の骨の量を補うために、人工骨や自家骨などを移植する手術です。インプラント治療の前処置として行われることもあります。

これらの外科処置は、歯周病の進行度や患者様の状態によって適応が異なります。当院では、患者様にご理解いただけるよう丁寧に説明し、同意を得た上で最適な治療法をご提案します。

5. 噛み合わせの調整

歯周病が進行すると、歯がぐらつき、噛み合わせのバランスが崩れることがあります。不適切な噛み合わせは、一部の歯に過度な負担をかけ、歯周病の進行を早める原因にもなります。

  • 咬合調整: 特定の歯に強い力がかからないよう、歯の表面をわずかに削って噛み合わせのバランスを整えます。
  • スプリント(ナイトガード)の作製: 歯ぎしりや食いしばりがある場合は、歯や歯茎への負担を軽減するために、夜間就寝中に装着するマウスピース(スプリント)を作製することがあります。

6. 金属アレルギーに対する治療(金属除去・代替材料への変更)

もし金属アレルギーが歯茎の赤みの原因と診断された場合、アレルギー反応を起こしている歯科金属の除去を検討します。

  • 金属の除去: アレルギーの原因となっている銀歯や金属製の差し歯などを取り除きます。
  • 代替材料への変更: 金属を除去した後は、生体親和性が高く、アレルギー反応を起こしにくいセラミック(オールセラミック、ジルコニアセラミックなど)や、レジン(歯科用プラスチック)といったメタルフリー素材への交換をご提案します。これにより、歯茎の炎症や全身のアレルギー症状の改善が期待できます。

7. 定期的なメンテナンス(SPT:Supportive Periodontal Therapy)

歯周病治療で一時的に症状が改善しても、再発を防ぐためには定期的なメンテナンスが不可欠です。歯周病は生活習慣病であり、一度治療しても、継続的なケアがなければ再発しやすい病気です。

当院では、患者様一人ひとりのリスクに応じて、数ヶ月に一度の定期的なメインテナンスを推奨しています。

  • プラーク・歯石の再除去: 日々の歯磨きでは取りきれないプラークや、新しく付着した歯石を専門的にクリーニングします。
  • 歯周ポケットの再検査: 歯周ポケットの深さの変化を確認し、歯周病の再発や進行の兆候がないかをチェックします。
  • OHIの再確認: 正しい歯磨き習慣が維持できているかを確認し、必要に応じて再度指導を行います。
  • むし歯のチェック: 歯周病だけでなく、むし歯の早期発見・早期治療も行います。
  • 口腔がん検診: 口腔内全体をチェックし、口腔がんなどの異常がないかを確認します。

定期的なメンテナンスは、歯周病の再発防止だけでなく、口腔全体の健康を維持し、長期的にご自身の歯を健康に保つために最も重要なステップと言えるでしょう。

8. 特殊なケース(義歯、矯正治療など)

入れ歯(義歯)を使用している場合や、過去に矯正治療を受けたことがある場合など、患者様の口腔状態によっては特別な配慮が必要です。

  • 義歯の清掃指導: 義歯は、適切に清掃しないと細菌の温床となり、歯茎の炎症を引き起こす可能性があります。義歯の種類に応じた正しい清掃方法を指導します。
  • 矯正治療後のケア: 矯正治療後も、歯並びが安定し、適切な噛み合わせが維持されているか、定期的にチェックすることが重要です。

第4章:健康な歯茎を育むために!予防とホームケアの重要性

歯茎の腫れを治療することはもちろん重要ですが、最も理想的なのは歯茎の腫れを未然に防ぐこと、そして治療後も健康な状態を維持し続けることです。そのためには、日々のホームケアと、定期的なプロケアの継続が不可欠です。

1. 毎日の徹底したホームケア

  • 正しい歯磨きの習慣化:
    • 歯ブラシの選び方: 毛先の柔らかい歯ブラシを選び、1~2ヶ月に一度は交換しましょう。
    • ブラッシングの仕方: 歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、力を入れすぎずに小刻みに動かす「バス法」を基本に、歯並びに合わせて工夫しましょう。
    • 磨く時間と回数: 毎食後、可能であれば1日3回、少なくとも朝晩の2回は、時間をかけて丁寧に磨きましょう。1回につき3分以上が目安です。
  • デンタルフロス・歯間ブラシの活用:
    • 歯ブラシでは届かない歯と歯の間や、歯周ポケット内のプラークを除去するために、デンタルフロスや歯間ブラシを毎日使いましょう。フロスは歯の両面に沿わせて、歯間ブラシは歯間のサイズに合ったものを選びましょう。
  • 洗口液の補助的な利用:
    • 抗菌成分が含まれた洗口液は、歯磨きだけでは届きにくい部分の殺菌や口臭予防に役立ちます。ただし、あくまで補助的な役割であることを忘れずに。
  • 舌クリーナーでの舌苔除去:
    • 舌の表面に付着する白い苔のような「舌苔(ぜったい)」も、口臭の原因となることがあります。舌クリーナーで優しく除去しましょう。

2. 食生活と生活習慣の改善

  • バランスの取れた食事: 歯と歯茎の健康を維持するためには、ビタミンやミネラルを豊富に含む栄養バランスの取れた食事が不可欠です。特に、歯茎のコラーゲン生成に重要なビタミンCや、骨の健康を保つビタミンDは意識して摂取しましょう。
  • 間食のコントロール: 頻繁な間食は口腔内のpHを酸性に傾け、むし歯菌や歯周病菌の活動を活発にします。間食を減らし、時間を決めて摂るようにしましょう。
  • 禁煙: 喫煙は歯周病の最大のリスク因子です。歯周病を予防・改善するためには、禁煙が最も効果的な方法の一つです。
  • ストレス管理と十分な睡眠: ストレスは免疫力を低下させ、歯周病を悪化させる要因となります。適度な運動やリラックスできる時間を作り、質の良い睡眠を確保しましょう。
  • よく噛んで食べる: よく噛むことで唾液の分泌が促進され、自浄作用が高まります。また、顎の骨に適度な刺激が与えられ、歯周組織の健康にも良い影響を与えます。

3. 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア

歯周病は、自覚症状が現れにくい病気であるため、ご自身のケアだけでは限界があります。専門家による定期的なチェックとクリーニングは、歯周病の早期発見・早期治療、そして再発防止のために欠かせません。

  • 3ヶ月~6ヶ月に一度の定期検診: 歯科医院で定期的に口腔内のチェックとプロフェッショナルクリーニングを受けましょう。これにより、ご自身では気づきにくい初期の歯周病のサインや、磨き残しなどを発見し、適切に対処できます。
  • PMTC(プロフェッショナルメカニカルティースクリーニング): 歯科衛生士が専用の機械とペーストを用いて、歯の表面の汚れを徹底的に除去します。これにより、プラークの再付着を防ぎ、歯周病予防に大きく貢献します。
  • OHI(口腔衛生指導)の継続: 定期検診の際に、ご自身の歯磨き習慣が適切か、改善点はないかを歯科衛生士にチェックしてもらい、必要に応じて再度指導を受けましょう。

これらの予防策とプロケアを継続することで、歯茎の腫れというSOSサインに悩まされることなく、健康で美しい口元を維持し、全身の健康を守ることができます。


第5章:当院からのメッセージ~高輪ゲートウェイ駅で皆様の歯茎の健康を守るために~

「鏡に映る赤い歯茎…」その小さな変化に気づいたあなたは、ご自身の健康に真剣に向き合える素晴らしい方です。そのサインを見逃さず、このコラムを読んでくださったことに心から感謝いたします。

歯周病は、決して特別な人がかかる病気ではありません。 誰にでも起こりうる、非常に身近な病気です。そして、一度進行してしまうと、完全に元の状態に戻すことが難しい場合もあります。だからこそ、早期発見・早期治療、そして継続的な予防が何よりも重要になります。

当院は、東京都港区高輪ゲートウェイ駅からすぐの場所にございます。私たちは、地域の皆様の口腔健康を守る「かかりつけ歯科医院」として、最新の知識と技術、そして何よりも患者様お一人おひとりに寄り添う丁寧な診療を心がけております。

歯茎の腫れや出血は、あなたの身体からの大切なメッセージです。このコラムを読んで「もしかしたら…」と感じた方は、決して一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。

当院の特徴

  • 専門性の高い歯周病治療: 歯周病専門の知識と経験を持つ歯科医師、歯科衛生士が連携し、患者様それぞれの症状や進行度に合わせた最適な治療プランをご提案します。
  • 精密な検査と丁寧な説明: 最新の機器を用いた精密な検査で、口腔内の状態を詳細に把握。検査結果や治療内容については、分かりやすい言葉で丁寧に説明し、患者様にご納得いただいた上で治療を進めます。
  • 予防歯科に注力: 治療後の良い状態を長く維持していただくために、定期的なメンテナンスと正しいホームケア指導に力を入れています。患者様がご自身の力で口腔ケアを継続できるよう、きめ細やかなサポートを提供します。
  • 痛みに配慮した治療: 歯科治療に不安や恐怖心をお持ちの方にも安心して治療を受けていただけるよう、麻酔の工夫や、できるだけ痛みを抑えた治療を心がけています。
  • アクセス抜群: 高輪ゲートウェイ駅から徒歩圏内と、非常にアクセスしやすい立地です。お仕事帰りや買い物ついでにもお立ち寄りいただけます。
  • 清潔で快適な院内環境: 患者様がリラックスして治療を受けられるよう、清潔で明るい院内環境を整えています。感染対策も徹底しておりますので、ご安心ください。
  • 金属アレルギー対応: 口腔内の金属アレルギーが疑われる場合も、パッチテストやメタルフリー素材を用いた治療で対応いたします。

お口の健康は、全身の健康の入り口

健康な歯と歯茎は、美味しく食事をし、自信を持って会話をするために不可欠です。そして、歯周病が全身疾患と密接に関わっていることを考えれば、口腔ケアは全身の健康を守るための重要な投資とも言えるでしょう。

「赤い歯茎」は、あなたが健康な生活を送るための最初のサインです。このサインを前向きに捉え、ご自身の口腔ケアを見直すきっかけにしていただければ幸いです。

当院のスタッフ一同、皆様のお口の健康を全力でサポートさせていただきます。どうぞ、安心してご来院ください。高輪ゲートウェイ駅周辺にお住まいの方、お勤めの方、どうぞお気軽にお問い合わせください。


補足:よくある質問(FAQ)

ここでは、歯茎の腫れに関するよくある質問にお答えします。

Q1: 歯茎の腫れがひどいのですが、すぐに歯医者に行けない場合、市販薬で対応できますか? A1: 市販の歯茎の腫れ・痛みを抑える塗り薬や内服薬は、一時的に症状を和らげる効果は期待できます。しかし、これらはあくまで対症療法であり、炎症の根本原因を解決するものではありません。特に、歯周病が原因の場合、放置すると症状は進行し、取り返しのつかないことになる可能性もあります。できるだけ早く歯科医院を受診してください。自己判断で市販薬を使い続けるのは避けましょう。

Q2: 歯磨きするといつも歯茎から血が出るのですが、これは普通のことですか? A2: いいえ、歯磨き時に歯茎から血が出るのは決して普通のことではありません。 これは歯茎に炎症が起きているサインであり、ほとんどの場合、歯肉炎や歯周病の初期症状です。健康な歯茎は、どんなにしっかり磨いても出血することはありません。出血を恐れて歯磨きをしないと、さらにプラークが溜まり、炎症が悪化します。優しく、しかし丁寧に磨き続けることが大切ですが、根本的な原因を突き止めるために、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。

Q3: 歯茎が腫れているのですが、歯磨きはしても大丈夫ですか?痛いのですが…。 A3: はい、歯茎が腫れていても、歯磨きは続けるべきです。 歯茎の炎症の主な原因は、歯垢(プラーク)の蓄積だからです。痛みがあるかもしれませんが、歯ブラシの毛先を柔らかいものに変え、力を入れずに優しく、小刻みに歯と歯茎の境目を磨きましょう。出血しても、恐れずに継続することが重要です。ただし、あまりにも痛みがひどい場合は無理せず、洗口液などで口腔内を清潔に保ち、早めに歯科医院を受診してください。

Q4: 歯周病は治りますか?一度なってしまったら一生付き合っていくものですか? A4: 歯周病は、完全に「治る」というよりは、**「進行を止めて健康な状態を維持する」**という考え方が適切です。一度溶けてしまった骨を完全に元に戻すことは非常に難しいですが、適切な治療と継続的なメンテナンスによって、病気の進行を止め、歯茎の炎症を改善し、歯を長期的に残すことは十分に可能です。まるで糖尿病や高血圧のような慢性疾患と同じように、継続的な管理が非常に重要になります。

Q5: 歯周病予防のために、フロスや歯間ブラシは必須ですか? A5: はい、必須と言えます。 歯ブラシだけでは、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目のプラークの約60%しか除去できないと言われています。残りの40%は、デンタルフロスや歯間ブラシを使わなければ除去できません。これらを毎日使用することで、歯周病の原因となるプラークを効率的に除去し、予防効果を格段に高めることができます。毎日の歯磨き習慣にぜひ取り入れましょう。

Q6: 高輪ゲートウェイ駅周辺で歯医者を探しているのですが、貴院では歯周病専門の治療を受けられますか? A6: はい、当院は東京都港区高輪ゲートウェイ駅最寄りの歯科医院として、歯周病治療に特に力を入れています。歯周病専門の知識を持つ歯科医師や歯科衛生士が在籍しており、精密な検査から歯周基本治療、必要に応じた歯周外科治療、そして治療後の長期的なメンテナンスまで、一貫して専門性の高い歯周病治療を提供しております。高輪ゲートウェイ駅周辺にお住まいの方、お勤めの方で、歯茎の悩みをお持ちでしたら、どうぞ安心してご来院ください。

Q7: 妊娠中の歯茎の腫れは、どうすれば良いですか? A7: 妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯茎が腫れやすくなる「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。この時期の口腔ケアは、お母さんだけでなく、お腹の赤ちゃんのためにも非常に重要です。自己判断せず、必ず歯科医院を受診してください。当院では、妊娠中でも安心して受けられる治療法をご提案します。安定期に入ってからの治療が推奨されますが、痛みや腫れがひどい場合は、時期にかかわらずご相談ください。

Q8: 歯茎が下がって歯が長くなったように見えるのですが、これも歯周病のサインですか? A8: はい、歯茎が下がってしまう「歯肉退縮」も、歯周病が進行している可能性を示す重要なサインです。 歯周病によって歯を支える骨が溶けてしまうと、それに伴って歯茎も下がってしまいます。歯肉退縮が起こると、歯の根元が露出し、知覚過敏を引き起こしたり、見た目の問題となったりします。歯周病だけでなく、強すぎる歯磨きや歯ぎしりなども原因となることがありますので、歯科医院で原因を特定し、適切な処置を受けることが大切です。

Q9: 過去に金属の詰め物をした部分の歯茎が赤く腫れているのですが、金属アレルギーの可能性はありますか? A9: はい、その可能性は十分にあります。 お口の中に入っている歯科金属が原因で、局所的に歯茎が赤く腫れたり、炎症を起こしたりすることがあります。これは、金属が唾液によって微量に溶け出し、アレルギー反応を引き起こすためです。特に、以前から金属アレルギーの経験がある方や、原因不明の歯茎の炎症が続いている場合は、歯科金属アレルギーを疑い、歯科医院で検査を受けることをおすすめします。当院でも、金属アレルギーの検査や、アレルギーの心配がないメタルフリー素材への変更など、対応可能です。


結び:あなたの「赤い歯茎」が健康な未来への第一歩

「赤い歯茎」という小さなサインから始まったこのコラムが、皆様の口腔健康に対する意識を高める一助となれば幸いです。

私たち、高輪ゲートウェイ駅最寄りの歯科医院は、単に治療を行うだけでなく、患者様がご自身の歯と歯茎の健康を理解し、生涯にわたって維持できるよう、全力でサポートさせていただきます。

少しでも気になる症状があれば、どうかためらわずに専門家にご相談ください。あなたの「赤い歯茎」は、健康な未来への扉を開く、大切なサインなのですから。

ご予約・お問い合わせは、当院のウェブサイトまたはお電話にて承っております。

ご予約・お問い合わせ

高輪ゲートウェイ駅からアクセス抜群の当院では、WEBもしくはLINEからのご予約も可能です。お電話でのお問い合わせも受け付けておりますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご連絡ください。
【当院へのアクセス】
[医院名] 泉岳寺駅前歯科クリニック
[住所] 東京都港区三田3-10-1アーバンネット三田ビル1階
[電話番号] 03-6722-6741
高輪ゲートウェイ駅から徒歩7分/都営浅草線・京急線 泉岳寺駅より徒歩1分

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