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歯周病

歯周病で失う未来を変える|「抜くしかない」と言われる前に知るべき進行段階・真の原因・残すための専門治療

2026.10.09

歯周病で歯を失わないためには、進行段階を正確に把握し、歯周ポケットが4mm以下の段階で根本原因である細菌と力のコントロールに着手することが最も重要です。「抜歯しかない」と言われる状態の多くは、歯周ポケットが7mm以上で骨の吸収が根の長さの2/3を超えた重度歯周炎ですが、歯周組織再生療法や骨造成を併用すれば、歯を残せる可能性が残されている場合もあります。早期発見と専門的介入が、歯を失う運命を変える唯一の方法です。 「【歯科医師監修】30代の歯周病は「ポケットの深さ」で運命が決まる。3mm・5mm・6mmの治療ロードマップ」もあわせてご覧ください。

歯医者で突然「この歯はもう抜くしかありません」と告げられたとき、多くの方は強いショックを受けます。毎日歯磨きをしていたはずなのに、なぜこんなことになったのか。本当に抜くしか方法はないのか。そんな疑問と不安が頭をよぎります。歯周病は日本人が歯を失う原因の第1位であり、成人の約8割が何らかの形で罹患していると言われています。しかし、正しい知識と適切な治療介入のタイミングを知っていれば、「抜歯」という結末を回避できる可能性は十分にあります。

歯周病の本質は、細菌感染による歯を支える骨の破壊です。歯茎の腫れや出血といった初期症状を放置し、対症療法を繰り返すうちに、気づいたときには骨が大きく失われ、歯がグラグラと動き出す。そこで初めて「重度歯周病」という診断を受けるケースが後を絶ちません。一方で、進行段階を正確に見極め、根本原因に対処する治療を選択すれば、たとえ他院で「抜歯」と言われた歯でも、再生治療によって延命できる場合があります。 「歯茎が下がって歯が長く見える…一度下がった歯肉は戻るのか?歯周病認定医が解説する歯肉退縮の原因と再生治療の選択基準」もあわせてご覧ください。

本記事では、歯周病がどのように進行し、どの段階なら歯を残せる可能性が高いのか、そして「抜歯」と言われたときにセカンドオピニオンで確認すべき治療の選択肢について、歯周病認定医の視点から具体的に解説します。あなたの歯の未来は、今この瞬間の判断によって大きく変わるかもしれません。 「歯周再生治療で抜歯宣告された歯は残せるのか|適応基準・成功率・費用を歯周病認定医が解説」もあわせてご覧ください。

歯周病が「静かに進行する」メカニズム

歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、痛みを伴わずに進行します。歯磨きのときに少し出血がある、歯茎が腫れぼったい気がする、口臭が気になる、といった程度の変化しか現れません。これらの症状は日常生活に支障をきたさないため、多くの方が「大したことはない」と判断し、歯科医院を受診しないまま数年が経過します。その間、歯周病菌は歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)で増殖を続け、歯を支える骨(歯槽骨)を徐々に溶かしていきます。 「「言えない…」恋人の口臭で別れる前に!港区の歯科医が教えるカップル歯周病チェック」もあわせてご覧ください。

歯周病の原因菌は、歯垢(プラーク)の中に存在する嫌気性菌です。これらの菌が産生する毒素や酵素が歯茎に炎症を引き起こし、炎症が慢性化すると免疫細胞が過剰に反応して骨まで破壊してしまいます。日本歯周病学会の指針では、歯周病は「細菌感染症」であると同時に「炎症性疾患」であると定義されており、細菌のコントロールと炎症の抑制が治療の両輪とされています[1]。つまり、歯周病の進行を止めるには、原因菌を徹底的に除去し、炎症を起こしにくい口腔環境を整えることが不可欠です。

さらに、歯周病の進行には「力」の要因も深く関わっています。噛み合わせが不均衡で特定の歯に過度な負担がかかっていると、歯を支える骨への負荷が増し、歯周病の破壊が加速します。歯ぎしりや食いしばりといった習慣も同様です。細菌のコントロールだけでは不十分で、力のバランスを整えることが、歯周病治療の成否を左右する重要なポイントになります。

歯周ポケットの深さが示す進行度

歯周病の進行度を客観的に評価する指標として、歯周ポケットの深さがあります。健康な歯茎では、歯と歯茎の隙間は1〜2mm程度です。歯周病が進行すると、歯茎が腫れて歯との接着が失われ、ポケットが深くなります。一般的に、ポケットが3mm以下であれば健康、4〜5mmであれば軽度から中等度の歯周炎、6mm以上になると重度歯周炎と判断されます。

ポケットが深くなるほど、歯ブラシでは届かない領域が広がり、細菌が増殖しやすい環境が形成されます。6mmを超えるポケットでは、通常のスケーリング(歯石除去)だけでは細菌を完全に取り除くことが難しく、歯周外科治療や再生療法が必要になる場合が多くなります。詳しくは「歯周病の進行度を正しく見極める|歯周病認定医が教える症状別セルフチェックと進行段階ごとの対処法」で解説しています。

骨吸収のレベルと予後の関係

歯周病の進行度を判断するもう一つの重要な指標が、レントゲン画像で確認できる骨の吸収量です。歯を支える骨は、歯根の先端から歯茎に向かって徐々に失われていきます。骨の吸収が歯根の長さの1/3程度であれば軽度、1/2を超えると中等度、2/3以上になると重度と分類されます。骨の吸収が進むほど、歯を支える土台が失われ、歯の動揺(グラつき)が大きくなり、最終的には自然脱落のリスクが高まります。

重度歯周病の患者さんの中には、「痛みがないから大丈夫だと思っていた」という方が非常に多くいらっしゃいます。しかし、骨の吸収は痛みを伴わずに進行するため、自覚症状が出たときにはすでに手遅れに近い状態になっているケースが少なくありません。定期的なレントゲン検査で骨の状態を確認し、早期に異常を発見することが、歯を失わないための最も確実な方法です。

細菌と力の両輪で進む破壊

歯周病の進行には、細菌感染だけでなく、力学的な負荷も大きく関与しています。噛み合わせが悪く、特定の歯に過剰な力が集中していると、歯を支える骨への負担が増大し、歯周病の破壊が加速します。たとえば、奥歯が抜けたまま放置されていると、残った歯に過剰な負担がかかり、歯周病が急速に進行することがあります。歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方も同様で、夜間に無意識のうちに歯に大きな力が加わり、骨の吸収が進みます。

歯周病認定医の立場から申し上げると、細菌のコントロールだけに注力しても、力のバランスが整っていなければ治療の成果は限定的です。逆に言えば、細菌と力の両方を適切にコントロールすることで、たとえ進行した歯周病であっても、歯を残せる可能性が大きく広がります。包括的な診断と治療計画が、歯周病治療の成功には欠かせません。

進行段階ごとの治療選択肢と境界線

歯周病の治療方針は、進行段階によって大きく異なります。早期であればあるほど、治療の選択肢は広がり、侵襲の少ない方法で改善が期待できます。一方で、進行が進むほど、外科的な介入や再生療法が必要になり、治療期間も長くなります。ここでは、進行段階ごとの治療の選択肢と、「まだ間に合う」境界線について解説します。 「【港区で歯周病治療】30代の治療期間は?忙しくても中断させない進行度別時短ロードマップ」もあわせてご覧ください。

軽度歯周炎(ポケット3〜4mm)での介入

軽度歯周炎の段階では、歯周ポケットは3〜4mm程度で、骨の吸収も限定的です。この段階であれば、プラークコントロール(歯磨き指導)とスケーリング(歯石除去)を中心とした非外科的治療で、多くの場合は改善が見込めます。歯科衛生士による専門的なクリーニング(PMTC)を定期的に受け、自宅でのセルフケアを徹底することで、炎症を抑え、ポケットの深さを減少させることが可能です。

軽度歯周炎の段階で治療を開始すれば、外科治療を避けられる可能性が高く、治療期間も数か月程度で済みます。しかし、この段階で治療を怠り、放置してしまうと、中等度、重度へと進行し、治療の選択肢が限られてしまいます。軽度のうちに「根本原因」を特定し、細菌と力の両方をコントロールすることが、将来的な歯の喪失を防ぐ鍵となります。

中等度歯周炎(ポケット5〜6mm)での選択

中等度歯周炎では、歯周ポケットが5〜6mmに達し、骨の吸収も歯根の1/2程度まで進んでいます。この段階になると、通常のスケーリングだけでは歯周ポケットの深部に付着した歯石や細菌を完全に除去することが難しくなります。そのため、ルートプレーニング(歯根面の滑沢化)や、場合によっては歯周外科治療(フラップ手術)が必要になることがあります。

フラップ手術では、歯茎を切開して歯根面を直視下で清掃し、感染組織を徹底的に除去します。手術後は歯茎が引き締まり、ポケットの深さが減少します。中等度歯周炎の段階であれば、適切な外科処置とメインテナンスによって、歯を長期的に保存できる可能性が高いといえます。詳しくは「歯周病治療は何回通院が必要?重症度別の期間と治療ステップを認定医が解説」で解説しています。

重度歯周炎(ポケット7mm以上)での再生治療

重度歯周炎では、歯周ポケットが7mm以上に達し、骨の吸収が歯根の2/3以上に及んでいます。歯の動揺も大きく、噛むと痛みを感じることもあります。この段階になると、多くの歯科医院では「抜歯」が選択肢として提示されることが多くなります。しかし、歯周病専門医であれば、歯周組織再生療法を用いて、失われた骨や歯茎を再生させ、歯を保存できる可能性を探ることができます。

歯周組織再生療法には、エムドゲイン(歯周組織再生誘導材)やリグロス(成長因子製剤)を用いた方法があります。これらの材料を歯根面に塗布し、特殊な膜(GTR膜)で覆うことで、骨や歯茎の再生を促します。日本歯周病学会の臨床ガイドラインでは、適切な症例選択と術式を用いれば、歯周組織再生療法によって有意な骨の再生が得られると報告されています[1]。ただし、再生療法にも限界があり、骨の吸収があまりに進行している場合や、歯根の形態が複雑な場合には、再生が難しいこともあります。

「抜歯しかない」と言われたときの判断基準

かかりつけの歯科医院で「この歯はもう抜くしかありません」と告げられたとき、多くの方は大きなショックを受けます。しかし、その診断が絶対的なものとは限りません。抜歯の判断基準は、歯科医師の専門性や治療方針によって異なる場合があり、セカンドオピニオンを求めることで、歯を残せる可能性が見つかることもあります。ここでは、抜歯の判断基準と、セカンドオピニオンで確認すべきポイントについて解説します。

抜歯の医学的根拠を確認する

抜歯を提案された場合、まずその医学的根拠を明確に確認することが重要です。具体的には、歯周ポケットの深さ、骨の吸収量、歯の動揺度、根分岐部病変の有無、歯根の破折の有無などを、レントゲン画像やCT画像を見ながら説明してもらうべきです。これらのデータが示されず、「もうダメです」という感覚的な説明だけであれば、セカンドオピニオンを求める価値があります。

一般的に、抜歯が避けられないとされる基準としては、骨の吸収が歯根の長さの3/4以上に及んでいる、歯の動揺度が3度(著しくグラグラしている)である、根分岐部病変が進行して清掃が不可能である、歯根が縦に割れている(垂直破折)、などが挙げられます。しかし、これらの基準に該当していても、歯周病認定医による高度な再生治療や、矯正治療を組み合わせた包括的アプローチによって、歯を保存できる場合があります。

歯周病専門医によるセカンドオピニオン

抜歯を宣告された場合、日本歯周病学会の認定医や専門医によるセカンドオピニオンを受けることを強くお勧めします。歯周病の専門医は、一般の歯科医師よりも高度な診断能力と治療技術を持ち、歯周組織再生療法や骨造成といった専門的な治療を提供できます。専門医による精密検査(CT、歯周ポケット検査、細菌検査など)を受けることで、歯を残せる可能性があるかどうかを、より正確に判断できます。

セカンドオピニオンを受ける際には、現在の歯科医院で撮影したレントゲン画像や検査データを持参すると、スムーズに診断を進められます。また、「なぜ抜歯が必要なのか」「歯を残す治療法はないのか」「治療にかかる期間と費用はどれくらいか」といった具体的な質問を事前に整理しておくと、限られた時間の中で必要な情報を得ることができます。詳しくは「【40代の歯周病】「抜歯宣告」に納得できないあなたへ。後悔しないセカンドオピニオンの判断基準と活用法」で解説しています。

再生治療の適応と限界

歯周組織再生療法は、すべての重度歯周病に適応できるわけではありません。再生療法が成功しやすいのは、骨の欠損が垂直的(縦方向)である場合や、欠損部が周囲の骨に囲まれている(骨内欠損)場合です。一方で、骨の欠損が水平的(横方向)に広がっている場合や、歯根の形態が複雑で清掃が困難な場合には、再生療法の効果が限定的になることがあります。

また、再生療法の成功には、患者さん自身のプラークコントロールが不可欠です。どんなに高度な再生治療を行っても、術後に歯磨きが不十分で細菌が再び増殖すれば、再生した組織は失われてしまいます。再生治療を受ける場合には、治療後のメインテナンスを継続的に受け、自宅でのセルフケアを徹底する覚悟が求められます。

根本原因にアプローチする包括的治療

歯周病治療において最も重要なのは、「なぜ歯周病になったのか」という根本原因を特定し、それに対処することです。多くの歯科医院では、「痛いところを削って詰める」「歯石を取る」といった対症療法が繰り返されますが、根本原因が放置されたままでは、治療しても再発を繰り返すことになります。包括的歯科治療では、細菌と力の両方をコントロールし、口腔内全体のバランスを整えることで、歯周病の再発を防ぎ、長期的な歯の保存を目指します。

精密検査による根本原因の特定

包括的治療の第一歩は、精密検査による根本原因の特定です。歯周ポケット検査、レントゲン撮影、CT撮影、細菌検査、噛み合わせの分析など、多角的なデータを収集し、「なぜこの歯が悪くなったのか」を明らかにします。たとえば、特定の歯だけが重度の歯周病になっている場合、その歯に過剰な力がかかっている可能性があります。また、口腔内に多数の虫歯や不適合な詰め物・被せ物がある場合、それらがプラークの蓄積を助長し、歯周病を悪化させている可能性があります。

精密検査によって得られたデータをもとに、治療のゴール(どこまで改善を目指すか)と、そこに至るまでのロードマップを患者さんと共有します。このプロセスを経ることで、「なぜこの治療が必要なのか」を論理的に理解でき、納得して治療を進めることができます。

THP(トータルヘルスプログラム)による細菌のリセット

細菌のコントロールを徹底的に行うために、当院ではTHP(トータルヘルスプログラム)を導入しています。THPは、短期間で口腔内の細菌を劇的に減少させるプログラムで、従来の治療よりも高い効果が期待できます。具体的には、歯周ポケット内の細菌を徹底的に除去し、抗菌薬を併用することで、感染をリセットします。その後、定期的なメインテナンスで細菌の再増殖を抑え、良好な状態を維持します。

THPの効果は、治療後の歯周ポケットの深さの減少や、出血の改善といった臨床的な指標で評価できます。多くの患者さんが、治療後に「歯茎が引き締まった」「口臭が気にならなくなった」といった変化を実感されています。細菌のコントロールは、歯周病治療の根幹であり、これを徹底することが、歯を長期的に保存するための第一歩となります。

力のバランスを整える矯正治療

細菌のコントロールだけでは不十分で、力のバランスを整えることも歯周病治療には欠かせません。噛み合わせが悪く、特定の歯に過剰な負担がかかっている場合、矯正治療によって歯並びを改善し、力を均等に分散させることが必要です。また、欠損歯を放置している場合には、インプラントやブリッジで補い、残存歯への負担を軽減します。

矯正治療と聞くと、「見た目を良くするためのもの」と思われがちですが、歯周病治療における矯正治療の目的は、力のバランスを整え、歯を長持ちさせることにあります。歯周病で骨が失われた歯を矯正治療で移動させることで、骨の再生を促すこともできます。包括的な治療計画の中で、矯正治療を適切に組み込むことが、歯周病治療の成功率を高めます。

治療後のメインテナンスが未来を決める

歯周病治療が終了した後、最も重要なのがメインテナンス(定期管理)です。どんなに高度な治療を受けても、治療後のケアを怠れば、歯周病は再発します。歯周病は「治癒」するのではなく、「コントロール」する病気であり、生涯にわたって管理を続ける必要があります。メインテナンスの頻度や内容は、患者さんの歯周病の進行度やリスクによって異なりますが、一般的には3〜6か月ごとの受診が推奨されます。

定期検査で再発の兆候を早期発見

メインテナンスでは、歯周ポケット検査、レントゲン撮影、プラークの付着状況の確認などを行い、歯周病の再発の兆候がないかをチェックします。ポケットの深さが再び深くなっている、出血が見られる、プラークの付着が多いといった所見があれば、早期に対処することで、重症化を防ぐことができます。定期検査は、歯周病の再発を早期に発見し、最小限の介入で改善するための重要な機会です。

メインテナンスを継続的に受けている患者さんと、治療後に通院をやめてしまった患者さんでは、長期的な歯の保存率に大きな差が出ることが、複数の研究で報告されています。スウェーデンで行われた長期追跡研究では、定期的なメインテナンスを受けた患者さんは、30年後でも大部分の歯を保存できていた一方、メインテナンスを受けなかった患者さんは多くの歯を失っていました[2]。

プロフェッショナルケアとセルフケアの連携

メインテナンスにおいては、歯科医院で受けるプロフェッショナルケア(PMTC、スケーリングなど)と、自宅で行うセルフケア(歯磨き、フロス、歯間ブラシなど)の両方が不可欠です。プロフェッショナルケアでは、歯科衛生士が専用の器具を用いて、歯ブラシでは届かない部位のプラークや歯石を徹底的に除去します。一方、セルフケアは毎日の習慣として継続することで、プラークの蓄積を最小限に抑えます。

歯科衛生士は、患者さん一人ひとりの口腔内の状態に合わせた、効果的なセルフケアの方法を指導します。たとえば、歯周ポケットが深い部位には、特殊な形状の歯ブラシや歯間ブラシを用いる、フッ素や抗菌成分を含む洗口液を併用するといった工夫が有効です。プロフェッショナルケアとセルフケアが連携することで、歯周病の再発リスクを大幅に低減できます。詳しくは「歯周病治療は何回通院が必要?忙しい人が知るべき治療期間と通院回数の現実」で解説しています。

生活習慣の改善が長期的な成功を支える

歯周病のリスクを減らすためには、生活習慣の改善も重要です。喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つであり、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の進行が早く、治療効果も低いことが知られています。禁煙することで、歯周病の改善と再発予防に大きな効果が期待できます。また、糖尿病や肥満といった全身疾患も歯周病と相互に影響し合うため、適切な食事管理や運動習慣の確立も、口腔の健康を守るために有効です。

ストレスや睡眠不足も、免疫力を低下させ、歯周病を悪化させる要因となります。忙しい日々の中でも、十分な睡眠時間を確保し、ストレスを適切に管理することが、歯周病の長期的なコントロールには欠かせません。口腔の健康は、全身の健康と密接に結びついており、生活習慣全体を見直すことが、歯を守るための最良の投資となります。

専門医による治療の実際

歯周病専門医による治療は、一般の歯科医院での治療とどのように異なるのでしょうか。ここでは、当院で実際に行っている専門的な治療の流れと、患者さんがどのように変化していくかについて、具体的な事例をもとに解説します。

50代男性の再生治療による歯の保存

50代の男性の患者さんが、かかりつけの歯科医院で「左下の奥歯は骨が溶けていて抜くしかない」と言われ、セカンドオピニオンを求めて当院を受診されました。精密検査の結果、確かに左下第一大臼歯の歯周ポケットは9mmに達し、骨の吸収も歯根の2/3以上に及んでいました。しかし、歯根の形態や骨欠損のパターンを詳しく分析したところ、歯周組織再生療法を適用できる可能性があると判断しました。

治療はまず、THPによる徹底的な細菌のコントロールから開始しました。その後、エムドゲインと骨補填材を用いた歯周組織再生療法を行い、失われた骨の再生を図りました。手術後は定期的なメインテナンスを継続し、1年後のレントゲン検査では、骨の再生が確認されました。歯周ポケットも4mmまで減少し、歯の動揺もほとんどなくなりました。この患者さんは現在も3か月ごとのメインテナンスを継続され、その歯で問題なく噛めています。

40代女性の包括的治療による口腔内の再建

40代の女性の患者さんは、長年にわたる歯周病の進行で、複数の歯がグラグラし、食事が満足にできない状態で来院されました。精密検査の結果、全顎にわたって中等度から重度の歯周病が認められ、さらに噛み合わせの不均衡も見られました。この患者さんには、包括的な治療計画を提案しました。

治療は、THPによる細菌のコントロールから始め、歯周外科治療で深い歯周ポケットを改善しました。一部の歯には再生療法を適用し、骨の再生を図りました。その後、矯正治療で歯並びと噛み合わせを整え、最終的にセラミックの被せ物で審美性と機能性を回復しました。治療期間は約2年を要しましたが、治療後は「硬いものでも何でも噛める」「人前で笑えるようになった」と、大きな変化を実感されています。包括的治療によって、口腔内全体のバランスが整い、長期的な歯の保存が実現できました。

60代男性の骨造成を伴うインプラント治療

60代の男性の患者さんは、重度の歯周病で右下の奥歯を失い、他院で「骨が足りないのでインプラントは無理」と言われたとのことでした。CT検査の結果、確かに骨の量は不足していましたが、骨造成(GBR)を行うことで、インプラントを埋入できる可能性があると判断しました。歯周病専門医として、まず残存歯の歯周病を徹底的に治療し、口腔内の細菌を減少させることが最優先と考えました。

残存歯の歯周病治療を完了した後、骨造成を行い、インプラントを埋入しました。骨の造成には自家骨と骨補填材を併用し、術後は慎重に経過を観察しました。6か月後、骨が十分に再生したことを確認し、最終的な被せ物を装着しました。現在、この患者さんはインプラントで快適に食事ができ、定期的なメインテナンスを継続されています。他院で断られた症例でも、専門医による適切な診断と治療によって、希望を実現できる場合があります。詳しくは「歯茎からの出血を放置すると「骨」まで溶ける──進行度別に見る歯周病の実態と、手遅れにならないための境界線」で解説しています。

歯周病で歯を失う未来を変えるには、進行段階を正確に把握し、細菌と力の両方をコントロールする根本原因治療が不可欠です。「抜歯しかない」と言われても、歯周病専門医による再生治療や包括的アプローチによって、歯を残せる可能性は残されています。治療後のメインテナンスを継続し、生活習慣を改善することで、一生自分の歯で噛める未来を手に入れることができます。

参考文献

[1] 日本歯周病学会『歯周治療の指針2015』医歯薬出版、2016年
[2] Axelsson P, Nystrom B, Lindhe J. “The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance.” Journal of Clinical Periodontology, 2004; 31(9): 749-757. DOI: 10.1111/j.1600-051X.2004.00563.x

よくある質問

歯周病は自然に治ることはありますか?

歯周病は細菌感染による病気であり、自然に治ることはありません。放置すると確実に進行し、骨の破壊が進んで最終的には歯を失うことになります。早期に歯科医院を受診し、専門的な治療と日常のケアを組み合わせることが、歯周病をコントロールする唯一の方法です。

歯周ポケットが何mmになったら抜歯が必要ですか?

一般的に、歯周ポケットが7mm以上で、骨の吸収が歯根の2/3以上に達している場合、抜歯の対象になることが多くなります。ただし、歯周病専門医による再生治療や包括的アプローチによって、歯を保存できる可能性が残されている場合もあります。抜歯を宣告された場合は、セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。

歯周病治療にかかる期間はどれくらいですか?

歯周病の進行度によって治療期間は大きく異なります。軽度であれば数か月、中等度では半年から1年、重度で再生治療を伴う場合は1年半から2年以上かかることもあります。治療終了後も、3〜6か月ごとの定期メインテナンスが生涯にわたって必要です。

歯周病の再生治療は保険が適用されますか?

歯周組織再生療法のうち、リグロス(成長因子製剤)を用いた治療は保険適用となります。一方、エムドゲインやGTR膜を用いた治療は自費診療となります。治療前に費用と保険適用の有無について、歯科医院で詳しく説明を受けることが重要です。

歯周病は他の歯にうつりますか?

歯周病の原因菌は口腔内で増殖し、他の歯にも感染が広がる可能性があります。一本の歯だけを治療しても、口腔内全体の細菌をコントロールしなければ、他の歯も次々と歯周病になるリスクがあります。そのため、歯周病治療は口腔内全体を対象とした包括的なアプローチが必要です。

歯周病治療後、歯茎が下がるのは失敗ですか?

歯周病治療後に歯茎が下がるのは、炎症が改善し、歯茎が引き締まった証拠であり、治療が成功したサインです。ただし、歯茎が下がることで歯が長く見えたり、知覚過敏が生じたりすることがあります。これらの問題には、歯茎の再生治療(FGG、CTG)や審美的な補綴治療で対応できます。

喫煙していても歯周病治療は受けられますか?

喫煙していても治療は受けられますが、喫煙は歯周病の最大のリスク因子であり、治療効果を大幅に低下させます。喫煙者は非喫煙者に比べて治療後の再発率が高く、再生治療の成功率も低くなります。治療の成功率を高めるためには、禁煙が強く推奨されます。

監修

院長

山脇 史寛Fumihiro YAMAWAKI

  • 略歴

    2009年
    日本大学歯学部卒業
    2009年
    日本大学歯学部附属病院研修診療部
    2010年
    東京医科歯科大学歯周病学分野
    2010年
    やまわき歯科医院 非常勤勤務
    2015年
    酒井歯科クリニック
    2021年
    泉岳寺駅前歯科クリニック 開院
  • 所属学会・資格

    • 日本歯周病学会 認定医
    • 日本臨床歯周病学会
    • アメリカ歯周病学会
    • 臨床基礎蓄積会
    • 御茶ノ水EBM研究会
    • Jiads study club Tokyo(JSCT)
    • P.O.P.(歯周-矯正研究会)
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